東方遠来客〜大怪獣ラッシュ世界から傭兵が現れた〜   作:紅 星鎖

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閃火さん@年増。
閃火のトラウマに触る回です。



8話 憤激の閃火

「えーりん、この薬はこっちの棚に置けばいいのか?」

「ええ。それが終わったらこっちの段ボールに入った薬草を運んで頂戴」

「わかったー」

 

山でルーミアに半殺しにされてから三日後。

閃火は永琳の家で助手のようなことをしていた。

外へ出るときは護衛、家では助手。

それがここ最近の閃火の仕事だった。

星から星へと飛び回り、トラブルを解決する慌ただしい日々も中々に楽しかったが、こうして永琳の仕事を手伝ってゆったりと過ごすのも悪くないと思い始めている閃火だった。

 

「あ」

「ん? どうかした、えーりん?」

 

閃火がふとそちらを見ると永琳が手紙を読んでいた。

 

「閃火、今からこの都市で一番偉い人に会いに行くわよ」

「え? えーりん、権力者とのパイプまであるの?」

「私の能力もあってね。

そんなことより早めに支度しなさい」

「はーい。で、その偉い人の名前は?」

「月夜見様よ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーデバイスに込められた願い

 

 

 

「で、ここが《つくよみさま》とやらのいるところか。

……でかっ⁉︎」

 

うわぁ。遠くからでも見えてたのに近くから見ると余計にでかい。

流石はこの都市の最高権力者がいる建物。

 

「えーりん。俺、絶対一人で入ったら迷ってたわ」

「でしょうね」

 

そんなことを言い合いながら建物の前に辿り着く。

門番が待ち構えていたが、永琳の顔を見ると敬礼して、スルー。顔パスだ。

 

「最高権力者のいるところに顔パスとかスゲェな。

さっき能力がどうとか言ってたけど?」

「私の能力はね、『あらゆる薬を作る程度の能力』なの。

あらゆる薬剤を作製可能なのよ」

「は? じゃあ不老不死の薬とか性別を変える薬とかも材料さえあれば作製可能ってことか?」

「薬の例がおかしいけど。まぁ、そういうことになるわね」

 

それ医者じゃなくてド◯えもんじゃね?

宇宙人からスカウト来るぞ。

主にケムール人辺りから。

唖然とした閃火だったが、永琳は淡々と言う。

 

「この能力のために薬草を取りに行って何度妖怪に襲われたことか……」

「あー。メリットばっかりじゃないんだね。……っとエレベーターか。

………ボタン多っ⁉︎」

「さっさと行くわよ。月夜見様も暇じゃないんだから」

 

ピッ。と迷いなくボタンを押す永琳。閃火はどんどん登っていくエレベーターに一抹の不安を抱きつつ、月夜見のいる階へとむかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

コンコン。

 

「失礼します。八意 ××様が例の傭兵を連れてきました」

「入りたまえ」

 

ガチャリ。

警備の人がドアを開ける。厳重な守りの先には一人の男性がいた。

この人がつくよみさまか。

……イケメンめ。

 

「な、なんでおもむろに月夜見様を睨みだすのよ?」

「いや、なんかこう……な?」

「いや、全然わからないわよ」

 

イケメンを見るとつい殺っちゃいたくなるんだ。なんでだろうな?

 

「あ、あのー。話、始めてもいいかな?」

 

つくよみさま(イケメン)が所在なさげに立っていた。

表面上は笑顔を浮かべながら閃火は今までと違って超丁寧な口調で滑らかに喋り始めた。

 

「はじめまして、この都市の最高権力者のつくよみさまですね?

