怪物語   作:柴犬好き

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とおるビギニング 其の貮

003

 

 

 

「まぁ君をここに呼び出したのは他でもない。仕事の依頼だ。

 

「君のことだからなんで俺みたいな下っ端に、とか思ってるんだろうけどそんなことはない。

 

「君は立派な専門家だ。

 

「少なくても、私から直々に任務を与えられるほどにはね。

 

「さて、みねみねは織斑って知ってる?

 

「そう、それ。

 

「現世界最強の織斑千冬。

 

「そして世界初のIS男性操縦者、織斑一夏。

 

「織斑家は世界に名を知らしめる人間を排出したいわば名門だ。

 

「けどそれは偶然二人の天才が生まれたなんてことではない。

 

「例えば織斑千冬。

 

「戦闘能力はずば抜けており、操縦センスは抜群。ISに乗っていても、生身でも彼女と渡り合える奴はそうそういない。

 

 

「人より遥かに強い怪異を相手取る我々でもね。

 

「異常なまでの身体能力。

 

「あれは普通の人間が出していいようなレベルじゃあない。

 

「そう────つまり織斑千冬はただの人間じゃない。

 

「もしかしたら未来から来たサイボーグだったりしない限り、彼女は十中八九怪異に憑かれてる。

 

「憑かれて────化け物に成り上がってる。

 

「例えば織斑一夏。

 

「彼は飲み込みが早すぎる。

 

「ちなみにそれは勉強面のことじゃない。彼はその点に関しちゃ普通の人間だ。むしろ下のほうだよ。

 

「飲み込みが早いのは戦闘面だよ────戦いだ。

 

「他人の戦いを見て、観て、視て、診て────学習する。

 

「見とり稽古みたいなものだよ。

 

「まぁさすがに一度見たら習得し、二度見たらその人間を越える、なんて理不尽なレベルじゃないようだけど。

 

「十分異常だ。

 

「あと彼は異性にモテまくるとかいう体質も持っているようだね。しかも超鈍感で『朴念仁』を文字って『朴念神』とか言われているほどだ。

 

「いや、みねみね。そんな血の涙を流しながら歯を食いしばらなくても、君も十分格好いいからね。

 

「話が逸れた。

 

「ともかく姉弟揃って怪異に憑かれるのは珍しいことじゃない。

 

「兄妹が揃って怪異に憑かれるのもこの街で普通に起きていたしね。

 

「けれど────両親すら怪異に憑かれていたとしたら?

 

「祖父祖母まで────憑かれていたといたら?

 

「もう憑かれていたなんていえない。

 

「織斑家そのものが────怪異だ。

 

「いわば化物の家系だよ。呪われた家系だ。

 

「さすがにそれは、放置しておけるものじゃないだろう?

 

 

 

 

004

 

 

 

 

まぁ、そんなことを言って。

言いたい放題言ってから、仕事の詳細などを伝えて臥煙伊豆湖は去って行った。

なんでもまだやることが残っているらしい。

 

「何でも知ってるおねぇさんか────ほんと、規格外だよあの人は」

「まぁあの忍野メメ、影縫余弦、貝木泥舟、手折正弦の先輩だからね。それくらい規格外じゃないとやってられないんじゃないの?」

 

まぁな、と余接に相槌をうちつつ、臥煙さんに貰った紙に視線を落とす。

そこには『男性操縦者発見の為の全男性適性検査』の見出し。ほんとこんな情報何処から拾ってくるのやら。

 

「それではもうさよならですかね?大嶺さん」

「ん──そうだな、今日はあんまり会話出来なかったけど、また話そうぜ」

「そうですねぇ。でも今日はちゃんと楽しく話したので大丈夫です」

「楽しく?」

 

臥煙さんとは楽しい会話は出来なさそうだし、一体誰と──?

