アンケートをやってます。詳しくは活動報告をどうぞ
007
篠ノ之箒を初めて見たときの印象は『鋭利な刃』だった。
人と関わろうとせず、触れる者を切り裂く、刃。
よく言えばクール、悪く言えば協調性がない。
そんな印象を持つが、その態度は織斑一夏に対してだけは軟化する。
拒絶の刃は────なまくらとなる。
それでも鈍感な態度をとられると攻撃してしまうようだが、他の人との接し方とは大違いだった。
まぁきっと彼女は彼のことが好きなのだろう。
好意を抱き、添い遂げたいと願う。
それはちゃんとした────確固たる『愛』なのだろう。
だが。それも行き過ぎれば恐怖の対象となる。
羨望と称賛は────恐怖と気味悪さへ。
薬も過ぎれば────毒となる。
まぁ────『愛』を薬と形容するかは、人それぞれだが。
「うん、ちゃんと遅れずに来たわね。感心感心」
クラス代表決定戦の件の翌日。放課後に楯無に早速訓練をするとアリーナに呼び出され、来てみたらスク水とニーソックスを組み合わせたような服を着た楯無がいた。
「…………やっぱりお前痴女じゃね?」
「ほんっとに失礼ね!!これはISスーツよ!!」
なん…………だと…………!?なんてエロい格好なんだ!けしからん!もっとやれ!
「全く…………あ、そういえばあなたの専用機、開発されてるみたいね」
「相変わらず情報が速いことで。代表決定戦のときくらいに届くらしい」
今日織斑千冬が言っていた。織斑の専用機もあるらしいし男性操縦者のデータサンプルをとるためだろうな。
せめて反応速度の高い機体を用意して欲しいが…………専用機を貰えるだけ御の字、といったところか。
「それじゃあ暫くは打鉄でやる?」
「うーんそれでもいいんだけど…………なぁ、他に何かないか?」
どうせならいろいろなタイプの機体を試しておきたい。この学園にあるISが打鉄だけってわけでもないだろうし。
「それならラファール・リヴァイヴって機体があるわ。フランス製で様々な武装に対応してる正しく汎用機って感じの」
「んー、んじゃそれで」
そうして代表決定戦までの今日を含めて6日、俺は楯無と共に特訓を始めたのだが…………
「飛べない?イメージよ!透君は難しい理論とか分からないだろうからイメージしなさい!」
「はい!そこで射撃!…………遅い!そんなんじゃ簡単に避けられるよ!」
「反応速度が一瞬遅いならあなたが生身でやるより一瞬速く反応しなさい!言い訳しない!」
「武装は最低一秒以内で実体化!そうしないと相手の動きに対応できない!」
すごいスパルタだった。鞭とレオタード装備させたら様になるんじゃないか。
「余所見をしない!」
「うおっ!?」
水色のランス────蒼流旋のガトリングガンが火を吹き、シールドエネルギーが一気に減る。慌てて距離をとり、マシンガンをコール。楯無の専用機『ミステリアスレイディ』に向けて引き金を引くが、弾丸はことごとく外れてしまった。
「だぁー!!当たらねぇ!」
「まぁこれは慣れよ。それよりあなたは近接系統の武装をメインにするの?」
「ん、そうだな…………今まで怪異殺しを使ってたしブレードをメイン装備にするつもりだ」
けれど、だからといって中・遠距離武装を使わないという訳にはいかない。近接しか使えないとなると離れて弾丸を撃ち込まれてゲームオーバー、なんてことになりかねないからな。
「そうそう近接と言えば。件の織斑一夏君、剣道をしてるみたいよ」
「…………それはなんというか」
ば、で始まってか、で終わるアレじゃあ…………ん、でも生身の戦闘経験はISであろうが役に立つだろうし────いや、たかが一週間の経験が、それも剣道という『魅せる剣』をしていて変わるのだろうか。戦うというなら『殺す剣』を修得するべきで────
「透君?」
「…………いや悪い、考え事してた」
全く、何を考えているのやら。普通の高校生がやるなら『魅せる剣』が一番だ。『殺す剣』など────俺みたいな奴が、することだ。
「さってと!特訓再開しますか!」
「えぇそうね!後半はもっと厳しくするわよ!」
「え、いやそれはちょっと」
その後しばらく、アリーナに男の叫び声が響いたという。
一週間後。話題の男性操縦者が一組のクラス代表を決める戦いに参加する、という話が学園中に知れ渡った結果、第一アリーナは大量の観客が詰め寄せていた。聞くところによると賭けすら行われてるらしい。まぁ織斑千冬に拘束されたらしいが。
それにしても、このISスーツとやらは全身タイツっぽくて嫌だなぁ…………ほんとは女性のみが着る奴なんだろ?これ作った奴タイツフェチとか?
