怪物語   作:柴犬好き

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りんいんリターン 其の壹

001

 

 

 

 

凰鈴音という一人の少女を語るならば、やはり織斑一夏という一人の少年を抜きにしては語れないだろう。

 

 

小学五年生からの幼馴染みで、中学二年生までの四年間。織斑一夏は凰鈴音という人格形成に大きく関与した。まぁ小学五年生からの知り合いを幼馴染みっていうのかよという細かいツッコミは無しだ。

 

 

 

出会った時間が何時であれ。

たった一人との出会いで、人は簡単に変われるのだから。

 

 

 

これは凰に聞いた話なのだが、織斑はどうやらいじめられていた凰を助けてやったらしい。こう、いじめていた同級生を殴って。

 

パンチで事を解決するってどこの幻想殺しさんですかぁ?一級フラグ建築士さんですかぁ?とそのときは声を大にして言いたかったが、その話をする凰の顔がどうしようもなく緩みきった乙女の顔をしているのを見て、言う気が失せてしまった。

 

どんな解決法であろうと結果的に凰を助けたのだから、織斑の解決法もある意味正解だったのだろう。

 

 

終わり良ければ、全て良し。

 

 

 

凰にとってしてみれば織斑と結ばれることが終わりなのだから、まだまだ良いなどとは言えないらしいが。

 

 

それでも俺は思うのだ。終わり良ければ全て良しという格言は、終わりがよくなければそこに至る過程がどれだけ素晴らしくても意味はないのだと言っていると。

 

 

どれだけ織斑が人を救おうとも──────織斑が救われなければ、なんの意味もないのだと。

 

 

 

そんな戯言を、ふと思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

002

 

 

 

 

 

 

あの惑い狐との死闘より一週間。

貴重な霊験あらたかな包帯を使ってなんとか怪我を治した俺は、IS学園からモノレールに乗り、一番近い街に来ていた。

 

 

まぁ特に目的があるというわけでもなく、ただ暇だったから街に出てきただけだ。適当に本屋とゲーセンとアニメグッズ屋を回るつもりだ。

 

 

「………………ま、なんの監視もなしってわけにはいかないよな。たった二人の男性操縦者。何かあったら大変じゃ済まないだろうし」

 

 

店の陰やら人混みに紛れてこちらを監視している人が何人もいる。政府の人間とかもいるのだろうけど、その内の何人か女性だし女性権利団体の刺客だったりするのかなー、誘拐企んだりしてるのかなー、とかぼんやり考えながらぶらぶら街を歩く。

 

 

別に誘拐されたいなどとは思っていないが、後顧の憂いを絶っておくということでわざと襲わせてお縄にしてやろうか…………と思っていたらどっかで見たことあるような黒服がその女性達を取り押さえていた。

 

 

あの黒服って確か俺をホテルに軟禁していた奴らだよな。なるほど、囮にされたか。

 

だがまぁ餌にするのは構わないしどんどん捕まえちゃってください。俺の負担を減らしてね!

 

 

そんなことを思いながら、俺は某アニメグッズショップに向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんなわけで午後である。

 

大量のグッズと小説や漫画を買い漁り、ほくほく顔で街を歩く俺。ちなみに今日の服装は前に夜竹が選んだ結構おしゃれな服なので、そこまでヲタ!!って感じではない。しかし夜竹が選んだ服本当におしゃれだな…………俺にはあんまり似合わないような気がするけど。

 

 

それはともかく収穫を抱えて学園行きのモノレール駅に向かおうとしていると、視界の端に見覚えのある白い制服を着ている女子が公園の地図を見ているのが目にはいった。

 

 

白い制服とはいわずもがな、IS学園の制服である。

学園の制服はある一定のラインを越えなければ改造自由という、なんとも個性を出すのに便利そうな制度がある。

あの女子も例に漏れず改造しているようだ。というか肩とか見えてるんだけどいいのか?あれ。風紀的に。いやいまさらか。

 

 

 

まぁ制服をどう改造しようとそれは個人の自由なのだが、問題はこんな町中で普通に学園の制服を着ていることだ。

 

 

忘れがちかもしれないが、ISというものは稀少だ。専用機だったり練習機がわんさかある学園にいて少し感覚が麻痺ってきたが、そもそもISなんて国家主導のもと最重要軍事機密としてがちがちのセキュリティで固められて当然の物なのだ。そしてそれに通じてそれなりの知識と技量をもった操縦者というのも貴重だ。

