IS~自称策士は自重しない~   作:reizen

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#124 全学年の倍はしていること

 ―――専用機持ちタッグトーナメント、か

 

 これはまた厄介な行事が入ってきた。本当だったら部隊の人間を徹底的にしごき、心を折って質を高めようと思っていたんだが。

 とはいえ、これを使って自分の能力を知らしめることもできるわけだ。よし、そっち方面で努力をしよう。

 と、心に思っていると、一年の階ではめったに聞かないであろう声が聞こえてきた。

 

「やっほー、織斑君。篠ノ之さんも」

 

 おまけ扱いの篠ノ之が何か突っ込みを入れるかと思ったが、どうやらそんなことはないらしい。

 ちなみに、俺と織斑がこうして平然と通っているのは反省文でかなりの数を回されたからである。本来なら、暴力を振るった件で色々と言われるところなのだが、問題があったわけだ。

 

 ―――その問題とは、言うまでもなく織斑のことである

 

 どうやら、今回の話は織斑先生すらも本気で頭を悩ませていたようだ。後で織斑先生も謝りに来たが、本当に気持ち悪かった。

 

(とはいえ、今はタッグトーナメントか……)

 

 大体、非常時に立ち上がるのって学園の部隊だよな? どっちかと言うと。でもやはり意識を高めるのは専用機の方がスペックが高いからか。わかりやすく言えば、俺たちメタルチームはスペックだけで言えばトップクラス。その次にフェイクスード。特にリベルトさんとギルベルトさんの二人はレベルが高い。下手すれば、テンションが上がりすぎて能力を行使しまくるレベルだ。……というかギルベルトさんはいつの間に受け取っていたんだ。あの人がフェイク4とか知らなかったんだが。

 

(今度、外に出る時はお土産を買っていこうか)

 

 幸那を引き取ったぐらいから持っているという話を昨日聞いたし、幸那の様子を見るついでに訪問しよう。

 そう心に決めていると、スマホから連絡が入る。

 

(あれ? 五反田弾?)

 

 こんな時間に一体何の用だと言うのか?

 とはいえメールだし、まだ時間も大丈夫だし、織斑もあの騒動以来こっちに来ることはないし、今は何故か黛がいるから来ることはない。メールを開いて内容を確認した。

 

『今度の日曜日、外に出ることってできませんか? 一度、家族と話し合いたいんですけど』

 

 なるほど。フルボッコにするのか……ってことはないだろう。たかが半月程度鍛えた程度で人は強くならない……俺みたいな特殊な存在は例外だがな。

 ともかく、用心棒とかいろいろあるだろうが、とりあえず返信しておくか。

 

『許可が出ないことには何とも言えないが、出たなら付き合うよ』

 

 そう言って送り返した。

 その様子に気付いたのか、ラウラが話しかけてくる。

 

「兄様は、モデル業をしたことありますか?」

「……モデル?」

 

 何故そんな話になったのだろうか?

 しかもラウラの口から「モデル」と言う言葉が出てくるなんて思わなかった。

 

「先程、二年生がこのクラスに来て織斑と篠ノ之にインタービューの話をしていたのですが、それでモデル業もするとかなんとか」

「ラウラはそんなことをしたことはあるのか?」

「何度か話はありましたが、すべて断りました」

 

 まぁ、誘った人の気持ちはわかる。確かに俺の側近とか奴隷とか色々と言われている(そして質が悪いことに自称している)ラウラの見た目は良い。クラスの中でも母性とかを抜きにすれば上位に組み込むことができるだろう……一度、クラスの人間を公開して「誰と結婚したいか」とかのランキングをしてみたいな。

 

「でもモデルかぁ……絶対したくないなぁ」

「何故です? 兄様なら、男性部門と女性部門のトップを取るなんて造作もないと思いますが」

「それはそれで泣けてくる」

 

 せめて取るなら男性部門トップぐらいだろうが、そもそも色気がないから無理だ。

 

「だって考えてみろよ。ラウラとか本音とか簪とか、気心知れる奴なら無心になればなんとかできるけど、今の世界だと事故でも訴えられて人生が終了するだけだからなぁ」

「それならば、ぜひ私と一緒に! ………できるかはわかりませんが」

 

