IS~自称策士は自重しない~   作:reizen

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ということで第六章、どうぞ!


第6章 ハイ・スピードーそれは高速の戦場-
#110 厳しい家庭の少女たち


 限りなく消音に近い状態の輸送機が北アメリカ大陸の北西部に向けて飛んでいる。だがその辺りに近付いたところで低速となる。

 ある程度、速度が落ちたのを確認したパイロットがインカムで後ろに乗る人間に伝えた。

 

「我々はここまでとなります。各自発進を」

『了解』

 

 そう言って黒いポンチョのようなものにフードを被った男がドアを開けるとすぐさま飛び出した。

 それを追って同じような格好をした二人が後に続いた。

 

「うへぇ。生身で飛び出しやがった。IS操縦者ってああいうのばかりなんですかね?」

「私は彼らを小さい頃から知っているが、いつもあんな感じだ。一見ふざけているように見えるが、決して舐めない方がいい」

「……もしかして、今噂の超能力者」

「それもある。だが何よりも、戦場に慣れすぎているんだ」

 

 インカムを切りながら話す操縦者。実際、彼らはその通りだった。

 幼い頃からISすらも攻略が難しい能力を使い、戦場を荒らしてきた二人。そして、その光景をただ見てきた少女。

 その二人が今、とあるアメリカ軍基地に攻めようとしていた。

 

 

 

 突然のアラーム。

 彼らはすぐに第一種警戒態勢を取り、戦闘の準備をする。

 そしてレーダーに映った影を確認した兵士の一人がそれを伝える。

 

「ちょっと待ってください。これは………人!?」

「何? まさか生身で攻めてきたというのか!?」

 

 基地の司令官が驚くように言うと、別の兵士が伝える。

 

「いえ、一人が何かを展開……これはIS学園で確認を報告されたBT兵器搭載型二番機「サイレント・ゼフィルス」です!」

「亡霊共か! 奴らの狙いは………まさか!?」

 

 司令官はすぐに何を狙ってきたのかを察知し、指示を飛ばす。

 

「今すぐ地下に眠る天使(エンジェル)の護衛に数人向かわせろ! 非戦闘員はシェルターへ!」

「「「了解」」」

 

 兵士たちはすぐさま操作し、それぞれ各所へと指示を飛ばした。

 すると急にガラスが吹き飛び、一人の黒服が入ってくる。

 

「チャオチャオ!」

「な!? いきなりここに?!」

「良い反応だねぇ。さて、死ぬ覚悟はおあり?」

 

 そう言って黒服はまっすぐと司令官のいる場所へと突っ込む。

 司令官は素早く銃を抜き、それを黒服に向けて発砲。足をもつれさせた黒服はその場に倒れた。

 

「馬鹿が。考えなしに突っ込むからこうなる。今すぐ―――」

 

 ―――捕まえろ

 

 そう指示を飛ばそうとした司令官は驚きを露わにした。何故なら、その場にいる全員が二つ浮かぶ球体の中に飛び込められていたからである。

 

「水を操作するだと………まさか貴様、忍者―――」

「残念だけど違うなぁ……まぁ、アレのことだからそろそろ本格的に性欲が暴走する頃かなぁ……」

「一体何の話……って待て!? どうして貴様が生きている!?」

 

 堂々と目の前に立つ黒服を見て司令官の顔は蒼白になりつつあった。

 

「防弾性能の違い?」

「ふざけやがって!!」

 

 何度も、何度も引き金を引いて弾丸を放つが、その黒服に銃弾は当たれど倒れることはない。

 

「はい、しゅーりょー!」

 

 黒服はそう言って司令官を水の中に入れ、自身は奥へと続くドアを蹴り破った。

 

 

 

 

 その頃、他の兵士は管制室が制圧されていることを知らずに戦い続けていた。

 

「何なんだ……こんなIS見たことないぞ!?」

 

 兵士の一人がそう言うのも無理はない。何故なら彼らが対峙しているのは四足歩行のISであり、それは次から次へと対空砲を潰しながら弾丸に当たることなく回避しているのである。

 さらには挑発でもするかのように側転、バック回転なども行っており、ISを持つ者と持たぬ者の違いを明確にしていた。

 

「クソッ! ここはアニメとでも言いたいのか!?」

「まぁ、最近世界はアニメじみていると言ってもないけどさ」

「確かに。IS学園にいる二人目も女を侍らせているとかどこのハーレムものだよ畜生!」

 

