魔法科高校の武器商人<修正版>   作:akito324

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49話です!

映画始まりましたね(遅すぎ)
グッズはあらかた買えたんですが一番欲しいCADキーホルダーが手に入らない・・・あれってまた入荷とかするんですかね?

映画の感想としましては
深雪とエリカが帽子がかぶった時にものすごくキュンときました。
あと巌の戦闘シーンは笑えましたねw

前回までのあらすじ!!
とうとう第一高校からも原因不明のサイオン枯渇と記憶喪失の被害者が出てきてしまった。この事態に三巨頭を中心とした捜査チームが本格始動する。その中でも達也は事件解決に意欲を見せており、積極的に意見したり清夜に遠回しの警告していた。人としては正しい善意ある行動なのに清夜どうしても違和感を感じるのだった。


49話 医者と殺し屋と

2095年 5月16日 東京 某所

 

「今日は仕事を頼もうかと思ったんだが・・・まさか君達が負傷するとはね」

 

仕事を頼もうと召集した翠と藍を見た清夜の最初の感想だった。

 

「申し訳ございません。」

 

「お見苦しい姿で失礼します」

 

ペコリと頭を下げた翠。

そんな彼女の右足の裏にはナイフが突き刺さっている。

もちろんそんな状態で立つことが出来るわけなく、藍にお姫様抱っこをしてもらっていた。

 

「それは別に構わないがこのナイフ・・・的場伊万里か。」

 

「はい。式と特に親しいと思われる軍人は表社会から見当たらないので裏社会の接点から探ろうとしました。」

 

「そこでこの国の裏社会に詳しい的場伊万里に聞いた次第です。」

 

「で、ついでにちょっかいを出したと。」

 

「ちょっかいとはいえ敗北は敗北です。御主人様の部下に負け犬は不要。直ちに消え去ります。」

 

翠は藍の懐から拳銃を取り出し、自身のこめかみに銃口をむけた。

今まで一緒だった藍もそれを止めようとはしない。

彼女達が育った施設では能無しは即刻処分される。

寝食を共にした同期が朝起きていたら撃たれて死んでいたなんてザラだ。

これが彼女達の当たり前だった。

翠は一瞬のためらいもなく引き金を引く。

 

パンッ!

 

乾いた音が一発響いた。

 

「「!?」」

 

しかし、そこに鮮血はなかった。

弾丸は翠のこめかみ手前で止まっていた。

清夜がBS魔法『電気使い』を使い磁力で止めたのだ。

 

「誰が勝手に死んでいいと言ったんだい?」

 

清夜は、いやアイザック・ウェストコットは笑顔で、冷たい眼差しで見つめた。

 

「つ!」

 

殺し屋の二人でさえ堪らず一歩引いてしまう。

 

()()だ」

 

「・・・はい?」

 

「分からないかい?君達と契約する時、手付金として毎月給料を出すと言った。二億というのは翠に対する今日までの給料の合計だ。君達の生活や学費を抜いてもこの額だ。警備部門の人間の比じゃない。装備まで言ったら五億はくだらない。それを今、君は一瞬でパァにしようとした。」

 

ゴンッ!

 

清夜は冷たい目のまま、翠に頭をぶつける。

 

「金に糸目をつける気はない。秘密を守る限りこの仕事を降りたっていい。だが結果も出せず勝手に利用価値がなくなるのは断じて許さない。死ぬなら俺が有効的に利用して死なせてやる。いいかい、この仕事を続ける限り君達の命の使い方は俺が決める。いいね?」

 

「は、はい・・・」

 

「かしこまり・・・ました。」

 

その場で固まる翠と藍。

動かないというより動けないのだ。

恐怖という感情は施設で慣れたはずなのに

そんな二人の状態を知って知らずか、清夜は翠から頭を離し笑顔をむけた。

 

「でも君達のその覚悟はとてもよかった。裏社会との接点を探す着眼点もいい。より気に入ったよ。確認しておくけど的場伊万里は今どこにいる?」

 

すると突然、今度は二人の頭撫でた清夜。

あまりの差に二人はとまどいを隠せない。

 

「え、あの、その的場伊万里は静岡と愛知の境の高速道でトラックに飛び移ったので少なくとも愛知で帰る足を探してる最中かと。それよりも・・・」

 

「その、良かったのですか?負けてしまったのに」

 

「ふむ・・・藍、いや翠も俺の事を少し勘違いしているようだね。」

 

「勘違いですか?」

 

「俺は結果至上主義者だ。復讐が成し遂げられるなら、君達が何千何万回負けようと構わない。俺が切り捨てるのはね、その()()()()()()()()()()()()()()()だ。」

 

「その結果すら出せないというのは・・・」

 

「フフーフン♪どんな連中かは自分で考えたまえ。さて仕事は情報部の方に任せるとして・・・まずは翠の足を治療しに行こう。藍、車を出してくれ。翠は俺が預ろう。」

 

清夜は藍の代わりに翠を抱きかかえた。

今度は別の意味で戸惑う翠。

 

「え、あ、その・・・メイドが主の世話になってしまっては」

 

