IS~自称策士は自重しない~   作:reizen

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お久しぶりですが、思いっきり劣化しています。


#137 名探偵を気取った生徒

 その学校は、二人の天才美少女がいることで有名だった。一人は剣道で数々のメダルを手に入れ、一人は陰険だが数学のテストは常に満点だった。剣道少女は満点こそなかったが、いつも90点台後半の点数をキープしており、悪くても80点台後半というキチガイとも言える所業を行っていた。

 

 ―――もっとも、その二人は俺がマークしている二人だが

 

 剣道少女は「織斑千冬」、陰険数学少女は「篠ノ之束」という名前だ。どちらも容姿は優れており、織斑は男女共にモテている。篠ノ之の方は男子の一部の生徒にだろう。特に最近「踏んでください」という奴らが多い気がする。

 偶然か、必然か。かれこれ9年間同じクラスになっている俺こと「風間剣嗣」は彼女らの観察に事欠かないだろう。体育の時を除いては。

 

(流石にそこまでストーキングするつもりはないが)

 

 一つ言っておくが、別に俺は彼女らに興味があるわけではない。ちょっとした大人の事情でマークをしているだけに過ぎない。幼馴染の女従者という美味しい位置の女がいる俺にとってはどうでもいい存在とも言える。もっとも、その女も今では学園のアイドルと化しているのは知っているが、未だ知名度が二人の方が高いからそこまでの被害はあっていない。

 

「よぉ、風間」

 

 クラスメイトの一人が俺に挨拶をしてくる。そいつの名前は「御剣(みつるぎ)卓弘(たくひろ)」。俺たち3年5組の副学級委員だ。

 

「御剣か。相変わらずチャラいな」

「出会ってそういうこと、普通言う?」

 

 実際、チャラいからな。何度か篠ノ之にアタックしているが、そのたびに無視されるか椅子か何かで殴られているのを見るが、それでも諦めないのは凄いと思う。流石はドM。周りとは格が違うということか。

 

「それで何の用だ? 今度もまた「篠ノ之束を口説くために知恵をください」とかほざいたら、チョキでしばくぞ」

「そこは普通、「グーでしばく」じゃないの!? いや、グーでも痛いから遠慮してほしいけどね!」

 

 何でこいつはこうも騒がしいのやら。まったく、少しは落ち着いてほしい。

 

「で、余計な突っ込みはいいからさっさと本題に入ってくれ」

「実はお願いがあるんだけど―――」

 

 また篠ノ之を惚れさせる知恵を貸してくれだろうと予想していると、第三者が俺に声をかけてきた。

 

「風間、少しいいか?」

「織斑か。ちょうどいい。篠ノ之のタイプってなんだかわかるか?」

 

 おそらく俺と織斑の共通の話題があったのだろうが、ここはひとつ協力してもらうとしよう。

 

「? 束のか? いや、アレにそんなものはないと思うが……」

「だそうだ、御剣。諦めて全裸で特攻しろ」

「それは流石に問題があるだろ!!」

 

 まぁ、常識的に考えて問題だ。今この場で特攻したら、提案しておいてなんだが間違いなく絶交する。

 

「風間、話があるのだが」

「何だ?」

「今日の委員会だが、悪いが私は行けなくなった。家の用事で、な」

 

 と説明してくるが、これは嘘だ。この女と家族は調査対象であり、予め奴らがどんな行動をするかは聞いている。だがそれをここで見抜いて探偵気取りに説明したとしても、余計な面倒が増えるだけだ。

 ちなみに俺と織斑は学級委員だ。

 

「そうか。では今日の欠席理由は「最近告白された下級生とレズプレイするから」とでも説明しておく」

「普通に「家の用事」では説明つくだろう」

 

 俺なりのユーモアのつもりだったのだが、本気で顔を赤らめる織斑。だが正直、俺はこの女がレズだろうと思っている。理由は、さっきから彼女の後ろにいる女が原因だ。

 

「ちーちゃ―――」

「食らうか!」

 

