東方遠来客〜大怪獣ラッシュ世界から傭兵が現れた〜 作:紅 星鎖
ルーミアは不気味な笑みを浮かべ倒れ伏す閃火と永琳を見つめる。
閃火は感付かれないようにこっそりとコートの懐から何かのリモコンを取り出し、永琳に手渡す。
「えー、りん。これだけは、使い、たくなかった、けど。
このリモコン、の赤い、ボタンを押して……」
「これは……?」
「宇宙、船のリモ、コン。
押せば、わかる、から」
永琳は閃火の言葉を聞いて決死の表情でボタンを押そうとして……止まった。
………そのリモコンは閃火の懐に入れっぱなしだった。そして閃火の今の状態は血塗れ。
ならば自ずと永琳が止まった理由がわかるだろう。
「……ど、どれが赤いボタン…?」
リモコン全体に血がベッチャリと付着していてボタンの色の見分けがつかないことを……!
ーーー敗走
「あ」
ば、万策尽きたー‼︎
内心物凄く焦る閃火だが、表面上は冷静を装っている。
ちなみに自分でボタンを押さなかったのは目が霞んで見えないからだ。
なのでえーりんに押してもらおうと考えた。
だが、こんな落とし穴があったなんて…!
「作戦会議はもうお終い?
ならそろそろ決着をつけましょうか」
こちらの様子を察したルーミアは悠然と歩み寄ってくる。
こっそりと手渡すはずが普通にバレていた。
「え、ええと、このボタンかしら?」
ポチッ。
永琳が何かのボタンを押した。明らかに当てずっぽうだ。
瞬間、リモコンからピンポーンというチャイムが鳴る。
「え? 音だけで何も起こらないじゃない…?」
「いや、ありがとえーりん。
それ、
弱々しく笑みを浮かべる閃火。
「これは……!」
ルーミアが立ち止まり目を見張る。
それもそのはず、閃火と永琳がその場から跡形もなく消えたからだ。
「………ここは」
永琳と閃火は山中から未来的な内装の宇宙船の中へ転移したのだ。
別名キャトルミューティレーション。
牛とかがやられるアレだ。
「よう、こそ。俺の、宇宙船の、中へ。
茶の、一つでも、出してやりたい、ところだが、取り敢えず、少しだけ、待ってくれ」
すぅ、と息を吸い込む閃火。息をするだけでも激痛が走るようで顔を顰める。
しかし、言葉を紡ぎだす。
「起動、システム『
巻き戻、せ。俺の、時間を……!」
黄金の輝きが閃火の身体を包み込み、修復していく。
閃火の死を覚悟していた永琳は呆然とその様子を見ていた。
『オカエリナサイマセ、マスターセンカ。
身体ノ修復ハ、アト27秒デ完了シマス』
「おい、周囲に生命体がいないか
特に黒い塊が来たら全速力で宇宙へ逃げろ」
『生体サーチ開始………完了。
周辺ニ生体反応ハ、アリマセン』
「…そうか」
なら、しばらく大丈夫だな。
閃火は大きく息を吐くと、立ち上がった。
「貴方、怪我が…!」
「治った。この船の機能でな」
『マスターセンカ。彼女ハ?』
「現地人だ」
「八意 ××よ。発音できないだろうから永琳で……」
『××様デスネ。ヨウコソ、宇宙白龍《WNーカスタムⅡ》へ。歓迎シマス』
「あ、お前は聞き取れるのね。白茄子のくせに」
『白茄子デハアリマセン。WNデス』
高度な人口知能を組み込んだ宇宙船に永琳は衝撃を受けた。
この傭兵が宇宙から来たというのも信用できる。
閃火は永琳の様子に気付いて悪戯っぽく笑った。
「どうだ? ホントにあったろ。宇宙船。
俺は正真正銘、宇宙人兼異世界人だ」
「……そうね。この目でハッキリと見た。貴方は遠い宇宙から来たっていうのはどうやら本当らしいわね」
ふと、永琳の脳裏に月移住計画という言葉が浮かぶ。
ただでさえ永琳の都市の科学は発展している。
それに宇宙の技術が加わったら?
もしかしたら彼の宇宙船のようなものも造れる日が来るのだろうか?
「白茄子。方位南南西。ここから大体10キロぐらい離れたところに都市がある。そこまで送ってくれ。
もちろん悟られないようにステルス、ジャミングは最大限な」
『カシコマリマシタ』
「さて、とえーりん。帰ろうか、都市へ」
ルーミアの脅威は一時的に去った。
だが、今回のこの選択が後の失敗に繋がるとは閃火はまだ、考えてもいなかった。
宇宙船の形と白茄子
「円盤形で帰るぞ。ただでさえ転送なんて使ったんだ。龍の形にして電力消費を増やしたくねー」
『カシコマリマシタ、マスターセンカ』
「龍?」
永琳が首をかしげる。
「あぁ。この船の正式名称は宇宙白龍
真の姿は蛇みたいな細長い形なんだ」
普通、宇宙龍ナースは金色の龍だが、閃火の機体は白く塗ってある。
つまり白茄子はしろいナースの略称だということだ。