IS~自称策士は自重しない~   作:reizen

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後書きを編集しただけですので、本編の変更は一切していません。
ご注意ください


#156 究極にして最凶、故に我は

 戦いが激化していく中、スコールはなおも3人の相手をしていた。

 

「流石は国家代表級の3人ね。私を相手にここまで持つとは思わなかったわ」

 

 そう言うスコールだが、彼女は汗一つかいていない。それどころか、彼女の「ゴールデン・ドーン」は未だに損傷らしい損傷はしていなかった。

 だが対する3人はそれぞれが機体を損傷させている。真耶に至っては援護射撃をしていたにも関わらずスコールは決して過小評価せずしっかりと対応していたのだ。

 

「でも残念、これが私の実力なの。桂木悠夜にのみ頼らず、もっと率先して戦っていればこんなことにならなかったでしょうに」

 

 図星だった。

 いつだってそうだった。千冬も、真耶も、そして楯無も、生徒を守る立場にあったにも関わらず、常に事件を終息させていたのは悠夜であり、楯無は関わったとしてもそこまで場数を踏めておらず、千冬や真耶に関して言えば常にサポートして、作戦指揮官としての立場に甘んじていた。

 

「だからと言って、引く気はない!」

「そう? なら、死になさい」

 

 スコールが持つ炎の剣に一瞬、黒い何かが宿る。そして瞬時加速と炎による加速で千冬の懐に入った瞬間、風で形成された槍が通過した。

 

「そこまでサね、スコール!」

「あら、アリーシャ・ジョセスターフじゃない」

 

 千冬らが上を向く。そこにはIS「テンペスタ」を装着したイタリア代表の「アリーシャ・ジョセスターフ」が立っていた。

 

「千冬は私の獲物サね」

「残念。私の獲物も彼女―――」

 

 スコールは途中で言葉を切り、ある一点を見る。千冬は楯無を見ると、彼女も同じように千冬―――いや、千冬の向こうを見ている。

 

「……何なの、この感じ」

「……レイ・リードベール。やはりあなたも腐敗した王家の一族ね。騙されたわ」

 

 千冬、真耶、そしてアリーシャの3人は2人が何を言っているのか理解できない。しかし次の瞬間、彼女らも何かを感じ取った。

 

「……何なのサね、この寒気は。「テンペスタ」も騒いでる」

「織斑先生、この感じは……」

「…………ああ。そういうことか」

 

 消したくとも消せない恐怖。身体に刻まれた恐怖が彼女らに警告を発する。―――道を開けろ、平伏せ、死にたくなければ離脱しろ、と。

 

「篠ノ之博士、桂木悠夜に仕掛けてください」

「何!?」

 

 スコールが何気なく言った言葉に千冬がいち早く反応した。

 

「あら、あなたたちは知らなかったのね。迂闊だったわ」

「何故束がそこにいる……いや、束は死んだはずだ!!」

「ええ、死んだわよ。妹を守るためにプログラムされた高性能の彼女を模したロボットはね」

 

 その言葉に衝撃を受けた。そして同時に、千冬の頭の中に以前の悠夜の言葉が過ぎる。

 

 ―――10年前に両手両足を捥いでから神経と膣ををぐちゃぐちゃにしたんだよ

 

(……あの言葉が本当なら辻褄が合う)

 

 10年前の時点で束が行動できなくなる―――だがそれは同時に箒ら家族を危険にさらしてしまうということだ。

 誰が束に手を貸して束のロボットを作ったのかまでは考えが至らない千冬だったが、それもほんの少しのこと。束の事を知り、束を自由にする人間なんてたった1人しかいない。

 

(………まさか、近くにいるのか……)

 

 千冬はハイパーセンサーを駆使して周囲を確かめる。

 

 ―――いた!

 

 瞬間、千冬に向かって何かが飛んできて蹴り飛ばす。

 楯無も、そして真耶もアリーシャも、スコールでさえも反応できなかった。

 

「………戦いが終わるまでは傍観するつもりでしたが、見つかってしまっては仕方がありません」

 

 その顔を見てアリーシャは態度を変える。殺気を飛ばすがその女性にとっては「どこ吹く風」だ。

 

「アル、コウの2人はオータムを。暁様はレイン・ミューゼルの戦闘状況次第では介入を。残りの部隊はIS学園の教員を確保。ここからの戦いに「ディメンションバリア」だけでは持つことはできません。至急、我々の物を展開するための準備に入ってください」

「………何故ここにいる、風原リア」

「我々の目的は亡国機業の組員の確保です。これより、戦闘に介入させてもらいます」

 

