IS~自称策士は自重しない~   作:reizen

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前回に引き続き、今回も視点をコロコロと変えています。
長かったよ。ようやく2巻に入れるよ、パトラッシュ(´;ω;`)


#26 始まりと覚醒……?

 フランス某所に存在する一つの巨大企業。入口に「デュノア・コンパニー」とフランス語で印字されたそこの中央に位置する15階建ての最上階———その社長室で男性は向かい合う形でデュノア社のカンパニー・ロゴが入ったジャージを着ている()()に説明していた。

 

「詳細は以上だ。任務は困難を極めるだろうが、会社の未来がかかっている。絶対にミスをするな」

「………わかりました。それと、質問なのですが」

「何だ?」

「どうして織斑一夏を優先的なんでしょうか? 桂木悠夜の方が簡単なのですから、そちらを優先するべきなのでは?」

「だからこそだ」

 

 自信ありと男性は言った。

 

「織斑一夏の専用機はどうやら篠ノ之束が関わっているらしい。あの女はISコアを開発したとはいえ、実際開発したISは白騎士、暮桜、そしてこの白式のみだ。一般企業が開発した機体のデータよりも、そちらの方が重要だ。それに、この男は篠ノ之束と近しい関係にもある。今後のために取って置くべきだ」

 

 熱弁する男性に対して「わかりました」と答える男子。さらに男性―――シルヴァン・デュノアは付き加えた。

 

「言っておくが、決して桂木悠夜のことを無視するなというわけではない。隙があるなら遠慮なく奪って構わん。材料は多い方がいいからな」

「……はい」

 

 シルヴァンは話を切り上げ、男子———シャルル・デュノアに出ていくように命じる。シャルルは部屋を退出すると入口に置いていたスーツケースを持ってエレベーターの方へと、まるで待っていたかのように一人の少女が立っていた。

 

「……おはようございます、リゼット様」

「あら、私たちは姉妹なのですから、「様」はつけなくてもよろしくよ」

「確かにそうですが、私はあなたとは違いますから」

 

 そう言ってシャルルはエレベーターの「↓」ボタンを押す。運悪くどちらも階下にあるので昇ってくるまでしばらく時間がかかる。

 

「あなたがIS学園に行くにあたって、一つ忠告させていただきますわ」

「……何かな?」

 

 どちらもお互いを見ることはなく会話は進んでいく。

 

「桂木悠夜―――二人目の男性IS操縦者には手を出すことは止めておいた方がいいですわ」

「………どういう意味だい?」

「言葉の通りですわ。ましてや彼を怒らせるなど、自分の身を滅ぼすだけですわ」

「………ご忠告、どうも」

 

 ちょうどエレベーターが着き、入口が開く。

 シャルルはそれに乗って降りるのをリゼットが見送った後、彼女はすぐに階段から下へと降りて行き、シャルルが出てくるのを自分が設置した監視カメラで確認してから後ろから尾行する。

 

(相変わらずこういった時は興奮してしまいますわ!)

 

 対象者にのみ存在が気付かれないようにするに留めている彼女は、周りのことを気にせずシャルルを尾行する。そしてシャルルが車に乗ったのを確認してすぐ自分もあらかじめ用意していた車に乗り、

 

「発進ですわ!」

「わかりました」

 

 すぐに後を追わせた。

 

「ところでお嬢様、いつの間に尾行などというはしたない趣味に没頭するようになったのですか?」

「三年前ですわ」

 

 一般車の運転席から発せられる執事の質問を臆することなく平然と答える令嬢の姿を見て、執事はため息を吐く。

 

(以前はそんなことがなかったはず、なのですがね………)

 

 三年前、リゼット・デュノアは日本語の勉強を目的とした一年の留学生活を送っていた。その時に襲われていたことは執事―――ジュール・クレマンの耳にも入っていた。

 その時に周囲に怪電波が発せられていたので当時のデータは何も残っていない。リゼット・デュノアはその三年前までは母親と同じ「女尊男卑」思考を持つ女の一人だったが、その価値観を壊した悠夜の存在はこの社会では価値あるものだろうとジュールは推測する。

 

(まぁ、あの方が目をかけるお方だ。それくらいしてもらわなければ困る)

 

 前の車を追いかけているジュールに対し、リゼットは唐突に話しかける。

 

「ところで、あなたはどちら側の人間ですか?」

「……何の話でしょうか?」

 

 急に不穏な空気を感じ取ったジュールは一向に表情を変えず運転を続ける。

 

「今更とぼけなくてもいいですわ、ジュール・クレマン。いえ、亡国機業(ファントムタスク)とは違った裏組織結社———

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ———HIDE(ハイド)の構成員さん、とお呼びすればよろしいでしょうか?」

 

 デュノア家の中で若いながらも専属執事として働く冷静な沈着なジュールも、この時ばかりは表情が変わった。

 

「あなたのことは調べさせてもらいましたわ。いえ、正しくは日本のある奇怪な事件について調べた時に気になる名前があったものでしたので、そのついでに調べたというのが正しいのですが」

(………この場で処分するか?)

