怪物語   作:柴犬好き

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…………はい、すいません。三週間ぶりです。一週間かそこらで更新できる作家さんマジぱないっす。

数学の課題から逃避して勢いで書いたんですが…数B?ベクトル?そんなの一方通行さんに任せとけばいいんですよね……はぁ。

………はい、そんなわけで其の參です。どうぞ


しゃるるタートル 其の參

005

 

 

 

 

 

 

ある人曰く。

物を学ぶより、教える方が遥かに難しいらしい。

 

 

学ぶ者はなぜその公式になるのかが理解できない。

例えば数学で言うのならば、三角関数の大量の公式がどうして成り立つのか、どの場合で使えるのかがわからない。

けれど、公式は公式。正しいということが既に証明されているのだから、参考書などを読み込めばちゃんと理解できる。

 

 

だが教える側からすれば、まずは学ぶ者がどうしてわからないのか、何故躓いているのかから理解しなければいけないのだ。

どこがわからないとかどうやれば理解できるとか、それらは人それぞれであり千差万別。万人に伝わる教え方なんて存在しない。

それ故に一人一人に対応した教え方、解法、手順を構築しなければならないので教える側はかなり難しいのだ。

 

 

 

 

 

なんて、ぐだぐだと長ったらしく述べたところで結局言いたいことは一つ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

基本一人で対人コミュニケーションスキルがない俺が人に教えるとか無理ですね。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇねぇみねっち〜とどかないんだけど〜?」

 

「とどかない?…………って膝立ちしてないのかよ……」

 

 

 

女子生徒がISに乗り少し歩いて次の人に交代という形をとっていたのだが、降りるときは次の人の為に膝立ちの状態でということをしなかったらしく、直立した【打鉄】の前でこちらを困ったように見る布仏。

 

 

ちょっと?何やってるんですか?と直前に乗った人にじろっと視線を向けると、てへぺろっ!と言わんばかりに舌を出して頭をこつんとやる女の子。あざとすぎる…………

 

 

 

「いやだってさ?私たちだってああいうのやって欲しいし?」

 

「ああいうの?」

 

 

 

女子生徒が指差した先には――――

 

 

 

 

 

『えっと……これでいいのか?』

 

『きゃー!!織斑君にお姫様抱っこされちゃったー!!』

 

『あ、次は私よろしく!』

 

『その次は私ね!』

 

 

 

 

 

 

 

何してはるん、おどれは。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ええとつまり?」

 

「私達もお姫様抱っこされたいなって」

 

 

 

…………うわぉ。元ぼっちのくそコミュ障にそんなこと言いますか。

 

 

 

「む〜?みねっちは私を抱っこするのがやだの?」

 

「やー、そういう問題じゃ……」

 

「むむ〜〜」

 

「…………」

 

「むむむ〜〜〜」

 

「………………分かったよ。やればいいんだろ」

 

 

 

 

だって頬を膨らませながらじーっとこっち見る布仏可愛いんだもん……可愛いは正義。だからしょうがないよね!

 

 

 

 

 

「【黒武者】、展開」

 

 

首から下げられたペンダントから光の粒子が溢れ、一瞬後には黒き甲冑を纏う。

 

よっこらせ、となるべく優しく布仏をお姫様抱っこしたのだが。

 

 

 

 

やばい。マジでやばい。何がやばいってほんとやばい。これは、っべーわ。

 

すこし動くだけで揺れる揺れる。たゆんたゆんと揺れる。

いやたゆんたゆんだぞ!?おおよそ人体が出していい音じゃねぇだろたゆんたゆん!!

俺が生きてきて一番デカイと思っていた羽川翼さんと比べたら…………うん、これ以上は止めよう。あの人じゃあるまいし、というかもし羽川さんに知られたら殺される。笑みを浮かべながら正論とか理詰めで追い詰められる。

 

…………怒ると怖いんだよなぁ羽川さん。

 

 

 

万乳引力の法則によって引き寄せられる視線を必死に逸らしながら【打鉄】のコクピット部分まで布仏を運ぶ。

布仏が乗ったのを確認したら地面に降り立ちISを解除。

 

 

……ふぅ、なんとか終わらせれた。もうこりごりです………

 

 

 

「ていっ!」

 

「ちょっと待てなんで立たせたまま降りてるんだていうかなんですかみんなのその期待の目線はやりませんよやらないですよやりたくないですよ!?」

 

「「「「………………(じっーーーー)」」」」

 

「やらな……い……」

 

「「「「………………(じっーーーー)」」」」

 

「やら……な……」

 

「「「「………………(じっーーーー)」」」」

 

「…………………」

 

 

 

 

陥落した。

 

 

というか、何人もの女子がこちらをじっーーと見つめるのは軽くホラーです。まる。

 

 

 

 

 

────そして、視界の端で一切指導することなく沈黙を突き通している銀髪の女の子を、ちらりと覗き見た。

 

 

 

 

 

 

 

 

006

 

 

 

 

 

 

 

「隣、いいわね」

 

 

 

許可を出す前に座られた。

 

 

 

「いやそこは隣いいかな?とかだろ。許可とれよ。勝手に座るな」

 

「ここは学生用の食堂でしょ。なら学生である私がどの席に座ろうが問題ないじゃない」

 

「そういう問題じゃねぇんだよな……」

 

 

 

ふふん、とドヤ顔をしながら今日の日替わり定食である魚をつつく楯無。や、別にドヤ顔するほど凄いこと言ってないだろお前。

 

でもまぁ不機嫌そうな顔で話しかけんなオーラ全開の俺に気にせず話しかけられるのはある意味凄いと思うけどな。

 

 

 

「で?デュノアのことか?」

 

「察しがいいわねー。そういう子はおねーさん嫌いじゃないわよ」

 

「はいはいそうですねー。わーい好かれてうっれしっいなー」

 

「棒読みにも程があるでしょ……」

 

「貴方様のような可憐な女性に好かれるなど我が今生にて最高の幸せと言えます。ありがたき幸せ」

 

「中身を変えても棒読みが変わらなければ意味はないんじゃない!?」

 

 

 

全くもって仰る通りで。

 

 

 

 

「それで?何か分かったのか?」

 

「えぇ。間違いなく『黒』ね」

 

「ふぅん………」

 

 

 

豚の生姜焼き定食を頬張りながら相槌をうつ。

 

 

黒。すなわちデュノアは女の子だということだ。

しかし、よくフランス政府とかを出し抜けたな……そこはどう突破したんだ?

