ちなみに今回始めてIS側のキャラが出てきます。
005
IS学園。
文字通りISについて学ぶ施設で世界中から入学希望者が殺到、倍率はおかしい数字で今も上がり続けているのだからその人気ぶりが窺える。
だがそんな超人気なISには超駄目な欠点があって、それがネット上で『史上最強の欠陥機』なんて言われる原因となっている。
それすなわち、女性しか扱えない。
誰でも使い方さえ覚えれば一定水準の結果を出せることが前提の『武器』には程遠い────しかし従来の武器を役立たずにするほどの性能を誇る『兵器』。それがインフィニット・ストラトスだ。
「とまぁ色々調べたところで結論を言おうか」
「なんだい?結論って?昨日からパソコンの前から動こうとしなかった引きこもりのお兄ちゃん」
「うるせぇ余接、黙って聞け。このISとかいうもの───明らかな失敗作じゃねえか!!」
暴走童女がぶち壊したドアがダンボールで塞がれた、自分以外漫画を読み漁る童女しかいないみすぼらしい部屋で大声で叫ぶ男がいた。
というか俺だった。
「失敗作?でも普通に使われてるじゃないか」
「その使われ方が問題なんだっつの。ISって元々宇宙用に開発された筈だろ?けど今は表向きはスポーツ、裏では兵器として使われてる。本来の用途で使われないものなんて失敗作以外の何物でもないだろ」
しかも女しか使えないときている。そのせいで女尊男卑の世の中になっているしな。
欠点問題点ありまくりのこんなもの使いたくないなぁ……… と、明日に迫った適性検査に思いをはせる。
「まぁでも臥煙さんが君はISを動かせるって言ってるんだし、逃れようはないでしょ」
「だよなぁ…………はぁ」
ゆーうーうーつーだー
「全く、お兄ちゃんは時々子供みたいになるな…………そんなお兄ちゃんにプレゼントだ」
「プレゼント?」
はて、なんだろうか?
丁寧にラッピングされた箱を手渡され、首を傾げる。
とりあえずリボンをほどき、箱を開けると中には────
「幼女童女少女のぬいぐるみ詰め合わせセットだよ」
「超いらねぇ!!」
────三体の可愛らしいぬいぐるみが入っていた。
「なんで!?なんでこのチョイスなんだよ!!」
「いやねぇ、ここまでで僕と蝸牛のお姉ちゃんは出たけどあの後期高齢者は出てないでしょ?だから三人揃ったカットはいると思って」
「余計な気遣いだ!」
あと前に後期高齢者って言ったらフルボッコにされてなかったかお前!?懲りないなぁ!!
「それじゃあこっちはどう?」
「やけに長細いなぁこれ…………」
嫌な予感がする…………
恐る恐る開けてみると────抱き枕カバーだった。
「斧乃木余接と寝るときも一緒に。抱き枕カバー」
「もっといらねぇ!!」
なんでこんなんばっか!?あとどうやって作ったんだよこれ!
「僕の人気を上げておく為の布石だよ。ほらこの作品のメインヒロインって僕だし?」
「お前がいつメインヒロインになった!?お前なんてぽっと出の噛ませ犬役で十分だ!」
ぎゃいぎゃい余接と騒いでいると───
「おーい透ー優しい幼馴染みがご飯届けにきてあげたよーって何これ玄関がダンボール!?ちょっと透!?大丈夫な、の…………」
「………………えっと」
状況確認!
幼馴染みの男が見知らぬ童女とくんずほぐれつしていて周りには幼女童女少女のぬいぐるみと抱き枕カバー!
うわ言い逃れできないほどに犯罪だ!