 そう静かに言ったリアはスコールに向けて唸りを上げる風を飛ばした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ■■■

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ダークカリバーを射撃モードにしてぶっ放す。だが水、そして機動力で回避される。

 

「やはりIGPSって言ってもその程度か。そろそろ生身で戦った方が良いんじゃない?」

「………だろうな」

 

 今度はあっさりペガスを解除したことに驚きを見せるレイ。

 「黒鋼」とペガスだと、ペガスの方がバイクとして使うからあまり使いたくないんだよなぁ。

 

「さて、仕切り直し―――」

 

 ―――ゾクッ

 

 寒気を感じた俺は、慌てて後ろを向く。さっき俺が叩きつけられた壁から黒いオーラが立ち込めている。

 

「……兄さん、何かした?」

「記憶にねえよ。あんなこと」

 

 考えてみれば、闇の力をまだ使っていなかった。

 後ろに警戒しながら弟をどうやって倒そうと考え始めると、俺たちがいるところに何かが向かってきた。

 俺は回避して機動力を上げるために翼を顕現させる。

 

「………兄さん、僕の動きに追いて来れる自信ある?」

「正直難しいが、追いていくつもりだ」

 

 おそらくレイも感じたのだろう。目の前の何かはとてつもない存在だと。だから俺は―――人族の限界を超えて黒服共を潰した時の力を使うことにした。

 

「ワオ! とうとう人間を捨てたね、兄さん」

「元からだ。というか、これくらいはしないとヤバい」

「…それは同感だ」

 

 黒いオーラを放つ何かは剣を展開、並びに見覚えがある小さな球体を展開し、放った。

 俺たちはそれを回避し、接近する。だが球体による弾幕は激しくなり、さらには目の前の敵がいなくなる。

 

(くっ、どこだ―――)

 

 俺は上からの攻撃を防ぐために腕を十字にクロスさせ、固くなった皮膚で斬撃を受け止める。

 

「レイ!」

「わかってる!」

 

 水の蛇、そして氷塊を飛ばして動きを抑えている敵に攻撃するが、

 

「何!?」

「攻撃が効かない?!」

 

 まさか、闇のオーラで消し飛ばしているのか!? どれだけ化け物だよこいつ!

 

「………ヨコセ」

 

 耳に声が聞こえてくる。闇のオーラが晴れると、目の前の機体に見覚えがあった。

 

「……「ルシフェリオン」」

「まさか、復活するなんて………」

 

 俺は何度もこいつの状態を確認したが、常に「損傷率100% 再起動不可」とばかり出ていた。だから諦めていたのに。

 

「このタイミングで復活、そして暴走か」

「………悪いけど、僕は離脱させてもらうよ」

 

 レイの奴……! まぁいい。

 

「余計なことはするなよ」

「兄さんが暴走して、止められる人間がどこにいるんだい? 後ろで待機しておいてやるよ」

「貸し1つでか?」

「それいいね」

 

 そう言ってレイは後ろに下がる。俺は押さえてくる「ルシフェリオン」に対する力を利用して回転し、踵落としをぶち込んだ。

 

「……ヨコセェ!!」

 

 「ルシフェリオン」が俺に向けて手を伸ばす。手を回避し、腕を利用し、全身装甲になった頭部を蹴り飛ばす。瞬間、「ルシフェリオン」は後ろに転移して俺を掴んだ。

 

(……流石は俺の分身……だけじゃないな)

 

 おそらく「ルシフェリオン」だけじゃない。異物、という表現は間違っているのだろう。

 触れているからわかる。こいつは「俺を求めている」。「俺という核」を求めている。

 

 俺は抵抗を止め、為されるがままにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ルシフェリオン」の体内に入ることで俺は何かを感じる。

 

(……まるで俺という存在のために存在しているようだ)

 

 これが玉座―――王が座るための椅子。

 

「………目覚めて」

 

 2つの声が同時に発しているように聞こえる。だけど俺は構わず手を伸ばす。

 

 ―――馴染む

 

 ―――まるでそこにいるのが正しいとすら思えるほどに

 

 ―――だから

 

 ―――だから俺は……

 

「目覚めるさ………だから、お前も目覚めろよ」

 

 視界が明るくなる。周りにはディメンションバリアに覆われた京都の町が見える。

 今、俺は―――究極にして最凶になる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ■■■

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁあああ!!」

 

 マドカは雄たけびを上げて「白騎士」に斬りかかる。しかし「白騎士」は攻撃を避け、荷電粒子砲を召喚してマドカに向かって撃った。

 

