魔法科高校の武器商人<修正版>   作:akito324

51 / 52
※注意とお詫び

今回の話は前回の次回予告と違った内容になっています。
またこの章は5話で終わらせると言いましたが無理そうです。投稿も遅いのにストーリーも中々進まず申し訳ございません。

前回までのあらすじ!!
清夜とエリカの距離が急接近!?(物理的に)
なんて下手なラブコメはともかく、清夜は零の数字を冠する兄妹に出会った。彼らからカードを使った自身達の魔法の実地試験の話を聞いた清夜は参加の意思を示す。しかし生成された清夜のカードには何も写っていなかった。


48話 意欲的

2095年 5月15日 Deus Ex Machina Industry 本社 ???

 

夕方になり、清夜は残った事務仕事を早々に終わらせ会社に向かった。

目的はサイモン・サイトウ会うためだ。

 

「やぁ、サイモンさん。お邪魔しますよ。」

 

「おお、珍しいネ式さん。この時間に来るなんて、しかも学校の制服。もしかして新商品発表会の打ち合わせ?」

 

「発表日はもう少し先ですよ。ある程度の準備は部下が初めていますがまだ私が参加するほどの段階ではありません。」

 

ただし税務処理担当会計士の彼に用はない。

用があるのは『七賢人』としての彼だった。

 

「学校に零家の直系が転入してきました。それも二人。名前は零乃零と零乃まやか」

 

「!」

 

「その反応ももっともです。恐らく文官(政府陣営)や武官(国防軍陣営)にも秘密で転入でしょうね。」

 

「学内に公安と軍情報部のスパイいると聞いたけど」

 

「それがタイミングいいことにミズ・ファントムはブランシュ事件後『休暇』という名目で雲隠れ中。軍情報部のスパイについても軍が動いてないのを見るに雲隠れ、少なくとも気付いていないのでしょう。そのスパイが零を知らないという可能性もありますが。」

 

「魔法協会もスパイの存在に薄々気付いているネ。それでその兄妹は式さん襲った女の仲間・・・と見ていいのか」

 

二人の頭に浮かんだのはコミューターで襲いかかった偽エリカ。

彼女は死ぬ直前、確かに零と言っていた。

零乃兄妹がその差し金か、気になるところだ。

 

「微妙ですね。同じ部類ではあるでしょうが少なくとも彼らから私に対する敵意は感じません。()()()はしてるようですが・・・」

 

「そこでPD(パーソナルデータ)を洗えと。」

 

「ええ、それと2つほど調べて欲しいことが」

 

「何を調べル?」

 

「ここ一年で魔法関連機関に入学や転入、加入した人間に零の関係者と思しき人間がいないか。それと魔法大学系列の学校周辺で流れている薬物の密売ルートを調べてください。密売ルートに関しては最近の変化も詳しく。」

 

「入学者とかはともかく、麻薬ルート?一体どうして?」

 

「説明は後で。どれくらいで終わります?」

 

「一時間で終わらせる。退出頼みますネ。」

 

情報は時と場合によっては力と価値が魔法より高い。

ゆえにサイモンは『七賢人』の力を使う姿を誰にも見せない。

例え社長の清夜であってもだ。

清夜もそれを了承して雇っているので文句はない。

清夜は何も言わずに部屋を出た。

 

 

〜1時間後〜

 

 

再び部屋に来た時にはすでに紙媒体で印刷されていた。

 

「資料できてるヨ」

 

「それで結果は?」

 

サイモンは資料を渡しながら説明する。

 

「まずPDだけど一言で言うなら殆どが嘘っぱち。零家について書かれてないし『ただの魔法師』ということになってる。けどPDに書き換えられた痕跡はない。」

 

PDには「家系からは魔法師の因子が見当たらない」と書かれている。

しかし、魔法協会や十師族が『零家』と認識しているとなると彼等の血統に魔法師がいるのは確かだ。

 

「書き換えられた痕跡がないってことは・・・」

 