 一人がそう叫ぶと、すぐに後ろを向く。

 そこには管制室を制圧した黒服がいて、そいつはそっと叫んだ男の肩に手を置く。

 

「まぁでも仕方ない。だって君は生身で世界破壊できないだろう?」

「………は?」

 

 ―――ダダンッ ダダンッ

 

 無駄口を叩く黒服に向かって四足歩行のISが向かってくる。黒服の周囲に水が現れ、ISの背中に乗った。

 

「じゃあね諸君! ちなみにだけど、二人目はガチで強いから、核は無駄になるから準備するなよ!」

 

 そんな捨て台詞を吐いた黒服を乗せた四足歩行のISは基地の中に入っていく。

 それを見た兵士たちはすぐに連絡を入れm、ようやく管制室が機能していないことを知るのだった。

 

 

 

 

 

 四足歩行のISが奥地に到着すると、其処ではすでに戦闘が行われていた。

 奥地に先に来ていたMが金髪の女性と戦闘を行われているのを見て二人は状況がわからない。

 

「まさか、増援!?」

「そういうこと♪」

 

 黒服は楽し気にそう答えながら剣を展開した。

 

「待って、M。まだそいつを殺すな」

「………そもそも「誰一人殺すな」と言われてなかったか?」

「あれ? そうだっけ?」

 

 幸いなことに黒服は一人として殺してはいない。だが、黒服はそんなことは最初からどうでもいいらしい。

 

(虫唾が走る……)

 

 Mは黒服を睨むが、どこ吹く風と言わんばかりに受け流す黒服。

 

「……その声、まさかあなた、男なの?」

「そうだよ」

 

 そう言って黒服は四足歩行のISから飛び出して対峙する金髪の女性―――ナターシャ・ファイルスに距離を詰める。ナターシャは《銀の鐘(シルバー・ベル)》試作壱号機である腕部装備砲(ハンドカノン)を黒服―――0に向け、発射した。

 だがそれを0は自分の剣で弾き、ナターシャを飛び越えた。

 

「逃がさない!」

 

 瞬間、Mともう一人―――Tが動く。

 二人はナターシャに狙いを定めるが、三人の間にISが割り込んだ。

 そして三機と一人の上を、深紅の機体が飛び越えて0の前に現れた。

 

「そこまでだぜ、亡霊共!」

「よっし、ビンゴ!」

 

 すると、0の周りが粒子が形成され、鋼鉄の装甲が彼を纏った。

 

「そんな!?」

 

 ナターシャがそれを見て驚きを露わにする。

 

「ちょっと待て!? こいつ、男だよな?」

「ああ。間違いなさ」

 

 そう言って0はパワードスーツと同等の大きさになった剣を握りなおした。

 

「その機体、アメリカで開発されたEOSⅡか。エネルギー効率などが見直されているって聞いたけど」

「よく知ってるじゃねえか。ますます逃がすわけには行かねえなぁ!!」

 

 深紅の機体の操縦者―――アルド・サーシェスはEOSⅡでマシンガンを撃ち始める。

 すると0は水を精製し始める。

 

「水使いか……」

「そういうこと。悪いけど、僕と対峙した君に勝機はないよ。そのようなものを使っている時点でね」

「言うじゃねえか、カスがッ!!」

「だから、僕と一緒に来ない?」

「あぁ?!」

 

 予想外のことを言われたアルドは動きを止める。

 

「僕と共に来れば、君を凶星と戦わせてあげるよ。もちろんリアルでね」

「テメェ、何を考えている」

「何も考えていないさ。ただ僕は二代目優勝者として、君と凶星を戦わせたいだけさ」

 

 だがアルドは答えず、接近した。

 

「やれやれ。まぁ、最初から成功する確率は低いと思っていたけど………T?」

「任務、完了しましたぁ!」

 

 すると奥から人型の黒い機体が現れる。

 

「まさか!?」

「いつの間に……」

「さぁ、撤収だ」

 

 驚くアルドとMを他所に、0は撤収指令を出す。

 

「させるか! イーリ!」

「その名で呼んでんじゃねえ!」

 

 アルドに叫びながらもイーリス・コーリングは三機を止めようとするが、0が急遽反転して胸部装甲を開いた。

 

「ナターシャ・ファイルス。君の大切なものにお別れを告げたまえ」

「え―――まさか!?」

 

 0の機体から高出力の熱線が発射される。射線上に反射的にイーリスは入り、直に受けた。

 