 織斑はすぐさま御剣を引っ張ってバリアに使う。するとそれを掴んだ篠ノ之は素早く放り投げた。

 だが周りには何が起こったのかわからないだろう。俺だって日頃から訓練を積んでいなければ見えていない。

 ちなみに御剣は、とある下級生によって窓ガラスの下の壁に激突して止まった。

 

「ちょっとちーちゃん! どうしてあんな気持ち悪いゴミで防ごうとするのさ!? 机とかがあるでしょ!」

 

 異議を唱える篠ノ之。だがお前もしていることも大概だがな。第一、俺の後ろにいる奴がカバーしなければ、間違いなく御剣は死んでいた。

 しかし、残念ながら俺にとってはこういうのが日常だ。正直なところ、彼女らは俺の中では雑魚の部類に入る。

 騒いでいる二人を放置して、俺は廊下に出るとスタンバイしていたのかさっき御剣を助けた()()が立っていた。

 

「……リアか。どうした?」

 

 あまり3年生の階に来てほしくないのだが。

 俺たちが通う中学は、4階が1年生となっていて3階、2階と下がっていくと学年が上がる。そのため、2年生のリアは3階にいるはずなのだが、どういうことかギリギリまで俺の後ろにいるのだ。

 

「先程は助かった。下手すれば死んでいたところだからな」

「………」

 

 無言で返すリア。すると、何かを期待するように俺の方に視線を向ける。

 それを察したリアの頭を撫でると、嬉しそうに目を細める。この状況を見れば間違いなく俺たちが付き合っているなどのただならぬ関係だと思うだろう。……認識できれば、の話だがな。

 残念ながら、それをできる奴は学校にはいない。俺が周囲に同化する術を俺たちの周囲に張ったからな。おそらくここには別の何かが置かれているように見えるだろう。

 

「それで、頼んでいたことはわかったか?」

「はい。…これを」

 

 資料を渡され、受け取った俺は軽く閲覧する。

 こうして見ておかなければならない理由は、あの美人二人がいるからだ。

 

「………やはりか」

「動機は知りませんが、大方織斑千冬のレベルアップでしょう。集団を相手にしても勝てるように。特に不良には型のようなものはなく、読みにくいのでこれから現れる敵への対策でしょう」

「その分単調だが、対策するにはうってつけか」

 

 最近、妙に部活を休んでいるわけだ。実績を残しているからとやかく言われていないが、ばれたら停学は不可避だろう。それに、去年見た例のアレもそろそろ完成するとか言っていたしな。………無駄に力を持ってしまった子供ほど、面倒なことはない。

 

「……仕掛けるつもりですか?」

「ああ。それに少し試してみたい術もあるしな」

 

 懐から紙を出す。問題は、これを使っていつ入れ替わるかだが……それに関しては問題はないな。

 

 

 

 

 

 去年の9月頃、俺は一つの設計図を見つけた。

 もっとも俺は見たくて見たわけではない。放課後、明日配る課題ノートを学級委員だからという理由で持って行かされたのだ。厚いし重いしでうまく持てるはずもなく、教卓に乗せる時に少し落としてしまったのである。

 その中に篠ノ之の課題もあったのだが、心から課題ノートを提出していることを意外に思いながら教卓に戻そうとすると、中から紙切れが落ちた。おそらくそれは御剣のような奴が見ればわからないものだったが、俺の場合は家が特殊だったのですぐに何かわかり、俺だけの心にしまおうと思っていた。チクったところであの馬鹿母が無駄に対抗心を燃やすかスルーするかのどちらかだろうからな。

 で、俺はとりあえず持ち主(この場合は持ちノート?)戻そうとしたところで篠ノ之が息を切らして教室のドアを開けたのである。

 彼女とは興味対象ではあるが別段仲が良いわけではないので挨拶も何もしなかったが、あの女は急に自分の席を何かを探しているようだった。

 しばらくしても見つからないようだったので、さっき見つけた紙切れを見せる。

 

「探し物はこれか?」

「!? 返せ!」

 