 元々、ラウラはドイツの代表候補生でもあるからその辺りはまだ問題だろう。いくら日本国籍を持つババアの娘と言うことになっても、その辺りの事情は複雑なはずだ。

 ………本音を言えば、ラウラにモデルなんかさせたくないがな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 放課後。生徒会室に寄った俺は珍しく一人でいる楯無に外出許可を求めに言った。

 

「で、外出許可が欲しいと」

「ああ。護衛もなしでいい。あまり他人が関わるような案件でもないからな」

 

 流石に他人の事情を覗くのも嫌だろう。

 

「……はぁ、良かった」

 

 そう言って楯無は大きな胸……に触れずに胸を撫でおろした。

 

「何か問題でも」

「ほら、織斑君も篠ノ之さんも同じ日に外出するから、どっちに行こうかなぁって」

「そもそも俺に護衛は必要ないだろ」

「………それは言わないでよ」

 

 いや、別にそう思われても仕方ないってのはわかっているが、いざ言われると何か来るものがあるな。

 

「ただいま戻りました……あら、悠夜君。来てたんですね」

「こんにちは、虚さん………って、その箱は?」

 

 俺が尋ねると、虚さんは説明してくれた。

 

「これはタッグトーナメントのくじ引きですよ。………教師たちがうるさいんです。「いつも一緒にいる人が、常に傍にいるとは限らない」と」

「……悔しいですが、正論ですね」

 

 その最たる例が、学園祭の時に織斑と組んだことだろう。俺は元々コンビで組むことなんてなかったし、何よりもどちらも前衛タイプだ。普段のことがなくても反りが合わないのは当たり前である。

 

「……まぁ、幸いなことにフレンドリファイアが禁じられていないのがせめてもの救いですね」

「悠夜君、織斑君と組んだからってそんなことはダメだからね」

 

 楯無に突っ込まれるが、それに関しては奴の行動次第、と答えるしかない。

 

「悠夜君、私もそれに対しては反対です。確かにあなたにはいざとなれば〈ルシフェリオン〉がありますが、だからと言って織斑君を見捨てて良い理由にはなりませんよ」

 

 まるで聖母のように諭す虚さん。ここまで余裕を持てる女性なんてそうはいないだろう。

 

「でも虚さん」

「でもも何もありません。今回の目的はあくまで専用機持ちのレベルアップを図るためのものです。工夫を凝らすべきですよ」

「………じゃあ、もし俺が織斑と当ったら、その時は授業をサボってひたすら特訓させますから」

 

 そう断言すると、虚さんは「それは無理でしょう」と答えた。

 

「何故ですか!? 勝負なら勝つ為に努力するのは当然! そしてタッグマッチなら弱者が強者に合わせるのは当然でしょう!? というか、織斑の戦いに合わせたらまどろっこしくてやってられませんよ!」

「………実はですね、織斑君の停学が早く解けたのは成績が問題なんです」

 

 ………ふぇ?

 確かに殴ったことはともかく、理由が理由だから織斑の開放はもう少し先だとは思ったが、既にいるしな。

 

「まさか、織斑千冬が動いたとか?」

「上層部の意向なんです。男性IS操縦者を留年させるなって……だったら悠夜君を二年生に進級させろという話なんですが、それとこれとは別のようでして」

「ぶっちゃけ今更ですしね。というかさすがに勉強量が多すぎて付いていけないんですが」

 

 そういう意味では、留年は確かにありがたい話だ。……もっとも、それは今だから言えることであるが。

 

「……もしかして、織斑の成績がすごくヤバいとか?」

「ワースト1、2は第四世代機の二人が独占しています。まぁ、篠ノ之さんの場合は政府が強制的に入れたので何とも言えないのですが、問題は織斑君でして……ワーストといっても差は大きいです」

 

 それを聞いた俺は頬を引きつらせると同時に自分の処遇がどれだけ恵まれているかを理解した。

 

「なので、これ以上は本当は外出は禁止したいぐらいなんですが……インタビューは国の方から要請でもありますし……」

「まぁ、代表候補生はそういうのもしないといけないって話ですからね」

 