「そんなもの!」

 

 マドカは回避し、同時にランサービットを先行させて仕掛ける。だが「白騎士」はいとも容易く回避してマドカに迫った。

 

「この!」

 

 《フェンリル・ブロウ》を振り下ろすと同時に《雪片壱型》を振り上げ、切り結び、蹴りを入れる「白騎士」。さらに《雪片壱型》を収納し、《ホワイトハルバート》を展開してマドカに斬りかかった。

 

「データにない武装だと!? 一体どうして―――」

 

 瞬間、彼女の頭に姉の友人の顔が過ぎる。

 

(だが、今は目の前の奴だ。……奴を倒さねば私は前に進めん!)

 

 自分に言い聞かせ、マドカは「白騎士」に《スターブレイカー》を向けて何度も引き金を引いた。

 

「消え失せろ!」

 

 《スターライトMk-Ⅲ》よりも出力が高い《スターブレイカー》の光弾を弾き、「白騎士」は「黒騎士」に肉薄する。

 

「させるかぁ!!」

 

 接近する「白騎士」と《フェンリル・ブロウ》で切り結ぶマドカ。同時に離脱して《スターブレイカー》とビットによる牽制射撃を行う。

 すると「白騎士」は予想外の攻撃を行った。荷電粒子砲とは違う銃を展開してマドカに撃ったのだ。

 

(ビームだと!?)

 

 信じられない。まるで夢を見ているようだ。その想像を打ち消すようにマドカは首を振る。

 すぐに意識を戦いに戻し、破壊された《スターブレイカー》を捨てて同じようにマドカも武装を展開する。

 

「吹き飛べ!!」

 

 「白騎士」のスラスターを1基、破壊に成功する。だが、ありえないことが起こった。

 

「瞬時に修復しただと?!」

 

 ISには自己修復機能がある。だがそれは瞬時に行われるものではない。そんな常識はずれのことが目の前で起こり、驚愕した。

 

「ふざけるな……ふざけるなぁああああああッ!!」

 

 突如機体が、そしてマドカが光を放つ。同時に「白騎士」も光を放った。

 白と黒の光が放たれ続け、両者とも姿が変貌していた。

 

「………認めるものか」

 

 「黒騎士」の可動式へと変化したウイングスラスターが開き、光を放つことによって爆発的な加速を得て「白騎士」に接近するマドカ。

 

「常に恵まれ……常に光に当てられ続け……」

 

 二次移行(セカンドシフト)を果たしたことによって復活し、バージョンアップした《スターブレイカーMk-Ⅱ》で展開して牽制しながら接近し、

 

「姉さんの寵愛を受け続け……友人にも恵まれた貴様など……認めるものかぁああああああ!!」

 

 《フェンリル・ブロウN》を絶叫しながら振り下ろす。それを「白騎士」は下段から《雪片参型》を振り上げることで弾き、振り下ろす。マドカは大型化したフィン・ビットをぶつけて軌道をずらし、ランサービットで首を攻撃する。それで動きを鈍らせ、至近距離でビームを叩き込み、《フェンリル・ブロウN》を投げた。

 回転しながら回る《フェンリル・ブロウN》。そのスピードはとても早く、また距離をあまりないこともあってマドカはダメージを確信してフィン・ビットと《スターブレイカーMk-Ⅱ》の同時射撃を叩き込んだ。だが―――

 

 ―――ガッ!

 

 先に着いた《フェンリル・ブロウN》を受け止めた「白騎士」はそれを握り潰す。

 

「何ッ!?」

 

 さらに「白騎士」はその場から消え、ビームの雨を回避した。それだけではなく、移動するたびにまるで残像を見せられているかのように姿を残しながら移動する。

 

「資格無き者に、力は不要」

「―――!?」

 

 その言葉は言刃となり、マドカの心を抉る。

 

「このクソがッ!!」

 

 だがマドカとて素人ではない。これまで数々の実験、そして戦場を駆け抜け場数を踏んで来たからこそすぐに復帰して迫り来るビームを回避した。

 

「資格無き者に、存在価値など……皆無」

「黙れ!!」

 

 叫びながらもマドカはランサービットを飛ばして牽制、《スターブレイカーMk-Ⅱ》のビームを放つが「白騎士」を捉えることはできない。そればかりか「白騎士」は瞬時加速をして距離を詰め、《雪片参型》を振るう。それがマドカに当たりそうになった瞬間、黒い機影がマドカを掴んでその場を離れた。

 

