魔法科高校の武器商人<修正版>   作:akito324

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なんかここ数回、投稿するたびお久しぶりって言ってる気がします。
本当に申し訳ないです。
今、この次の章を書いているのですが全く書けない。
原作改変はともかく世界観そのままにオリジナルは難しいです。

前回までのあらすじ
ボスホート6を新魔法で撃退したココと清夜。しかし、すぐに新たな刺客が現れる。清夜はココを逃すも刺客に追いやられ、そして今、清夜の首元にナイフが迫る。


45話 007

2095年 5月5日 東EU クロアチア 港 コンテナ置き場

 

『こちら狙撃班。進行方向のB区画に敵影は見当たらねぇ。けど、ここから東にある住宅街の方で爆発を確認した。姉御(バルメのこと)達かな?』

 

ルツがそう呟いたのはちょうどアイクがボスフォート6を倒した時だった。

エレン率いる別働隊は妨害らしい妨害は受けずDEMの貨物が置かれている倉庫近く、このコンテナ置き場に来れた。

特にどちらが囮になると決めてるわけでもないので予定通りと言えば予定通りだろう。

 

「ルツあんまり余計なこと喋るなよ。傍受されてないとは限らないんだから。」

 

『分かってんよアール。』

 

現在、部隊はウゴを車で待機させ、狙撃手を知覚系魔法を使えるルツ、今回に限り観測手のマオでペアを組ませ後衛、それ以外は前衛という形だ。

普段ならワイリに観測手をしてもらうのだがこれには理由がある。

 

「傍受されてるとしても敵と遭遇しなければいいんですが・・・ん?」

 

フラグというやつだろう。

エレンが先頭で歩いているとワイリが肩を掴んで止めた。

エレンもエレンで危険を感じ取り暗号通信の強度を最大限に上げた。

 

「やはり、この奥ですかワイリ?」

 

「ええ、この奥にあるC区画、爆弾といった罠はなさそうですがアンブッシュ(待ち伏せ)臭いです。」

 

ワイリを前衛に置いたのはこのためだ。

彼は以前に書いた通り、FBIのブラックリストに入るほどの爆弾魔。

素人の爆弾トラップなら、すぐに仕掛けた場所が分かってしまう。

そして爆弾の罠の位置が分かってしまうなら敵の待ち伏せ位置も分かってしまうのが道理というわけで。

つまりはアンブッシュ対策としてワイリを前衛として置いていた。

エレンは手信号で静止を皆に伝えた。

 

「分かりました。では先制攻撃で不意をつきましょう。こちらNameless1、情報部聞いていましたね?」

 

『はい、監視衛星からの航空画像を皆さんのデバイスに送ります。』

 

すぐに会社本部から航空画像が届いた。

画像を見る限り人影は見えない。

だが適正さえあれば光学迷彩の魔法で姿を消すのは造作もないはず。

ワイリはデバイスに届いた画像を見て、ペン機能で円を描く。

 

「多分、こことここ・・・あとここに隠れてるぽいな。」

 

「流石。小型のサイオンレーダーで調べたけど予測とぴったりだ。魔法力は測れないが予測地点にそれぞれ5人ずついる。あと対赤外線スーツは着てないみたい。赤外線スコープでも見つけることが出来るな。」

 

トウジョがサイオンレーダーの画像を皆に回した。

言った通り15人のサイオン反応、反応具合から見てただの兵士ではなく恐らく魔法師。

装備は分からないがここまで分かれば問題はないだろう。

 

「たぶん赤外線スコープ使わなくとも奇襲ダメージを与えれば光学迷彩の魔法がとけて姿が見えるはずだぜ。それよりも総隊長殿・・・」

 

「先制攻撃をどうするか、ですねエコー?」

 

エコーは無言で頷いた。

 

「エレンさん。いっそのこと砲撃で攻撃してみるのはどうっすか?」

 

「隠密作戦が好ましいですが爆発があった以上、それでもいいかもしれませんね。」

 

ホウの進言にアーキンが同調した。

エレンが見た限り、エコーを始め他のメンバーも賛成のようだ。

無論、エレンも同意見だ。

 

「マオ、これから座標を送ります。魔法で砲撃を」

 

『座標・・・届きました。砲撃準備に入ります。』

 

「では砲撃後、私以外の前衛はスリーマンセルで各ポイントに攻撃を仕掛けてください。ワイリはアール、トージョと、エコーはホウ、アーキンとで頼みます。私は単独で仕掛けますので後衛の二人は砲撃後、狙撃で私の援護をお願いします。」

 

「「「『『「「「了解」」」』』」」」

 

全員が臨戦態勢にはいった。

それを確認したマオがカウントを始める。

 

「『エアブリッド』の最大出力でいきます。Drop・・・Ready・・・Now!」

 

ドコーンッ!!

 

上空で固められた圧縮空気弾・・・いや圧縮空気砲弾が3つのポイントに炸裂した。

同時に各チームが動き出す。

各々ポイントにつくと予測通り敵の姿が顕になっていた。

 

パパンッパパパパンッ!ズパァンッ!