「ヒョヒョッ、怪我人は黙ってご主人様にしたがってなって翠。それで御主人様、一体どちらまで向かいましょう?」

 

「荻窪だ。そこにいい闇医者がいる。」

 

結局、翠は車に乗るまで清夜に抱きかかえられていた。

 

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2095年 5月16日 東京 荻窪 マンション

 

「急患って聞いてたけどアンタやったか。」

 

「といっても怪我人はこの子だけど。よろしく()()()()先生」

 

清夜達が訪れたのは美濃芳野の部屋だった。

もちろん同姓同名ではなく伊万里がなついている闇医者の美濃芳野だ。

 

「足裏を刺されたんか、おー綺麗に止血しておる。」

 

「一応、全部屋チェックさせてね先生。」

 

拳銃片手で部屋の奥にズカズカとあがる藍。

しかし芳野はそれを止めることはしない。

頭に「闇」とつく職業上、こんなのは「おはよう」にすらならないからだ。

 

「こんぐらいなら清夜でも処置出来るんちゃうか?」

 

「念のためですよ。助手はいります?」

 

「いらん、ちゃちゃっと終わらせる。手術台に乗せて、始めるよ」

 

〜数十分後〜

 

手術は本人の言う通り、ちゃちゃっと終わってしまった。

翠の足からはナイフが取り除かれ、代わりに包帯が巻かれていた。

翠は営業スマイル全開で感謝する。

 

「ありがとうございます先生!」

 

「ヤンチャなくせして、愛想だけはいい連中やな。」

 

対し、芳野はタバコに火をつけ吸い始めた。

 

「で、この子ら清夜の何?まさか友達とかぬかすんちゃうやろうな?」

 

「フレンドはフレンドでもセフレだったりして?」

 

「あほ、拳銃持ってる輩がただのセフレで済むわけないやろ。大方、飼い犬といったところか」

 

「ひどいな。彼女達は俺の大事な部下、護衛、そして可愛い可愛いメイドさん。だから彼女の治療費も俺持ちさ。」

 

「お代はええよ。けどその刺し傷・・・足を刺したのに躊躇い傷で終わらせる意思フラフラな殺し屋のことは放っといてくれへんかな。」

 

「あはは、それを決めるのは俺ではないね。」

 

清夜はその当人達に目を向けた。

その視線に藍は楽しそうに、翠は若干、神妙そうに頷いた。

 

「ひょっひょっ!!さすが的場伊万里。冴えた医者を連れてやがる」

 

「分かりました。考えておきます。その代わりと言ってはなんですが御主人様と先生はどういう関係なのでしょう?」

 

清夜と芳野は目配せ合う。

その結果、清夜が語り出すことになった。

 

「先代の式海運社長と先生は交流があってね。その関係で知り合ったんだ。けど先生は一応、伊万里の雇い主『仙崎時光』に雇われてるってことで仙崎との協議の結果、ここは一種の中立地帯になったんだ。だからここでの戦闘、並びに先生を巻き込んだ戦闘は禁止になってる。だから君達もここでは極力戦っちゃダメだよ。」

 

「「かしこまりました。」」

 

翠と藍は綺麗にペコリとお辞儀した。

 

「やっぱ愛想だけはいいな、この子ら。そういえば清夜」

 

「はい?」

 

「この間、精神科医を紹介したくれた件。ありがとうな、おかげでアレについても大分確信に近づけた。」

 

「あぁ、()()ですか。」

 

清夜は遠くを見るような目をして頷いた。

『アレ』というのは的場伊万里の肉体の限界を超えた異常なまでの『強さ』もとい『速さ』のことだ。

人間の力には限度がある。

これは細胞的な限界ではなく脳が無意識にセーブしているリミッターのことだ。

諸説あるが人間が普段出せる最大の力は全開時の30%程度。

『火事場の馬鹿力』なんて言葉があるように余程の危機になって(彼らにとっては慣れすぎて戦闘は危機といえるものではない。)ようやく残りの70%が解放される。

だが伊万里には洗脳によって初めからこのリミッターが外されているのだ。

無論、そんなものが何の犠牲もなしに外せるわけがない。

医者である芳野の見立てだと伊万里の脳はそう遠くないうちに焼き切れる。

文字通り、負荷をかけ過ぎたPCのように焼き切れる。

同じ洗脳でも司一のものより100倍タチが悪い。

 

(そもそも人間の力にリミッターがかけられてるのは肉体の自壊防止のためとも言われとる。それを無理矢理外せば脳だけやない。伊万里の体組織までもが崩壊してまう。だから私は大切な伊万里のために脳外科医、精神科医を清夜に紹介してもらってる)

 

清夜が紹介してあげるのは何も善意によるものではない。

単純に的場伊万里という殺し屋の無力化を狙っているのだ。

ただの殺し屋ならこんなことはしない。

ねじ伏せるだけでいいからだ。

つまり医者を使った無力化を企むということは少なくとも的場伊万里という殺し屋に対して直接戦闘は避けているということ。

もっと言えば的場伊万里を規格外の存在として認めているということだった。

 