 

IS学園は世界各国のテスト機体や、最新技術が集まる超重要施設。その学園生徒はそれらに大量に触れるのだ。拐って拷問なんてことも考えられる。

 

ゆえに生徒の外出には厳しい制限や監視がつく。俺がこうして外に出ているのも面倒な交渉があったりするのだが────まぁその話はまた機会があったらするとして。

 

 

周りに人があまりいないからといって、そんな生徒が制服を着て彷徨いているのはあまりよろしくない。しかもなんか巨大な荷物を背負っているとなれば声をかけないわけにはいかないだろう。

 

 

 

「えーと………………」

「………………」

「………………なぁ」

「………………」

「あの………………」

「………………」

「………………」

 

 

 

泣きそうになった。いやメモっぽいのを見つめてるしきっと集中してて気づいてないだけなんだ。決して無視されてるわけじゃないんだ。きっと。多分。めいびー。

 

 

だが肩を叩くのもなぁ…………ほら、肩剥き出しなわけですよ。それを叩くのは、ちょっとアレだし。いやチキッてるわけじゃないよ?いやほんとほんと。というかマジで不用意に近寄ると問答無用でお縄にされる。女尊男卑は伊達じゃない。

 

 

…………………………ふむ。

 

 

「ていっ!」

「にぁあ!?」

 

 

頭にチョップ!会心の一撃!見知らぬ少女に100のダメージ!

 

 

「ってなにすんじゃー!!」

 

 

叫ぶと同時に後ろ回し蹴りを繰り出してきた。流れるようなスムーズな動き、スカートをたなびかせ、迫る踵。

 

 

 

 

 

だが甘いっ!!

 

 

 

 

 

威力を相殺するのではなく、柔らかく、流れるように、蹴りの威力を──────受け流す!

 

 

「なっ!?」

 

 

完全に受け流され、態勢を崩す少女。

さぁ──────とどめだぁ!!

 

 

 

 

「なにやっとるんだ貴様は!!」

「ぐぶはっ!?」

 

 

スパァン!という音と共に頭に衝撃が走る。

 

 

薄れゆく意識で見たのは出席簿を振りかぶった姿勢の織斑千冬だった。

 

 

あ…………監視がいるの、忘れてた。

 

 

 

 

 

 

 

 

003

 

 

 

 

「いや、違うんですよ。俺はただ道に迷ってる感じだった学園生を案内してあげようと思っただけであってですね」

「案内しようとしてなぜ殴りあい蹴りあいになるんだ貴様は………………」

 

 

学園に連行された俺は、寮監室で織斑先生に説教されていた。

 

正座している俺と正面で椅子に座り足を組む織斑先生。典型的な説教スタイルだ。かれこれ小一時間はこの姿勢で、足の感覚は全く無く、いま触られたらとんでもないことになりそう。

 

 

織斑先生曰く、あの生徒は転校生でモノレール駅の場所が分からなかったらしい。あと俺が声をかけたときは無視したわけではなく、ただ聞こえなかっただけっぽい。そんなに声小さいかね………………声が小さいんじゃなくて影が薄いだけですかそうですか。

 

 

 

「まぁいい。その転校生は明日から二組に通うことになっているから二組に行って謝れ」

「了解です」

 

 

もう戦うなよ、という念押しをされて寮監室を出る。

そんなに信用ないですか、俺。いや実際やったわけだから信用も何もないと思うけどね。

 

 

 

 

 

 

 

「あ、お帰り。お兄ちゃん」

「お帰りなさい、透君」

「透お帰りー」

 

 

部屋に帰ると二人と一体が俺の部屋でくつろいでいた。

 

 

まずゴスロリ童女、斧乃木余接。こいつはいい。いや俺のゲーム機で遊んでいることはよくないけれどもこいつはこの部屋で生活してるし、問題ない。

 

 

次、青髪生徒会長、更識楯無。うん、おかしい。なんでここにいるんだよ。なんで俺のパソコン勝手にいじってんの?ていうかロックどうやってあけた?