私は星守 閃火。しがない傭兵です。

本日はどのようなご用件でしょうか?」

 

永琳は誰この人、いつの間に閃火と入れ替わったの?と思いながらニコニコと笑みを浮かべる閃火を見る。

月夜見は閃火が話が通じそうな人だと分かり、ホッと一息つくと本題に乗り出した。

 

「こちらこそはじめまして。私は月夜見。君に話があって来てもらった。

単刀直入に言おう。君の剣の腕をこの都市で生かして欲しい」

 

なんだ、そんなことか。

閃火は拍子抜けした。

 

「いいですよ。もちろん、永琳の依頼の方を優先させますが」

 

これは仕事として当たり前だ。

先約は永琳。異論は認めん。

 

「あぁ。構わないよ」

 

月夜見もにこりと笑い、快諾する。

 

「永琳から君の素性は伺っているよ、宇宙から来た傭兵。

初め聞いた時は半信半疑だったが、こうして対面して分かった。

君の技量はとてつもなく高い」

 

閃火は多くの戦場で戦った来た。

だからこそ一挙手一投足に隙がない。

まぁ、それに気付く月夜見も凄まじいものだが。

 

「あと、もう一ついいか?」

「なんですか?」

 

さっきレベルの簡単な依頼なら受けるつもりだが。

閃火は首をかしげる。

 

「君の宇宙から持ち込んだ技術。

その一部を調べさせて欲しい。

出来るなら、都市に役立てたい」

 

閃火は目を細め、言葉を反芻した。

 

「つまり貴方に従って私の技術をこの都市に流せ、と?」

「まぁ、そういうことになるな」

 

閃火から殺気にも似たプレッシャーが流れ出す。

月夜見は少し警戒心を強めながら言葉を選んだ。

 

「永琳の報告を聞いた。

君の技術があれば兵も強くなるし、技術の進歩も速くなる。

君の力を貸して欲しい」

「そうですか……」

 

閃火はその言葉を聞いて満面の笑みでこう返した。

 

お断りです(・・・・・)

おとといきやがれ」

「なっ⁉︎」

 

突然の閃火の暴言に場の緊張感が高まる。

 

「ちょっ⁉︎ 閃火…!」

「俺の技術は!」

 

永琳の言葉を遮り、閃火は声を荒げる。

 

「それこそ、とても長い年月をかけて積み重ねて積み重ねて積み重ねてきた。いわばとある宇宙における果ての技術です。

それをおいそれと明け渡したせ?

嫌に決まっているでしょう。

ここまでの技術革新にどれだけの血が、汗が、涙が、流れたと思っているのです?

剣の技術だけならまだしも宇宙の技術にまで欲をかいたのは間違いでしたね」

 

閃火は激情をその瞳に宿し、月の最高権力者を見つめる。

月夜見は見誤っていたのだ。彼の積み上げてきた軌跡を。

今、確信した。彼はただの人間じゃない。それこそ、この都市のどんな存在よりも長い時を生きている……!

 

「君は……一体?」

「最初に申した通り。ただのしがない傭兵です。ま、それなりに長い年月を生きてきましたけどね。

話がこれだけならば、これにて失礼させていただきます。

行こ、えーりん」

「え? せ、閃火?」

 

永琳の手を引いて立ち上がる閃火。

我に返った月夜見は閃火を止めようと、手を伸ばしーー

 

 

無慈悲にドアは閉まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちょ、ちょっと閃火。どうしてあんな態度を……」

「……ごめん、えーりん。

でも、これだけは譲れないんだ。

俺自身のことを安く見られるのは構わない。

だけどアイツらの積み上げてきたものをあっさり渡せるほど大人じゃねーんだわ」

 

閃火の脳裏によぎったのはデバイスを作っていた時のこと。

傭兵業で稼いだ金とパイプを使って様々な星の技術者を雇って、ついに最先端デバイスが完成した。

だが、そのデバイスを狙った者たちの手で技術者たちは一人残らず全滅した。

ただ一人、また生かされてしまった閃火を除いて。

彼らの、技術者たちの願いーーこのデバイスの技術を流用させないで欲しい、という呪いにも似た思いが閃火を今も縛っていた。

だから、月夜見の提案を蹴った。

彼らの願いを守るために。

永琳は納得いかなかったが、閃火の真剣な表情を見てそれ以上は何も言わなかった。

 

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