(ま、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。才能の限界はとうに超えてる。伊万里と同じ洗脳か、もしくはそれに近い自己暗示か、強迫観念か・・・なんにせよ、この子には悪いけど伊万里を治療するための症例になってもらう。)

 

「そういえば飯食い損ねて腹ペコなんやけどアンタらは?」

 

「「「ゴチになります!」」」

 

ちょうどそんな話を始めた時だった。

 

ピンポーン

 

部屋にインターホンのベルが鳴り響く。

その音と同時にインターホンの映像が部屋のPCに届く。

そこに映る客人は・・・

 

「伊万里や。」

 

西東京総合学園の制服にリュックサック。

何よりもそのリュックサックがランドセルに見えてしまうくらいの小さい背と可愛い顔は的場伊万里その人だった。

 

「ちょうどええ、このまま・・・」

 

「皆で食べに行こう」、そう言おうとマイクのスイッチに手を伸ばした瞬間。

清夜はその手を掴み止め、藍は芳野の口を塞いだ。

 

「しー、し・ず・か・に」

 

「!?」

 

気付くと藍の手には拳銃のグロック、清夜の手にはサブマシンガンのH&K MP7カスタムが握られており、終いには翠がバックからアサルトライフルのH&K G36を取り出していた。

状況が理解出来ていない芳乃に藍が耳打ちする。

 

「『すまん、伊万里風呂入ってた。ちょっと待って』」

 

物言いから察すると、伊万里とは戦わないという先ほどの言葉を早速裏切りだまし討ちする気か。

だが彼らの表情はそういったものではない。

とりあえず芳野はマイクのスイッチを入れ、話を合わせる。

 

「すまーん伊万里、風呂入っとった。少し待ってー」

 

そう言って目配せする芳野。

藍は頷いて答えた。

 

「先生、あれは()()()()()()()()。本物は今、帰る足を探している最中だ。」

 

「それに()()()2()c()m()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。」

 

本当に細かい違いだった。

長い付き合いである芳野も『言われてみれば』という状態だ。

物理的にこの時間に帰ってくるのはありえないと知ってるとはいえ、この一瞬で見抜く殺し屋のスキルは芳乃も眼を見張るものであった。

 

藍は翠の手信号を確認すると足音を立てぬよう玄関に移動し・・・

 

バンバンバンバンバンバンバンバンバンッ!!

 

問答無用、先手必勝でドアごとブチ抜き、全弾撃ち尽くした。

ドガッやギュィーンという音を立てドアに無数の穴を開ける銃弾。

藍は弾を使い切ったマガジンを捨てリロードした。

 

キッシシシシ・・・

 

(?)

 

すると今度はドアの向こうから不気味な音が聞こえた。

何かが揺れたり、軋んだりしたような音ではない。

そう、これは音ではない。

笑い声だ。

 

スチャッ・・・

 

(さっきの声にこの音・・・不味い!?)

 

それに気付いた藍はまるで道を開けるかのようにドアの横に飛び込んだ。

その直後、微かなサイオン光とともにドアの向こうからドデカい音が響いた。

 

ダァンッダァンッダァンッダァンッ!!

 

今度は伊万里(?)のお返しの銃弾がドア越しに帰って来た。

それも先ほどの藍の銃より銃声がデカイし、ドアに穿たれる穴も大きい。

 

バンッ!ガシッ!

 

「っ!」

 

全弾撃ち尽くされると一呼吸の間も無く、ドアが開き小さな腕が藍の襟を掴んだ。

このまま部屋の外に引きずり出して倒すつもりらしい。

 

ガッ!

 

藍は銃を持った右腕をドア横の壁にひっかけることでそれを防ぐと今度は左手を伸ばし伊万里(?)の頭を掴む。

 

ゴゴッ!!

 

「グォッ!」

 

すると、そのまま彼女の顔に膝蹴りをかけた。

たまらず仰け反る伊万里(?)を藍は部屋に引き込み後ろにある壁に投げて叩きつける。

 

ブゥンッ!ビターンッ!!

 

パンパンパンッ!

 

トドメの拳銃は惜しくも避けられ、距離を取られた。

だが、おかげで伊万里(?)のカツラが取れ地毛であろう本物の髪の毛が藍には見えた。

 

(白い髪!?そうか・・・)

 

()()だ!紅雪が出たぞ!」

 

「キシシシ・・・そうですよ〜みんな大好き紅雪様ですよ〜」

 

ガシャッ

 

紅雪はリロードするためにマガジンを落とす。

 

「たくフジャッケンナ、フジャッケンナ。あのビッチ。第一高校の時と同じで話が全く違うじゃねぇか。何が『的場伊万里がいないから簡単だ』だ。代わりに別の殺し屋がいるじゃねーか。」

 

藍は近くの部屋へ駆け込む。

紅雪は顔を蹴られて出た鼻血を拭うとそれを追いかけた。

 

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2095年 5月16日 東京 荻窪 美濃芳野の手術室

 

残った翠と芳野は手術室で息を潜めていた。

 

「べ・・・紅雪?なんやソイツ、有名なん?」

 

「はい、CIAの殺し屋です。業界ではちょっとしたアイドルなんですよ。」

 

