004
「ちぇすとぉー!!」
開幕飛び蹴りを食らった。
見とれるほど美しいフォームを保ったまま俺の顔面に吸い込まれる足の裏。
足と足の間、スカートの奥から見える桃源郷が眼福といえば眼福。美少女から受けるご褒美的な暴力、ただし絶壁。みたいなっ!!
そういえば俺の知り合いに幼女やら童女に足蹴にされている人いたなぁ。なんかにやけてたし気持ちいいのかよとか思ったが訂正する。(胸が)幼女に蹴られてもただ痛いだけ。
「──────って透ーーー!!??」
一気に壁際まで吹き飛ばされた俺に駆け寄ってくる織斑。
いや嬉しいんだけどなんでいの一番にお前………………出来れば女の子がよかった。いやいいけどね?
「おいっ!いきなりなにするんだ──────ってもしかして鈴!?鈴じゃないか!!」
「えぇ、久しぶりね、一夏。あとそいつは放っておきなさい。当然の報いよ」
「当然の報いって………………初対面だろ?」
「いやところがどっこい違うんだよな。実は昨日逢ってたり」
かったるそうに起き上がりながら会話に参加する。ていうか顔に足跡残ってないかな、これ………………
「逢ってる?」
「うむ。道に迷っていたこの少女を俺は優しく案内を────」
「捏造してんじゃないわよ!!優しくどころかチョップしてきたでしょうが!」
「いやだって声かけても反応なかったし?」
「肩叩くなりあるでしょうが!!」
「その剥き出しの肩を叩けと!?コミュ障にどんだけハードル高いこと要求してんだ!!」
「剥き出しの肩を意識するって変態?変態なのあんたは!?肩フェチって奴!?」
「あ…………ヤバイッ!!二人ともッ!!」
「誰が肩フェチだ!!俺は肩に興奮したりしねぇよ!!例え肩を重視するとしても絶壁はお断りだなッ!!」
「今なんつったこの変態がぁぁぁぁぁ!!!!」
「いい加減にしろこの阿呆共がッ!!!!」
ズパンッ!!ズパンッ!!と人体から鳴ってはいけない音が教室に響き渡る。
痛む頭を我慢し、周りを見渡せばガタガタ震えながら席に座るクラスメイト達。
そして背後からは凄まじいまでのプレッシャー。
ヤバイ、このままじゃ──────殺される。
(おいっ!凰とかいったな協力しろッ!!このままじゃマジで殺されるぞ!!)
(えぇ!ここは一時休戦としましょう──────って言いたいところなんだけどね…………)
(この期に及んでまだなにかあるのかよ!?)
(いいえ、ただ何をしようと意味はないのよ。だって────)
そう言って。凰は儚げに微笑み──────
「──────鬼神様からは、逃げられない」
再び、俺らの頭に破裂音を伴って、出席簿が降り下ろされた。
005
放課後。先生の仕事を手伝うという罰則を受けて、俺と凰はIS学園の書庫にいた。
この書庫は中々規模が大きく、普通の本はもちろん、IS関連の資料などが多数納められている。もちろん設計資料なんかは入っていないが。
それでも大量の本がある書庫では管理もそれなりに大変だし、検索システムがあるとはいえ探すのもそこそこ大変だ。故に俺達は先生の手伝いに駆り出されたのだ。
「うぅ…………なんで私がこんな目に」
「ほら、喋ってるとまた宝刀シュッセキボを食らうぞ」
「うるっさいわね!昔に拳骨を何度も食らったから分かってるわよ!!元はといえばあんたのせいでしょ!」
「はいはいサーセンサーセン。っとそういえば凰。お前って昔から織斑と知り合いなんだっけ?確か昼御飯のときに言ってたよな」
今日の昼、突然現れた織斑と親しそうな少女を見逃すわけないと、織斑ハーレム一期生の篠ノ之とオルコットが新入りとの関係性を織斑に問いただしていたのだ。そのときにセカンド幼馴染みとか織斑がいっていた。セカンド幼馴染みってなんだ。
「は?いきなり何の話よ?」
「んーただの雑談だよ」
「なにそれ、まぁいいけど。昔からっていっても小学生五年生から中学二年までだけどね。そのときに一夏と同じ小学校に転校してきたから。懐かしいなぁ、一夏と私とあと一人でよく遊んだっけ」
あと一人?小学校の頃からハーレム形成してたのかよあの野郎。いやそんなことはどうでもいいんだ。
「なぁ凰。お前織斑の両親のこととかなんか知らないか?」
そう聞くと凰は突然難しそうな顔になる。本を整理していた手も止まってしまった。となるとやっぱり俺が調べたことは本当なのかね。
「…………そんな質問するってことは一夏の両親が失踪したってことは知ってるっぽいわね。けど何か知りたいっていうなら私はあんたの力になれそうもないわよ」
「と、言うと?」
「一夏は両親のことは話したがらないのよね…………私が聞いても笑って誤魔化されて…………今ならその気持ちわかるけど」
「………………ふぅん?」
今ならわかる、ね。凰も織斑と別れてから色々あったのだろう。この学園に入学するにあたって色々調べたが二年で中国の代表候補生になった天才がいる、という話を見かけたことがある。
ISに触れ、その難しさを理解したから分かる。あれを二年で代表候補生まで登り詰める大変さを。まぁまだまだひよっこなので全部分かるなど傲慢なことは言わないし、同情もしない。安い同情ほど腹立つことはないからな。