 それが何かわかったらしく、普通からかなり離れた身体能力で跳んで俺に迫る篠ノ之。だが、異常に慣れている俺にとってその早さはそこまで問題ではなかった。

 とりあえず回避すると、信じられないという顔をするがすぐに体勢を立て直し、攻撃する。

 体を無理やり捻って椅子を飛ばしてくる。癇癪を起こし、壁すらも破壊して攻撃してくる弟と違って単調ではないが回避できないわけではなかった。後ろで教室内に設置されている水道の鑑←管に椅子が当たったけど無視して回避する。

 

「そこまでだ」

 

 俺は設計図の両端を持って力を入れる素振りを見せる。

 一瞬、動きを固めるが、すぐにふざけた形をした銃を抜く篠ノ之。明らかに銃刀法違反なんだがそれにつっこんでいる余裕はない。

 

「そのまま引くって言うなら設計図を破くけど?」

「……それをしたら殺す」

「だったら落ち着け。何も、これを同行←どうこうしようとする気はない」

 

 手を移動させて畳もうとしているのを勘違いしたのか少し動くが、折りたたんで渡すとすぐに受け取る。

 

「そんなに大切なら課題に挟むなよ」

「………え?」

「挟まってたんだよ、課題に」

 

 それだけ言って俺は鞄を取り、教室を後にした。

 

 

 

 

 

 そんないきさつがあり、今あいつらが何をしようとしているのかわかっている。

 というかどうして天才というものは同じような物を作ろうとするのだろうか。あの母親も「史上最強の最小ロボットを作る!」とか言って地下の研究施設にこもっているし、その手伝いをしているとわかったが、どう見てもパワードスーツだったし。

 

「剣嗣様、用意されたものをお持ちしました」

 

 リアから渡された袋を開けると、中にはスーツが入っていた。

 これは今回の作戦に必要なものだ。幸い、会議も早めに終わったし今から着替えれば大丈夫だろう。

 学校で着替えるのは少々問題なので、ばれないようにあらかじめ持ってきていた体操服用の袋に入れておく。苦戦したが、何とか入った。

 そしてトイレに移動し、俺は作戦を実行した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ■■■

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その頃、彼らが住む町では不良による中年男性を狙ったオヤジ狩りが横行していた。

 観光地としても有名だったその町の管轄内の警察は見回りをしていたが、完璧なほどに裏をかかれていたのだが、どういうことか謎の女性が退治しているのである。

 そして今日もまた、オヤジ狩りが行われた。

 

「とっとと金を出せや!」

「ま、待ってください! これは会社のでして―――」

「んなこた知るか!」

 

 大柄の男がひったくるように鞄をひったくる。中身を確認するためにセカンドバッグのチャックを開けようとすると、何かが男の手に当たってセカンドバッグが落ちた。

 

 ―――カラランっ

 

 木刀が転がって止まる。男たちは飛んで来た方を見ると、そこには黒い衣装で彩られたどこかの仮面紳士のような格好をしていた。

 中年男性はそれを見て固まり、不良の一人は完全に引いていた。

 

「そこまでにしろ」

 

 タキシード姿の女は場違いな木刀を新たに抜き、彼らに迫ってくる。不良の一人がさっき弾くのに使われた木刀を手にすると、すぐさま彼女に襲い掛かった。

 

「このアマぁ!!」

 

 タキシード女は上段から振り下ろされる木刀を軽くいなし、相手の意識を刈り取った。

 瞬間、タキシード女の前に比較的身長が低いボーイッシュな女が距離を詰めてきた。タキシード女は瞬時に体を捻らせて回避する。

 

「―――やはりあなたでしたか」

「何?」

「3年3組の学級委員」

 

 そう言葉を残したボーイッシュな女はすぐさま距離を取る。そして中年男性に声をかけると、二人は揃ってその場から離れた。

 

「待て!」

「一人は追え! 残りはこいつを―――」

 

 すると、セカンドバッグから爆音とサイレンが鳴り響いてそれが路地裏だけでなくすぐ近くの往来にも聞こえた。

 野次馬が路地裏へと足を運ぶ。興味、好奇心からだろう。タキシード女はすぐさま目当てのセカンドバッグのみを回収してその場から去った。

 

(……これはどうすればいいんだろうか)

 

 近くの公園のトイレに入り、中学の制服に着替えた()()()()はボロボロになったセカンドバッグを回収した。

 おそらく金はすべて焼失していると思われるが、それでも彼女は回収してしまっていた。

 

(それにしてもあの女は、一体誰だ?)

