怪物語   作:柴犬好き

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ほうきフォックス 其の壹

001

 

 

 

 

世界初の男性操縦者、織斑一夏の発見により実施された全男性の適性検査。とはいってもただISに手を触れれば良いだけで特に難しいことはない。

 

単純な検査なのでずらりと並んだ男の列はどんどん消化されていく。

 

その中間あたり、引きこもりのような格好をした少年が明らかにやる気が無さそうな顔で立っていた。

 

負のオーラをびしびし放っているその少年は周りの人間にも避けられ、周りにエアスポットが出来上がっていた。

 

(周りの男共の期待の空気がうっとおしい…………ハーレム願望ですかそうですかぁ?)

 

前のウェイウェイ言っているリア充とか、妄想してぐふぐふいってる牛乳瓶の底眼鏡とか、死ねばいいのに。

 

(これじゃあ余接と話している方が何百倍もマシだ)

 

そう思ってここに来る前の会話を思い出す。

 

 

 

 

 

 

「ところでお兄ちゃんはハーレム願望ってある?」

 

身支度(とはいってもいつものジャージなのだが)を済ませ、さぁそろそろ行こうかなーとしていたとき、余接にそんなことを言われた。

 

「ハーレム願望?いやねぇよ」

「ふぅん、どうしてだい?モテまくることは男共通の夢って言ってたよ」

「誰がそんなこと言ったんだよ」

「鬼いちゃん」

「あの人は…………」

 

そろそろ余接にいい加減なことを教えるのは勘弁して欲しいんだが。この軽い性格とかあの人の影響だろうし。

 

「ハーレム?そんなもんは二次元の幻想だっての。まずはそのふざけた幻想をぶち殺すだ」

「僕的にはここから先は一方通行だのほうが好きだけどね」

 

色々破壊してるしロリコンだし、と余接。

いやロリコンなのは打ち止め限定じゃねえの?

 

「まぁ幻想殺しじゃないけどさ、ハーレムはやっぱ甲斐性も持ってないといけないしそもそもモテないといけないだろ。それこそ織斑一夏じゃないけど」

「それならお兄ちゃんもそこそこモテるしできるんじゃないの?」

「いやモテないから…………」

 

そもそも人と関わることが少ないのにモテるとかないから。

 

「お兄ちゃんはもっと人とコミュニケーションをとったほうがいいよ」

「余計なお世話だっての。じゃあ行ってくるわ」

「うん、いってらっしゃい。精々頑張ってね」

 

 

 

とまぁ正直中身なんて無い会話なんだけどそれが楽しいんだよなぁ。

 

と、思っていたらどうやら順番が次の次の次になっていたらしい。

 

あのリア充は普通に反応なくてがっくりしてた。ざまぁ。

 

牛乳瓶の底眼鏡も反応なくて「嘘だ!」とか叫んでたけど連れてかれていった。ざまぁワロタ。

 

 

「では次の方」

 

受付の女性も明らかにやる気がなくて「どうせ私らより劣る男がISなんて動かせるわけないでしょ」という感情が伝わってくるほどだ。

 

 

はぁ、と溜息一つ。ゆっくり手を伸ばし────ISに、触れた。

 

 

 

 

 

その瞬間、大量の情報が頭に直接流れ込んできて、いつの間にかISを装着していた。

 

 

 

 

駆動系の出力、ブースターの可動角度、ハイパーセンサーの接続チェック、シールドエネルギー残量、武装の種類、弾薬の種類、PIC動作チェック、etc.

 

 

 

 

 

 

だがそんな情報は何の意味も持たなかった。

 

 

「…………ん?いやこれって…………」

 

 

────それはきっと彼だから気付いたことだろう。

 

────それに長い間触れ合っていたからこそ、気付いたことだろう。

 

────そもそも、ISに専門家が関わること自体初めてかもしれない。

 

────だから、今まで誰も気づかなかったのだろう。

 

 

「あぁ、なるほど。だから世界中の科学者が寄って集っても解析できなかったのか」

 

 

────だが、彼は気付いてしまった。

 

ISの────インフィニットストラトスの、秘密を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これ、半分こっち側じゃん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

002

 

 

 

 

IS学園は離島の上に建てられており、そこに行くためのルートは直通モノレールしかない。いかなる国家、組織の干渉を受け付けないこの学園は完全に女の花園となっている。生徒は勿論、教師も女性。男といったら用務員のおじさんくらいのこの学園に二人の男が入学した。

 

 

一人は織斑一夏。

かの世界最強(ブリュンヒルデ)の弟でありあだ名は『朴念神』や『人間旗折り機(フラグブレイカー)』、『究極の女泣かせ』など。ルックスはよく、文句なしのイケメン。まさしくハーレムもののラノベの主人公である。

 

二人目は大嶺透。

有名どころかそもそも家族はおらず、小学生のときのあだ名は『透明』(名前と影が薄いことがかかっていた)。ルックスは平凡、文句たらたらのフツメン。ラノベの主人公どころか序盤に出てくる主人公の能力を初めに食らう噛ませ犬で十分なキャラ。

 

 

 

なめとんのか。

 

 

 

かたやイケメン、かたやフツメン(誇張表現)。あぁこれが格差社会か。この世の全てのイケメンよ、滅びよ!バ○ス!