 

「グァッ!」

 

「ガブァッ!」

 

敵の抵抗はほとんどなかった。

砲撃を喰らってまともに動けなかったからだ。

敵は銃、魔法で次々と撃たれ、斬り落とされてった。

 

「クリア、損害0」

 

「クリア、同じく0」

 

「クリア、損害なし」

 

2分後には悲鳴も聞こえなくなり、クリアリングの声だけが虚しく響いた。

エレンは切り離した死骸の顔を投げ捨て、確認を終える。

 

「オールクリア・・・ですね」

 

『マオです。終わったなら確保を急いだほうがよいのでは?警察が来ますよ。』

 

「いえ、その心配はないです。先ほどの爆発があったのにも関わらずサイレンの音一つも聞こえません。たぶん警察は介入できない状態なのでしょう。警備やセキュリティに関しても待ち伏せしていた彼らが排除していると思います。」

 

言われてみるとサイレンの音も警報の音も全く聞こえない。

そう考えた時、アールは思い出したかのように敵の顔を持ち上げた。

 

「そういや結局、何者だったんだコイツら?」

 

『クロアチア内務省じゃねーの?』

 

ルツの指摘はもっともだ。

だがトウジョの見解は違った。

 

「いや、それにしちゃ装備が良すぎる。うちの警備部門のトップと同じくらいの最新装備だぞ。」

 

「お、部隊称発見っす。名前は・・・ないっすね・・それに薔薇とドクロ?見たことも聞いたこともない部隊称っす。」

 

「薔薇?もしかして・・・!!。エコーこいつの匂い嗅いでみろよ」

 

薔薇と聞いてワイリが突然、死骸の匂いを嗅いだ。

エコーも揶揄いながら匂いを嗅いでみる。

 

「なんだワイリ、そういうフェチズムに・・・ん?薔薇の香り、いや香水か」

 

キツイというほどではない。

本当に女性が軽くつけるくらいの薄い、けど印象に残るような優しい薔薇の匂い。

エレンはそれでワイリの予想が分かった。

 

「『Rosen Reaper』・・・薔薇死神・・・」

 

「「「!?」」」

 

名前を聞いた途端、エレンに視線が集中した。

皆、仕事柄その名は知っているからだ。

ワイリだけは頷いたが他の皆は戸惑った。

 

「待ってくれ、それって・・・」

 

「トージョの考えてる通りですよ。我々と魔法機器業界1位を争う『ローゼン・マギクラフト』、その私設部隊です。」

 

「『戦場で薔薇の香りを嗅いだ者、生きて帰れず』で有名な根も葉もない噂話でしょう!?」

 

業界では知れ渡っている噂話だ。

だが、これを誰にそれを語ることができる?

その香りを嗅いで結果的に死んでしまうのなら誰にもその事実を伝えることは出来ない。

『その幽霊を見て生きて帰れた人間はいない』という怪談話と同じだ。

 

「実在しますよ。スターズ時代、NSAから彼らの香水のサンプルを嗅がせてもらいました。その時に嗅いだのと同じ香りがします。確か敵味方識別の手段の一つとして香水をつけているとか」

 

「だとしても、なんだってドイツの会社が・・・」

 

アーキンがそう言いかけた時だった。

ルツの知覚系魔法に何かが引っかかった。

 

『1時の方向から強化スーツ着た奴らが迫ってきてる!数は2・・・いや、5!奴ら早い、それに・・・』

 

ザーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

ルツの言葉は最後まで聞けなかった。

全員の通信機にノイズに走り、聞こえなくなったからだ。

通信が出来ないとなると出していい指示は一つしかない。

 

「総員先程のチームで散開!エコー!私の権限でAMS-04の使用を許可します!」

 

カラン、コロロ・・シューーーー

 

エレンの大きな掛け声とともにスモークが撒き散らされた。

全員は言われた通り武器を構え散開する。

数秒後、各チームの目の前に敵がその姿を現した。

数は言われた通り合計5人。

ワイリ達とエコー達にそれぞれ一人ずつ。

そしてエレンには3人も現れた。

敵の姿にトージョはボヤく。

 

「見るからにヤバそうなのが来やがったぞ。おい!」

 

薔薇の香りは同じだが殺した男達とはあきらかに武装が違った。

服は一見、ライダースーツのようなツナギ。

しかし要所を守るようにプロテクターが組み込まれていて軽くて強度もありそうなイメージだ。

頭もヘルメットに顔も分からないぐらい全部覆われていて、しっかりガードされている。

だが何よりも特徴的なのは()()()()()()()()()()()()()()()()ことだった。

 

「死ね雑魚共。シュトライトコルブン(槌矛)!」

 

ワイリ達を相手する敵が叫ぶと、拳にサイオンが集う。

敵はその拳でアールに向かって普通に殴りかかった。

 

「っ!!」

 

受け止めるという選択肢があったにも関わらず避けたアール。

その正否はすぐ後ろにあったコンテナが物語った。

 

バゴンッ!!

 

鈍い音をたて、砕けるコンテナ。

そう、凹んだのではない砕けたのだ。

パワーアシスト、魔法の補助を計算に入れてありえない強力な一撃。

もし受け止めていたらと思うと冷や汗が止まらない。

 

「アール下がれ!俺たちで援護するぞトージョ!」

 

「了解!」

 

ババババババババッ!!

 

ワイリとトージョは距離を取るアールを中心に左右に分かれて射撃する。

当たらずとも牽制にはなるはず

そう思ったのだが敵は避けるそぶりすら見せなかった。

 

「パンツァー」

 

キキキキンッ!

 

弾は全弾命中。

ただし全弾とも敵の体を傷つけることはなかった。

 

「音声認識型CADを使ったスーツに対する硬化魔法か。でもさっきのは」

 

「いいやワイリ。さっきのパンチも収束系の硬化魔法だ。」

 

「てことは強化人間の類か。三人相手に1人で来るんだから余程の自信があるんだろう・・・なっ!」

 

トージョは移動系魔法で敵を吹き飛ばそうと魔法式を展開。

 

「ハルト!」

 

対し敵は再び硬化魔法を発動。

今度は地面と自身の相対位置を固定し移動系魔法を相殺した。

 

「まだ無駄と分からない・・・っ!?」

 

カラン、コロコロコロ・・・

 

驚く敵の目に移ったのは強い閃光と音を放つフラッシュバン。

殺傷能力はないもののくらうと少しの間、目と耳が使い物にならなくなる。

だから今すぐ隠れるべきなのだ

 

(けど相対位置を固定してるから、すぐに動くことができない!くそっ!)

 

パッ・・・キィィィィィン!