「少なくとも彼等兄妹は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。魔法協会が秘匿したいのカ、零家が秘匿したいのカは分からないけド。でも疑問。今まではともかく何故、政府陣営は今回の零の転入に気付かなかった?転入する以上、文科省は資料を審査するはず」

 

「それは簡単、転入手続きの資料を見てください。ある単語がないのに気付きませんか?」

 

サイモンは首を傾げながらページを開く。

二分ほど資料とにらめっこするとサイモンは気付いた。

 

「・・・あっ!?教育委員会の言葉がなイ!」

 

「実は魔法大学系列の学校の運営は基本、魔法協会が行なっているんです。通常の教育カリキュラムは文科省の決めたことに従いますが魔法教育のカリキュラムは全て魔法協会が決めています。文科省にある魔法大学系列の生徒資料についても魔法協会にあるものを共有しているだけにすぎないんです。在学中の学校に転入先の学校や引越し先の住所を報告する義務もないですし。だから政府陣営も気づけなかったんでしょう。」

 

「まるで脱法ハーブや官僚の天下りのような抜け道ネ」

 

「ははは、だって皆使われるのは嫌だけど使うのは好きでしょ『裏技』?」

 

清夜は人の悪い笑みを浮かべ資料のページをめくる。

次のページには魔法関連機関の職員、生徒の名簿が書かれてい・・・なかった。

それでも期待はずれの結果ではなかった。

 

「・・・やはり無理でしたか。」

 

「一年だけでなくここ数年で調べてみたけど少なくとも書類上、零の関係者と明かされている人間はいなイ。」

 

「ま、馬鹿正直に零の関係者と名乗る人間はいませんよね。」

 

(だからこそ、あの兄弟が零と名乗って実地試験をする理由が気になるんだけどな。それに何も写らなかった俺のカードも)

 

「零の魔法についても含め今回調べられなかったものは改めて調査しておくヨ。」

 

「お願いします。それで最後は薬物の密売ルートですが・・・」

 

「その前に何故麻薬ルートを調べさせタ?」

 

「ああ、そうでしたね。実は・・・」

 

清夜は魔法力を高める薬について語った。

サイモンなら何か知っていると思ったが彼は頭を傾げた。

 

「記憶喪失・・・サイオンの枯渇・・・そんな症状聞いたことなイ。それに魔法力を高める薬・・・そんな薬も知らないヨ。」

 

「まだ薬が記憶喪失、サイオンの枯渇とつながっていると決まったわけではないんですけどね。ただ裏でながされてるとなると間違いなく違法薬物、。となるとどうしても気になる・・・というか思い当たるフシがあるんですよ。」

 

「・・・横浜マフィア『万両組』」

 

清夜は首を縦に振り、サイモンの答えを肯定した。

 

「もし、そうだとしたらすぐに動けるように準備しときたいんですよ。攻撃の対応だとしても、隙をついた殲滅だとしても」

 

「規模や力で考えれば式さんの予想当たっていると思う。万両組は神奈川にあるから四校がある静岡の浜松、一高がある東京の八王子にも販売ルートを広げている。他の分校で言っても万両組と同盟の、または傘下の893組織があるから薬を流すことは無理なイ。」

 

「それに大御所の893組織も翠と藍が関東中の893潰しまくってるおかげで疲弊状態。国策機関に薬物流すような大それたことができる893は今の所『万両組』だけとなりました。」

 

「ただ仮にそうだとしたら目的分からなイ。魔法師にだけ売ってるとしたら顧客規模はかなり小さい。だからそこまでの利益はだせないと思う。」

 

「かと言ってDEMに対する攻撃とも思えませんしね。だからこそ麻薬ルートの近況を知りたかったんです。目的、または万両組の仕業と裏付けるものがあればいいんですが」

 

「残念ながら新しい種類の薬が出たなんて話はなかっタ。せいぜいヤンチャが過ぎた暴走族が麻薬を売り始めた程度。」

 

「やはり実物が出てこないと判断できませんか。」

 

