東方遠来客〜大怪獣ラッシュ世界から傭兵が現れた〜 作:紅 星鎖
「はーい、じゃあ走り終わった人は素振り200回ね♪
終わったら二人一組になって模擬戦開始ー☆」
千夏が手を叩く。
走り終わった兵士たちはのろのろと訓練用の剣をとる。
「あ、よりひめちゃんはこっちね♪
貴方の場合普通の鍛え方だと物足りないだろうから」
「……分かりました」
ーーー光を切り裂く
「あ、あの訓練場から出ちゃってますけど……」
「いーからいーから♪」
……………………。
「あ、あの都市から出ちゃってますけど……?」
「いーからいーから♪」
………………………。
山だ。妖怪がウヨウヨいるような。
「はい、とうちゃ〜く♪
手頃な人喰い妖怪を何匹か見繕って倒すのが今日の訓練ねっ☆」
「⁉︎」
思わず千夏を見る依姫。だが、千夏はやはり笑みを浮かべたままである。
「え、木刀でですか?」
「そだよんっ☆」
依姫は迷わずギブした。
「ちなみに木刀じゃ妖怪が倒せないとかは聞かないからね〜♪
ちゃんと倒せるよ」
グォォォ、と唸り声が近づいてくる。
喋っている千夏の後ろに鋭い牛の角を付けた虎の妖怪が現れた。
「んじゃ始めはお手本ね」
木刀を構えると千夏は角虎を見つめる。
角虎は獲物を喰らうべく鋭い牙の並んだ口を開き、襲い掛かってきた。
「遅いよん♪」
だが、側面へと回られ頭を地面に叩きつけられた。
地面が蜘蛛の巣状に割れ、角虎が白目を剥く。
「ね♪ しかも一発だったでしょ?」
構えを解き、依姫に向き直る千夏。
依姫は千夏の技量に慄きながらも、なんとか学べるところを吸収しようとしていた。
「じゃ、頑張ってねっ☆
大丈夫、危なくなったら助けるから♪」
「え? ちょっと……⁉︎」
呼び止める間も無く木々の生い茂る中へ千夏は姿を消した。
「ど、どうしよう……」
依姫は一人途方に暮れた。
それもそうだ。いくら剣術が大人顔負けとはいえ彼女はまだ子供。
妖怪がいる山の中で一人は酷というものだ。
「グルルルルル」
「ひっ⁉︎」
いきなり後ろから現れたのは先ほど千夏が倒した角虎と良く似た妖怪だった。
角虎は仲間(?)の遺体を見て、次に近くにいた依姫を見た。
その視線を受けて思わず依姫は後退りした。
「グゥゥ、ガァァァァァ‼︎」
その姿を好機と見た角虎は依姫を獲物として捉え、襲い掛かってきた。
(あ、死んだ)
体が恐怖で固まる。
これが殺気。本気の、相手を殺すという気迫。
怖い、怖い怖い怖い怖い怖い怖い!
「た、助けてぇぇぇぇぇ‼︎」
「はいなー♪」
角虎が吹き飛ぶ。
依姫の前には先ほど去ったはずの千夏が現れていた。
「ギブ早いねー。でもま、これで本場の殺気が感じられたっしょ☆」
「あ…………え?」
苦笑いしながら千夏が言う。
依姫はへたり込んで千夏の背中を見上げていた。
「さて、と。ほんじゃお仲間同様、君も死んでもらうね♪」
「ガァァァァァァァァァ‼︎」
怒った角虎から放電現象が発生する。
どうやらこの角虎は電気を操るようだ。
「ふぅん。そんな技を隠してたのか〜♪
でも無駄だよん♪」
バチン!という音ともに強烈な雷撃が奔る。
依姫は思わず声を上げそうになるが、千夏は落ち着いて木刀を一閃。
雷撃を斬り裂いた。
「え?」
「光を斬るのはね」
唐突に千夏は話し出す。
「水を斬るより容易いのよ♪
視界一杯に広がる津波と光の奔流なら光の方がまだ防ぎようがあるように、ねっ☆」
そのままの勢いで角虎にも縦一閃。
綺麗にスパッと両断した。
「ん、じゃ帰ろっかっ☆」
「え⁉︎ 妖怪を倒すってのは⁉︎」
「あぁ、あれは建前☆
ホントは殺気を感じてみて欲しかったの♪」
手を合わせて微笑む千夏。
唖然とする依姫を尻目に今日の訓練は終了した。
「…………………………………」
二人を見送る視線が一つ。
蒼い瞳に映るのは一組の
そう、その視線の主には千夏ではなくその正体ーー閃火が捉えられていた。
依姫「そういえば兵士の皆さんは……?」
千夏「…………。ま、大丈夫でしょっ☆」
忘れられた兵士たちはこの後延々と訓練を続ける羽目になりました。