 俺は一度もそんな話、来ていないけどな。

 確かに世界大会覇者の弟ってのは話題性はあるのは理解できるが、俺は一応覇者なんですが。

 

「なんか、色々と面倒ですね」

「ちなみに、悠夜君にもインタビューの要請は来ているわよ」

「………えぇ~」

「そう言うと思ったから断っておいたけどね」

 

 それはありがたい。そんなことでこっちの時間を潰したくないからな。

 おそらく学園の大半の生徒は俺の能力を認めざる得ない状況になっているが、それでも外では違うことが放映されているだろうし。

 楯無に内心感謝していると、虚さんはあることを言った。

 

「ちなみに、近々織斑君が代表候補生になるという話があります」

「………あれ? 俺は?」

「あら、意外。てっきり代表候補生なんて興味がないかと思ってたわ」

「興味はないがな。流石にあれだけ活躍しておいて何の指定もないなんておかしいだろ」

 

 自分で言うのもなんだがな。

 

「おそらく、〈ルシフェリオン〉が原因でしょうね。アレは以前、各国のISのデータを奪ったでしょう?」

「………俺を他国の代表候補生にすれば、おまけでその情報も手に入れることができる、とか?」

「そういうことです」

 

 ……面倒なことになったな。

 いや、逆に考えるんだ。別に無所属でもいいさって。

 

 ―――しかし、平和は長く続かなかった

 

 

 

 

 ―――俺たちは、密接していた

 

 いつものように悪友みたいな感じではなく、どちらかと言えば恋人同士に近いそれだろう。もっと詳しく言うのなら、お化け屋敷に入ったカップルみたいに女が「きゃー! こわーい!」って感じに男に引っ付き、イチャイチャするアレである。一度遊園地でバイトをしたことがあり、そこでお化け屋敷担当の人のメイクを手伝っていた俺は人手が足りないと言う理由で駆り出された時に何度そのカップルにIS同士による試合の流れ弾がクリティカルで直撃してくれればいいのにと願ったことか。

 話は戻るが、今の俺たちにそんな甘ったるい雰囲気はない。あるのは心の底から沸き上がる恐怖のみだった。

 

「……オネエチャン……ドコ……?」

 

 阿修羅と化した女生徒がどこからそんな声を出しているのかと聞きたくなるほどの恐ろしい声を出して近くを通る。どれくらい恐ろしいかと言うと、8mぐらいの陸戦兵器の専門家が廃病院で出た電話並みに恐ろしい。今だからこそ思うが、どうして彼はあんなにも冷静に対応できたのだろうか。

 

「……どうして……どうしてこんなことになったの……」

「どう考えてもあの行事のせいだろ」

 

 俺と楯無はひそひそと話をする。距離はほとんどキスしそうなぐらいのものだが、残念ながら俺たちにはそんな余韻に浸っている気分ではなかった。

 すると俺たちがいる場所に大きな氷柱が飛んできて、壁に当たると弾け飛ぶ。楯無はこういうことには専門家のはずなのに、悲鳴を上げ、俺に抱き着いてきた。

 

「ちょ、バカ―――」

「―――ミィイイツケタ」

 

 能力を遠慮なく行使して前方により強い重力を自分のみを対象にして引っ張り、そこから移動する。

 

 ―――本当、どうしてこうなった!?

 

 

 

 

 

 話は数時間にさかのぼる。

 朝のHRで専用機持ちタッグトーナメントが開催されると通知があり、その組み合わせはお昼休みに発表されるということだ。その組み合わせは厳選なコンピュータ選定式で誰の介入も受けられなくなっている。

 その組み合わせを見に行った俺とラウラ、そして本音に後から合流した簪と、いつものメンバーに鈴音にハミルトンもいた。ちなみにだが、ラウラは例によって抽選から除外されている。こういう時こそ入れてやれと思うが、人数の関係もあるのだろう。

 ラウラと組む可能性が潰されたのは残念だが、それはラウラに抱き着いて解消し、俺たちは抽選結果を待った。

 

 ―――で、

 

 とうとう抽選結果が発表された……のだが、

 

「俺は楯無とか……これは結構マズいな」

「そうなのですか?」

 

 ラウラにこっそりと耳打ちして答える。

 

「アイツ、俺に能力を使えるようにしろって迫って来たんだよ。あの場にいないから下手に教えていいのかわからなくてさ」

「……なるほど」

 

 本当に何で呼ばなかったんだろうな。今でも理由に検討が付かない。

 

「あの方にも考えがあってのことでしょう」

「……まっとうな考えてであることを切に願うぜ」

 

 他の奴らがどうなったか確認すると、近くで誰かが倒れそうになったので反射的に受け止める。

 

「……って、簪?」

 

 まさか、あの簪が貧血?