 

 

 

「そこは袖の下を使ったみたいね。常套手段よ」

 

「どこの政府も似たようなもんだな。ゲロ以下の臭いがプンプンするぜー」

 

「なに?最近棒読みに嵌まってるの?」

 

 

 

いかんいかん。あの童女の喋り方がうつってるのかもしれんな。直さないと。

 

 

 

「んで?黒だったから────どうしろと?」

 

「……どうしろ、とは?」

 

「ぶっちゃけデュノアがスパイであろうがあるまいが関係ないんだよな。俺がデュノアを気にするのは、()()()()()()だ」

 

「……やっぱり、彼女は?」

 

「十中八九。今日1日接してみて、原因は多分こんなところかなとは予想はついた」

 

「へぇー。女の子をお姫様抱っこして楽しんでただけじゃないのね」

 

「………………」

 

 

 

なんでしょう、その目は。何故そんな責められるような視線を受けなければいけないのでしょうか………

 

 

 

それはともかく。

デュノアの原因。怪異を引き寄せた────怪異を宿らせた、加害者の業。

 

 

 

「……ま、デュノアの詳しい事情を知らないわけだし、あくまで推論だけどな」

 

「ふぅん……その『事情』は聞き出したりするの?」

 

「ん、まぁそこをなんとかしないと、根本的解決にはならないだろう────ただただ『ぶった斬る』だけなんて、悪手中の悪手だからな」

 

 

 

怪異斬り。

これは俺の専門家としての異名だが──実際これは、【劣化心渡】を振るうことはある意味『最悪の選択肢』と言えてしまうのだ。

 

 

 

つまり、根本的解決の放棄。

 

 

 

篠之乃箒の時、俺は迷うことなく彼女の惑い狐を【劣化心渡】で斬ることを選んだが、あれは緊急事態だったからだ。あれ以上進行が進んでいたら取り返しのつかないレベルだったので、一端祓ってアフターケアをきちんとするつもりだった。もっとも、乱入してきた夜竹によって『根本的解決』が計らずも出来てしまったため、その必要はなくなったが。

 

 

本来、怪異祓い────専門家の仕事は根本的解決も同時平行で怪異を祓う。

何故なら、原因を取り除かなくては────加害者が加害者たる所以を消し去らなければ、その人間はまた怪異に憑かれることになるからだ。

 

 

一度怪異に関われば────再び怪異に関わりやすくなる。

 

 

 

例えばある少女が『ある人を消し去りたい』と望む。

その理由は痴情のもつれであったり、友情の破壊であったり、様々だ────そして、その【望み】を叶えんと少女にある怪異が取り憑いた。

 

そこに怪異を消し去れる────問答無用で『ぶった斬れる』チート級のアイテムをもった専門家が現れた。

 

専門家は良心からバケモノと化した少女を救おうと、そのアイテムを使い、怪異を少女から祓った。

 

 

めでたしめでたし、ハッピーエンド────そんなわけがない。

 

 

 

 

『消し去りたい』と望む少女の願いは全く変わっていないのだ────根本的解決に至ってないのだ。

 

怪異が消えても、加害者たる原因はなくなっていない。

 

 

一度祓われ────再び憑かれるだけ。

 

 

 

それを防ぐためにも、『理由』の解決は必要不可欠なものなのだ。

 

 

 

「ま、デュノアは俺と同じ部屋なんだろ?なんとか聞き出すさ……うーん、口で言うほど簡単なことはないなぁ……」

 

「ちょっと?目が死んでるわよ?」

 

 

 

デュノアと俺は同じ部屋に住む→デュノアは女の子→女の子と同室→死ねる。

 

 

あぁ、全く。一体どうしてこうなってしまったんだろうな…………はぁ、鬱だ。

 

 

 

 

「私が言えることじゃないけど……頑張ってね……?何か手伝えることがあったら手伝うから」

 

「…………おう」

 

 

 

俺は食べ終わった定食のトレーを持って立ち上がり、楯無の後ろに口元をひくつかせ、腕組みしながら立つ生徒をちらりと見て、

 

 

 

 

 

 

「けど、その前にお前生徒会の仕事やれよ」

 

 

 

 

 

「た〜て〜な〜し〜さ〜ま〜??」

 

「ひぃっ!?虚ちゃん!?」

 

「昼は生徒会室で打ち合わせをすると言っておきましたよね!!??」

 

「あ、あははは〜?そ、そうだったけ?」

 

「…………よくわかりました。楯無様。今日から溜まりに溜まった仕事が無くなるまで休み無しです」

 

「ちょっ!?虚ちゃん今どれだけ仕事が溜まっていると…………!!??」

 

「自業ッ!!自得ですッ!!」

 

「勘弁してーーーー!!!!」

 

 

 

首根っこ掴まれて引き摺られていく楯無は、控えめに言っても最強の暗部の当主とかロシアの現国家代表操縦者とか知る人ぞ知る専門家だとか、そんな片鱗を感じさせないどこにでもいる、ただのぐーたら娘だった。

 

 

 

 

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