 

閃光と音が目の前で放たれた。

 

「ぐぅっ!劣等種が!パンツァー!」

 

目には何も写らず、耳は自身の声すら聞き取れない。

それでも敵は敵なりに硬化魔法と情報強化で攻撃に備えた。

 

シーン・・・

 

「・・・?」

 

だがワイリ達からの攻撃は来なかった。

敵は視力が戻るとゆっくり瞼を開く

するとワイリ達はすでに目の前から消えていた。

 

「くそ!隠れてからの奇襲攻撃のつもりか。小賢しい奴らめ。」

 

予想通りワイリ達は全員同じコンテナの影に隠れていた。

 

「どうする時間稼いでエレンの救援を待つか?」

 

「普段の俺ならアールの意見に大賛成・・・だけど舐められてるぽいし、負けたくねぇな。で、何か良い案考えているんだが・・・ワイリ、どうした?」

 

トージョは1人コンテナを見ているワイリに声をかけた。

 

「2人とも手伝ってくれ、俺に考えがある。」

 

声は至って冷静。

しかしワイリの表情は爆弾魔の喜ぶそれと変わらなかった。

 

1分も経たぬうちに敵はアールの姿を捉えた。

敵はコンテナの上から襲いかかる。

 

「見つけたぞ劣等種供!」

 

「ちっ!自己加速で追いかけてきたか。」

 

「シュトライトコルブン(槌矛)!」

 

バゴンッ!

 

アールが避けることで再び砕けるコンテナ。

それなりに時間は経っているはずなのにサイオンの減少は感じない。

劣等種と言うだけの魔法師かもしれない。

だがアールも負けじと移動魔法を放った。

 

「吹っ飛びな!」

 

「同じ失敗はしない!」

 

敵は自己加速術式で加速し移動魔法から逃れた。

そしてその勢いのまま殴りかかる。

 

「やべっ!?」

 

「アール!」

 

反対からトウジョが現れ魔法式を展開する。

今度は敵ではなくアールに移動魔法をかけ無理やり避けさせた。

 

ドゴーーンッ!

 

加速で威力がさらに高まった拳はとうとうコンテナを砕くだけでなく中にあった小麦粉の袋まで破き、粉を撒き散らした。

 

「もういっちょ!」

 

アールは再び移動魔法で小麦粉の袋を動かし粉をさらに撒き散らした。

粉でアール達の姿は見えない。

目眩しでまた逃げるつもりか。

あまりのしつこさに敵はキレた。

 

「いい加減にしろ!貴様ら戦う気が・・・」

 

「HAHAHAHAHA」

 

バチバチ・・・

 

敵の言葉を遮ってワイリの笑い声が響いた。

その次の瞬間

 

ドカーンッ!!

 

「ガブァッ!」

 

轟音と供に敵は爆発をくらった。

硬化魔法で硬めた強化スーツでも流石に防ぐことが出来ない。

敵の全身に焼けるような感覚と爆発の衝撃が走った。

 

「な・・・にが・・・?」

 

ダメージが大きすぎて起き上がれない。

CADも完全に壊れている。

敵は分からなかった。

回りに爆発物はなかった。

それに爆発はしたが物が爆発というよりじぶんと周りが同時に燃え上がったような感覚。

これが意味する答えが分からない。

 

「粉塵爆発」

 

答えたのは物陰から姿を見せたワイリだった。

しかし、それでも敵は納得いかない。

 

「バカ・・・な。不可能・・・だ。あれは・・・漫画の、ように・・・簡単に、出来る、もの・・・じゃ・・・。それ、に・・・ここは・・・密室じゃな・・・い」

 

言う通り粉塵爆発は漫画や小説のように簡単な話ではない。

まず粉と酸素、これがちょうどいい塩梅でないと粉塵爆発は起きない。

粉が多すぎると燃焼するための酸素が足りなくなり、酸素が多すぎると燃焼が広がらなくなるからだ。

次に密閉された広い空間でないと威力が出ない。

これは爆発の圧力が逃げるだけでなく威力まで落としてしまうからだ。

 

「その不可能を可能にするのが魔法だろうが。」

 

「硬化魔法の使いすぎで収束系魔法の本質を忘れたみたいだな。」

 

アールとトウジョもコンテナの影から姿を現した。

 

「ほん・・・し、つ?・・・!!」

 

敵は気づいた。

粉塵爆発の正体に。

ワイリも敵が気づいたことに気づく。

 

「そう、収束系の本質は密度や分布の収束、拡散。これで酸素と粉の塩梅を調節し、圧力の拡散を防ぐ。あとは加速系で衝撃を加速させて威力を補えば密閉されてない屋外でも粉塵爆発を起こせるってわけだ。」

 

「く・・・そ。ブルグ・・・フォルゲ・・・改良・・・型である・・・この、私が・・・ファントム・・・アンツークを着た・・・この私がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

突如、動けないはずの敵が咆哮とともに起き上がった。

 

 

もしかしたらスーツである程度、防げていたからかもしれない。

もしかしたら強化人間としての自前の回復力ゆえかもしれない。

もしかしたら劣等種に負けたくないプライドと怒りゆえかもしれない。

 

 

敵は莫大なサイオンを撒き散らしながら襲いかかろうとした。

だが・・・

 

パンパンパンッ!!パンパンパンッ!!パンパンパンッ!!

 

「がはっ!」

 

抵抗むなしく・・・いや抵抗すら出来ずに倒れる敵。

ワイリ達は驚くこともなく容赦することもなく敵に鉛玉を浴びせたのだ。

 

「いくら強化スーツって言ったって、ここまで壊れれば拳銃も通るだろ。」

 

パンッ!

 

アールは最後に敵の頭を撃ち抜いた。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

ほぼ同時刻

エコー達の戦いも終わりを迎えようとしていた。

 

「ちょこまかと!いつの間にスーツを着たんだクソ!」

 

「こっちだぜ」

 

ババッバババッバババッ!

 

AMS-04を纏ったエコーがコンテナの上から現れ射撃した。

まだ貫通するほどではないが敵のスーツには少しずつダメージが溜まってきていた。

 

「ちっ!パンツァー!」

 

キキキキンッ!

