IS~自称策士は自重しない~   作:reizen

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#115 唐突の決意

「……卑怯?」

「ああ、卑怯だろ。人質なんかとってさ―――」

 

 一夏の発言を聞いてミアは笑みを浮かべる。

 

「だったら、何ですか?」

「何?」

「卑怯汚いは敗者の戯言ですよ、織斑一夏。まぁ、あなたは永遠の敗者なのですから、悔しがって吠えるのは当然でしょうが。そう言えば先日、あなたはユウ様相手に喧嘩を売って負けたのでしたっけ? しかも、そこの無駄乳女と手を組んだ上で敗退。はっきり言って、無様です」

 

 容赦なく言い放つミアに対して一夏は眉をひそめた。

 

「あれは―――」

「大体、私のことを卑怯だと言うのならばあなたは何です? 姉のコネで専用機を手に入れたというのに、まともな活躍なんてないじゃないですか? それに二次移行した上でユウ様に負けるなんて……はっきり言って宝の持ち腐れだと思います」

「―――ッ!? でも、悠夜だって自分一人の力ってわけじゃないだろ! ルシフェリオンとか、そういうのを使っているから勝てたことだってある! 大体、箒の胸が無駄だって言うなら、アンタのそれもそうだろうが!」

 

 そう叫ぶ一夏。すると彼の身体に強烈な風が襲い掛かった。

 

「!?」

「………今、なんて言いました?」

 

 邪魔なのか、蘭を箒に放る。

 すると一夏に襲い掛かる風がさらに威力を強め、50㎏はある一夏を浮かばせた。

 

「この身体はユウ様に捧げるためのもの。それを無駄ですって………」

「!?」

 

 一夏が吹き飛ばされる。

 箒が叫ぶ中、ミアは瞬時に右手を挙げて言った。

 

「一夏!?」

「…もう面倒です。ここにいる全員、まとめて殺します」

 

 瞬間、ミアから風の刃が放たれる。それが一夏に当たろうとした瞬間、霧散した。

 その光景に弾は信じられないと思いながらも、目の前に立つ自分の憧れであり、同時に敬いを込めて化け物と認識している悠夜が右手を掲げている姿を見た。

 

「ユウ様!?」

 

 まさかそれが自分の主に止められるなんて思わなかったのだろう。驚きを露わにしたミアは無防備になり、悠夜に距離を詰められ―――キスをした。

 その動作は箒すら見惚れるほどの手際だった。

 まるで慣れているかのようにミアの顎を引き、ディープキスをした。

 ついさっきまで距離を取られた相手からの突然の不意打ち。彼女にとってはそのディープは初めてであり、ねっとりでもあるが味わったことがない興奮と、一体どこで身に着けたのかと聞きたくなるようなテクを食らわせられたことで、とうとう膝が震え始めた。

 そして悠夜は口を離す。するとミアはその場に膝をつくと、悠夜はミアの両手を握って言った。

 

「邪魔してごめん。でも、俺は君の手があんな奴の血で汚れるのを見てられなかったんだ。俺のことを思うなら止めてくれ、な?」

「………はい」

 

 どうやら効果はあった……いや、ありすぎたとも言っていいだろう。

 ミアは顔を赤くした状態で、いそいそと悠夜の手を離して消えて行った。

 この時、悠夜は止めるで精一杯だったのだが、あることを忘れていたのだ―――自分がデート中だということに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ■■■

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 正直な話、自分がしたことは悪いことだと重々承知している。

 だがあのまま放置したら織斑だけじゃなく篠ノ之や五反田にも被害が及ぶかもしれないと思った俺は、仕方なくああいう手に出たわけだ。何故か俺に懐いているみたいだから、ああすれば大人しく下がってくれる事にかけてな。まぁ、作戦通り退避してくれ、五反田のも「今回は許可する」と言う形で兄が引き、妹の願望が叶ったわけだ。

 だが今回の話はかなりヤバい。マジな話、今のところ一年でも適性ランクがB前後。俺が知る限り俺と篠ノ之を除いてCがいる話は聞いたことがない。そんな中、急にAが出た場合各国は放っておかないだろう。それならきちんと所属先を決めるように動いた方が良い。これから先、関わらなくても強制的にって言うのはあるからな。ちなみにこれは、兄のために動いているのであって妹の方がどうなろうかなんて正直などうでもいい。