読んでいた資料もそこで終わり清夜は残念そうに立ち上がる。

するとサイモンは机に積まれていた紙の束から新しい資料を取り出した。

 

「そうそう、蛇足かもしれないけど面白い情報がある」

 

「面白い情報?」

 

「サハリン(樺太)のマフィアが近々、日本にやってくるらしい。それも末端価格40億円分の薬の用意があるとか。」

 

二度の価格変動により円、物価の価値が2000年代初頭と同じなこの時代で40億と言えば殆どの人間が仰天するほどの額だ。

だが普段から億単位の商売をしている清夜にとっては大した驚きはなかった。

 

「新ソ連のマフィアですか。額から考えてかなりの量の薬があるとは思いますが・・・まさか40億円が面白い情報ですか?」

 

「いいや、面白いのはここかラ。彼ら『ホテル・モスクワ』の人間だって。式さんもこの間会ったでしょう?」

 

清夜の頭によぎったのはロアナプラで会ったバラライカの顔だった。

彼女の所属も『ホテル・モスクワ』だった。

 

「まさかバラライカが?」

 

「いや、今回彼女は関係ない。けど同じ幹部ヴァシリ・ラプチェフの指示で日本に拠点を作りに来たらしい。それも横浜に。」

 

「へぇ〜、それは楽しそうですね。」

 

言葉とは裏腹に清夜は心底嫌そうな顔をしていた。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

2095年 5月15日 横浜 万両不動産

 

横浜の繁華街から少し外れた所

万両不動産と呼ばれるこのビルでも同じ話がされようとしていた。

 

「たくお前ら修練してると思ったら外で青○始めやがって」

 

「待って待って姫。外で犯るから青○だよ!『外で青○』って言い方おかしい!ねぇ蓮華?」

 

「まぁまぁ南天ちゃん。姫も混ぜなかったからイジケちゃって間違ったんだよ。」

 

「そういう話じゃねぇよ!」

 

なんて言いながらも内心は蓮華の言う通りだった姫こと万両苺。

自分もさっさと百合百合しいことを始めたく、早速本題に入った。

 

「ま、だからどうこうって話でもないんだが・・・()()()()()の話だと近々、上陸してくんだとよ。きっかけは知らんが。・・・ファイルb2オープン」

 

苺の音声コマンドにより大型ディスプレイに2枚の写真とデータが表示された。

苺はレーザーポインターを使い説明する。

 

「『ホテル・モスクワ』のサハリン(樺太)マフィア。アレクセイ・ラズコフ、通称『ラズコ』とドミトリ・アバカロフ、通称『筋肉野郎』。この二人が率いる部隊丸々一個。なんでも横浜を狙ってるらしい。てことはアタシと戦争になる。」

 

「「ふ〜ん・・・」」

 

南天も蓮華もリアクションはそれだけだった。

苺もリアクションが薄いことにツッコむ気はない。

 

「まったく嫌だな戦争は。不毛で」

 

そんなことを言いながも苺は・・・

いや三人とも実に楽しそうな表情をしていた。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

2095年 5月16日 第一高校 生徒会室

 

翌日、事態はさらに悪化の一途を辿っていた。

 

「実は先程連絡が入ったのですが、昨日、とうとう我が校の生徒からも被害者が出てしまったそうです。」

 

真由美がそう言い放ったのは放課後のことだった。

名目としては生徒運営会議をしているのだがこの場合、捜査会議という表現が近い。

部屋には事件と薬の話しを聞くために生徒会メンバー始め、風会員からは摩利と達也が、部活連からは克人、アルテミシア、そして清夜が来ていた。

 

「どうやらブランシュの事件より動きが速いようだな。」

 

驚き、怒り、悔しさで騒つく中、最初に発言したのは十文字克人だった。

悲しんでないわけではないだろうが動じてはいない様子。

 

「悲しいことですがこれで原因不明の怪事件は四校だけの問題じゃないということになりました。」

 

会計の市原鈴音もまた動じていなかった。

ただ克人のように堂々としてるわけでなく凛と佇んでいる感じだ。

そして動じてないと言えばもう1人。

 