織斑は織斑で篠ノ之と剣道がどうの訓練がどうの騒いでいる。
どうやら本当に一週間剣道をしていたらしい。人のせいにするなよ…………
そして今現在、俺達のISは到着していない。なんでもかなりぎりぎりに届くそうで、このままだと
楯無との戦闘訓練と並行して行った座学の知識を思い返していると、おっぱ──ゲフン山田先生が駆け寄ってきた。
「織斑くんっ!大嶺くんっ!!来ましたよ!君達の専用機がっ!」
「よし。織斑、先に行け。
「わかった!千冬姉!」
「織斑先生だ(スパァン!)」
ぶれないな織斑先生…………弟が試合前だというのに超クールだ。
「大嶺、お前はどうする?」
「それは最適化を織斑の試合中にするのか、という問いなら答えはノーですよ。織斑が試合中にするなら俺も自分の試合中にします」
「ふん────それは公平にするためか?」
「というよりはバランスをとるため、と言うべきですかね。俺の知り合いにバランスを重んじる人がいまして」
「バランス、か────」
そう呟くと、織斑先生はカタパルトから去っていった。きっと指令室っぽいところへ行くのだろう。
「透!行ってくるぜ!」
「おーう派手に負けてこい」
「いや負けねぇよ!」
織斑の機体はくすんだ白色の機体。どこか騎士のような風格を漂わす、織斑一夏の専用機。
「白式、ね…………」
読み方は『びゃくしき』だが、『しろしき』と読めばISが世間に認知されるようになったきっかけ───あの事件の機体のアナグラムなのは偶然か否か。
すべての名前には意味がある。そして名前には力がある。特異な存在である織斑一夏があのISを動かすことで一体どんな結果が起こるのかは────まだ、誰にも分からない。
008
結局織斑は無様に負けてしまったらしい。
らしい、というのは俺は試合を見ず、ぽけーと座っていたからだ。バランスをとるなら相手の戦闘スタイルも知らないままにしておこうと思い、更衣室で待ってたのだが、そこまでカッコ悪く負けるなら見ておけばよかった。
とはいってもちゃんと一次移行するまで撃墜されなかったらしいのでそこは上出来だな。
「透…………俺の分まで、頑張ってくれ」
幼馴染み、実姉とズタズタに容赦なく言葉の暴力に晒され、すっかり疲弊した様子の織斑だが出撃しようとしている俺に応援をする余裕はあるようだった。
「へぇ、それが透の専用機か。俺のとは真逆に黒色なんだな」
「あぁ。第三世代IS『黒武者』だ」
甲冑のような漆黒の装甲をもつ近接主体のIS。特徴は背中に非固定武装として巨大な剣のようなスラスターが搭載されていることか。
だがしかし────全く、あの人は本当に何でも知りすぎだ。
カタパルトに脚部を固定し、出撃態勢をとりながら視界の隅に浮かぶホログラムウィンドウのメッセージに目線を送る。
────これでまともに戦えるようにはなるだろうね、みねみね。
「大嶺透、黒武者、出る!」
「最初に、今までの無礼を謝らせて頂きます」
「…………へぇ?どういう風の吹き回しだ?」
アリーナの中央でセシリア・オルコットの『ブルーティアーズ』と向き合ったとき、相手が放った言葉は意外なものだった。てっきりチャンスをあげますわ!とか上から目線の台詞を言われるかと思ったんだが。
「この一週間の行動を振り返り────自分がどれだけ恥ずべきことをしていたのかを理解しましたわ。だから、謝らせてください────本当に、申し訳ありません」
「んー俺は謝られても特に許すとかそういう権利はないからな────こっちこそ色々言って悪かったな」
