怪物語   作:柴犬好き

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テスト勉強そっちのけで更新。
終物語アニメ始まりますね。育ちゃんがすごい可愛いです。超楽しみです。

アンケートやってます。詳しくは活動報告をどうぞ。


ほうきフォックス 其の伍

010

 

 

 

 

 

「まぁそんなに落ち込まなくてもいいじゃないか、お兄ちゃん。前回の終了間際で格好よく織斑一夏に宣言したはいいけどアリーナの使用時間がなくなっちゃったことと、代表の提出がすぐあとの職員会議が締め切りで織斑一夏との戦いが出来なくなっちゃったことなんて気にしちゃ駄目だよ。その宣言がアリーナ中に聞こえる設定になってたこととかあの織斑千冬の申し訳なさそうな声とかもね」

 

「殺せっ!!いっそ殺せっ!!」

 

 

まぁ。余接の言ったような理由で織斑との戦いが出来なくなってしまったので、三人で話し合い、セシリアの異常な押しと俺が面倒くさいことを押し付けようとした結果、織斑にクラス代表が(強制的に)決定。なにやらごちゃごちゃ言っていたが敗者に口なしという理由で黙らせたのが今日の夕方。そして現在俺は自室で絶賛現実逃避中である。

 

 

「なんだよ『さぁ、次はお前だぜ、織斑』ってうわぁぁぁぁ!!」

「お兄ちゃんの更なる黒歴史が追加されたね。これは痛いよ」

「ああぁぁぁ!!」

 

恥ずかしいぃ!!何やってんの俺は!!

 

ベットの上でゴロゴロ転がる俺を見かねたのか、余接がフォローをいれてくる。

 

「そういえばお兄ちゃん、今は織斑一夏がクラス代表に就任したことのお祝いをしてるみたいだけど、お兄ちゃんは行かなくていいの?」

 

…………違った、フォローなんてしてない。むしろ傷つけにきてるよこの童女。

 

「あーいやそれは」

「あぁ愚問だったね。協調性ゼロ、コミュ力はマイナス、友達いない歴イコール年齢のお兄ちゃんがあんなところ行けるわけないのか」

「お前もう慰めるどころか絶対攻撃しにきてるよな!!」

 

上等だ!ぼっちの強さ見せてやるよ!

 

ベットの上に座っている余接の頭めがけて飛び膝蹴りを喰らわそうとするが頭を下に下げることで避けられる。だが、それは予想済みだ。余接の上を通りすぎる瞬間、無防備な奴の襟首を掴むと、余接の首が一気に引っ張られる。だが余接もやられるままなわけがなく、右手の拳を鳩尾にいれてきた。えげつねぇ。殴られた衝撃でベットに投げ出され、悶絶する。

 

童女に不意討ちを仕掛けて返り討ちにされる男子がいた。

というか俺だった。

 

「お兄ちゃん、さすがに僕と生身でやりあって勝てるわけないでしょ」

「……………」

 

やべぇ、喋れねぇ。どんだけ強く撃ちこんでんだこの童女。再びベットの上でゴロゴロして──今度は羞恥ではなく痛みから──いると、余接がピクン、と反応した。

 

「げほっけほっ…………何だ?どうした、余接」

 

なんとか捻り出した言葉で問うと

 

「ん、いやこの部屋に向かって走ってくる足音が聞こえて。この足音は…………織斑一夏かな」

「足音で誰か分かるのかよ、お前」

「んーまぁ大体は。この場合男の足音だし、この学園で男なんかお兄ちゃんと織斑一夏くらいでしょ」

「厳密には用務員がいたような気がするけどな。んじゃ余接、ベットの下にでも隠れててくれ」

「はいはい、わざと出たままっていうのも面白そうだけど」

「社会的に殺す気かお前は」

 

ベットの下に余接が潜り込み、余接が食い散らかしていたお菓子の袋を片付ける。さて織斑一夏ね、一体何の用なんだか。

 

余接の足音判定は正しかったらしく、蹴破らんばかりの勢いで織斑が扉を開け、飛び込んでくる。

 

「おお?どうしたよ、織斑?」

「透!それが、大変なんだ!箒が、箒が!」

 

篠ノ之?篠ノ之が一体どうしたと────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「箒の頭に、耳がっ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

瞬間。ぞっと、背筋が凍るような寒気がした。

 

これは、専門家としての────怪異に関わった者の、第六感────!!