「会長、その被害者の症状は四校の生徒と同じものでしょうか?それと被害者に共通点などはあるのでしょうか」

 

(眉一つ動かさないとは、本当に大人だねぇ達也)

 

最初の二人は性格上、表情の変化が見えづらいだけ。

だが達也は明らかに客観的に、そして冷静に物事を見ていた。

 

「被害者23名全員に一部記憶喪失とサイオン枯渇の症状が見られたわ。けど残念ながら被害者は皆、クラス、学年、部活もバラバラ。共通点らしきものはなかったわ。」

 

「よ、四校の時よりも増えてるじゃないですか。」

 

あーちゃんこと中条梓は相変わらず子リスのような怯え方をしている。

そんな梓をアルテミシアが撫でて慰める。

 

「あーちゃん、大丈夫よ私がついてるから。それで真由美さん、噂の薬とやらは被害生徒の所持品から出て来ましたか?」

 

「ううん、でもこの事件、薬とは関係あるみたいなの。これを見て。」

 

スクリーンには英語で表記されたグラフが映されていた。

だがそれが何か理解できなかった。

グラフのタグがアルファベット数文字で略されてるため何の数値か分からからないのだ。

ただ薬物に詳しい摩利だけは真っ先に分かった。

 

「これは・・・麻薬反応。」

 

「ええ、四校の被害者全員から違法薬物の反応が出たそうよ。」

 

「「「!?」」」

 

患者のプライバシーを知っていることも充分に違法だと思うが麻薬反応のショックが大きいせいか誰もそこにつっこもうとはしなかった。

代わりに清夜が質問する。

 

「そこまで分かったならもう警察の仕事では?」

 

「そうですね。もし噂の薬が麻薬だとするなら学校だけで解決する問題ではなくなります。」

 

深雪も頷いて同意する。

この学校は、ついこの間ブランシュ事件があったばかり。

生徒の恐怖、不安が抜けきってない状態で警察が学内に出入りするのは良くないことだが仕方のないことだった。

しかし・・・

 

「私も再三、学校にそう言ったわ。それでも学校は『学内での麻薬の横行も噂の薬についても認めない、よって警察の介入は必要ない』って。」

 

「そんな!?横暴ですよ!隠蔽するつもりですか!?」

 

「落ち着け服部。不服なのは俺も七草も同じだ。今回の件は俺も十師族としても掛け合ってみる。」

 

「し、失礼しました。会長もすいませんでした。」

 

警察の介入はなかったとはいえブランシュ事件に続いた二度目の不祥事。

警察が出入りをマスコミが嗅ぎつければこの事件だけでなくブランシュ事件すら表沙汰になる。

故に学校は麻薬の横行を認めず事態を闇に葬るつもり・・・

 

というのがこの部屋にいる人間の共通認識。

ただし清夜だけは違った。

 

(違う・・・そうじゃない。そう言った面もあるが一番の理由は零乃兄妹だ。学校、いや日本魔法協会は意地でも零のことを軍や政府陣営に知られたくないんだろう。十文字克人と七草真由美から思惑を探りたいが反応見る限り知らないと見るべきか。)

 

そんな考えをよそに会議は進んでいく。

 

「いいのよハンゾー君。私もそう思っているのだから。だからね、もう調査だけとは言わず私達で本格的に摘発して学校に証拠を叩きつけてやろうと思うの。」

 

「本気か真由美?」

 

「本気も本気よ摩利。私は生徒会長として麻薬の横行も学校の横暴も見過ごすことは出来ない。だからお願い皆、学校の仲間を守るためにも手を貸してください。」

 

「「「!!」」」

 

克人を除く全員が目を疑った。

それもそのはず、あの十師族の、それも序列第2位の七草家の長女が頭を下げたのだ。

人格的に偉ぶる人ではないが、驚かずにはいられない。

3年間を共にした摩利と鈴音が驚いているのがその証拠だ。

少しの沈黙の後、達也が口を開いた。

 

