東方遠来客〜大怪獣ラッシュ世界から傭兵が現れた〜 作:紅 星鎖
閃火の過去話です。
これはまだ閃火が滅びた地球を去ったばかりの頃。
そして、まだ妖刀無銘の力を引き出すことが出来ていない頃の話。
少年は、壊れかけていた。
ーーーターニングポイント1
【見事に腑抜けちまって。
まぁ、自分の故郷が滅んだんだから仕方ないっちゃ仕方ないか……】
黒ローブは頭を掻くようなポーズをしながら宇宙船の隅で妖刀無銘をかき抱き蹲る閃火を眺める。
その瞳は虚ろで何一つ映していない。
【参ったねぇ。これじゃ、俺様が思ってた楽しみが得られねぇ。
おい、センカ。いつまでうじうじしてんだ情けねぇ。
テメェ、それでも男か? タマぁ付いてんのかあぁん⁉︎】
黒ローブが不良みたいな発言を繰り返すが閃火はやはり反応しない。
【チッ。まぁ、いい。
どうせこっから先は否が応でもこのままってワケにはいかねぇからな。
蹲ってるだけの雑魚が生き残れるような柔な場所には連れてかねぇ。
死ぬ気でもがいて、足掻いて、泥水を啜って、霞を食べて、それでもまだ足りないくらいに絶望的な地獄みたいなところに連れてってやる】
くひひひひ、と悪魔の様な笑みをローブの中から発する。
そうして数時間後辿り着いた場所はプラズマギャラクシーきっての犯罪都市だった。
【そこで一週間生き残れ。
野心と意地汚なさと反抗心を育てろ。
冷酷さを、非情さを、そして力を手に入れろ。
全く違う化け物になれ。
そしたら次の場所に連れて行ってやる】
そうして黒ローブは姿を消した。
1日目。
妖刀無銘を何度も奪われた。
でもその度、欲に取り憑かれて盗人は即死した。
リスクの高い妖刀無銘以外に金目の物を持っていないと知るや否や住人たちは閃火を構わなくなった。
2日目。
テロ組織からスカウトを受けた。
無銘を持つ閃火を使いこなし、最強の兵士へと育てるつもりのようだ。
閃火は流されるままに鍛えた。
いくら肉体的にキツい訓練でも精神が死んでる閃火には意味のないことだった。だから入った。
3日目。
徹底的にしごかれた。
元々は普通の地球人だ。宇宙人式の鍛え方に身体がついていくハズがない。
加えて毒の混ざった食事に得体の知れない薬、ヘッドギアのような形の謎の機械。
無銘を杖にしてその日はなんとかボロボロの身体を引きずるようにして寝床についた。
4日、5日、6日、時を重ねるごとに鍛えられ、研ぎ澄まされていくドス黒い感情。
この短期間の内に少年の身体は改造されていった。
薬、毒、機械、暴力、拷問、訓練。
元々精神が死んでる閃火はどれも等しく受け入れ、耐え抜き、飲み込み、経験に変えた。
そして7日目。
化け物が産声を上げた。
閃火の制御を誤ったテロ組織はおろか犯罪都市そのものに紅蓮の炎が上がる。
妖刀無銘を振るってそこら中の人々を斬り殺す。
その瞳に宿るのは狂気でも、怒りでも、殺意でもなかった。
その瞳に宿るのはーー虚無。
真っ黒のどこまでも深い穴。
その両目には何も映らない。
悲鳴をあげる者も、怒号をあげる者も、殺意を向ける者も。
その日、都市は壊滅した。
何万もの人々を虐殺した閃火。
その様子を見て歓喜する者がいた。
【くひひひひ、これだこれだよ
あぁ哀しき少年よ。
お前はどんな化け物になるんだろうなぁ。
俺様に見せてくれよ、その末路を。
なぁ】
センカ・ホシモリ。
閃火/zeroはあと4つほどあります。
どの辺で入れるかはまだ考えてませんが、とりあえず次の話は普通に戻ります。