「イーリ!」

 

 爆発が起こり、煙の中からイーリスが狩るファング・クエイクが姿を現す。彼女に駆け寄るアルドは同じく駆けてくるナターシャを止めた。

 

「ナタル、お前はゴスペルを」

「……わかったわ」

 

 少し迷ったナターシャだが、すぐに福音の方に向かう。同時にファング・クエイクの装甲は解除され、操縦者であるイーリスが姿を現した。

 

「クソッ! 完全にしてやられたぜ」

 

 あまりダメージはないのか、アルドの心配しすぎだったのか……ともかく無事――いや、むしろエネルギーがあったら追うつもりだろう。

 それほどまで元気があるイーリスを放置してナターシャの方を行こうとしたアルド。だがあくまで「行こうとした」なのは、ナターシャが彼らの所に戻ってきたからだ。

 

「……これ、どういうことかわらかないんだけど……」

 

 そう言ってナターシャが二人に見せたのは、凍結されている福音のコアだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 更識楯無は迷っていた。

 一夏と別室となり、とある人物の命令によって同居相手に女としては注意するべきことをされているが、その本人がとても自分からそのような行為をする人間とは思えないからだ。

 

(………これは一体、どういうことかしら………?)

 

 隣に―――つまり同じベッドに寝ているのは最近色々と世界を騒がせている二人目の男性IS操縦者にして、ISを超える兵器「IGPS」を持つ同い年で一学年下の少年、桂木悠夜。もっともそれは数々の条件の下に発動が許可されているため、容易に使用できるものではなくなっている。何故ならそれは、理論上ではその機体出力がある一定を超えると地球が壊れる可能性があるためである。それ故の措置だが、最近では悠夜単体で地球を壊せる可能性が出てきていた。

 しかし、その可能性は今となっては一時的に皆無となっている。理由は悠夜にとって最強を証明できる相手―――桂木陽子が普段の生活に戻ったからだ。

 だからと言って諦めることはないのだが、悠夜にとって諦める材料がある。それはかつて、自分の命を狙ってきた女権団のボスの娘――石原幸那の存在だった。

 あの一件があったが、詳細を知ったこととやり直そうとしている義妹の意思を尊重した悠夜は以前のように仲良くすることを願ったのだ。そしてさらに女権団の生き残りが幸那の命を狙っているため、単独でもかなり強い陽子とその配下であるギルベルトが常に護衛をしているのである。なので今は大人しいが、もし何等かのミスで幸那が殺されるもしくはさらわれた場合、悠夜は躊躇いなくルシフェリオンを展開して日本を消し飛ばす可能性がある。

 そして現在、そんな危険な爆弾と一緒に四人の女生徒が同居していた。その内の一人が楯無であり、原因は簪だった。

 というのも簪は生徒会が開催した観客参加型劇「シンデレラ」にシンデレラの一人として、王冠を二つゲットしたのである。その王冠をゲットしたシンデレラには生徒会長の権限で同居相手を選ぶことができる、というものだったのだが、簪はその一つとして楯無を悠夜と同居させたのである。簪曰く「誰の同居相手かの指定がなかったから」ということらしい。

 まさか自分がもう一度悠夜と同居になるなんて考えていなかった楯無は当然度肝を抜かれる。さらに「そんなの聞いていないけど?」と言うと、「織斑君にも同じことをしてるよね?」と揚げ足を取られた結果に終わった。

 そしてその結果、元々いた本音は追い出さずに楯無が同居する形となったが、もはや当たり前となっていた簪とラウラの同居を断ろうとしたが、ここ二、三日でそれを防ごうにも二人はチャレンジを止めず、もう容認することにした。……それがこういう結果を生み出すなどとは思わずに。

 

(ともかく、悠夜君を起こさ―――!?)

 

 楯無の背筋が張った。原因は未だに掴まれている自分の胸で、悠夜に揉まれたのである。

 楯無はこういった―――俗に言われるX指定の行為には実は全く経験がないのだ。

 その理由は家がとても厳しく規制しており、婚前性行など以ての外というのが家の掟にある。その一つとしては未だに彼女が本名を誰にも明かしていないことだ。

 楯無と言うのは暗部「更識」を束ねるための襲名であり、彼女の本名は「刀奈」。それを明かすのは本当に結婚直前であり、破綻しないという確実性を持ってからでしかない。

 それほどまで厳しい家に育てられた刀奈と簪は、本来なら悠夜のような男と寝るなど禁止されている行為のはずだが、楯無は護衛と言う名目で、そして簪は完全に私的な理由でしていた。