「というかなんで一夏の両親について聞いたのよ?」
「……………いや、世界最強の姉と初のIS男性操縦者でフラグ乱立ハーレム野郎の弟を生んだ両親ってどんな奴だよって思ってな」
「あんたどんだけ一夏の評価低いのよ…………」
心外だな。評価は低くない、むしろ高いまである。あいつの戦闘センスは『ぱない』の一言で尽きる。ただ嫌いなだけ。
しかし──────凰にも話してないとなると篠ノ之にも話してないと考えた方がいいか。
『織斑』の中でも際立っているであろう二人を生んだ人間は『織斑』の謎を解くのに重要なファクターになるだろうし、知っておいた方がいいんだよな。
臥煙さんに頼りすぎるのもアレだし──────となると、何でもは知らなくて知っていることだけ知っているあの人に頼むとするか。
006
「そんなわけで調べて欲しいことがあるんですが、羽川さん」
『…………唐突だね、大嶺君。連絡欲しいときはしてくれないのに、別に欲しくないときには普通に連絡してくるんだから…………』
「羽川さんが俺に連絡欲しい時とかないでしょう?」
『あるよ?例えば君が二人目の男性操縦者になったときとか』
「うぐっ…………」
『はぁ、君誰にもなんの連絡してないでしょ。いろんな人が心配してたんだよ?』
「いや、これ臥煙さんの依頼でもあったですし…………あっ」
『ふぅん?ふぅーん。君が今そこにいるのって臥煙さんのせいでもあるんだ。へぇー』
「…………羽川さんのその臥煙さん嫌いってどうにかならないんですか?」
『別に嫌ってないよ。ただちょっと苦手なだけ』
「それを嫌いって言うんですよ」
『うん、まぁいいや。大嶺君が私に連絡くれたのは別に世間話をするためじゃないでしょ?』
「えぇ、その件なんですけどね。ちょっと調べて欲しいことがあるんです。それが────」
『織斑一族のことについて、でしょ?』
「……………………羽川さんは、何でも知ってるんですね」
『何でもは知らないよ。知ってることだけ』
「というか本当に何で知ってるんですか。怖いですよ」
『いやいや、この件に関しては本当に何でもないよ。二週間くらい前に臥煙さんから連絡がきただけ。二週間くらい後に大嶺君が聞いてくるだろうから調べといてってね』
「あぁ、なるほど…………………………いや納得しかけましたけど、それも十分怖いですよ。本当にあの人は未来予知でも使えるんですか」
『未来予知使えるとしても納得しちゃいそうだね。臥煙さんだしって』
「チーレム系主人公が言われる台詞を言われる臥煙さん…………」
『まぁそんなわけでもう調べてあるんだよね、織斑一族について』
「二週間で調べられるって凄いですよね…………さすが羽川さん」
『もう、やめてって。私が特別扱いされるの嫌いって知ってるでしょ。ただ織斑一族が住んでいたとされる村に行っただけだって』
「………………あぁ、うんそうですか。つっこみませんよ」
『いいよ、突っ込まなくて。いろんな伝手から情報を得て、その村を訪れた訳だけど。織斑一族が住んでいたっていうその家────というか屋敷かな?もう廃墟になってた』
「まぁそうでしょうね。政府も織斑一族が残っていたら血眼で探すでしょうし、もう織斑一族の生き残りはあの二人だけだと思ってました」
『うん。戸籍上では四十年前、織斑一族はその当時七歳だった織斑億秋、つまり一夏君と千冬さんの父親ただ一人を残して死んでる。というか殺されてる』
「殺され────?」
『つまり、織斑一族は何者かに根絶やしにされかけたんだよ』
「…………………………」
『ちなみにその織斑億秋は当時友達の家に泊まっていて助かったみたい。それとね、そこで殺された織斑一族の殺され方は尋常じゃなかったらしいよ』
「尋常じゃ──────なかった?」
『体の至るところに食いちぎられたような跡。刀で切り裂かれたような傷や、四肢が切り落とされた死体。こんなの序の口らしいけど』
「…………………………」
『そして最も不可解なのは──────この事件が、集団心中と判定されたこと』
「し、心中?そこまで猟奇的に殺されておいて、集団心中?」
『うん、だからおかしいんだよ。どこか、大きな権力を有するところが、この事件を隠蔽しようとしたみたいな』
「……………………」
『事実、この事件は世間に出ることなく、ひっそりと闇に葬られた。これだけの事件が表に出ることなく』
「羽川さんが知ったのは────」
『その当時にもその村に住んでいた人に聞いた。大分渋ったけど、なんとか聞き出せたよ。なんでも、あの村で織斑の名前は禁句らしいよ。世界初の男性操縦者として織斑一夏が発表されたときは、阿鼻叫喚って感じだったみたい』
「……………………羽川さん。織斑一族って、なんなんでしょうか」
『──────さぁ、ね。でもこれだけはいえる。
織斑一族はまごうことなき────
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