2095年現代、アイドルは美少女をモデルとした『CGドール』が主流になっているため最早死語なのだが、アイドルの通り色々な意味でファンがいるようだ。

 

「先生、何か地雷を踏んじゃいました?」

 

「・・・そういや、帰ってくる前、()()の話を聞くために脳外科医の権威である(ヤン)教授に会おうとしたらビッチぽい米人に警告されたわ。」

 

「それですね間違いなく。」

 

とは言ってもそれは約3時間ほど前の話だ。

それを早速、刺客を送ってくるあたり、よほど大きな地雷を踏んでしまったらしい。

 

(だけど、これは同時に()()()()()()()()()()()ということか)

 

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2095年 5月16日 東京 荻窪 マンション 美濃芳野の部屋

 

紅雪は藍が入った部屋に駆け寄った。

 

ガンッ!バキィ!

 

蹴ってドアノブごとドアをぶち壊す。

このまま突入かと思われたが紅雪は入らず代わりにドアの横の壁をデザートイーグルでブチ抜いた。

 

バァンッバァンッバァンッ!!

 

先ほどのように避けられるのを警戒してのことだろう。

しかし、ブチ抜いた先には誰もいない。

紅雪はそのまま部屋に入り、手当たり次第に銃撃する。

 

バァンッ!バァンッバァンッ!バァンッバァンッ!!

 

テーブルが、パソコンが、本棚が銃声とともに壊れていく。

蛍光灯に当たり、部屋が暗くなった。

 

「お前知ってるぞ!南米マフィアの犬だな!てーことはもう一匹いるだろう!?」

 

「お喋りなやつだな!」

 

パァンパァンパァンッ!!

 

部屋の隅に隠れていた藍が立ち上がり迎撃した。

だが紅雪は下がらない。

滑り込むように間合いをつめ、一気に格闘圏内に入ってくるようだ。

藍はその挙動から次を予測し腕輪型CADとナイフを構える。

 

(回し蹴り。『グラビティ・ブレード』で足を切り落とす!)

 

シュパッ!

 

タイミングをあわせナイフを振る藍。

しかし藍のナイフは虚しくも空を切った。

紅雪が飛びかかる途中で、()()()()()()()()()のだ。

 

「なっ、停止まh」

 

ドゴォッ!

 

「かはっ!」

 

かと思いきや、今度はそのまま加速し藍の胸にライダーキックをきめた。

停止と加速の魔法を上手く組み合わせた攻撃だ。

そのまま後ろにくるんと一回転した紅雪は尻餅をついてしまった藍に銃を向けた。

 

「こいつでくたばりな!」

 

CIAの殺し屋による死の宣告。

ただ、藍もここで終わるような殺し屋ではなかった。

 

「誰が蹴り一発ぐらいで!」

 

ブゥンッ!

 

パァンッ!

 

長さを伸ばした斥力の刃で紅雪の足を払い斬る。

紅雪はそれをジャンプでよけ、藍の頭に弾を撃ちこんだ。

が藍は頭を上げることでこれを紙一重でよけ、紅雪の腹に蹴りをいれる。

 

「くたばるかっての!」

 

ドフッ・・・

 

思いきった割りには音が弱い。

案の定、紅雪は身体を引いて威力を和らげいた。

 

「へっへー、へなちょこキック!・・・!!」

 

何かに気付いたのか、急に右を向いた紅雪は障壁魔法を展開した。

だが・・・

 

パリン!

 

「障壁が」

 

「破られた!?」と言いたかったのだろう。

確かに障壁はすぐに藍の術式解体で破られた。

そしてその直後、紅雪に隣から5.56mm弾の横殴りの雨が降りかかった。

 

ドドドドドドドドドドドドッ!!

 

手術室にいた翠のアサルトライフルによる攻撃だ。

しかも魔法で威力を高めている。

動けない翠を固定銃座にし、藍が誘い込み殺す。

動けないが故、逆に気配がギリギリまで悟られない。

翠の負傷を利用した二人の作戦だった。

間違いなく軍のスペシャルフォースでも初見では必ず殺されるだろう。

 

(・・・当たった手応えがない・・・)

 

ただ、相手が『紅雪のように常人離れしてなければ』だが

始めに気付いたのは藍だった。

 

(あの状態から伏せて避けた!?やばい!!)

 

「翠!!そっち行った!!」

 

時すでに遅し。

そう言った頃にはすでに紅雪は隣部屋に移動し、芳野の首を掴み、翠の背後をとっていた。

 

「この速さ、伊万里と同じ・・・がっ!!・・・い、息が・・・」

 

「ハッ、ダメだ。ダメダメだなオマエら。ノロすぎる!」

 

「・・・」

 

翠は静かに後ろを睨みつけた。

 

「ま、仕方のないことだ。なんせこの紅雪様の本当の名前は白頭鷲、イーグルだからな!この髪を言われてるようで好きではないが、イーグルの飛ぶ速さに犬のオマエらが敵うわけないのだ!」

 

 

 

 

 

「でも白頭鷲は生態系の頂点にはいないだろう?」

 

 

 

 

 

ガッ!ドンッ!