 

 

「一人でぶつぶつ言って悲しくないのかい?お兄ちゃん」

「分かってるよそんなことは!というか本気でついてくるつもりなのかよお前は!?」

 

 

そんなこんなでモノレールの駅にいる俺である。

 

あの適性検査から早一週間。政府の人間を名乗る黒服に拉致られ、ホテルに缶詰めにされてストレスが限界に達しかけてこのホテルごと粉砕したろかと思いかけたとき、荷造りをしてIS学園に入学しろと言われた。

 

黒服に囲まれながら荷造りをし──怪異殺しは幻術で誤魔化した──リムジンに詰め込まれてたどり着いたらモノレールの駅。そこから学園に向かえとのこと。

 

 

「しかしお前がマジでぬいぐるみのふりしてくっついてくるとは思わなかったよ!」

「黒服のサングラス越しでの視線が痛かったね」

「ホントだよ!」

 

ちなみに今余接は俺のリュックサックの中に詰め込まれていて帽子のうさみみのようなものが飛び出ているくらいなので、見られてはいないが荷物が超嵩張る。

 

「はぁ、仕方ない。お前がいた方が何かあったときに便利だもんな」

「お兄ちゃんは怪異特化で対人では決定力をもたないからねぇ」

 

その通り。怪異殺しは確かに強力だが怪異にしか効かない。人間に対しては他の手段をとるしかないのだがその決定打を未だに見つけることが出来ていないのだ。

 

「まぁそっちはおいおいかな。さってと丁度いいタイミングでモノレールも来たことだし、学園に行きますか」

「学園異能バトルの開幕だね」

「どちらかと言えば学園科学バトル────んにゃ、異能バトルでも半分あってるのか」

 

 

と、どうでもいい中身のない会話を繰り広げながら急造ツーマンセルは学園へのモノレールへ乗り込んだのだった。

 

 

 

 

 

 

 

003

 

 

 

 

 

場所、学園の第一アリーナ。

人物、俺、そして織斑千冬(世界最強)

二人とも日本の量産型第二世代IS『打鉄』に乗って臨戦態勢。

 

「どうしてこうなった」

 

 

時は数時間前に遡る────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほーん、これがIS学園ねぇ…………」

 

なんか用途不明のオブジェ的な塔とか建ってるし電光掲示板とかそこら中にあるし色々規模がデカイし。

 

「金かけとるなぁ」

 

余接が静かだと思うかもしれないが、今余接には絶対喋るなというかお達しをだしている。リュックサックの中から喋る童女のぬいぐるみがっ!!なんてことになったら社会的に死ねる。いやマジで。

 

と、向こうからどうやら迎えらしい人が駆けてくるのだが…………なんだあの胸は!?走る度に上へ下へと縦横無尽に────ってやべぇ理性を失うな俺!落ち着け俺!素数を数えるんだ!…………1って素数だっけ?

 

 

「はぁ、はぁ…………遅れてすいませんでした…………」

 

いやいいから!遅れてもいいから!その前屈みはヤバイて!

 

「お兄ちゃん、流石にいまのお兄ちゃんは僕でも引くよ(小声)」

「分かってるから喋るな余接!(小声)」

 

小声で叫ぶという器用なことをしていると息を整えたのか

 

「あの…………」

「あぁいえ大丈夫ですよ、俺も今来たところですし」

 

それにいいもの見せて貰いましたし。

 

「そうですか……あ!じゃあ案内するのでついてきて貰えますか?」

「はい、了解です」

 

爆乳教師(山田摩耶というらしい)は俺を連れてどんどん進んでいく。辿り着いたのはなんというかサッカーのスタジアムのような場所だった。

 

「ここは…………?」

「えっと第一アリーナです。ここではISを用いた訓練だったりトーナメントもここで行われます」

 

へぇ、簡単に言えばISを動かす場所なのかー

 

 

………………ISを、動かす?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そういうわけでこれからISを使った戦闘試験を行います」

「だと思いました…………」

 

ここはカタパルトが設置された格納庫のような場所。ここからISが出撃するらしい。

 

「大嶺君が今回使うのは第二世代IS『打鉄』です。純日本製で防御よりの機体ですね」

「はぁ」

 

防御よりか…………俺の基本の戦闘スタイルは一撃離脱だから防御はあまり重視してないんだよな。まぁ生身で戦うのとはまるで違うだろうし最初はこれでいっか。

 

 

適性検査のようにISを装着するがあのときのように大量の情報が流れ込む、ということは無いらしい。

視界にはホログラムウィンドウが浮かび、ハイパーセンサーのお陰で全方位が見渡せる。武装はブレードとアサルトライフル。残弾のチェック完了。シールドエネルギー残量確認。

 

 

「シールドのお陰で大嶺君が怪我することはないですが攻撃が当たるとエネルギーが消費されてゼロになると負けとなります」

「分かりました。あ、あと対戦相手って誰ですか?」

 

訊ねると顔を逸らされた。え?なぜ?

 

「えーと、あのその…………頑張ってください」

 

………………不安だ。超不安だ。しかしやるしかない。もう後には!退けないんだよ!(主人公感)

 

 

「大嶺透、打鉄!出る!」

 

カタパルトで射出され、アリーナの中央へ。

するとそこには────

 

「…………世界最強(ブリュンヒルデ)

「初めましてだな大嶺透────だが私のことは織斑先生と呼べ。その名は嫌いだ」

 

 

そう言って織斑千冬はニヤリと不敵に笑ったのだった。

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