 反射的に楯無は悠夜を殴ろうとすると、思いの外高いところで何かを叩いてしまう。すぐさま腕を掴まれた楯無は嫌な予感がして右腕の拘束を解こうとしたが、彼女に手に覚えない感触が襲う。

 

「!?!?!?」

 

 それが何かをわかった楯無は胸を揉まれながら悠夜の方を見ると、寝起きで不機嫌な簪に睨まれた。

 しかし楯無はさらなることに驚く。

 なんと簪はどちらかと言えば腹巻に近い形状をしたストラップレスブラとパンツだけであり、寝顔が犯罪級の美しさを持つ悠夜は仰向けの状態で眠っている。だがさっきから妙に眉を動かしていた。しかもそれだけでなく、着ていたはずの黒いパジャマは前が外されており、大部分の肌が簪と密着していた。

 そんな状態だが楯無は簪に個人間秘匿通信(プライベート・チャネル)で尋ねた。

 

『何でそんな格好なのよ!?』

『………私は犬だから』

『そう言う問題じゃないでしょ?!』

 

 今年16になる娘がやっていい姿ではないことは確かである。いくら好きな相手とはいえ、だ。

 だが簪にしてみればそろそろ性交はするべき段階であり、入りやすいようにどちらも茶色の下着を着け、キッチリと普段付けている荒鋼のヘッドギアではなく犬耳カチューシャを付けていた。

 

『ともかく、今すぐ止めなさい!』

『……悠夜さんにおっぱい揉まれて悶えていたくせに』

『それとこれとは話は別でしょ!』

『………素直になればいいのに』

 

 楯無は珍しく……本当に珍しく簪を睨む。

 だが簪は一向に姿を変えるつもりはない。譲歩のつもりか、悠夜の上から降りてボタンを閉めると、楯無の方に向けた。

 自然と楯無を抱きしめる形となった。

 

『ちょっ!? 簪ちゃん!』

『何か問題ある?』

『大ありよ! 今すぐ元に戻して!』

『………そんなに悠夜さんが嫌い?』

『そう言う問題じゃないの! この状態が問題なのよ!!』

 

 楯無にはそう言った耐性は皆無。本人にその気がないと知っているが、それでも気が気でなかった。

 やがて彼女にとっての拘束が解かれた―――かと思うと、簪はまた平然と悠夜の上に乗っていた。

 さっきのことでもう注意する気力もなくなった楯無は、これまでの疲れもあって意識を手放した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ■■■

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺は今、世界を破壊するか統一するかで迷っていた。

 というのも俺の隣には何故か簪が眠っている。しかも可愛く、今すぐ性的に食べちゃいたいぐらいだ。

 

(って落ち着け。いくら可愛くても手を出したら流石にまず………)

 

 よし。今のは見なかったことにしよう。

 しかしだ。何故楯無ではなく簪が俺の隣に―――しかも俺が腕枕をする形で寝ているのだろうか。そもそもあれは、簪が提案したことだというのに。

 話は少し前にさかのぼるが、学園祭当日の劇「シンデレラ」であれだけの女が俺を狙った理由は王冠を取れば何でも願いが叶うもので、それを二個も取った簪は一つ目の願いを使って楯無を無理やり俺と本音の部屋にねじ込んだ。

 そしていつも通りこの部屋に泊まりに来た簪とラウラだが、その場合は五人で寝ることになるが、ベッドの数が足りないのだ。

 それで当初、楯無が二人に部屋に戻るように言ったが二人が揃って楯無と本音が俺と大人の世界のみだらな交渉をするかもしれないと抗議し、その監視としてこの部屋に泊まることになった。窓側に本音、ラウラ、簪の三人。廊下側に俺と楯無が寝ることになった。

 まぁ、鋼の理性を持つ俺が楯無の色香に惑わされることはなかったが、その日はとても不思議な夢を見た。

 

 ―――物凄く柔らかいボールを揉んだら握力が鍛えられるという夢を

 

 そして起きたら簪と寝ている形なんだが、一体楯無はどこに行ったのだろうか。

 

(………まぁ、いいか)

 

 どうせあと少しの辛抱だ。

 そう思った俺は、この少し後に俺が本当に男なのかと楯無に疑問を持たれることが起こるが、それはまた別の話。………別に男でメイクができたっていいだろうが!

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