 

「グォッ!?」

 

突然、後ろから組み敷かれる紅雪。

 

「何故か。それは人間の知恵の前ではイーグルの飛ぶ速さなど敵わないからだ。」

 

 

「「「!?」」」

 

()()()()()()()()()()はずの3人も思わず驚いてしまった。

そう、翠と藍の主人である清夜の出現に・・・

 

(待った待った待った!いつの間に清夜は・・・違う、()()()()()()()()()()()()()()()()()!?確か、私の手を掴んだ時まではいたけど、そこから先、私・・・いや二人も清夜を見ていない!!)

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()・・・これは一体!?)

 

(魔法?・・・技術?・・・どちらにせよありえるのか!?()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()・・・)

 

紅雪も清夜の声に、突然現れるやり口に気づいた。

 

「くっ・・・お前、まさか亡霊野郎!!」

 

「結局、君は白頭鷲。人間様には遠く及ばない。ほら、こうして翼と足を封じてしまえば何もできない。」

 

清夜は銃を持ってる紅雪の右手と首を絞める力を強くした。

 

ギギィ・・・

 

「ぐっ・・・かはっ・・・く・・・そ」

 

耐えられなくなった紅雪は銃を手放してしまう。

 

「魔法を使おうとしても無駄だよ。CADは俺の魔法で使えなくなっている。」

 

「く・・・うご・・け・・な・・・ぃ」

 

紅雪の強さの根底は全てスピードだ。

威力が足りなければより加速の力で補う。

相手に組み敷かれず、捕まらず、狙いをつけられないのが彼女の殺しの前提だ。

だがその前提が崩れた今、組み敷かれた彼女には加速で力を補うことも、スピードで逃げることもできない。

つまり完全な詰みだった。

 

「慈悲も・・・クソも・・・」

 

「あるわけないだろう。君は道端に落ちてる紙屑にも慈悲を与えるのかい?」

 

キギギギギィ・・・

 

絞める力はさらに強くなる。

もう呼吸することすら困難だ。

 

「ッ・・・ぁ・・・」

 

「嗚呼、冬華。またお兄ちゃん悪をつぶs」

 

ミシィという首の骨が折れかける音が聞こえた時だった。

 

 

 

 

 

 

()()()()調()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

 

 

「!?」

 

清夜の体が不意に持ち上がる。

誰かが投げ上げたのではない。

 

(魔法だと!?)

 

(CADなしで!?)

 

「研究の副産物とはいえ、『イーグル』・・・紅雪も立派な儂の作品。そう簡単に壊されてしまうのは困るのぉ。」

 

「ご主人様!!」

 

ヒュッ!

 

パシッ!バンッ!

 

翠が投げ上げたナイフをキャッチし、腰に下げといたmp7カスタムを取り出したと同時、

紅雪がデザートイーグルで撃ち放つ。

清夜はこれを『磁力返し』で弾き返した。

 

「効かんのぉ」

 

だがその反射すら紅雪は避けた。

時間にして1秒にすら満たない攻防。

撃って反射された弾を避ける。

遠距離ならまだしも天井と地面というこの近距離でだ。

紅雪が最上級の殺し屋ということを考えても何かがおかしいのは一目瞭然だった。

 

「くそっ!!」

 

ダンッ!

 

ババババババッ!

 

シュパッ!!

 

天井に飛ばされていた清夜はそのまま天井を蹴り返し、紅雪にmp7で銃撃しながらさらにナイフで斬りかかる。

対し紅雪は動くことなく不敵な笑みを浮かべた。

 

キキキキキンッ!ガキンッ!!

 

弾は紅雪の手前で弾かれ、ナイフも彼女には届かない。

まるで透明な壁が間に敷かれているようだった。

 

(障壁・・・じゃない!!領域干渉!?この短時間で!?)

 

「ほれ、止まってしまったぞ」

 

「しまっt」

 

ドォゴンッ!!

 

直後、爆発のようなでかい音が響く。

デザートイーグルの銃撃が魔法によって対物ライフル並みの威力になったのだ。

魔法で周りに拡散された反動は衝撃となり部屋の床、電灯、ガラス、あらゆる物にヒビを入れ、破壊する。

ただ、そこには足りないものがあった。

 

「・・・」

 

「よく防いだのぉ。」

 

それは血だ。

清夜、翠、芳野の三人がいて誰一人として血が飛び散ってない。

代わりに清夜の背中から翼が生え、無数の白く、薄く輝く羽が飛び散り部屋を幻想的な空間に彩っていた。

 

「何やこれ・・・羽か?」

 

(これは・・・ご主人様の『未元物質』。ご主人様にもう一つのBS魔法を使わせた。それほどの強さってことですか。)

 

「愉快愉快、まさか翼が生えるとは。実にメルヘンチックじゃ。しかも翼で防御した瞬間に無数の羽に変換し衝撃を拡散させたな?それにこの羽もただの羽とは思えんしのぉ。」

 

紅雪はまた不敵な笑みを浮かべた。

 

「いや、そんなことよりも注目すべきは『その翼を構成している物質をどうやって取り出したか?』じゃの。お主、()()()()()()()()()()()?」

 