 

「いえいえ、何でもないですよ。それでは大嶺さん、余接さん、失礼します」

 

と言って。八九寺真宵は姿を消した。まぁ神だし出現とかは自由自在なのだろう。

 

 

「それでどうしようか、余接。荷造りとかもしないといけないんだけど。お前が二度と戻ることはないとかいったあの部屋で」

「お兄ちゃん、僕はドーナツが食べたいな」

「話を逸らすな」

 

 

まぁ、そんなこんなで。波乱の学園生活が始まろうとしていた────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いや波乱の学園生活が始まろうとしていたとかいってたのに何で俺達はドーナツを食ってるんだ?」

「細かいことは気にしちゃ駄目だよ、お兄ちゃん」

 

そんなことをもっちりとした食感が特徴のドーナツを頬張りながらのたまいやがった。

 

あのあと。

北白蛇神社から下山した俺達はそのまま帰るかと思いきやこの童女がドーナツを食べたいと言い出し、結局この街唯一のドーナツ店に足を運んだのだったが──

 

 

「何でお前300円しか持ってないのにドーナツ5個頼んでんだ!?」

「ちゃんと計算したよ?お兄ちゃんの財布込みで」

「俺の財布を当てにするな!」

 

まぁ結局奢ることになったのだけど。

なんというかこの童女は人を当てにしすぎじゃないだろうか。

 

 

 

 

「それにしてもISねぇ…………」

 

天災────篠ノ之束によって開発されたマルチフォーム・スーツ。本来宇宙用に作られたISは今、スポーツとして扱われている。

 

俺はISについてこれくらいしか分からない。そもそも科学は専門外だ。忍野レベルの機械オンチではないが詳しくもない。

 

「なぁ、余接。お前はISについて───」

「愚問だよ、お兄ちゃん。怪異である僕は何も知らない」

「……だよなぁ」

 

 

うん、事が起こるまでISについて調べておかないとなぁ………

 

 

 

 

「それでお兄ちゃん。臥煙さんの言った通りに────IS学園に入学する(・・・・・・・・・)として。貴方のあの劣化版『怪異殺し』(・・・・)は持っていくの?」

「んーそりゃ持ってくしかないだろ。何かあったときの為に」

 

 

怪異殺し────俺の異名『怪異斬り』の由縁。というか本来、これはあの伝説の吸血鬼の持ち物で──かの吸血鬼の眷属の持ち物で。俺が扱えるような代物ではないのだがオリジナルよりも、吸血鬼の複製よりも性能を落とし、ただの高校生の身にも扱えるようにしたのが劣化版怪異殺しというわけだ。

 

もっともこの太刀は臥煙さんが俺に用意してくれた贈り物で一応持ち主の許可はとってあるらしく、俺は仕事のときありがたく使わせてもらっている。

 

まぁ見かけは完全に太刀なので持ち運びが不便なんだけど。

 

とはいえ性能は本当にかなり低く設定されており、オリジナルは全てを切れる、複製は怪異のみ、そして俺の持つ劣化版は怪異の急所を正確に切り裂かなければいけないという制約がある。

 

 

「ま、織斑家がもう取り返しようもなく化物になっていて、周りのバランスも崩しそうになっていたなら────」

 

 

 

 

────この手で斬るしかないしな

 

 

 

 

 

「…………うん、それでこそ『怪異斬り』のお兄ちゃんだ。何処までもついていくよ。具体的にはIS学園にも」

「はっはっは、誉めるな誉めるな。…………んん?いや余接。お前学園についていくって言ったか?」

「え?言ったけど」

「いや無理に決まってるだろ!どうやってついてくるつもりだ!」

「それはこう、お兄ちゃんの人形のふりして?」

「いや男子高校生が等身大童女人形持ってくって犯罪臭しかしねぇよ!」

「大丈夫大丈夫。一話目から童女と少女が出てるんだ。すでに分かりきってることじゃないか」

「いやそうじゃなくてな!影縫さんはどうするんだよ!」

「それも大丈夫。既に許可は貰ってるよ。お姉ちゃんは『死ぬ一歩手前まで追い込みでおまんがな』って言ってたし」

「いやそれは嘘だ!なんで京都弁が眼鏡の小学生探偵の似非大阪弁になってんだよ!明らかにいま捏造しただろ!あと死ぬ一歩って何!?」

「仮にも世界最強と闘う可能性もあることだし訓練をしといて損はないよ、サイヤ人方式で」

「何度も死にかけろと!?」

 

 

そんなこんなでまぁ。波乱の学園生活が始まろうとしているのだった。

 

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