「ティア!? 何をする、離せ!」

「離さない。レイ様にあなたを下らないことで死なせるなと言われたから」

「下らないだと!? これは私が私であるための戦いだ」

「それが下らないの!」

 

 急に怒鳴ったティアにマドカは驚きを露わにする。

 普段は弄り、弄られる関係だが怒鳴ると言う行為は今までしなかったティア。だからこそだろう、ティアは攻撃を回避しつつマドカに言った。

 

「あなたが誰かなんてどうでもいい。あなたはマドカ、私たちの仲間でしょ」

「仲間だと? ふざけるな、貴様らなど―――」

「―――話は終わりか?」

 

 瞬時加速してティアと「仕狼」を蹴り飛ばしてマドカからはがす。

 

「資格無き者よ、散れ」

 

 無慈悲に白騎士」は言い、マドカの心臓をめがけて《雪片参型》を突き立てようとした瞬間、「白騎士」は急遽上へ回避した。

 

「―――ならば問おう、白騎士よ」

 

 それはよく通る声だった。しかし女の声であり、マドカは混乱する。

 

「……「ルシフェリオン」……なのに女だと」

「貴様は何故、資格者を求める。貴様の言う資格者とは何だ?」

 

 マドカの声を無視して「ルシフェリオン」の操縦者は尋ねた。

 

「闇を打ち払い、光を持つ者。それが私が求める資格者」

「……そうか」

 

 答えを聞いた「ルシフェリオン」の操縦者は口を歪ませ、吐き捨てた。

 

「―――下らないな」

「……何?」

「相変わらず下らない。いや、そんな思考を持っているからこそ持たなかった私は捨てられ、あなたが「最初」になったのね」

 

 瞬間、周囲に黒い雷が降り注ぐ。狙ってか、それらはすべて「無人機」に当たった。

 

「………あなたも、資格無き者」

「故に殺すか? 我を。10年前、倒された相手を滅ぼそうとするか?」

 

 今度は男の声。いよいよマドカは混乱し始める。

 

「……10年前」

「まぁいい。だがこれだけは言っておく。ISは、今も昔も弱者だ」

 

 そう言い残して「ルシフェリオン」は消えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ■■■

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『あれでよかったの?』

 

 テレポートして「白騎士」から距離を取った俺はある人物を探して移動している時、補助AIの「ネクロ」が尋ねてきた。

 

『その前にやることがあるからな……っと、見つけた』

 

 簪とレイン、その2人を見つけた俺は《フレアマッハ》を展開してそれに近付く奴らを破壊していく。すると2人、その奥にいる鈴音とサファイアは驚きながらこっちを見ていた。

 気にせず俺は簪とレインの間に割って入る。

 

「………「ルシフェリオン」…復活したの?」

「色々あってな。さて、レイン」

 

 ダリル・ケイシー……もとい、レイン・ミューゼルの方を向くと警戒心を露わにしている。まぁ、当然か。今は敵だし。でも正直、俺はもうそんなことはどうでもいい。

 逃げようとしているレインの腕を掴んで引き寄せ、顎を持ってキスした。

 瞳を閉じてキスするのが常識。だがネクロは空気を読んで映像を送る。鈴音と簪、そしてサファイアは唖然としていた。

 少し過去に戻るが、俺は兄貴から滅んだ神樹国を復活させる方法を聞いている。それは四元属家の各家から巫女を1人選んで、マーキングした上で復活の儀式を行うものだ。そのマーキングとは―――キスである。

 他の4人とのキスは既に済ませている。ミアと最初にしたのは10年前。そして朝起きた時には何度もしている。そして奈々、簪、朱音のことは言うまでもないだろう。なので、残るは彼女だけだった。

 舌を入れてより強く、より深く愛するように相手を抑える。そして口から外すと怒りと恥ずかしさで顔を赤くしているようだ。

 

 ―――我は究極にして最凶、故に―――相手の意思を無視してすべてを手に入れることをここに宣誓する




究極の力を手にした悠夜は生徒会長として、そして王として力なき民を守るために戦う。しかし、我を貫き、血筋を顧みないことに理想を砕かれた者が彼の前に立ちふさがる。その行為が無駄と知りながらも。

一方、少女と白銀の騎士の戦いはさらなる混迷を極めた

自称策士は自重しない 第157話

「絶望的な差」

自らの存在のために、その力を見せつけろ、マドカ!!












主人公がマドカに変わりつつあるのは気のせいです。
ちなみにさりげなく白騎士はバージョンアップを、黒騎士は二次移行しています。
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