 心配になって様子を見ると、公衆の面前だと言うのに抱き着いてきた。

 

「……あの、簪さん?」

「……ああ、そういうこと……」

 

 鈴音が妙に納得した風に呟くので、気になった俺は簪の抽選相手を探す。鈴音はフォルテ・サファイアとだった。ツインキャッツがコンビ名になりそうである……じゃなくて、今は簪だ。簪は一体誰と―――ああ、そういうこと………納得した。

 

「―――最悪じゃないか」

「………一体どこがですの?」

 

 後ろから、やたらと聞き覚えがある声が聞こえた。気になって振り向くと、近くにオルコットがいる。近くには織斑、そして篠ノ之とジアンがいた。

 

「俺は更識さんとみたいだな。よろしくな、更識さん」

「…………ラウラ、代わって」

「私だって嫌だぞ!」

「……こうなったら、当日アリーナを爆破させて中止にするしかない」

 

 それを聞いた織斑は顔を引き攣らせる。ジアンは苦笑いするが、篠ノ之とオルコットは不愉快そうに簪とラウラを見ていた。

 

「……あの、更識さん?」

「悠夜さん。今日……ううん。今すぐベッドにいこ?」

「まだ授業が残ってるから、とりあえず落ち着け」

 

 はっきり言って今織斑なんかに構っている場合ではない。

 なんとか宥めたようと試みるが、織斑の馬鹿はこれでもかと言わんばかりに割って入ってきた。

 

「あの、俺―――」

「あ、うん。とりあえず今は消えてくれ」

 

 そう追い返すように言うと、まだ仲直りしていないからか織斑が言ってきた。

 

「俺は桂木に話しかけてない」

「ようやく姓で呼ぶ学習能力を素直に身に着けてきたのは褒めてやるが、今はそんな状況じゃないことを理解しろっての、この木偶野郎」

 

 まぁいいや。ともかく今は簪を安全な所に動かすのが先決だろう。

 彼女をお姫様抱っこしてここから離れようとすると、

 

「何が嫌なのだ……私だって一夏と組みたいのに」

「全くですわ。わたくしと組んだ方が相性がいいですのに……不公平ですわ」

 

 簪は俺の腕を回避して織斑を通り過ぎ、オルコットと篠ノ之の髪を掴んで引っ張る。

 

「ちょっと、何をするんですの!?」

「この、離せ!」

「いいから」

 

 離す気はないようで、そのまま二人を引っ張っていく。

 心配になった俺はそのまま付いて行くことにしたが、何故か付いてくる織斑。あのこともあって話す気はないようだ。

 簪たちが向かった先はなんと職員室で、鈴音がわけがわからないという風に俺に聞いてくる。

 

「どういうこと……?」

「俺に聞くな……たく」

 

 ハミルトンは別れたので、ここにいるのは一年生の専用機持ちと本音だけだ。

 ドアに触れ、そこから四人分のコードを生成して配る。先端にはイヤホンタイプのスピーカーが付いていて、俺たちは耳に着けた。

 

「あの、桂木君、僕の分はない、かな?」

「織斑みたいにみっともなくドアに耳をつけてれば?」

 

 そう返すと諦めてシュンとなるジアン。そのまま悪い噂をリゼットに撒き散らしてください。

 

『あの、更識さん? 今日は一体何の用かしら?』

 

 女尊男卑思考の教師が簪に聞くと、堂々と彼女は「直談判に来ました」と言った。

 

『直談判? 今回の組み合わせのことかしら?』

『はい。私の組む相手が気に入らないので、篠ノ之さんかオルコットさんに代わってもらおうと思いまして』

『それはできないわ。そもそも、今回の組み合わせはコンピューターで決まったことよ。それはできないわ。それと、織斑先生がいるというのに、あなたはあの人の弟と組みたくないと言うのですか?』