 

敵は硬化魔法をかけ防御力を上げ弾を防ぐ。

するとエコーは射撃を止め、後ろにジャンプ。

そのままコンテナ裏に降りて敵の視界から消えてしまった。

 

「またか、待て!」

 

敵は自己加速術式をかけエコーが逃げたコンテナ裏に回った。

この速さなら()()()()、少なくとも逃げてく影くらいは見つけられる。

そう思っていたが

 

「い、いない!?」

 

コンテナ裏にはエコーの姿はおろか、逃げてく影すらなかった。

ほんの2秒前までいたはずなのに。

光学迷彩かと思うが・・・

 

「くっそ!どうなってやがる!?()()()()()()()()()()()()()()()()()()()!」

 

バババババッ!

 

「がっは!?」

 

今度はアーキンに後ろから撃たれた。

 

「ぐぅぅ・・・パンツァー!」

 

キキキキンッ!

 

敵は硬化魔法で防ぐ。

するとアーキンは同じく射撃を止めて視界から外れるように逃げていく。

奇襲をかけては逃げ、奇襲をかけては逃げ・・・

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()のだ。

初めこそ敵は優勢だと思えていた。

何回かやれば必ず一人に追いつけて殺せる。

スーツ、自前の魔法、体の防御力なら余裕でこなせる。

あとはそれを繰り返すだけ・・・のはずだった。

だが現実には逃げたエコー達に追いつくどころか一人も見つけることが出来ない。

幻を延々と追いかけるような感覚だ。

 

「だったら・・・」

 

敵はとうとう追うのを諦め、コンテナの影ではなく視界の開けたポジションについた。

否、それは殺すのを諦めたわけではない。

敵は奇襲しようとするエコー達にカウンターをしかけようとしているのだ。

 

 

 

 

 

「さぁ、どこからでもかかっt・・・」

 

パンッ!!バキュッ・・・

 

バタンッ・・・・・・

 

 

 

 

しかし覚悟むなしく、敵は命を落とすこととなった。

俯けに倒れた死体からは血が滴り落ちて池を作ろうとしている。

死因はヘッドショットによる即死。

エコー達の手によるものではない。

射手からの距離およそ760m。

それも加速・加重系『ダブルブースト』の魔法で質量、速度を共に二乗にして高めた高威力射撃。

つまりはルツの狙撃だった。

 

 

バシュッ・・・

 

「ナイスショットだルツ。援護感謝だぜ。」

 

「この距離を一撃ですか・・・素晴らしい。」

 

「やっぱり、お嬢(ココのこと)のところは皆、強いッス。」

 

空気が抜ける音とともエコー達が何もないところから突然、姿を現した。

『AMS-04』やエレンの『ペンドラゴン』に備え付けられてる『熱光学迷彩』

()()()()()()()()()()()この迷彩が先ほどの戦い真実を物語っていた。

 

『まだまだレームのおっさんには敵わないけどな。こちらこそ敵の誘導サンキュー。にしても人間離れな連中だったな。』

 

どうやら敵を倒したことでジャミングが薄まったらしく、通信が届くようになったようだ。

 

「ま、確かに強かったですけど・・・」

 

「戦闘はともかく、戦術はまるで素人ッス。」

 

エコーは足で死体の頭をツンツンとつついた。

 

「三人に対し一人は無謀だし、普通はスナイパーを先に潰しておくもんだからな。それが全くなってない。」

 

『言われてみると最後のポジションなんかは「どうぞ殺してください」って言ってるようなもんだよな。』

 

「ようは遺伝子操作で超人になろうと戦術と技術がなければ、すぐ死んでしまうって話だ。それよりルツが援護するってことはエレンのとこは終わったのか?」

 

『もうじき終わるぜ。あんなの見たらスコープを覗く気にすらならない。」

 

ドォゥンッ!

 

直後、左手の方で白と赤の光線が轟音を響かせながら飛んでいった。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

白と赤の光線が飛ぶ、少し前・・・

 

「たく、身体能力が高いから攻撃しないでデータ計測してあげてるのに・・・何ですかこの様は?」

 

「孫子曰く、『敵よりも多くの兵を集めよ』」なんて話がある。

戦略的視野で見れば、増援で来た『Rosen Reaper』はそれが出来ていない。

だが戦術的視野、つまりはエレンの所に限って言えば理に適っていた。

 

「はぁ、はぁ・・・」

 

「つ、強い・・・」

 

「これがDeus Ex Machina Industry・・・」

 

ただ相手が悪い。

敵は3人で襲いかかっているが戦闘服である『ペンドラゴン』を装備したエレンには効かないのだ

硬化魔法を使った物理的攻撃は装備の防御力と領域干渉で防がれ

エレンに直接干渉する魔法は全てエラーになってしまう。

無論、その間、エレンは一歩たりとも動いていない。

 

「『Rosen Reaper』・・・その中でも下っ端のようですね。無駄に警戒して損しました、」

 

「なん・・・だと!?『ローゼン・マギクラフト』の最高傑作である我々が弱いとでも言うのか!?」

 

「硬さが取り柄の魔法師なんて探せばゴロゴロと出てきますよ」

 

エレンはそう言うと体を軽く反らし、左背の武器を可変、脇の下から前方に伸ばした。

ランチャーのような形をしているが砲口のようなものはない。

だが敵はそれがヤバイものだと感じた。

 

「せめてもの情けです。一撃で終わらせてあげましょう。」

 

「なにか来る!!防御フォーメーション『フォートレス』!」

 

「「了解!」」

 

敵はトライアングルになるように固まると収束系魔法『フォートレス』を発動させた。

この魔法は『位置を固定する硬化魔法』、『分子の相対位置を固定して硬くする硬化魔法』、『肉体を不破壊化する硬化魔法』を組み合わせた硬化魔法の中でも難易度が高い魔法だ。

これを複数の魔法師の魔法力を掛け合わせて一つの魔法を発動させる『乗積魔法』という技術で可能にさせた。

おかげで『乗積魔法』もあいまって防御力は十文字克人の対物障壁魔法の域にまで迫っていた。

しかし・・・

 

「貫け!ロンゴミアント!」

 

ドォゥンッ!