 

 

「織斑っ!!これを握ってベットの下に入ってろ!!」

「は!?いやでも──」

「いいから!!何があっても────何に遭っても、絶対に出てくるな!!」

 

何が言おうとする織斑をベットの下に蹴りこみ、俺も机の引き出しから取り出した呪符を握りしめ、もう一つのベットに潜り込む。

 

「お兄ちゃん────」

「余接、まだ手をだすな。下手に刺激すると不味い。けど、いざとなったら────俺ごと、吹き飛ばせ」

「了解」

 

息を潜め、臨戦態勢をとる。いくら認識を誤魔化す札をもっていても嗅ぎ付けられるときはある。ろくに対策もとらないでこのレベルの怪異と渡り合うのは、正直キツイ。

 

 

 

 

 

ぎしり、と床が軋んだ。隙間からドアが開くのが見える。そして入ってきたのは、女の足。何も履いていない素足が床を進み、隠れているベットを少し過ぎたところで止まった。

ゆっくり、気づかれないように隙間から侵入者の姿を窺う。するとそこには──────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────一対の狐の耳と、六本(・・)の尻尾が生え、変わり果てた篠ノ之箒の姿だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

011

 

 

 

 

 

 

 

「惑い狐」

 

 

篠ノ之は何かを探すように部屋を見渡したあと、窓から外に飛び出していった。しばらく隠れ、もう戻ってこないと判断すると、織斑に出てくるように言い、向き合うように座ると俺は重々しくそう切り出した。

 

 

「惑い──狐?」

「あぁ。狐だ。哺乳類綱ネコ目イヌ科イヌ亜科の総称。とは言っても惑い狐は結構マイナーな呼び方だからな。玉藻前だったり──九尾だったりのほうが有名か」

「ちょっ、ちょっと待ってくれ!惑い狐?九尾?なに言ってるんだよ、透────箒は、一体どうなってるんだ!?」

 

まぁ、そうなるよな…………いきなりこんなこと言われても混乱するのが普通だ。織斑に怪異を説明することでどんなことになるかは分からないが、こんな状況になってなんの説明もしないのはおかしいか。仕方ない。

 

「あー織斑、お前は怪異って知ってるか?」

「か、怪異?それって妖怪とか?」

「ん、まぁそういう認識であってるのかな」

 

世界の舞台裏────認識の外側。

そこにあって、そこにはない。

そういう────怪しき物。

 

「だから篠ノ之はその怪異に憑かれたんだ」

「で、でもそれは都市伝説とかで本当は存在しないんじゃ──」

「ほう?んじゃお前はその目で見たものを信じないのかよ。お前も見たんだろ?篠ノ之の姿を」

「………………」

 

あの、化け物となった姿を。憑かれて────狂っている姿を。

 

「…………透は」

「ん?」

「透は、怪異とどういう関係なんだ?」

「んー関係っていうか…………まぁ専門家かな。怪異関係の事柄を解決したりする奴って考えれば素人ならそれで十分」

 

さて、怪異の説明は今度詳しくするとして、篠ノ之の件を片付けよう。

 

「それじゃあ話を戻すぞ。惑い狐っていうのは大陸の怪異で、中国や日本、アジア全般でよく見られる怪異譚だ。有名な話としては平安の世、とある高名な陰陽師が殺生石に封じた話が有名だな。傾国の美姫とも伝えられている。その共通する特徴としてはとんでもない美人ってことか」