『もちろんです』

 

 これを聞いている全員から血の気がなくなった気がした。いや、本音だけはそうではなかった。

 

『そうですか。では、なら本人に許可を求めます』

 

 簪が移動する。おそらく、織斑先生の方に向かったんだろう。

 そして誰から見ても「猫を被っている」と言いたくなるほどの猫なで声で言った。

 

『織斑先生、あなたの弟さんが死ぬぐらい厳しい修行を付ける許可をしてください。それができないなら、私たちのコンビを解消して組み分けをやり直すか、選んでください』

『別に構わん。最悪、当日に動けなくなろうとな』

『……わかりました。じゃあ、この書類にサインをお願いします』

 

 ……書類?

 嫌な予感が全身を駆け巡る。

 

『……これは何のつもりだ?』

『実はこの展開は、予想していたんです………正しくは、最悪の場合に備えたと言うべきでしょうか?』

 

 平然と能力を行使できるようになってから、俺には紙をその場で作り出すことができるようになった。そのため、備えることをしなくてもいいのだが、簪はずっと備えていたらしい。

 おそらく簪が渡したのは、自分が有利になるように動く紙だろう。

 

『残念ながら許可できない。規則で決まっているからな』

『……じゃあ、別の方向から許可を得れば良いんですか?』

『………できるものならな』

『わかりました。じゃあ、そうします』

 

 そして足音が近付いてきたのでコードを消滅させる。現れた簪は俺と目が合うと逸らし、織斑の前に立って手を差し出す。

 

「これから少しの間、よろしく」

「おう。こちらこそ、よろしくな」

 

 そう言って手を出す織斑―――だが、簪の手に触れた瞬間、それが水となって地面に落ちる。

 すかさず俺は織斑を超えて後ろを見ると、銃口を織斑の首に向けた簪がいた。

 

「―――これから、私があなたの教官を務めます。今後一切、他の部活動のボランティアも、他人との練習も禁止。SHRが終わり次第、指定する場所に来ること。途中で逃げ出すことがあれば、試合当日にまずあなたの白式を再起不能にまで壊します」

 

 そんな悪魔のような宣告をした簪は、銃を降ろして俺に抱き着いてそっと耳打ちした。

 

 

 

 

 

「「また一緒に寝れるね」ってのは、そういうことかよ」

 

 っていうかまず、一緒に寝たら確実に交わることになりそうだな。いや、確定か。

 ともかく、今はこの状況を打開するのが優先だろうよ。

 

(あんまり簪相手に技を使うのは気が引けるが、そうも言ってられ―――)

 

 ―――やられた

 

 俺に引っ付いているはずの楯無がいない。いつの間にか水と入れ替えられていた。

 さらに言えば簪も贋物だ。おそらく、水。

 

「……怠い」

 

 にしても、簪の奴は一体何が目的なんだ……というか何でみんな、そんなに俺としたがるの?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ■■■

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 悠夜から姿を消した簪は、楯無の指で許可証にサインする。

 それを見た簪は満足そうに許可証を眺める。

 

「……ねぇ簪ちゃん。どうしてそこまで悠夜君に入れ込むのか、そろそろ教えてくれないかしら?」

 

 さっきまでの恐怖はどこに消えたのか、比較的冷静な声色で楯無は質問する。……とはいえ、わずかばかり彼女の足は震えているが。

 

「お姉ちゃんには罪があるから」

「……罪?」

「そう。罪。周りにはそうでもないようなことだけど、お姉ちゃんがしたことは、立派な犯罪。そして私は、それを清算するのを手伝っているため」

 

 そう言って許可証を持って生徒会室を出る。

 その間、悠夜が来るまで楯無はずっとその部屋の生徒会室で拘束されているままだった。




たぶん、悠夜は全学年の生徒の倍……いや、3倍は同居人が変わっている。
しかも笑えることに、同じ人がくるくる回っている状態で。

あ、ちなみにバーサーカー簪は演技ではなく、一夏と組みたくないという思いによる「素」です。
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