 

エレンの魔法はそれすら上回った。

エレンの武器から放たれた赤と白の閃光は槍の如く、全てを貫き、消し去った。

当然、防御魔法を上回る攻撃がされれば防御魔法は機能しない。

敵はチリも残さず消滅、同じ射線上にあったコンテナには大きな穴が穿たれてた。

 

ロンゴミアント

エレンがそう名乗った白と赤の光線の正体は『荷電粒子砲』である。

もちろん質量兵器のような『荷電粒子砲』ではない。

魔法としての『荷電粒子砲』だ。

だから左背の武器も兵器ではなく、実はこの魔法専用のCADなのだ。

 

そもそも兵器としての『荷電粒子砲』はまだ実現出来ていない。

その理由としてあげられるのが主に2つ。

一つは直進させることが難しいこと。

これは外力による偏向、電荷による拡散、大気による減衰が原因とされている。

もう一つは加速器の問題である。

これは単純に荷電粒子を加速させるための電力、加速器の大きさが馬鹿デカいのだ。

 

ロンゴミアントではそれらを放出・加速・収束・移動系を組み合わせた魔法で解決する。

まず放出系で空気中の水素粒子を電離させ荷電を持たせる。

その次に馬鹿でかい電力、加速器を使わず代わりに加速系魔法で水素粒子を加速。

その後、射出する時に移動系魔法で軌道を定義し外力による偏向を阻止

収束系魔法で粒子の拡散を、加速系で大気による減衰を防ぎ発射する。

 

これにより直進させることが出来てかつ莫大な電力も馬鹿でかい加速器も必要ない『荷電粒子砲』が完成するわけだ。

 

もちろん誰にでも出来ることではない。

例えば加速させる過程。

いくら魔法といえど加速器並みに加速させるのは並みの魔法師では出来ないこと

強力な魔法力を持つ彼女だから出来る芸当なのだ。

 

「所詮は魔法機器メーカー。戦争のノウハウまではないようですね。いくら超人を作るノウハウがあろうと戦争を知らなければ粗悪品にしかならないというのに・・・」

 

これがエレン・M・メイザース。

四葉真夜と並ぶ世界最強の魔法師の一人。

少なくともローゼンの強化人間が敵う相手ではなかった。

 

「さて・・・アイクの方は大丈夫でしょうか」

 

エレンは最初に爆発があった方向を向いてそう呟いた。

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2095年 5月5日 東EU クロアチア 高層ビル建設現場

 

その爆発があった方向ではアイクが命の危機に瀕していた。

日本呼称で言う「秘密情報部」所属ということ以外、正体不明の白髪の白人男性によって・・・

 

ギィィィィッ・・・

 

4系統8種の理論では証明できない、さらにはCADジャマー・フィールドが魔法妨害が通用しない敵の魔法。

その魔法によりロープがひとりでに動き、アイクの首を絞めていた。

アイクは銃を捨て首のロープを掴むが解ける気配はない。

 

「グッ!・・・っ!・・・ぁ!」

 

「花は用意できなかったが手向けとしてコイツを用意してやった。受け取れ。」

 

男は袖からナイフを取り出しアイク心臓目掛け突き出した。

油断も容赦もない、力強い一刺し。

刺されば必ずやアイクの命を断ち切るだろう。

 

 

その刺さるまでの刹那、男の瞳に()()が映った。

 

 

(この男、笑っている!?いや違う!!表情は笑っているのに目は笑っていない!?なんだこいつ!?)

 

今すぐにも刺さってしまいそうなのに

殺されてしまいそうなのに

 

 

アイクの表情は溢れんばかりの狂気を、瞳は絶対零度にも勝る冷たい殺意を浮かばせていた。

 

 

不気味だった。

見えたのは一瞬にも満たない時間だがその顔は千年経っても忘れそうにない。

その表情に男の背筋も凍る。

そして次の瞬間

 

ズパッ!!

 

「ぐっ!?」

 

アイクは()()()()()()()()()()()()()()

蹴り上げたのではない。

本当にアイクの足が男を斬ったのだ。

その証拠に間一髪で避けた男の左半身が浅くではあるがスーツごと縦に斬り裂かれている。

血を流しながらもすぐに間合いを取った男。

対しアイクはそれを追わず、代わりに締め付けるロープを指で軽く斬った。

 

「避けたか・・・私もまだ未熟だね。」

 

アイクの語りかける声は変わらない。

けど先程とはまるで気配が違う。

武器商でありながら数多の死地を乗り越えた熟練兵を思わせるような風貌だ。

それでも男は心の中で自分に喝を入れ対峙した。

 

「首に手を伸ばしたのはロープを解くためではなくCADを操作するためか」

 

「ご名答」

 

「分子ディバイター・・・ではないな。今のは空手の究極『化身刀(タケミカヅチ)』を魔法化させたものだな。」

 

「これまたご名答」

 

化身刀(タケミカヅチ)

言い方は色々あるかもしれないが

その名の通り鍛え上げた鋼の人体を一振りの”刀”にする空手の奥義だ。

手刀を始め、蹴りでさえ刃の斬撃にしてしまう現実にはありえない幻の技だ。

それをこの魔法では”鋼の体”を硬化魔法で、”刃”を『圧斬り』の応用させ全身に斥力場の刃を纏わせることで実現させているのだ。

 

(あの息も出来ないギリギリの状態でこれほど複雑な魔法を展開、なおかつ悟らせないように銃を捨て俺をおびき寄せた・・・か。死にかけの人間が考えることじゃない。)

 

「もう帰っていいかな?私はエレンほど強くないんだ。」

 

「・・・化け物が」

 

男は小さく吐き捨てた。

するとアイクはすぐに距離を詰め手刀で突いてきた。

 

「っ!Protego Totalum!(万全の守り)」

 

キンッ!