 

(……後で、別口で入れるように送ってみるか)

 

 でも、御手洗ももしかしたら来たいって言うかもしれないな。それがちょっと心配だ。

 

 ―――閑話休題

 

 さて、俺には重大なことをしでかしたのだが、その解決策が見当たらない。

 あれから簪は別行動を提案し、とりあえず俺は一人で入用の物を買った。冷静に考えれば、見限られたと考えても不思議ではないだろう。五反田弾もその辺りのことは気にしているようだが、仲裁は勝手に入ったことだし気にしなくてもいいのにな。

 そして合流後、沈黙の状態で俺たちはIS学園に戻った。

 

(………そろそろ、部活動をやっておくか)

 

 ただしするのは俺一人だ。今の俺に簪を誘う勇気なんてないし、ラウラだけを誘って簪を誘わないのは問題がある。

 なのでとりあえず、デタラメな府警と互角に戦ったり、ヤの付く自由業の人らを使って別の組織を制圧した着ぐるみ型の戦闘服を開発しようとしている。

 まずデザインなのだが、メルヘン的なセンスがないのか中々形にならない。一応、性能はISの少し下をイメージしており、それでいてマスコット性があるのがいいんだがな……。

 

 そんなこんなで、気が付けば俺は寝ていた。

 

(……夕食、食べ損ねた)

 

 そう気づいた時にはすでに8時を回っている。寮の食堂はすでに閉まっているし、冷蔵庫にあるのは本音がため込んでいるデザートの数々。勝手に食べたら物理的に噛まれるし、一度それが本気で痣になったことがあるから、地味にトラウマだ。

 どうしようかと思っていると、妙に汗臭いと思ったので先にシャワーを浴びることにした。

 着替えを準備してすべて脱ぎ、洗濯機の中に入れる。そして中に入ると、鍵を閉めた。一度締め忘れたら、ラウラが入ってきたからな。それ以後、鍵を閉めるようになった。

 シャワーで軽く体をお湯に晒した後、タオルにボディソープをつけて前を摩るように泡をつける。

 

「後ろ、する」

「ありがと」

 

 そう言って俺は後ろにいる簪にタオルを渡すと………ちょっと待て。

 おかしいと思って後ろを向くと、もはや何とも言えない格好で簪はしゃがんでいた。

 

(………ま、マイクロビキニとか、アウトすぎる)

 

 一度悪ふざけでエロ本が机の下に入れられていたことを思い出す。

 その時に何も知らない俺は「こんなのもあるんだなぁ」と思って見ていたら、何故か俺がマイクロビキニフェチだと思われ、リゼットが「ご主人様はこういうのが好きなんですのね」と言ったかと思った数日後の勉強会で披露されたが、その時は流石にそこまで成長していないので笑い話で済んだ。

 だが、今の簪は違う。確かに楯無や本音とは比べ物にならないぐらい小さい。それでもB……もしくはC⁻ぐらいはありそうな胸と、全くない毛が健康具合を尊重していた。どこの、とは言わない。

 

「………あの、簪さん……? その格好は一体……?」

「似合う?」

「いや、ない! 流石にそれはアウト!」

 

 ある部分が今にも暴走しそうで、さっきから俺は後ろを向いている。……もしかしたら、鏡に映っているかもしれないので手でも隠しておこう。

 すると簪は俺に座るように言う。だが俺が簡単に動かなかったからか、立ったまま背中を磨き始めた。

 

(……何だ、普通だ)

 

 安心して「座るぞ」と声をかけて座ると、ある意味予想通りな行動に出られた。

 簪はタオルを自分の胸と俺の背中に挟んで背中をこすり始めたのだ。

 

「……あの、簪さん?」

「……気持ちいい?」

「そこは直の方が……じゃない! 今のは戯言だから! 今すぐ上の方を取ろうとする止めて!」

 

 そう言うが、本人はブラ部分を取って先ほどと同じ行動に出た。

 とりあえず俺は素数を数える。それが途中で途切れたら、ISのことを考えるようにするが、ある部分は今すぐ行動したいのか、さっきから本人の意思と反して暴れている。

 

