地獄のようなテストが終わり、さぁ続きを書こうとしてふと思った。
デートって何すればいいのん?
書いては直し、書いては直しを繰り返し、かなり遅くなってしまいました…………すいません。
001
夜竹さゆかという人間を一言で表せなどと言われても、俺にはそれは出来ないだろう。
彼女とは中学からの付き合いだが、俺はまだ彼女の本質を見抜いているわけではない。そもそも馴れ初めからして俺達は一杯一杯だったのだ。
俺は専門家としての初の怪異で。
彼女は始めて怪異と関わって。
あの失敗談ともいえるエピソードはまた語る機会があったときに話すとしても、そのときから俺と彼女の関係は始まった。
そんなに長く関わりがあるなら一言で表すことくらい出来るだろうという人もいるだろうが、長く関われば関わるほど、一言で表すことは難しくなると思うのだ。
外見性格能力成績運動知識好み思い出。
積み重なるそれら全てを内包し、正確に一言で表すなど出来るわけがない。
言葉は力を秘めるが、万能ではない。
一言で表すことは出来ないが────彼女に言うべき言葉は積もりまくっている。
いつか、これら全てを彼女に言う日は来るのだろうか。なんて。
未来は、未だ来ずと書いて未来なのだ。まだ来ていないことなど分かる筈がない。
今のところは差し当たり、彼女との買い物を楽しむことにしよう。
002
「…………夜竹、考え直すんだ。まだ引き返せる」
俺はそう重々しく彼女を諭した。
「お前のその選択は俺の命すら危険に晒す。一時快楽を貪ろうと、その後必ず皺寄せがくるぞ」
だが、夜竹は顔をこちらに向けず、俯いたまま、こちらを見ようとしない。
「頼む、夜竹────」
「透。透の言いたいことはよく分かったよ。確かに、このデラックスジャンボパフェはカロリーが天元突破してそうだし、値段も2400円なんていう馬鹿高いし」
「や、夜竹っ!!分かってく」
「だが断るっ!!」
「あァァァんまりだァァァ!!」
おしゃれなスイーツ店でジョ○ョの台詞を言い合う高校生達がいた。
というか俺達だった。
先日馬鹿式神が吹き飛ばしたドアのせいで心配させた罰として、パフェを奢るように言われた俺。その約束を果たそうと巷で話題のスイーツ店に来たのはいいのだが、見れども見れども周りにいるのはいちゃつきまくるリア充(うざい)ときゃいきゃい言ってる女子高校生グループ(煩い)と哀愁漂う一人身のOL(切ない)のみ。居心地が悪いったらありゃしない。
「それで?デラックスジャンボパフェを頼んでいいかな?」
「いいとも…………好きにしろよ。俺の財布は氷河期確定だよ…………」
「あ、店員さーん。デラックスジャンボパフェをひとつー」
「躊躇情け容赦なしだと!?あ、俺は珈琲で!」
全く…………太っても知らn
ビィンと、金属がしなる音が聞こえた。
本来物に突き刺して食べたりパスタを巻いたりするその食器は今まさに俺の眼球のほんの数ミリ前で停止している。
「今、何か思った?」
「…………………………夜竹さん、ヤンデレって知ってる?」
「ヤンデレ?あぁ最近流行ってるらしいね。透もそのヤンデレが好みなのかな?だったら透を惚れさせることを目標とする私はヤンデレになることもやぶさかじゃないけど」
「いや俺はヤンデレじゃなくてクーデレのほうが好みかな!!ツンデレでもいいけどヤンデレだけは勘弁だ!!」
「ふぅーん」
そう言って凶器を下げる夜竹。俺はもう食卓にありふれるあの食器がトラウマの対象になりそうで怖いわ…………
「…………ふむ、ごほんごほん………………か、勘違いしないでよねっ!別に透が女の子の体重について触れたからじゃないんだからっ!!そう、あれは事故、事故なのよっ!!」
「寸分狂わず人の眼球にフォーク突きつけることを事故と言い切るとは図々しいな似非ツンデレが」
ブスリ。
「手にフォークがぁ!?」
「騒がないでよ、周りの人に迷惑でしょ」
「どの口がっ…………!!」
いや、もうよそう。何を言っても無駄ということを悟れ、俺…………
「お待たせしました、デラックスジャンボパフェと珈琲です」
「うわっ」
半端ないサイズ。アイスの下地にフルーツやらマシュマロやらウエハース、コーンフレークや生クリームがどっさりのった化け物みたいなパフェだった。
「お前これ食えるの…………?」
「女の子を舐めないでね。よゆーよゆー」
スプーンでたっぷりすくい、口に運ぶ夜竹。
甘いものは嫌いじゃないがここまでくると胸焼けするなーとシロップとミルクをたっぷり入れた似非M○Xコーヒーをすすりながら美味しそうに頬張る夜竹を眺める。
『ねぇ、あのテーブルやばくない…………』
『あれって二人以上で食べるのが基本のデラックスジャンボパフェだろ…………』
『あの子どんな胃袋してるの?』
『彼氏のほうもコーヒーにシロップ五個、ミルクを四個ほどいれてやがったぞ』
『とんでもない甘党カップルね…………』
『くそが、高校生がいちゃつきやがって…………なんでこんなところで一人でいるんだろうなー私』
なんつーか視線を集めているなこのテーブル…………全く、一体何が原因なのやら。
「あー、そういえばよ、夜竹」
「ん?どうしたの?」
「…………とりあえず口を拭け」
生クリームが口についてかなり間抜けな図になっている。そういう路線でいくのかお前。
「ん…………あ」
何かを思いついたかのように手を叩き、んーと口をこちらに突き出してきた。
「…………え?なに?」
「拭いてー」
「自分で拭けよ…………」
「ふーいーてー」
こいつ…………
「うわぶっ!?」