「…………え?何これどうなってるの透?絶命、じゃなかった説明してくれない?」
「いや、これはそのー」
…………oh
006
「で?」
「いやなんといいますかほらあれですよ仕事関係のことなんですよえぇはい仕事です仕事怪異関係なんですつーかこいつが怪異なんです付喪神って知ってる知ってますよねそいつなんですまぁ色々あってさっきのは誤解なんですよマジで!」
おー俺の肺活量ぱないな。この長文一呼吸で言えたぞ。
「私の目を見て?透」
「…………はい」
…………俺の幼馴染みが怖すぎる件について。
夜竹さゆか。
一応小学生の頃からの知り合いだ。IS学園に入学することが決まっており、かなり優秀な部類に入る。
そして俺が専門家としての道を進み始めたとき──つまり中学一年生のとき────彼女は、蜘蛛に憑かれた。
「絡新婦」
くも目ジョロウグモ科ジョロウグモ属。
女郎蜘蛛ともいう全国で見られる怪異である。
その姿は恐ろしい大蜘蛛の姿をしていると伝わっており、男を蜘蛛の糸で絡めとり、そのまま食べるという怪異譚の中では割りとよくある話だ。
しかしあのとき夜竹についたのはどちらかといえば伊豆の方の言い伝えである滝の主としての側面が強く、真夜中に学校のプールサイドに呼び出され、そのまま水の中に引きずりこまれかけたことをよく覚えている。
そのときの夜竹は────まぁ、かなり恐ろしい風貌だった、とだけ言っておこう。
もちろん彼女が被害者というわけではなく、忍野曰く、怪異は人の願いから産み出され、すべての原因は人にある。らしい。
この場合はなんでも「透が遠くに行っちゃう気がして、縄で縛り付けても────糸で巻き付けてもずっと私の側にいて欲しかった」らしい。
当時はヤンデレかよ、と突っ込んだものだがまぁ思春期の女子なんてあんなものかと無理矢理納得した。
そのときに彼女の好意に気がついて返事を迫られたりしたが今は保留とさせてもらっている。いやヘタレとかじゃなくて彼女の方から「いずれ透の方から告白させてみせる」と言われたので保留となっているのだ。
あのときはまだ怪異殺しも持ってなくて祓うの苦労したなぁ……と現実逃避していると首をぐいっと持たれて強制的に正面を向かされた。
ていうか近い近い近い近い近い近いいい匂い!顔が近いですよ夜竹さーん!!
これはあちら側にとっても想定外のようでその整った顔を(怒りからかもしれないけど)赤く染めながら怒ったような声で
「透君。私は怒っています」
と言った。…………いや怒ったような声でとかじゃなくて完璧に怒ってますわ。自分で怒っていますとか言っちゃうレベルで!
「だから私には謝罪が必要です」
「はい…………仰る通りです」
ふっ一体何をされるのやら…………そもそも悪いことなんてしてないんだよなぁ俺。
「今そもそも悪いことしてないんだよなぁ俺とか思った?」
「ははははいやまっさかー」
全力で目を逸らしながら言い訳。
「はぁ…………ねぇ透。三年前、約束したよね?」
「…………あぁ」
約束。
彼女が怪異から開放されたとき、交わした約束。
『私を置いて行かないで』
夜竹から蜘蛛を祓うために重症をおった俺に言った言葉。
悔しさと苦しさと怒りと心配が混ざったような声で涙と共にこぼした言葉。
他人にしてみれば異常だと思うだろう────誰かから置いて行かれるのも誰かを置いていくのも日常茶飯事だ。
そんなこと分かりきってる。分かりすぎなほどに分かりきってる。
けれど。
それでも俺はその約束を守りたい。
異常だと、おかしいと思いながらもその約束を全うしたい。
それが────彼女と俺の、約束。
「ちゃんとさ…………守ってよ?」
「…………あぁ」
きっと彼女は心配したのだろう。家に遊びに来たら玄関の扉の代わりダンボールが貼ってあるのだ。それは心配もする。怪異と関わるということはかなりの危険を伴う。それこそ────死んでも、おかしくないくらいに。
ちゃんと、死なないように、置いてかないようにしないとなぁ…………
「でも謝罪の件は謝罪の件です」
「…………ですよねー」
結局、余接のことを説明してから新しく出来たというパフェ屋に行くことになった。もちろんパフェだけでは済まなかったのだが────それはまた、別のお話し。
「というか余接、お前最後超空気だったな」
「頑張って気配を消してたんだよ、褒めてほしいくらいだね」