「…………透。伝承を語るのもいいけど、どうやったら箒を助けれるんだ?」

「焦んなよ織斑。順番に説明してやるから────惑い狐ってのは近くにいる男に襲いかかる。男に襲いかかり────喰らい尽くす」

「喰らい尽くすって…………それは、どっちの意味でだ?」

「性的にか、物理的にかって話?どっちもだよ。まず性的に喰らい────次に物理的に喰らい尽くす。はっ、男は美女で身を滅ぼすとはいうが、この場合はどんぴしゃだな」

 

 

まぁちょいっと()を交えてるが、織斑に惑い狐の説明をする。そこで織斑が何か質問したいのか挙手をした。いや授業じゃないんだから。

 

「えと、さっき透は九尾って言ってたよな?でも、箒に生えていた尻尾は六本(・・)だったような…………」

「ん、いやいい質問だな。惑い狐ってのはそこが肝なんだ。惑い狐の急所は宿主の心臓と重なるように存在するんだが、力の源はその尻尾なんだ。宿主に憑いたときから尻尾が一本ずつ生え始め、宿主の想いや精神なんかを喰らい────九本目の尻尾が生えたとき、宿主の精神は一切残さず、喰らい尽くされる」

「一切って…………!!」

「そのままの意味だ。宿主は────篠ノ之箒は抜け殻と化す」

 

 

これはそういった類いの話だ。人の生き死にに関わる、凶悪な怪異。喰らい鬼と方向性は似てるが、格が違う。そもそも、惑い狐は討伐することがかなり難しい。討伐されても殺生石として災厄を振り撒いた伝承があるくらいなのだ。それこそ、吸血鬼レベルではないが、かなり上位の怪異だ。

 

「じゃあ!!急いで箒を助けてやらないと────!!」

「助ける?いや織斑、俺は助けねぇよ」

「は!?なに言ってんだよ!!このままだと、箒は────!!」

「いや、だからさぁ」

 

至極面倒くさそうに────嫌悪感を剥き出しにして。

 

「怪異ってのは理由もなくそこに現れたりしない。必ずそこに理由が────人の願いが、自分勝手な妄想があるんだよ。お前は何か勘違いしてるようだから言ってやる。この場合、篠ノ之箒は被害者なんかじゃない。むしろ、加害者だ」

 

 

あのアロハ風に言うならば。

 

 

被害者面が気に食わねぇ────である。

 

 

 

「加害者って…………」

「これはボランティアや慈善事業じゃないんだ。きっちり代価は支払ってもらうし、原因の一端を背負っているお前も(・・・・・・・・・・・・・・・)それなりのことはしてもらうぜ────」

 

それこそ現金じゃなくてもいいが────まぁ高校生が払えるものなんてたかが知れてるか。

 

「俺が…………原因…………?」

「ん、まぁそれはどうでもいいんだ。それよりさっさとやるぞ。いつ憑いたのは知らんが六本の尾はそれなりに不味い。今夜中に片付けないと本格的に篠ノ之ごと殺さなきゃいけなくなる」

 

そう言って、俺はクローゼットから太刀を────劣化版怪異殺し、妖刀『心渡』を取りだし、腰に提げる。服装は動きやすいしこのジャージのままでいいか。

 

「…………最後に、いいか」

「まぁいいが…………手短にな」

「…………透は、どうして怪異と関わるようになったんだ?」

「…………はっ、なんだそんなことか────」

 

 

机の引き出しから無いよりはマシな札をポケットに詰め込みながら、織斑の質問に答える。

 

 

「俺もまた、加害者だっただけさ」

 

 

あのとき。中学生のあのときの過ちを────今更ながら思い返す。

 

「そして俺も────叱責されながら、勝手に助かっただけだよ」

 

 

あの二人組(ツーマンセル)を。専門家への道を歩き始めたきっかけを────思い出す。

 

 

「だからこれは────助けるなんてものじゃなく、俺の個人的な、恩返しだ」

 

 

 

さぁて。ここから先は命懸けのバトルパートだ────精々、死なないようにするか。




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