なんだ、ちゃんと謝れる良い子じゃないか。こんな良い子でさえ、女尊男卑の思考に染まるんだ。ISが作った社会思想は根深いな。
「ん?そういや織斑にも謝ったのか?」
「は、はい!?い、一夏さんですか!?それは、その…………」
「…………
あぁ、なるほど…………落としやがったなあのフラグ建造機。
「まぁ皆まで言うな、よく分かったから。さぁ────そろそろ始めようぜ」
「──そうですね。始めましょうか」
織斑と聞いてくねくねしていたセシリアが臨戦態勢となる。そこらへんはさすが代表候補生か。
俺もブレードを実体化し、構える。まだ一次移行は終わっていないため、武装はこれのみ。
『それでは────試合開始!!』
「行きなさい!ブルー・ティアーズ!」
開始早々、セシリアが仕掛けてくる。男と戦うからといって油断せず、速攻。どうやら本当に心を入れ換えたらしい。
セシリアの機体から出てきたピットのようなものがこちらに向かって飛行してくる。なるほど、あの手に持ってる巨大なライフルといい、射撃タイプの機体か。
ピットから打ち出されるビームを楯無との訓練を思い出しながら避けていく。確かに速いが────あいつのスパルタ射撃に比べたらまだ遅い!
「当たらないっ!?」
「まだまだ弾幕が薄いぞ、セシリア!」
動揺したのかピットの動きが一瞬止まる。その隙をついてピットを一機切り落とす。もう一機、と思ったがビームライフルが火を吹き、断念。
「中々やりますわね…………!」
「師匠に散々鍛えられたからな!!」
「師匠!?誰ですの!?」
「俺の知るかぎり最高にいい奴で最高に痴女な先輩だよ!」
楯無が聞いたらすごい複雑な表情をしそうな叫びをしつつ、ブレードを振るいピットをまた一機落とす。
一次移行はまだか?と隅の方に浮かぶシステムメッセージを見ると、一次移行まであと5分。だが一瞬意識を外したせいでピットに周りを囲まれる。
「今です!」
「くそっ!?」
一斉射撃を浴びてエネルギーが一気に減る。 なんとか空域を離脱するがシールドエネルギーが心許ない数字になってしまった。
さて、どうしたものか。
「なっ!?」
俺が選んだのは突撃。射撃タイプの弱点は、接近戦!!
ビームの嵐を掻い潜り相手の懐に潜り込み───
「けれど──残念ながら、ここまでです」
────ミサイルが直撃した。
「はっはー、これは機体に救われたな」
だが、煙が晴れると無傷の──真新しくなった装甲を持つ黒がいた。
「………………一夏さんが一次移行せずに戦っていたことからまさかと思いましたが…………やはりあなたも初期設定のままで戦っていたのですか」
「まぁバランスっつーか。一夏が初期設定で戦うなら俺も戦うべきだろ」
装甲の黒は艶のない漆黒へ。装甲はよりスマートになり、機動性が上がっている。
「そんじゃあまぁこれで決着つけるかな────」
刀を鞘ごとコール、腰に装着する。左手を鞘に、右手を柄に────抜刀の構え。
「くっ…………!!」
危機感を抱いたのか、慌ててビームライフルを構えるセシリア────けれど、もう遅い。
「────抜刀」
凄まじい速さで抜かれた刃は正確に青い機体に吸い込まれ、ブルー・ティアーズのシールドエネルギーを散らした。
『勝者、大嶺透!!』
「さぁ────次はお前だぜ、織斑」
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