「……シャワー、かけるから」

 

 そう言って簪はいつの間にか取ったのか、適温になるまで自分の手に晒し、なったのか俺の体に浴びせる。

 それが一通り終わり、何故か有無を言わさない態度で髪まで洗ってくれた簪。風呂場から出ようとするが、「風呂が沸いているから」と言われて風呂に入ることになった。

 彼女が体を洗い終わるまで律儀に待つ俺も俺だが、何故ここまで積極的に? ……どう考えても、あのキスが原因だろうけど、普通なら平手打ちとか狙撃とか、そんなことをされてもおかしくはないはず。

 

(……というか、せめてそういうのはちゃんと話し合いたいんだが……)

 

 何故風呂場? 普通はおかしいと思うけど、俺がおかしいのだろうか?

 

(ここはともかく、冷静になろう)

 

 冷静になる前にさっさと出ろと言われかねないが、ともかく今は様子見だ。

 場合によってはヤンデレになっている可能性も考慮して、今は大人しく―――

 

 ―――神は降臨した

 

 この部屋はどうやら改装されているらしく、他の部屋にはトイレがないし風呂場はシャワーと湯船が一緒になっているのだが、この部屋は日本でよく見られるパターンとなっている。もっと言えばトイレもあり、改装前の名残としてカーテンも残されていて、簪の裸を見ないように閉めていたんだが、先ほど本人に開けられました。

 先ほど外したブラ部分はもう一度付けられたらしいことにはほっとしている。だが、全体的に肢体が露わになっていて、俺は思わず簪と水着が合いまったその姿に見惚れていた。

 だからだろう。彼女が普通に裸である俺がいる湯船に入っても、すぐに行動に出なかったのは。

 

「って、簪!? 何やってんの?!」

「一緒に入ってる」

「問題大有りなんだけど?!」

 

 「それが何か?」と言わんばかりの顔をする簪に、俺は戸惑った。

 簪は平然と俺に体を預ける。すると直に肌が触れ合い、体温が直に感じられた。

 もし普通の人間ならここで彼女を押し倒して襲うだろう。実際、俺の息子も今にも暴走しそうで、そしてそれがさっきから簪の柔らかい部位に当たっている。Xゾーンに突入しそうになっているのは間違いないだろう。

 

「………悠夜さん、ここ最近でわかったことがある」

「…何でしょう?」

「あなたは、巨乳派」

 

 失礼な、と叫びたかったが、生憎心当たりがありすぎる。考えてみれば、朱音ちゃんと言う例外を除いて俺の周りは巨乳が多い。リゼットも多分それに含まれるだろうし、本音なんてあの背であの大きさ。幸那は簪と同じぐらいだが、少し大きいだろう。楯無と虚さんに至っては最早問題にしなくてもいいレベルだ。

 

「だから、私の胸をあなたの手で大きくしてほしい」

 

 そう言われた瞬間、俺の中で何かが切れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ■■■

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 簪を押し退け、悠夜は立ち上がる。

 とある部分が晒されているが、悠夜は気にせずそのまま外に出た。簪が追おうとするが、悠夜が拒絶するようにドアを閉めたため、動きを止める。

 簪はすぐに出ようとしたが、まだドアの外にいることがわかる。

 

(……そういえば、ドアの鍵は……?)

 

 彼女が設置したドアの鍵はかなり厳重に作っている。そしてさっきも鍵をかけているので、普通なら開かないはずだ。

 だけどそれはあっさりと破られ、鍵は破壊されてしまった。

 

 ―――殺される

 

 脳裏にそんな予感がよぎる。

 だがそれはもっともありえないことだ―――が、簪は悠夜の強さ、そしてそれが四元属家の末代とはいえ自分では対抗し得ない力に恐怖を抱いていた。確かに簪は悠夜のことは好きだ。だが―――あの光景を見た時から、ただ簪は悠夜の心を守るためにあえて挑発している。しかし今回の行動は、明らかに嫉妬だ。

 だがそれが裏目に出たのは、正直言ってマズい―――そう結論付けた簪は、悠夜の気配がしなくなるとすぐに出た。

 すぐに着替えた簪。寝室の方に行き、悠夜のベッドを見るが―――そこには誰もいない。

 

 ―――!?