「・・・お前、()()()()()()()。何者だロリババァ」

 

「バ・・・ふむ、ま、まぁよい。そんなことよりも質問に答えt」

 

「ババァ」と言いかけて言葉を飲んだ紅雪(?)。

器の大きさを示そうとしていたのだろうか。

しかし

 

「ロリババァですね。」

 

翠が追い打ちをかけ

 

「ふ、ふん!そんな言葉じゃ儂を傷つけることなぞ・・・」

 

「ロリババァやん。」

 

芳野が見事に紅雪(?)のプライドにトドメをさした。

 

「ロリでもなければ、ババァでもないもん!儂はまだまだ"ないすばでぃ"だもん!!当主様も綺麗で美しいて褒めてくれたもん!!」

 

その時間約10秒。

茹でたタコよりも真っ赤に、そして早く彼女の顔は真っ赤に茹で上がった。

 

「キョフフフ・・・今さら口調変えても無駄ですよ。おばあさん」

 

「こ、この小童どもめぇ・・・礼儀がなっとらん。まぁ、良い。躾けて、動けなくして、ゆっくり研究させてもらうだけじゃ。」

 

パンッパンッパンッ!

 

互いの殺気で部屋が満たされる中、

一番最初に動いたのは()だった。

隣の部屋から入り込み銃弾を叩き込む。

このタイミングで仕掛けるように清夜が指示していたのだ。

だが紅雪(?)は横から来る弾丸をバックステップで避けてしまう。

 

ダッ!

 

そのワンテンポ遅れて今度は翠が新たにナイフを取り出し斬りかかった。

対し紅雪(?)は移動系の『ランチャー』で藍を翠にぶつける。

 

「グォ!?」

 

「藍ちゃ・・・グッ!!」

 

「カッカッカッ、甘いわ!!」

 

ドグォッ!!

 

加重系魔法で威力を高めた回し蹴りに蹴り飛ばされる翠と藍。

その蹴りが当たった直後だった。

先ほどまで5mほど離れていた清夜が紅雪(?)の目の前にまで来ていた。

 

「・・・」

 

(こいつ、羽を隠しながら黒髪の女(翠)の後ろをピッタリ付いて来て姿を隠していたのか!?)

 

バサッ!

 

清夜の背に再び翼が生える。

それも今度は6枚。

その動きは『羽ばたき』というより『鈍器のよる打撃』。

ナイフと同時に仕掛けるようだ。

 

「面白い!!」

 

紅雪(?)は蹴り直後の硬直状態のまま体を無理やり移動系魔法で動かしナイフをぶつけ合う。

 

ガガガキンッ!!

 

ぶつかり合う重なった音が一瞬の攻防の激しさと二人の()()()使()()()()()()()()()()()()を物語っていた。

 

ドタッ・・・

 

「っ・・・」

 

羽が弱い閃光とともに消えた。

膝をつき右腕をかばう清夜。

見ると二の腕から血が出ていて服を赤く滲ませていた。

 

スタッ、タッタッタッ・・・

 

紅雪(?)はそのまま着地するとそのまま芳野のもとまで歩み寄ろうとする。

 

(清夜が膝をついた!?このままじゃ・・・伊万里ッ!!)

 

芳野は思わず目を瞑る。

しかし紅雪(?)は芳野の一歩手前で歩みを止めた。

 

「・・・・・・?」

 

「・・・ちと認識が甘かったようじゃの。」

 

ツー・・・

 

紅雪(?)の頰から血が垂れ流れた。

他にも深くはないが体のいたるところにも切り傷が出来ており血が出ていた。

 

「ワイヤーが張り巡らされているとは思わんかったぞい。ツイストナノケブラーワイヤー(ピアノ線のこと)・・・ではないな。黒色の”何か”を張り巡らせて、この部屋の暗闇を保護色に隠しておったか。」

 

”何か”の正体はそこまで大層なものではない。

砂鉄だ。

清夜は普段から少量の砂鉄と水銀を隠し持っているのだが

それを先ほどの会話の間にこぼし、BS魔法の応用である『Iron sand blade(砂鉄剣)』を糸状に細めて発動、ワイヤーとして利用したのだ。

いわばチェーンソーが至る所から生え伸びてるようなもの。

何も知らずに突っ込めば細切れになるはずだった。

 

「いつまで深傷のフリをしておる3人とも。手応えがないのは攻撃した儂が一番分かっておる。」

 

(速いだけじゃない・・・ワイヤーに気づきギリギリで躱す反射神経も相当なものだ。翠と藍でもここまでの力はないぞ)

 

「さてさて、黒色の”何か”の正体。見極めさせてもらおうかのぉ。」

 

紅雪(?)は光波振動系の魔法で光球を作り部屋を照らす。

しかし清夜もいつまでも手品を晒すような間抜けではない。

すでに『Iron sand blade(砂鉄剣)』を解除しており砂鉄は磁力で操作し物陰に隠してある。

故に紅雪(?)が期待するものは何もない・・・

はずだった。

 

「・・・ん?先ほどまで暗くて顔までは見えなかったがお主・・・もしや『式の出来損ない』か?」

 

「!!」

 