「・・・頭を上げてください会長。自分も手伝いますよ」

 

「達也君・・・」

 

「お兄様ほど力になれるか分かりませんが僭越ながら私もお手伝いします」

 

「私もだ。頭下げるなんて水臭いぞ真由美。なぁ市原?」

 

「ええ、ですが珍しいものが観れたので良しとしましょう。」

 

「俺も最初から手伝う気でいたぞ。」

 

「私達2年生も手伝うよね?」

 

「は、はい!書記ですけどきっと役に立ちますよ真由美さん!」

 

「私もです会長!」

 

達也の言葉に連鎖するように次々と参加の手が上がる。

最後に残ったのはまたしても清夜だった。

 

「お願い、前回保留した件より深く食い込んだ話なってしまったんだけど清夜君にも協力して欲しいの。」

 

(「どうぞ勝手にやってください」と言いたい。けどこれを解決しない限りは政府や軍に零を探らさせるのも無理か。薬を流している組織も知らなければならないし。)

 

「分かりました。自分の身に危険が感じない限りで手伝います。」

 

最後の一言はどう聞いても保身の言葉だった。

だがそれを責める者はおらず、『仕方なし』という視線が部屋の中で行き交った。

 

「ありがとう清夜君。それじゃ具体的な捜査方針、方法を考えましょうか。」

 

まず最初に達也が挙手した

 

「その前に確認ですが会長、監視カメラには取引や薬物摂取らしき映像はありませんでしたか?」

 

「まだ全部確認したわけじゃないから断言は出来ないけど、もしそんなのがあればとっくの昔に守衛もしくは監視カメラを置いた警備会社から連絡があるはずよ。」

 

「なら、まずはカメラの死角を中心に見回ってみるのはどうでしょう?もちろん放課後、休み時間も見回ります。各学年の階層、エリアぐらいなら可能ですよね渡辺先輩?」

 

「ああ、風紀委員総動員でやれば可能だろうね。学校には『規則引き締め週間』とでも言えばごまかせる。その件について達也君、今度打ち合わせしよう。」

 

「風紀委員だけでやるのか?それでは体育館などカバーできない所が出るはずだ。部活連からも一人人員をよこそう。」

 

「では桐原君に頼みましょう。彼ならそつなくこなしてくれます。」

 

克人の助言にアルテミシアの素早い人員選出。

流石は一年以上こういった業務を経験している上級生だった。

 

「それなら生徒会からも一人出しましょう。あーちゃん、誰がいいかしら?」

 

「は、はい!ええと、ええとですね・・・」

 

「服部君が適任でしょう。お願いできますか?」

 

「はい、了解しました。」

 

前言撤回、あーちゃんは慣れてないようだ。

すぐに鈴音がフォローに入り服部が了承した。

 

「真由美も十文字も助かる。でも見回り強化だけでは少し心もとないな。私としては何かもう一つくらい手は打っておきたいんだが。」

 

「なら手荷物検査はどうだ?バイヤーは持ってなくとも顧客ぐらいなら薬物を所持しているかもしれない。そうすればそこからバイヤーを探しだせるだろう。」

 

「人手は足りるのか十文字?」

 

「人員としては俺達部活連と応援として自治委員会に人員を頼もうと思う。事情は伏せるつもりだから説得できるか微妙だが。」

 

克人の言う自治委員会とは主に魔法使用以外の校則違反を取り締まる組織。

魔法使用、喧嘩を取り締まる風紀委員会とは別組織だ。

 

「会長、私達生徒会も増援で参加してはどうでしょう?男子が女子の手荷物を調べたらセクハラとも言われかれませんし。手荷物検査や見回り強化をやるとなると学校の手続きも必要ですので申請書類を作成する必要があります。」

 

「深雪さんの言う通りね。じゃあ生徒会もそれに加わりましょう。自治委員会については必ず私が説得してみせるわ。」

 