 

 セカンドバッグと着替えが入ったエナメルバッグを持って外に出ると、さっきの女が待機していた。

 

「……貴様は」

「織斑千冬先輩……いえ、変態仮面とでも言った方がいいですか? まさか品行方正と言われているあなたがあんな奇抜なファッションでオヤジ狩りを狩っているとは思いませんでした。正義の味方ごっこはともかく、あんな格好はないと思いますよ」

 

 帽子を取ると、長い髪が露わになる。ボーイッシュだった女もといリアは、馬鹿にしたような目を千冬に向けた。

 

「………確か貴様は風間とよく一緒にいる2年生だな。何の用だ?」

「警告ですよ。もう、剣嗣様に近付かないでください」

 

 真剣な目に代わり、リアは千冬を睨む。

 

「…何の話だ?」

「確かにあなたの偽装は完璧でしたよ。完璧でしたが、人は自分の好物からは逃れられない。あなたは小学校の時から剣嗣様のことが好きでしょう?」

 

 ―――ありえない

 

 千冬の頬は引き攣る。何故なら彼女は、ずっと前からその気持ちを親友の束にすら隠し続けていたし、弟にも、両親にもばれていない自信はあった。……もっとも、リアの場合は授業中を除いていつも剣嗣を観察し、その結果わかったことなのだが。

 

「ああ。それとこちらが本題ですが…篠ノ之先輩と何かを企んでいるのならば今はしない方が身のためかと」

「………何?」

「あくまでも忠告。ですが、ちゃんと伝えましたのでもし大事ならばきちんと必要なものを取得してからしてくださいね」

 

 そう言ってリアは踵を返して去っていく。その場に残された千冬は束から連絡が来るまで動けないでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ■■■

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――私に任せてください

 

 そう言ってリアは変態タキシード女……もとい、織斑千冬がいるであろうトイレに向かった。

 俺は既にそのトイレから出て、中年男性の格好は解いている。

 

(大丈夫…か?)

 

 遠くから観察しているが、リアには何故か「絶対に聞かないでほしい」と念を押されてしまっているため、仕方なく双眼鏡で観察しているわけだ。我ながら、趣味が悪いとは思う。

 しばらくすると、会話が終わったのかリアがこっちに近付いてきた。

 

「大丈夫だったか?」

「はい。しっかりと釘を刺すこともできましたから」

「………釘?」

 

 何のことなんだろうか?

 いや、今のは聞かなかったことにしよう。藪をつついて蛇を出して被害に遭うのはごめんだ。

 

(しかし、一体どうしてあんなことをしていたんだ………?)

 

 あの女も一武術家ならば、ああいうことはしてはいけない……もしくはしない方が良いだろうと思うのに。まぁ、強くなるためには手っ取り早い手段であることは認めるが。

 

(まぁ、しばらく放置しておくか)

 

 俺たちリードベールと織斑の溝は結構深い。そのため、未だ平然と潜伏している織斑を監視するのが役目であり、今回もこうして出向いているわけである。決して、織斑千冬が変態衣装で戦っている姿を観賞したかったわけではない。

 そもそも、俺の家は少々特殊だ。まず母親がマッドサイエンティストだし、父親はお気楽主義の戦場荒らし、祖母に関しては問題児で、配下を失うほどだ。……もっとも、ガンヘルドが異常なまでに俺らリードベールに対して過保護なところがあるってだけなのだが

 

(このまま、何もなければいいんだがな……)

 

 だがそんなことは無理だということを、内心俺はわかっていた。

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