 

 

最後、黒髪幼馴染み、夜竹さゆか。はい、こいつもおかしい。ベットに横たわって漫画読み漁るんじゃねえよ。

 

 

「……………………ていうかお前ら不法侵入だからな。あとカギかかってた筈だけど?」

「あ、それなら僕が開けたよ」

「オーケー分かった。あとでシめる」

 

最近こいつらは俺の部屋に侵入することが多くなった。その度に叩き出してるんだが全く鳴く懲りる素振りがない。

本当にどうしようか、こいつら………………

 

 

「あ、さゆかちゃんは知らないけど私はちゃんと用があってきたからね」

「うん?そうなのか?」

 

 

ていうか夜竹はないのか。いつものことなのだけれどな。

 

 

「えぇ。実は明日から転校生が来る予定になっているんだけど、その転校生になんと町中でいきなり襲いかかった奴がいるらしいのよね」

「…………………………へ、へぇ」

 

 

あれれ?何故だろう。冷や汗が止まらないぜ。

 

 

「えーと、夜竹さん?その分厚い漫画雑誌をどうするつもりだ?楯無も女の子がパキパキ拳鳴らしちゃいけないぜ?ていうか余接!我関せずでゲームやってんじゃねぇよ!頼む!助けてあああぁぁぁァァァ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ど、どうしたんだ?透………」

「………………気にすんな、いつものことだ」

 

そして翌日である。

きっちり制裁を受けてきた俺はふらふらになりながらもなんとか登校し、机に突っ伏していた。

あいつら手加減ってしらねぇのかよ………………いや俺が悪いんだけどさ。初対面の女子に話しかけるのはコミュ障にとってハードルが高い。それで錯乱した結果がチョップって俺の思考回路が本気で心配。

 

って、あー。そういや二組にいって謝らないと。けどもうすぐHRだし…………しゃあない。次の放課後にするか。

 

 

 

『ねぇねぇ!聞いた?転校生の噂!』

『あ、聞いた聞いた!二組に入るらしいね!』

『確か中国からの転校生らしいよ!』

 

 

 

周りのクラスメイトが転校生についての噂でわいわい言っている。女子高校生って噂話好きだよなー。

 

 

「転校生?転校生が来るのか?」

「ん?あぁそうらしいな。なんだ、気になるのか?」

「まぁ人並みにな。仲良くなれるかとか」

 

いや二組だしお前と関わることはあまりないんじゃないか、織斑。あれか、転校生であろうととりあえずハーレムに入れてくスタンスなのか。滅びろ。

 

 

「転校生などにうつつをぬかしている場合なのか!一夏!お前にはクラス対抗戦という大事な行事が待っているだろう!」

「うぐっ…………」

「そうですわよ、一夏さん。なんなら私が手取り足取り教えてあげましょうか?」

「貴様なんぞがでしゃばるな!一夏は私と特訓するのだ!」

「…………朝から騒がしいな、篠ノ之、オルコット。おはよう」

「む、おはよう大嶺」

「えぇ、おはようございます、透さん」

 

 

織斑に寄ってきたのは織斑に恋する織斑ハーレムの一期生、篠ノ之箒とセシリア・オルコットである。

 

 

オルコットとは代表決定戦で和解し、篠ノ之とは惑い狐との死闘の翌日、謝りに来てくれた。いまではまぁいい友達、といった関係だ。友達稀少な俺がこんな短期間で二人も友達が出来るとは……………いや俺の勘違いかもしれないけど。

 

 

「そうだよ、織斑くん!織斑くんには頑張ってもらわないと!」

「クラス対抗戦の賞品、学食デザートパスポートをなんとしても手にいれてもらわないと!」

「うっ…………そこまで言われるとなんか自信無くなってきた…………」

「おいおい大丈夫かよ」

 

 

こいつには是が非でも勝ってもらわないと。学食のスイーツは中々旨いんだ。

 

 

「でも大丈夫だよ!だって専用機もってる代表って一組だけだし!」

「そーそー!よゆーよゆーだよ!」

「おりむー頑張って!」

 

 

クラスメイトに励まされ、小さく笑いながら織斑がお礼を言おうとしたそのとき。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──────その情報、古いよ」

 

 

 

 

 

 

 

明るい髪色のツインテールをたなびかせ。

 

 

 

腰に手をあて、仁王立ちする姿は風格が漂い。

 

 

胸元は悲惨だが、そんな事関係ないとばかりに胸を張っている、その少女。

 

 

 

 

「…………………………あ、あの時の」

 

 

「専用機持ちであるこの私が二組の代表になったんだから、そう簡単に勝たせはしないわよ──────ってあの時のチョップ野郎っ!?」

 

 

 

 

凰鈴音は、怪しき物語に参戦する。




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