話が三巨頭を中心にとんとん拍子で決まっていく。

単に皆見ているビジョンが同じだからか

それとも案が妥当すぎるからか

少なくとも消極的な理由で話が進んでるわけではなさそうだ。

 

「なら決まりだ。私たち風紀委員は見回りの強化。」

 

「俺達、部活連は自治委員会、生徒会と連携して手荷物検査を実施。」

 

「そして私達、生徒会は手荷物検査とこれらを行うためのバックアップね。絶対にバイヤーをひっ捕らえて学校の隠蔽も薬を売ってる奴らの陰謀も覆してやりましょう。以上、解散!!」

 

摩利、克人、真由美。

会議の最後もやはりこの三巨頭の言葉で締めくくられた。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

2095年 5月16日 第一高校 生徒会室前廊下

 

会議後、部屋を出ると日は半分沈んでいた。

部活動もそれに合わせてか片付けを始めている。

清夜は帰る準備しながら考える。

 

(今回の件、エレンやアルテミシアより翠と藍の方に動いてもらう必要があるかもな・・・)

 

「清夜」

 

帰ろうとする清夜に声がかかった。

清夜は後ろを振り返った。

 

「達也・・・それに司波さん。どうかしたかい?」

 

「少し時間いいか?」

 

「ああ、構わないよ。それで・・・」

 

達也の視線に清夜は言葉を止めた。

視線の先には閉められた空き教室。

深雪はさりげなく清夜に教室のキーコードを見せつけている。

 

(こっちにこい・・・てことか。よほど聞かれたくないのか。警戒は・・・しておくべきだな)

 

達也も深雪も表情こそいつも通りだが目には何かしらの強い意思が見えた。

清夜は服に隠したナイフをいつでも取り出せるようにし二人についていった。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

2095年 5月16日 第一高校 空き教室

 

「清夜は零乃零と会ったか?」

 

その言葉に清夜は警戒レベルを下げた。

だが予想してないことではなかった。

 

「今日は会ってないけど、この間会ったよ。達也たちは?」

 

「私達は清夜さんがいなかったゴールデンウィークに会いました。それで・・・どうでしたか?」

 

「どうでしたか・・・って言われてもね。爽やかとは違うけど話やすい好青年じゃないのかな?妹のまやかも司波さんと同じブラコン美少女って感じだし。」

 

零乃零は深雪と同じAクラス、零乃まやかは清夜達と同じEクラスに振り分けらた。

二人とも美形であったため、どちらのクラスでも好意の視線は絶えなかったというが

まやかがブラコンであることが分かるとすぐに好意の視線は生温かい目に変わっていったという。

それでもこうして誰にも拒絶されることなく迎えられているのだから美形は得なのだろう。

 

「そうではなく!」

 

「ん?あぁ、もちろん司波さんが美少女として負けてるわけじゃないよ。」

 

「!!」

 

はぐらかされたとでも思ったのか普段の深雪から想像できないようなキッとした表情を清夜に向けた。

 

「待った深雪。これは俺達の聞き方が悪い。その聞き方じゃ賢い清夜は俺達が情報を与えて清夜を利用しようとしていると深読みしてしまう。清夜も誤解しないで欲しい。俺達は単純に意見交換したいんだ。」

 

「ごめん、本当に分からないんだけど・・・」

 

それでも清夜はしらばっくれる。

そこで達也は意図を隠さずシンプルに質問した。

 

()()()()()()()()()()()()?」

 

「・・・おかしいとは思うよ。まだ入学して1ヶ月とちょっと。普通ならもっと後に転入か、俺達と一緒に入学すると思う。でも彼らは自身の魔法の有用性を示すために転入してきたって言ってたよ。」

 

政府も軍も気づいてないこと、そのせいで学校が警察の介入を嫌がっていることは言わなかった。

予測にすぎないし、国の内情に詳しい人間と思われたくなかったからだ。

 

「俺達もそう聞いた。けど俺はそこに何らかの裏を感じた。本人か、それともその後ろにいる何者かかは分からないけどな。」

 