 

斬撃になっているため男は腕で防御はせず魔法で手刀を防ぐ。

アイクは攻撃をしながらもウンウンと頷く。

 

「なるほどね。魔法の発動はそのスーツに刻まれた刻印を使っていたか。」

 

「・・・」

 

この場での沈黙は肯定に等しかった。

見るとアイクが言うようにスーツの内側にうっすらと刺繍のような線が何本も刻印のように引かれている。

 

「それも詠唱型の古式魔法。ポグワーツの魔法だね。いやはや盲点だったよ。CADかと思っていたから精霊に気を配ってなかった。」

 

「・・・そこまでの分析力、戦略眼を持っていながら、どうしてこんなことをした?」

 

「何か勘違いしていないかな?私は社長だけど今回の件はココの担当だ。どうやら狙う標的を間違えてるみたいだね。」

 

「間違えてはいない。今回の件だって『王政の春』の延長線上にすぎない。だから『王政の春』の首謀者であるお前に聞いている。」

 

「・・・」

 

今度はアイクが無言で答えた。

その間も笑みは崩さない。殺意の眼差しは揺らがない。

男は『王政の春』について語り始めた。

 

「始まりはドイツ領の地方都市の小さな独立運動だった。ヨーロッパはUSNAなどと違い、第三次大戦前から独立、併合、革命の歴史があったからこの手の活動は他と比べれば一番多い。だが過去100年そのような活動が成就することは一度もなく、その地方都市の活動もすぐ下火になると思われていた。・・・しかし2年前、DEMがバックについたことによって全てが変わった。資金提供によりその独立運動はドイツ全土に拡大し、参加者が急激に増加、反対派の汚職も調べ上げてしまい、しまいにはその地方都市にかつて存在したリーゼルタニア王家の末裔まで発見、独立の大義名分まで手に入れてしまった。結果はもちろん独立賛成多数。こうして地方都市の小さな独立運動はかつてあったリーゼルタニア王国の復活という名目のもと独立を果たしてしまった。」

 

「めでたし、めでたし」

 

パチパチと手を叩くアイク。

だが話は終わっていなかった。

 

「そんなわけないだろう。おかげでEU各国で小王国の独立ラッシュ、EU経済は大混乱、両陣営はさらに溝を深めてしまった。今回の件だってその不安定化につけ込んだ軍備拡張だ。」

 

「それでもリーゼルタニア王国の国民は独立できて万々歳じゃないか。」

 

「何が万々歳だ。武器商がそんな善意で支援するわけがない。お前達はCAD開発に必要不可欠な『感応石』の採掘地域を他社から奪い取って独占するために独立とその後の産業、軍事、政権運営の支援者になったんだ。」

 

「・・・」

 

アイクは無言で続きを促した。

 

「そして王室や政府高官を掌握し、あらゆる政策から税率、身分保障に至るまで全てDEMの都合がいいようにして裏の支配者に成り上がった。こうして()()()()()()()()()()()()()()()()()()()しDEMはヨーロッパでも2本の、世界でも5本の指に入るほどの規模の『感応石』採掘地域を手に入れたんだ。」

 

傍から聞けば、とんだ妄想だった。

だって信じられるだろうか?

大手企業の社長とはいえ、一民間人が国を手に入れる。

こんなものは漫画や小説の世界での話だ。

話を聞いただけなら誰も信じてはくれない。

 

 

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

このことを知るのは先進国のVIPか諜報組織の人間だけ。

それだけ世界にとっては受け入れ難い事実だった。

もちろん、アイクは表向き認めはしない。

 

「ふふっ・・・顔の割に冗談がお上手のようだ。特に感応石あたりからのくだりはとても面白かった。小説にすればヒット間違いなしだ。」

 

そう言うとアイクは再び距離を詰め、手を伸ばした。

今度は手刀なんてものじゃない内臓をえぐり取るつもりだ。

 

「ああ、ここでお前がくたばれば感動のフィナーレだ。Finito Incantatem!(呪文よ終われ)」

 

「!」

 

バシィッ!

 

突如、今まで避けていた男がアイクの腕を掴んだ。

そしてアイクの驚く間も無く男は顔面に強烈な左ストレートをぶつけた。

 

ドゴッ!

 

「グボォッ!?」

 

小さな曲線を描いてぶっ飛んだアイク。

落ちそうになるがなんとか片手で鉄骨に捕まった。

だが、それでも、血反吐を吐いて落ちそうになってもなお、アイクの顔が歪むことはなかった。

物理的にも、精神的にも

 

「かはっ・・・へへ、はははっ!『化身刃』の術式を強制終了させたか!術式解体でも領域干渉でもない、ポグワーツならではの対抗魔法!素晴らしいよ。」

 

「いい加減落ちろ!」

 

「ハハハ、それは無理だ」

 

ブバァッ!!ブバァッ!!ブバァッ!!

 

蹴落そうした男に正面から3本の白いビームが飛んできた。

アイクの『粒機波形高速砲』だ。

 

「くっ!」

 

グラッ・・・ガシッ!