清夜の眉が微かに動いた。

 

「ああ、ああ、やはりそうじゃ。間違うない!あは、あはははははははははははは!!」

 

清夜の反応に確信を得たのか紅雪(?)は今日一番の高笑いをした。

その笑い声に翠も藍も芳野も戸惑う。

 

「なんじゃなんじゃ、あの()()!!なぁにが失敗じゃ!こんなに強うなっとる、魔法を使いこなせておる!これだけで見ても()()が充分に機能しておるではないか!!」

 

「・・・何のことだ?」

 

「あはははは、こちらの話じゃ。それよりもさっきの質問に答えてしんぜよう。確かに儂は()()()()()()。じゃが、()()()()()()()()()()』じゃ。」

 

ナゾナゾだろうか。

意味の分からない回答だが清夜はそこにある可能性を見出す。

 

「解離性同一障害・・・精神の負荷から耐えるために新たな人格を作り出す精神障害・・・精神・・・まさか・・・四葉か?」

 

「解離性同一障害、俗に言う多重人格のことじゃな。奴らの精神干渉系魔法なら出来るだろうし、脳のリミッターも精神から外すことが出来るかもしれんのぉ。中々に聡い。が、しかし儂は多重人格ではないし、儂と紅雪()四葉の関係者ではない。」

 

「じゃあ何者だ?」

 

「さすがにそこまでは教えんよ。」

 

「まだ質問は終わってない。お前、俺の、式清夜の財界での通り名を知っているようだが・・・アレとは何だ?俺の何を知っている?」

 

その質問に紅雪(?)は本日3度目の不敵な笑みを浮かべた。

 

「お主の()()()()()()()じゃ。」

 

「ハァ・・・OK、答えてくれないなら吐かせるまでだ。」

 

ダダダダダダダダダダッ!!

 

バババババババババッ!!

 

パァンッパァンッパァンッパァンッパァンッ!!

 

バリバリバリッ!!

 

ブバァッ!!

 

清夜と翠と藍の一斉攻撃が紅雪(?)に降り注ぐ。

今までとは違い量に物言わせた面制圧射撃。

銃撃だけでない、魔法による雷撃と真空の刃、トドメには『未元物質』の翼を羽ばたかせ烈風を叩きつけた。

しかし、すでに紅雪はおらず、代わりにどこからか声が聞こえた。

 

 

 

『紅雪を倒し、儂を傷つけた強さに免じて特別に今回は見逃してやる。美濃芳野、お主もじゃ。紅雪と同じ儂の作品の一つ『オウル』・・・的場伊万里を手懐け、(ヤン)教授に目をつけた優秀さに免じて見逃してやろう。CIAにもしばらくは手出しできないようにしておいてやる。せいぜい研鑽し続けるがよい。我が野望のためにな。』

 

 

 

「まだ具体的な回答はもらってないぞ!!アレとはなんだ!?」

 

 

「アンタか!?伊万里に洗脳を施したのは!!何者や!一体、なんていう組織や!!」

 

 

 

『たく、最近の小童はすぐに答えを聞く。じゃが式清夜、お主には褒美ぐらいはくれてやろうと考えておる。お主が強くなるためのな。』

 

 

 

「褒美だと?」

 

 

 

『何、すぐにもらえるじゃろうて、楽しみにしておれ。あは、あははははははははははははははははははははははははははははははははははははハハハハハははははははははは』

 

 

 

その笑い声は不気味で姿がない今でも警戒を解くことができない・・・

 

 

 

 

 

『あとババァじゃないからの!!まだまだピチピチの美少女じゃからな!ピチピチじゃからな!』

 

 

 

 

 

・・・が最後はラスボス感を台無しにしていた。

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

2095年 5月16日 東京 荻窪 マンション 屋上

 

「家がものの十数分で全壊してもうたわ。なんちゅー破壊力やあの四人。」

 

戦いから少し経ち、美濃芳野はタバコをふかしながら黄昏ていた。

 

「命があったのが奇跡だわ芳野姉さん。」

 

その傍らには本物の伊万里がいた。

話を聞いて飛んで帰ってきたらしい。

部屋は現在、屈強な男達が修理中のため、邪魔しないよう屋上に出ていた。

ついでに警察、消防ともに来てはいない。

このマンションは例えドンパチが起きようと通報しないし、住民も駆けつけようとすらしない、ここはそういう所だった。

 

「そりゃ紅雪っちゅーのが本当、すばしっこくて怖かったー。結果的にあの3人に救われたわ。」

 

芳野はロリババァこと豹変した紅雪のことについては語らなかった。

言ってしまえば、それを引き金に色んな意味で遠くに行ってしまいそうだから

 

「清夜の気分でそうなっただけ仙崎との協定だって口約束程度にしか思ってないわ。あの3人とは絶対に分かり合えない。」

 

彼らは殺し屋。

他の殺し屋達と比べても頭一つ抜き出ているし

また他の殺し屋とはイかれているベクトルも違う。

一般人とも普通の殺し屋とも根本から相容れない。

 

「ウチはそうは思わんけど」

 

しかし芳野の考えは違った。

 

