今回なんか迷走しちゃってるかもしれないです。
ほら、あの無表情童女が出てくるので。
013
「…………私は」
シャルロットは顔を俯け、肩を震わせている。今彼女がどんな顔をしているのか俺には分からない。
「……ま、散々言っといてなんだが、助けを求めるかどうかはシャルロット、お前が決めることだ。俺はただそれに答えるだけで」
そう一言言い、俺は扉へ足を向ける。
「ちょっと俺は用事があって席を外すから…………話があるなら、後で聞く」
がちゃりとドアノブを掴んで扉を開けて外へ出てきくとき、後ろのシャルロットが何かを言った気がしたが────何も聞かなかったことにした。
「ふふーん、格好いいわね」
「……盗み聞きとは趣味が悪いな。そんなんだから高校生になってポテンシャルが高くなっても彼氏が出来ないんじゃないか?」
「なっ────」
透君に言われたくないー!!とかなんとか顔を真っ赤にしてきゃいきゃい言ってる楯無をスルーしながらシャルロットがいる部屋の扉を見つめる。
彼女が助けを求めるか否か。
俺としてはそうして欲しい。求められなければ動けないからだ。
とは言っても、もし彼女が暴走したりしたら俺は止めなければならない。惑い狐のときはそのパターンであり、例外の一つ。
だが篭り亀は戦闘が出来るような怪異ではないし大丈夫だとは思うが。
「でもねぇ?透君。彼女……あなたに惚れたわよ?」
「はぁ?惚れた?デュノアが?俺に?ははは!ないない」
「この鈍感女たらしが…………」
「いやどういう意味だ」
「べっつにー?そうやって透君もハーレムを作っていくんだなーって」
「だから人聞きの悪いこと言うな。俺はどこの織斑だよ。余接にも言ったことがあるがハーレムとか理想であって現実じゃない」
「そう言えばその余接ちゃんはどこなの?」
「ISの拡張領域の中」
「量子化されてるってどんな感覚なのかしら……」
「存外居心地はいいんじゃねーの?モンスタ○ボールみたいな感じで。もしくは金髪ロリ吸血鬼が棲む影の中みたいなのか」
「DSとかやってるのかしら」
「んー、どうだろうな。一端だしてみるか。人払いもしてあるんだろ?」
「察しがいいわね……えぇ。もしデュノアさんが暴走したときのためにね」
「なら大丈夫だろ。じゃあ……【展開──余接】」
廊下に光が溢れ、その光が収束していき人の形をとる。
最近出番が少な────もとい用がない余接の久しぶりの登場である。
彼女はとんっ、と軽快な音をたてて廊下の床に足をついた。
………………何故か全裸で。
「「服を着ろぉおーーーーッ!」」!
「やぁやぁお兄ちゃん。そしておねぇちゃん。久しぶりだね」
「挨拶はいいから服を着ろ!あ、量子化されてんのか!?くそっ拡張領域のリストは────えっーと【余接のワンピース】【余接の帽子】【余接のパンツ】ってなんで一まとめになってないんだよ!細分化する意味は!?」
「いいから隠しなさい!都条例に引っ掛かるわ!透君が捕まるわ!」
「お兄ちゃんが捕まる?それは正しい場所に帰るということかい?」
「誰の帰る場所が留置場だって!?」
「おっとそれは鬼いちゃんの方だった」
「確かにあの人の帰る場所は留置場かもしれんな!前も幼女と少女に(物理的に)手を出してたし!」
「それともなんだい?お兄ちゃんは僕のないすばでーな裸に興味津々なのかな?」
「そんな貧相な体に興味があるか!ええいとにかく服を着ろぉおーーーー!!」
人払いをしておいて良かった。心の底からそう思った瞬間だった。
「で?なんで裸だったんだよ」
「どっきり?もしくはサービス」
「貰うことに戦々恐々しなきゃいけないサービスとかいるか!つーか誰に対するサービス!?」
「そりゃあまぁ読者さんさ。僕の出番ってりんいんリターンでISの拡張領域に仕舞われて以来激減したじゃない?読者さんたちも僕のことを忘れてるんじゃあるまいかと思ってね。インパクトのある登場の仕方をしてみたというわけさ」
「インパクトありすきだろ。セカンドくらいには威力あったよ。具体的にはこの作品が終わりそうなくらいにはあったよ」
「ぶっちゃけ運営さんに消されないか不安だね。存在ごと無かったことにされたかもしれない」
「そうか、運営こそが【くらやみ】だったのか…………」
「あなたたち何の話をしてるのよ…………」
おかしいな。さっきまで結構なシリアスパートだった筈なのにこの童女が登場してから一気にギャグパートになってしまった。
「それに全力でのっていくあなたもあなたよ」
それはともかく閑話休題。
「余接、ISの拡張領域の中ってどんな感じなんだ?」
「そうだね…………居心地がいいとかそういう感じはないかな。そもそも肉体面での感覚がない。意識のみって感じ。やろうと思えばハイパーセンサー経由で外を見れたりもするよ」
「ほーん…………」
「肉体は量子化されて意識はサポートプログラムとして電脳空間に溶け混んでいるってことかしら……なんにせよ普通のISじゃおこりうりそうにない現象ね」
「いや多分このIS臥煙さんの手が入ってるし」
「ならしょうがないわね」
うんうんと手を組んでうなずく俺と楯無。
そうだね、臥煙さんが手を加えたなら仕方ないね。
「それよりもお兄ちゃん。シャルロット・デュノアだっけ?亀のお姉ちゃんを放置していいのかい?」