 

至近距離からの攻撃ゆえ防御魔法は間に合わない。

上半身を後ろに反らすことで避けた男だがその勢いでバランスを崩してしまい、アイクと同じ鉄骨で宙吊り状態になってしまった。

 

(ビームを出す魔法なんて聞いたことがないぞ!?まだこんな隠し玉を持っていたか)

 

アイクにとっては隠し玉というほどでもない。

使わないのは魔法なしでも戦えるようにするためでもあるが主な理由はアイクのBS魔法の対策をとられないためだ。

だから確実に殺せる見込みがある戦闘、佐渡防衛戦のような戦争、ハッキングといった電子戦、誤魔化しがききやすい防御などを除き、アイクはBS魔法の使用を控えている。

『砂鉄剣』といった電気を操っていると分かりやすい魔法は特に。

けど今回のような増援も期待できない状態で百戦錬磨のプロを相手にしてはそうも言ってられなかったのだ。

 

「これ以上の戦闘は私のプラスにならない。悪いがここで失礼させてもらうよ。」

 

「お前の都合など・・・!?」

 

ゴゴゴゴゴ・・・

 

大きな音をたて震え始める骨組みのビル。

下を見るとボルトの取れた鉄骨が外れ崩れ始めていた。

たまたまボルトが外れるわけがない。

『電気使い』のBS魔法だと分からずともアイクが犯人だというのは一目瞭然だった。

 

バキンッ!バキンッ!バキンッ!・・・

 

下の鉄骨が崩れることで負荷に耐えられなくなり、上の鉄骨も壊れ、崩れていく

その連鎖は彼らが捕まる鉄骨にもすぐに伝わった。

アイクはタイミングぴったりに手を離し、ポッケから新しいCADを取り出し魔法で浮遊する。

 

「フッ・・・」

 

「待て!Wingardium Leviosa!(浮遊せよ)」

 

鉄骨とともに落ちたボンドも負けじと鉄骨を踏み台にポグワーツの浮遊魔法で追いかけた。

浮遊魔法も『世界の修復力』の例にもれず無限に浮くことはできず、そこから上昇、ベクトルに逆らった移動などをすれば浮ける時間も短くなる。

だが男が使うポグワーツの魔法は現代魔法のとは違い、短くではあるが浮いたままある程度の移動ができ、浮遊時間も長い。

だから空中戦での分は男にある・・・はずだった。

 

「!?」

 

目の前ではアイクが落ちてくる数多の鉄骨を上昇しながら右へ左へと避けている。

浮遊魔法では説明できない現象だ。

答えは一つしかない。

 

「・・・飛んでいる!?」

 

「Good Bye 0()0()7()♪」

 

最後はボンドに軽くウインクして飛び去ったアイク。

See youではなくGood Byeなのは二度と会いたくないという意思表示だろう。

 

「逃すか!Expecto・・・」

 

男は着陸して魔法式を展開しようとしたところで通信が入った。

発信元は日本呼称で言う「秘密情報部」、つまり()()()()()()()()()()、通称『M()I()6()』の女性の上官からだった。

 

『作戦終了よ0()0()7()。』

 

「"M"か。まだ敵を仕留めていないぞ」

 

MI6は英国の情報組織。

一度は『SIS』という名前に変えたもののイギリスの連邦崩壊後に名前を戻した。

その諜報員はUSNAの『CIA』、新ソ連の『KGB』に劣らない優秀さだ。

特に『00セクション』と呼ばれる部署のエージェントは国から『殺人許可証』を貰うほどの実力者でありMI6の中でも群を抜いている。

まさしく”殺し”においては世界最高峰の組織。

Mと呼ばれる女性はその長官だった。

 

『いいえ、もう彼らは荷を取り返したわ。』

 

「荷を届けさせなければいいんだろ?奴を抑えればまだ間に合う。」

 

男ことボンドは跳躍の術式を用意する。

けれども今はもうそういう段階ではなかった。

 

『貴方も今の術式を見て分かっているでしょう。EUの大戦は暫く起きない。つい先程、アイザック・ウェストコットが()()()()()()()()から。』

 

()()()()()()()・・・か。どこのどいつだったかな?魔法をキャンセルさせれば空飛べるとかほざいた国の研究者は。仕組みは分からないが領域干渉は使ってなさそうだ」

 

『その研究は多額の予算を工面したあげく去年失敗しているわ。とにかく空の戦いが変わる以上、有用性を測るため両陣営ともに宣戦布告には慎重になるはずよ。』

 

「けど戦争を止めたわけではない。」

 

『その通り、あくまで一時的。飛行術式が完成した時点で戦争を根本的に止める要因はもうなくなった。どう交渉しても戦争は避けられない。最早、軽く息を吹きかけるだけでも戦争に転がり落ちる。なら今、我々英国がやることは一つ』

 

「迎撃の用意。それも時代に取り残されないよう主に空戦魔法師を用意するのか。結局、戦争の火種作ってる奴に頼るのか英国は。」

 

この事実はMと呼ばれる女性にとっても悔しいことだった。

ボンドも通信越しにその辛さが伝わっていた。

 

『残念ながらね。上はそう判断するでしょう。だからこれ以上の戦闘は彼だけでなく我々にもプラスにならないわ。よって貴方には新しい任務についてもらうわよ。』

 

「・・・分かった。帰還後、次の任務に移る。次の概要くらいは教えろ。」

 

『次はゴルディ家の相続問題に関する任務よ。帰還待ってるわ()()()()()()()()()

 

 

 

007の仕事に終わりはない。

少なくともアイクの・・・清夜の憎悪が終わらない限りは・・・

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

2095年 5月5日 東EU クロアチア 内務省

 

この一部始終を見ていたのはMI6だけじゃない

ココを脅した内務次官もその様子を見ていた。

 

「・・・尾行と港保税区画保安要員を撤退させろ」

 

『ボスホート6撤退せよ。繰り返す、ボスホート6撤退せよ。』

 

部屋にいたオペレーターは淡々と命令をするのみ。

きっと彼らはこの状況が示す意味をMI6ほど理解できてないだろう。

この部屋でそれを理解できているのは内務次官だけだ。

 

「ローゼンの超人も007を受け継ぐ者も止められなかった。いや、確かに今すぐの戦争は止めた。でももう避けることは出来なくなった。賭けてもいい、最初の火蓋をきるのは我が国だ。」

 

内務次官は静かに部屋を後にした。

これから来るであろう未来に絶望しながら・・・

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

2095年 5月5日 東EU クロアチア 貨物倉庫 外

 

飛行したアイクはそのまま貨物倉庫に着陸した。

飛んでいる最中、所々で戦いの痕が見受けられたがどれも戦闘は無事終わっているようだった。

 