 

 簪は慌てて後ろを見ると、そこにはいつの間にいたのか悠夜がいて、簪を抱きしめると同時にキスをした。

 

 ―――それはとても深いキスだった

 

 おそらく、街中で見せたよりも深く、それでいて丁寧なキス。簪は最初戸惑い、警戒しつつも次第に体を明け渡していく。

 すると悠夜は自分の指を簪の太ももに這わせた。それはまだ未経験の自分が感じる初めての感覚。その間に簪はいつの間にか悠夜に抱えられ、ベッドの上に寝かせられた。

 

(………悠夜さんと……初夜を…過ごすんだ)

 

 恐怖はある。だが、同時に自分が一人の女性として見られることが嬉しく感じる。

 悠夜は簪にかぶさるようにすると、そのまま簪の隣に横になる。

 

「………え?」

 

 わけがわからない簪だが、すぐに悠夜は自分の両足で簪の両足を拘束し、自分の所に持ってくるように簪を引き寄せた。

 

「……ごめん、簪」

 

 悠夜は囁くように簪に言い、彼女の頬にキスをした。同時に悠夜のとある部分が強く反応し、簪のある部分に当たりそうになる。悠夜は抱きしめるのを止めるどころか、より一層強く抱きしめる。さらに、もう一度キス。今度も深く、先程よりもしている時間が長かった。

 

「やっぱり俺、誰かとそういうことをする勇気が出ない」

 

 いつもの自信満々の顔はどこに言ったのか、悠夜は今にも泣きそうな顔をしていた。

 その表情を見た簪は思わず噴く。

 

「……私こそ、ごめん。実はちょっと、悠夜さんのことが怖い」

「それは流石に傷つく……って言っても、仕方ないだろ」

 

 そっと、簪の頭に自分の手を置く悠夜。その顔はどこか満足気で、まるで愛しい妹を見ているような感じだった。……もっとも、ついさっきまで悠夜はその妹に手を出していたことになるのだが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ■■■

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺たちは腹を割って話した。

 今までのこと、これまでのこと。俺は本当はみんなが好意を持って俺に接してくれているのは知っているけど、敢えて無視し続けてきた。そして―――どれだけ脅そうが俺には他人を殺す勇気なんてないことを。

 本音や虚さんが人質に取られた時、俺は心の底から殺意を持った。それでも、誰も死なずに済んだのは心のどこかで殺さずに事なきを得ようとしていたからだ。

 

 ―――結局、俺は臆病なのだ

 

 恋愛に戦闘、ある程度は楽しんだり本気で思ったりしているけど、それでもどこかでは本当に自分は利用されているだけなのかもしれないと。

 

 簪も教えてくれた。

 本当は彼女も、今までの俺に対してどこか焦っているところがあったらしい。まぁ、裏の世界を歩いていない男が急に強くなったりしたら、誰だって恐怖を抱くものだ。

 

(……本当にこれで良かったんだろうか?)

 

 そう言いながら、俺は人気がない場所である人物を待つ。

 ここに来るのは三人だ。本音とラウラ、そして鈴音。この三人は、俺に対して好意を持っている。

 

 ―――だから俺は、その気持ちを砕くことにした

 

 しつこいのは十分にわかっている。軽蔑もされるだろう。罵倒もされるだろう。そのことは覚悟の上だ。

 

「ゆうや~ん」

 

 どうやら来たようだ。

 俺は本音たちがいる方へと移動する。そこには昼休みだと言うのに、わざわざ集まってくれた三人がいた。

 

(……申し訳ないな……けど……)

 

 俺には、誰かを守るとかそんな志なんてない。

 一度入れば暴走し、問答無用で周りを巻き込んで潰しまわるだろう。それがたとえ、味方であっても。

 だから俺は―――

 

「突然で悪いけど、もう俺のことは忘れて普通に過ごしてくれ」

 

 そう言って俺は、何の意味もない笑みを作った。




久しぶりの投稿もあって、色々と問題が起こってそうな気がしなくもない。
次回は、どうしてこうなったのかの説明を含みつつ、とあるイベントをスルーして練習風景に移動したいなと思っています。
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