「放置してないから。デュノアが落ち着くまで待ってるだけだから」
「そういってお兄ちゃんは新手のプレイに嵌まっていくのだった…………」
「変なモノローグをいれるな嵌まってなどいないしプレイに興じてもいない」
「透君…………そんな趣味が」
「プレイじゃねぇっていってんだろその扇子引き裂くぞ」
『驚愕!』と書かれた扇子で口を隠しながらわざとらしい驚きの顔をつくる性格の悪い生徒会長だった。
「まぁでも僕はお兄ちゃんのどんな性癖にも対応できるよ?少しばかり死体フェチになってもらうけど」
「対応せんでいい…………」
「お兄ちゃんの好みの女の子を演じてあげよう」
「へぇ?それは興味あるわね」
「いやお前俺の好みなんていつ…………はっ!?貴様まさかあのアパートに住んでいた時、ベットの下を除いたのではあるまいな!?」
「『えへへ…………お兄ちゃんのためなら、私、何でもできるよ?』」
「いやそんな趣味はないが…………なんだろう。そこはかとなく蛇神様が言いそうな台詞だな」
「えぇ。髪が白蛇な神様がいいそうね」
「お兄ちゃんが好きそうな台詞第二弾。『べ、別にあんたのことなんて好きじゃないんだからね!』」
「またベタなツンデレを……あと棒読みなのがすごい気になる」
「じゃあ……『お姉さんが優しく……教えてあげよっか?』
「………………」
「…………透君はそういうタイプが好みなんだ。ふーん」
「いや違う。違うから」
「お姉さん、君のこと結構タイプなんだよねー(チラッ」
「あざとい。出直してこい」
「むっきー!!」
そしてまたまた閑話休題。
「じゃあそろそろ部屋に戻る。余接、拡張領域に戻ってくれ」
「戻ってくれ?お願いならお願いするにふさわしい態度があるだろう?」
「あぁすまん。言い方を間違えた。戻れ。四の五の言わずに」
光の粒子となってISに吸い込まれていく余接を横目に楯無にも帰るよう目線で促す。不満そうだったが渋々楯無も『……寂しい』と書かれた扇子をちらちら此方へ見せながら部屋へ戻っていった。
「…………はぁ。シリアスとはなんだったのか。全く、ギャグ要員のあいつらがいるとシリアス要員の俺がフォローせざるをえないぜ」
楯無が聞いたら全力で突っ込まれそうなことを呟きつつ、俺の部屋の扉を叩く。
中からデュノアの返事が聞こえたのを確認し、俺は中へと入っていった。
「よぉ、落ち着いたか?」
「……うん。ありがとね」
疲弊した笑顔でこちらを向くデュノア。
気遣って今日はやめておこうかとも思ったがこういうことは早々に済まさなければずるずる先伸ばしになってしまう。
「……さて、それじゃあ答えを聞こうか────シャルロット。お前は俺に、どうしてほしい?」
答え。決意。覚悟。
暫しの沈黙のあと、デュノアは口を開き──────
「透────僕を、助けて欲しい」
014
後日談というか今回のオチというか、蛇足のようなもの。
ひとまず彼女の正体については織斑先生と楯無にはきちんと報告しておいた。
いざというときに手を貸してくれる人材として、この二人以上役に立つであろう人はこの学園にいないだろう。
楯無はやはり余裕ぶって渋っていたが学食のパフェを奢るということで買収。チョロい。あいつお嬢様のはずなのに。
織斑先生はまた厄介事か……と頭を抱えながらぼそっと呟いていた。お疲れ様です。
あと今度ゆっくり話そうとかいい笑顔で言われた。一瞬死を覚悟した俺は悪くない。
…………あと怖いのは夜竹なのだが、これはデュノアの個人的事情とか含まれてるので今は黙っておく。時がきたら話すつもりだがその『時』のために包帯とか用意しておいた方がいいのだろうか。
何はともあれ俺はデュノアを助ける。
篭り亀は専門家のカウンセラーとしての側面をフルに使って解決するべき怪異なので、これからゆっくり問題を解決していくつもりだ。
焦ってもいいことはなし。
デュノアが心を────閉じた甲羅を開けるように俺は手助けをしていくだけだ。
だが、まだ俺は休むわけにはいかない。
デュノアと一緒に転入してきたラウラ・ボーデヴィッヒ。
銀髪の少女もまた、怪異に憑かれていると推測している。
彼女の問題も解決するため俺は働かなければならないのだ。
「…………眠い」
朝。眠い目を擦りながら起きた俺の目に制服を着て準備を終えたデュノアが入る。
「……随分早いな」
「何言ってるのさ。もう登校する時間だよ?」
「………………what?」
時計を見れば確かにいつもの起床時間を大幅に過ぎている。
ちなみに今日の荷物は明日の朝準備すればいいか、と全くなにも入れていない。
「………………やばい」
冷や汗がだらだら出てきた。朝のHRには織斑先生が…………
「じゃあ僕は行くから。頑張ってね」
「おい待てシャルロット!頼む助けてくれ!」
「えぇー。助けられるには助けられるなりの覚悟が……」
「助けてくださいお願いします!!」
「あはは、冗談だよ!だから…………」
「私のことも、助けてね」
その笑顔を直視した俺は、あぁやはりこいつもただの女の子に過ぎないのだと────そう思ったのだった。
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