「現にウチは伊万里とも分かり合っているし、ウチかて危険な女やも〜ん。」

 

「キャハハハッ、全然怖くない。」

 

芳野のジョークに伊万里は笑顔を見せたがすぐに神妙な表情になる。

 

「でも・・・私のせいで姉さんを巻き込んでしまった。すごく危ない状態・・・だから」

 

伊万里は少し照れ臭かったのか間をあけてこう続けた。

 

「私が守る。芳野姉さんの命を脅かすもの全てから。ここに住まわせて」

 

「もちろん、ええよ。ウチからもよろしく頼むわ。」

 

物語としていい感じに終われそう

 

ブブブ・・・

 

・・・だった所に無粋な着信が響いた。

相手は仙崎の秘書で伊万里の連絡役の洲央からだ。

芳野はチッと舌打ちするとスマホを取り出し電話にでた。

 

『終わったぞ美濃芳野。死体処理部隊の”火車”を修理大工に使うとはいい度胸だ。』

 

「洲央、お仕事乙。帰ってええよ。てか帰れ。」

 

芳野の悪態に洲央は特に何も反応しない。

洲央は淡々と忠告する。

 

『あまり仙崎をからかうといくらお前でも首を切られるぞ。伊万里さんに代われ。』

 

芳野は電話に向かって「イ〜だ」と言って伊万里に代わる。

電話の相手が伊万里に代わると洲央の態度もガラリと変わった。

 

『お疲れ様です伊万里さん。紅雪は先ほど日本を離れました。座間基地から輸送機で。『スクリーム』と呼ばれるCIA職員が同行しています。恐らく飼い主かと。』

 

「なんで日本の軍事基地から堂々と出ていけるのよ。」

 

『あそこと厚木基地は日米共同利用の基地ですからね。適当に理由つければファーストクラス並みの待遇で帰れますよ。』

 

そんなので日本の防衛は大丈夫なのだろうか。

なんて殺し屋の伊万里もつい考えてしまいたくなる。

 

『彼女らが日本に戻り次第、連絡します。』

 

「翠、藍との戦闘で破損した私のベレッタは?」

 

『すでに破棄、新しいベレッタは部屋のソファにあります。』

 

「頼んでおいたのは出来てるの?」

 

『要望通り、ベレッタにCAD機能をつけときました。米軍と同じ仕様で握るだけで単一の術式が発動できるようになっています。それから他の連絡事項になりますが透野翠、透野藍はアイザック・ウェストコットが呼び寄せた殺し屋のようです。警備会社のDSSどころか本社のDEMにすら所属してないところを見るにDEMの余程深い闇の仕事を任されてるかと。』

 

「・・・」

 

伊万里は何も語らない。

だが洲央は知ったような口で続ける。

 

『ああ、そういえばもうお知り合いでしたね。伊万里さんもお人が悪い、仙崎に報告しておきますね。』

 

「あっそ、それでまだ何か?」

 

『その仙崎からの指示なのですがもうここに住んじゃってください伊万里さん。あっ、もしかしてもうその気でした?』

 

「・・・」

 

『ああ、最後に一つ。魔法大学付属の()()()()()()()で近々面白い動きがありそうです。また連絡しますね。』

 

ピッ・・・

 

洲央は不穏なことを言い残し電話を切った。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

2095年 5月16日 東京 某所

 

時刻は11時近く。

清夜たちが紅雪と戦闘を始めた頃、

ここに一人、出歩いてはいけない時間に出歩いている男子高校生がいた。

いや清夜たち同様、屋内にいるから出歩いているとは言えないかもしれない。

ただ一つ付け加えとくと、ここは彼の部屋ではない

 

「葉山さん、自分です。いただいた情報通りの部屋に到着しました。」

 

『して対象は?』

 

周りには彼以外誰もいない。

部屋は各最新式の家電が置かれており、まるで富裕層の独身暮らしを思わせる雰囲気だ。

 

「いません。けどつい最近まで生活していた跡があります。」

 

『さすがに我らのやり口は熟知しているようですな。』

 

「知っているだけで逃れられるとは思えません。こうして何回も潜伏する場所を変えてここまでの生活が出来るのですから恐らく・・・』

 

()()がバックにいるのでしょうな。下手したら名前も変えてるかもしれません。』

 

「急ぎましょう。学校の状況から察するに研究が悪用されてるのは間違いないですから。」

 

彼の右手にはトーラス・シルバー作のCAD『シルバー・ホーン』が握られていた。




という訳で今回はここまで!
今回はドンデン返しからのドンデン返しをコンセプトに構成しました。
清夜のことを知り、紅雪や伊万里を作品と呼ぶロリババァは一体何者なのか!?
ま、オリキャラじゃないので想像できないわけじゃないので安心してください。

次回予告!

続々と記憶喪失、サイオン枯渇の被害者が増えていく中、とうとう生徒会、部活連、風紀委員会の3巨頭による本格的な捜査が始まる。しかし、バイヤーはそれを嘲笑うように捜査の網をすり抜けていく。バイヤーは一体?そしてその裏にある思惑とは一体!?

多分予告通りになる・・・はず!!
次回もお楽しみに!


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