SAOはRPGでデスゲームだからロールプレイしてもしなくてもいいんだよ 作:ヒヨコ
あれから、私は悩んだ。
なぜならあの”私”は私であると思い、ならば私も”私”になれると考え行動し、私は今の”私”となったのだ。
なんだかワタシがゲシュタルト崩壊しそうだが、気にしないでほしい。
とにかく、自分は理想の人物になること(であること)を当然のように思っていたため、もともとの自分が分からなくなってしまったのだった。
それに厨二病を止めるにしても、今までやってきたことをすぐに止めるわけにはいかない。そんなことをしたら周りが色々と追及してくるだろう。
自分が厨二病を患っていたことを人に知られてはいけない――――。
掲示板に上がっている、思わず目を覆いたくなる涙ぐましい厨二病に関する黒歴史や事件のエピソードを読み、決意を固めた。
つまり、結果として私は”私”を止めることはできなかったのである。
今まで気にもしなかったジャンルにも目を向けるようになった今日この頃。
私は”私”ではないと思いながらも、”私”を続けることにフラストレーションを感じていた。
そんな時、見つけてしまったのだ、あのゲームを。
「ソードアート・オンライン?最近テレビでよく宣伝されている、確かバーチャル……」
昼食を食べ終え、テレビを見ていた母が振り向いた。
「VRMMORPGだよ。仮想空間に完全ダイブで大勢が遊べるゲーム」
「亜紀ってば、ゲームには興味ないかと思っていたわ」
その言葉に私は苦笑した。
「世界初らしいし、テストプレイヤーの書き込みの評判も良かったから、やってみようと思って」
何となく、気まぐれで、といった雰囲気で言うが、実際はそうではない。
ソードアート・オンラインを知ってから、仮想空間での活動を可能にするナーブギアやSAOの開発運営元のアーガス、ナーブギアの基礎設計者でありSAOの開発ディレクターでもある茅場晶彦について調べた。
そしてソフトは十一月の寒空の下、発売の前日から並んで手に入れたものだ。
説明書も読み込んだ。
私としても”私”としても現実で思うままにふるまえないのなら、仮想空間に行けばいいのだ。
名前も仮想体も好きなように変えられるのだから、どんなことをしても現実の知り合いにばれることはない。
「だからベットで寝てるけど、時間になったら起きるから」
それまでは起こさないでね、と暗に言い、自室に戻った。
ヘッドギアをかぶり顎下の固定アームをロックし、時計を確認する。
13:00
ベットに横になり「リンク・スタート」と開始コマンドを唱えると、急速に視界が暗くなり五感が遠くなる。
大きな虹色のリングが迫りその中央を抜けたかと思うと、視界は開け五感が戻り、私は仮想世界に立っていた。
人はこれを現実逃避と呼ぶ。