「言いたいことは分かるけど・・・それで何が言いたいの?」

 

「清夜さんは零乃の魔法を覚えていますか?」

 

「魔法師の能力引き上げだったよね・・・まさか・・・魔法力を高める薬は彼らが流していると言いたいのかい?」

 

深雪と達也は黙って頷いた。

 

「それは流石に飛躍しすぎじゃないかな?確かに話を聞いた時その可能性も考えたし、転入手続きの時期で言えばそうかもしれない。けど販売規模は全国だよ。それに転入手続きで出入りした人間が薬を売れるほどここの生徒も馬鹿じゃない。」

 

「でも彼らは『零()』。つまりは家、一族だ。それに関連する組織や企業があるかもしれない。」

 

「零家がどこまでの規模があるか俺には知らないけど、裏社会にだって流儀はあるはずだ。もし組織ぐるみで売っていればこの辺で売ってる893達の目につくんじゃないかな?」

 

「なら、最初から893とグルだったとしたらどう考えます清夜さん?」

 

「司波さん。それはもう憶測の域だよ。そこまで言ったら可能性はつきない。それに魔法力を高める薬が出回っている今、『私達の魔法は他者の魔法力を高めますよ』なんて出てくるのは自分から容疑者と名乗るようなものだ。この件どこまでいっても後ろにいるのは893か薬物販売組織だよ。」

 

「・・・そうだな。少し考えすぎたかもしれない。参考になった清夜。ただ()()()()()()()()()ことに損はない思うぞ。」

 

警告ともとれる言い方。

少しの間の後、達也は普段通りの声でそう答えた。

ただ、()()()()()()()()()のは深雪の様子を見ればあきらかだった。

 

「ねぇ、たつ・・・」

 

「お兄様、私はそろそろ・・・」

 

清夜の声を遮って深雪が達也に時計を見せた。

様子を見るにわざと遮って質問を終わらせようとしているわけではなさそうだ。

達也は思い出したかのように言う。

 

「もう、こんな時間か。鍵は俺が返しておくから先にお帰り深雪。」

 

「はい、ではお先に失礼しますお兄様。清夜さんもまた明日。」

 

「え、あぁ、うん。また明日。」

 

毒気が抜かれた感じで清夜も思わずつっこめず普通にさよならをしてしまった。

深雪が淑女らしい仕草で部屋を出た後、清夜はつっこもうとしたことを聞いた。

 

「一緒に帰らないのかい?」

 

「深雪は用事があるからな。」

 

「それこそ達也お兄様はついていくんじゃないのかい?」

 

「清夜は俺をなんだと思っている?」

 

「超絶シスコン兄貴?」

 

「おま・・・まぁいい。鍵返しに行ってくるから先に校門前でレオ達と待っててくれ。」

 

達也はさっさと荷物をまとめて部屋を出る。

その後ろ姿を見た後、清夜は校門に向かって歩き出す。

 

(達也は何を知っているんだ?九重八雲に教えてもらった?いや、それよりも薬の件は893がらみの犯行じゃないのか?そういえば・・・)

 

清夜は今日のことを振り返る。

 

(七草真由美の要請にも達也が一番最初に応えてたな。それに積極的な発言に、意見交換・・・やけに今回は()()()だ。)

 

人としては正しいことをしている

しかし、達也のそんな行動に違和感を覚えた清夜であった。

 




というわけでここまで!!
何か達也めっちゃやる気ですねー。
そういうキャラじゃないと俺は思うんですけど。

次回予告!!
薬の横行、零の存在に疑問がある清夜は調査のために殺し屋女子高生の翠と藍を召集する。が彼女達は何故か負傷しており、清夜はとある闇医者の元へ連れて行くことになる。だがそこでも新たな戦いが待ち受けていた。

次回もお楽しみに!

「これはダメじゃない?」、「これだと運営に取り締まられるんじゃない?」という場合には是非、メッセージなり感想なりで報告をお願いします。感想、誤字脱字、評価、アドバイスもジャンジャンお待ちしております。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。