テーブルの横にある紙ナプキンを取りだし、乱暴にクリームがついた口を拭く。
「…………えへへ」
「…………さて、本題だが。夜竹はIS学園に入学するんだったよな」
「ふえ?あぁうん。頑張って推薦貰ったんだよ」
こう見えて、こう見えて夜竹さゆかはかなり優秀な人間なのだ。成績学年トップ、運動神経も良い。そのうえ整った顔立ちをしている。中学ではさぞかしモテていたらしい。途中から不登校になった俺は知らないが。
「夜竹は、ISってどう思う?」
「IS?んー難しい理論言えばいいの?」
「うんにゃ、お前の印象を教えてくれ」
「えーと…………なんかこう、超すごい科学の結晶みたいな」
…………前言撤回。夜竹はアホの子だ。
「ISがどうかしたの?透にとって科学であるISなんて真逆の存在でしょ。」
「…………まぁ、ちょっと興味を持っただけだ」
「…………ふぅーん」
そう言うと夜竹は再びパフェと格闘し始めた。その様子をコーヒーを飲みながら眺める。
最近専門家の仕事で忙しく、こうしてゆっくりしたことは少なかったような気がする。どんな仕事人でも休養はしっかりとるべしというし、ましてや怪異との戦いは命懸けだ。休めるときに休んでおかないとな。
生クリームを口につけ、パフェを美味しそうに頬張る夜竹を見ながら特甘コーヒーを飲む。こんな休日も、たまにはいいのかもしれない。
003
「あー美味しかった!!」
「…………そりゃようござんしたね」
初っぱなから三千円弱の出費…………一応、そこそこお金は下ろしているが今月ラノベの新刊がたくさんでるからその分は確保しておきたいんだよな…………まぁ今日はこれで終わりだろうし────
「じゃあ今からデパートに行こうか!」
「待て!お詫びはパフェだけだろ!?」
「お詫びはね!今からは透の服装改善セミナーだよ!」
いや服装改善セミナーって改善の必要性感じられないんだが…………
「女の子と出掛けるのにジャージ着てくる人の台詞じゃないねそれ。いいからさっさといくよ!」
「ちょっまっ引っ張るな分かったから!!」
どうやら、俺にゆっくり出来る休日は存在しないようです…………
「よし!これならどうだ!」
「黒のジャージが灰色のジャージに変わっただけじゃん!」
「それならこれは?」
「今度は黒と赤!?というかジャージから離れて!」
「あぁ…………うん、ならこれでいいや」
「テンションの落差ー!?」
「いやというかジャージの利便性を舐めてかかってないかね?古今東西ジャージに勝る普段着はない!」
「開き直らないでよ…………」
「ジャージに文句があるなら俺が相手になってやる!」
「逆ギレされたー!!」
「ジャージ以外なんてウインドブレイカーくらいしか認められないな!」
「ほぼ同類だよ!!」
「ところで『
「論点ずらされたー!!」
そうやって楽しく買い物をしていくジャージ男子とツッコミ女子。こうやって今もかなりの注目を集め、結局ブロデュースばい夜竹の服一式を購入したのだった。
「なんでこうことごとくジャージ売り場に向かってくの…………?」
「いやこうなんかジャージが俺を呼んでいる的な」
タンスの中ものの見事にジャージばっかだからなー。仕事の都合上狩衣だったりはあるがまともな服はあんまりない。特に誰かと出掛けたりすることないし、私服の必要性が感じられないんだよなー。
………………なんか悲しくなってきた。
「なんで泣いてるの…………?」
「な、泣いてねぇし!目から汗が出てるだけだし!」
うん、それはまぁどうでもいいとして。
さっきからついてきているあいつにちょっと釘でもさしてくるか。
「なぁ、夜竹。俺ちょっとトイレ行ってくるわ」
「ん?わかったー」
「いや、つーかさ。人のプライベート覗くのはどうかと思うぜ?余接」
「仕方ないでしょ、お兄ちゃん。僕はお兄ちゃんに協力するように言われてるけど、実質大嶺透の監視も兼ねてあなたのそばにいるんだから」
監視ねぇ。まぁ臥煙さんに言われてなんだろうけどよ。
「いくら余接でも、夜竹をこちら側に引き込むっていうなら────」
「それなら心配ない。いくら臥煙さんでも一度憑かれただけの一般人を巻き込むほどぶっ飛んではいない………………と、思う」
「最後ので一気に不安になったんだが…………」
いや本当に時々ぶっ飛んだことするからな、あの人…………
「ともかく、ただの監視だから、心配する必要はないよ」
「んーいやそれならいいんだがよ…………」
「だから安心しなって────」
「
「……………………あぁ、そうだな」
「はやく戻ったほうがいいんじゃない?デート中でしょ」
「…………デートじゃねぇよ」
「ふぅん、まぁそれならそれでいいけど。じゃあお兄ちゃん、僕は監視を続けるけど、気にしないでね」
そう言うと。余接はすたすたと歩き去ってしまった。
暴走。全く、本当に────あの人は、知りすぎるくらいに、知っている。
「…………ま、俺の封印の仕方をあの人に教えたのも多分臥煙さんなんだろうけどよ」
さてさてっと。そろそろ夜竹のところに戻らないとな。
正直、先のことは全く分からない。
俺がIS学園に入学することで、どんな結果が生み出されるのか。
織斑一族と関わることで、一体どんな結末が訪れるのか。
織斑一族とは────なんなのか。
分からないことだらけだが、これだけは言える。
「遅いよ!何やってたの!」
夜竹だけは────巻き込まない。
そういった数週間後、あっさり夜竹が関わってきたことに膝をついたのは、言うまでもない。
感想・評価頂けると嬉しいです。