「試作としては上々。これを今から売りに出してもいいが微調整が必要かな〜」

 

「アイク!」

 

呼ばれた方を向くと戦闘服からスーツに着替えたエレンが駆け寄ってきた。

アイクは手を振って答える。

 

「やぁ、お疲れ様エレン。無事で何より。」

 

「『お疲れ様』ではありません!さっきココから話を聞いて救援に向かうところでした。護衛がいるのに貴方が傷ついてどうするんですか!?」

 

「ははは・・・悪かったよ。でも、おかげで飛行魔法を他国にリークさせることができた。」

 

「貴方が死んだら本末転倒なんです!血が出てるじゃないですか!?まず手当を・・・」

 

そう言って腕を引っ張るエレン。

確かに手当も大事だが今はそれよりも状況確認が大事だった。

 

「大丈夫だよ。後遺症が残るような怪我はしてないから。先に状況を報告してくれ」

 

「・・・後で絶対ですよ?」

 

自意識はないと思うが、いじけた顔でそう言う(CV:伊藤静)エレンは中々に可愛かった。

だが、あいにくとアイクは揶揄う・・・もとい可愛がる余裕はなかった。

 

「はいはい、貨物確認したらね。」

 

「分かりました。現在、全員戦闘を終わらせここに到着。現在ココと私以外は簡単な後処理と警戒をしています。本格的な後処理はリーゼルタニアから来た部隊が処理します。」

 

「ココは何しているの?」

 

「はい、今は貴方を待ちながら貨物の確認をしております。」

 

「分かった。じゃあ俺も貨物見てくるから俺の所の後処理と手当の準備をよろしくね。」

 

「了解しました。手当、逃げないでくださいね。」

 

アイクは歩きながら後ろに手を振って了解した。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

2095年 5月5日 東EU クロアチア 貨物倉庫内

 

変装を解き、アイクから清夜になった。

そして倉庫の中を歩いて行くとある女性を見つけた。

ココ・ヘクマティアルだ。

彼女は薄暗い照明の中、まるで劇でもしているかのような立ち振る舞いで背を向けていた。

 

「フフ〜フ♪無事・・・というほどでもないが、ここまで来れたようだね。」

 

「くたばってて欲しかった?」

 

「まさか、最愛の弟が生きていてくれて嬉しいに決まっているじゃない。」

 

ココはすぐさま清夜に駆け寄り、後ろから抱きついた。

そしてギュッと少し強く抱きしめる。

 

「・・・本当に心配したんだよ。」

 

「・・・ありがとうココ姉。」

 

清夜も答えるようにココの手をギュッと握った。

弟として・・・

 

 

もし、これで終わるならhappy endだろう。

だが、そこは互いに武器商人。

感動的な話で終わるわけじゃなかった。

 

「・・・だから姉として、武器商として言わせてもらう。学校をやめなさい清夜。少なくとも私は千葉エリカを認めない。」

 

「断る。」

 

アイクは・・・いや清夜は即答した。

 

「ふふ・・・即答だね。そんなに学校は楽しい?千葉エリカと一緒にいたい?」

 

「楽しい、楽しくないで答えてはいないし、彼女と一緒にいたいわけじゃない。俺にはあの学校と生徒が必要なだけだ。逆に聞くけど千葉エリカごときに俺が殺されるとでも思うの?」

 

「思う。」

 

今度はココが即答した。

清夜はココの腕を剥がし対峙する。

 

「・・・」

 

「彼女が直接殺すわけじゃない。彼女の存在が君の心に『復讐』と『愛』という矛盾を与えている。そして、その矛盾する思いはいつか君を殺す。『愛』の相手が千葉エリカならなおのこと、確実に・・・それもそう遠くない未来。」

 

ココの焦点はブレることなく清夜を見つめる。

 

「だけど君は捨てられない。だってその矛盾こそ君の存在価値であり生きている理由だと思っているから。大嫌いな武器と魔法もまた然り、武器と魔法に対する憎しみは誰よりも強いのに武器と魔法を使うことの頼もしさを誰より理解しているから。」

 

白い肌に白い髪。

そして綺麗に整った顔。

ただでさえ美人なのに、その美しい碧眼に思わず全てを持っていかれそうだ。

 

「だから私につき従え清夜。何も社長を変われというわけじゃない。学校をやめて私達と再び旅をしよう。君と魔法と武器との付き合い方を、そしてその矛盾との向き合い方を教えてやる。」

 

生物的恐怖か、それとも何かに惹かれたのか

清夜もココも互いに見つめあって動かない。

そこで清夜が切り出した。

 

「ココは何故武器を、魔法を売る?」

 

「世界平和のために・・・君こそ何故武器と魔法を売る?」

 

嘘をつく必要はない。

迷うこともない。

ココは『愛』とか言っているが自分の思いは5年前からたった一つしかない

そう、それは・・・

 

「復讐のために」

 

自己満足と言われてもいい

全ては冬華の無念を晴らすため・・・

あの男を殺すため・・・




誰か挿絵とか書いてくれないかな〜(超絶頭が高い)
というわけでマジック&ガンメタル・キャリコロード編はここまで!!
原作でようやく世界大戦の兆候が見られるのに・・・清夜の存在がここまで戦争を加速させるとは・・・
そして清夜はとうとうやらかしましたね
はい、達也より先に飛行術式を完成させてしまいましたね。
深雪様激おこでしょうね。
達也が完成させるか清夜が完成させるか、これだけで飛行術式の意味合いが大きく変わっていきます
ご期待ください。


次章予告!

ブランシュの事件から少し経過し、ようやく生徒の落ち着きを取り戻した頃
清夜はエリカから『魔法力を高める薬』の噂を聞く。
また時を同じくして清夜は『零乃』と名乗る転入生と出会う。
このタイミングで転入してくる彼らの目的は一体?
そして薬の正体は?

次章、『四葉の魔薬<麻薬>編』(ネタバレになってないので大丈夫です)
次回をお楽しみに!

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