 

 ジュールの脳裏にそんな考えが浮かんだが、その悩みを解消するかのようにリゼットは言葉を続ける。

 

「ご安心を。あなたのことに関して知ったところでどうこうするつもりはありません。むしろ私は安堵していますのよ」

 

 そう言ってリゼットは助手席にある資料を放る。ちょうど近くにコンビニがあり、ジュールはその駐車場に入って車を止めた。

 

「ナイスタイミングですわね。私はコーヒーを買いに行きますが、あなたはいかがいたしますか?」

「……では、ボ○の贅沢○糖を」

「わかりましたわ」

 

 そう言ってリゼットは車を降り、高そうな服に似合わないコンビニの屋内へと入っていく。

 ジュールはその間に資料を読むと、それ以前自分が調べたものそのものだった。

 

(………何故このタイミングで?)

 

 思わず直しが必要な場所でもあるのかと疑いを入れるが、特に指摘されたことは書かれていない。

 内容は覚えているが、それでも何度も読み返していく。するとリゼットは車の後部座席左のドアを叩いたので、ジュールは自動開閉機能を使って開けた。

 

「ありがとうございます。はい、微糖ですわ」

「どうも」

 

 ジュールはそのままドリンクホルダーにおいてリゼットに尋ねた。

 

「どうしてこの資料を?」

「これからあなたには動いてもらいたいんですの。HIDEのボスに会うことは可能ですか? あなたたちが持つ施設は身体関連に関してはどの国よりも上と聞き及んでおりますの。その施設でその資料に書いている女性を保護してもらえるよう、掛け合ってくださいな」

 

 そう言ったリゼットはにんまりと笑う。

 

「ですが、これはあなたにとって家族を寝取ろうとした女。むしろ敵視するのでは?」

「実際は私の母が大きな産業会社が欲しくて手を出したのですから、むしろこっちが奪った方ですわ。以前母が義姉を殴った時は本当に面白かったですわ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ———あまりにも母が馬鹿すぎて」

 

 「まぁ、父も遊び相手としてしか見ていなかったようですので、どっちも悪だと思いますが」と続けるリゼットを、ジュールは内心恐怖していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ■■■

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ドイツ軍本部。そこにある訓練場で一人の少女がISを展開した状態での射撃訓練を行っている。

 

《これで訓練終了です》

「了解した。ISを解除する」

 

 ISを解除した少女―――ラウラ・ボーデヴィッヒは何ともない風に着地し、そのまま射撃場を去って自分の部屋へと向かい、服を脱ぎ捨ててシャワーを浴びる。

 それを妨害するかのようにシャワー室内に電子音が鳴り響いた。

 

「どうした?」

『隊長、チャーター便の手配ができました。出発時刻はドイツ時間で明日の07:00(マルナナマルマル)。その後13時間ほどで成田空港で付近のホテルで一泊し、その後IS学園の方へと移動となります』

「了解した。06:50にはそちらに着くようにする」

『…っと、シャワー中でしたか。シャワー室ならば出なくてもよろしいのに』

「緊急と思ったのでな」

 

 素っ気なく返すラウラに対し、通信相手の副隊長―――クラリッサ・ハルフォーフは鼻を抑えつつ言う。

 

『そうですか。一応、そちらに織斑一夏と桂木悠夜の資料を送っておきましたので確認してください』

「了解した」

 

 ちょうどシャワーを浴び終えたこともあり、ラウラは体にタオルを巻きつつ、頭を別のタオルで拭きながら机の上に置かれている小型端末を手に取り、スイッチを入れて起動させた。

 そして新たに届いているメールを開き、添付されているファイルを持っていく端末の方に送信する。

 送信が確認されたラウラは、送った方のファイルを何重もかけたプロテクトファイルの方へと移動させ、送られたメールを削除し、自分の端末に入っている二人の男性操縦者の資料を開く。

 するとちょうどいいタイミングで軍用の通信端末に通信が入る。

 

「私だ」

『クラリッサです。資料は確認できましたか?』

「今見るところだ。まぁ、見たところで私の敵になると思えんがな」

 

 そう言いながらラウラは「桂木悠夜」の資料を閲覧し始める。するとあるはずがない「専用機持ち」という表示が気になった。

 

「二人目が専用機持ちになったのか? 聞いた話では与えられることはないと聞いていたが」

『どうやら以前の原因不明の暴走事件が起こったことで直接戦闘をした際、訓練機では限界があったということで学園側がすぐに対応したらしいです。そして集団襲撃の際に全生徒に発表があった際に暴動が起こったとか』

「………そうか」

 

 そして今度は「織斑一夏」の資料を確認すると、手が止まる。

 

(………織斑一夏、か)

 

 家族の欄には彼女が敬愛する「織斑千冬」という名があり、端末を握りしめた。

 

(私は認めない。この男が教官の弟であるなど……認めるものか!!)

 

 この時、ラウラは全く気付いていなかった。通信相手のクラリッサが今のラウラを見て鼻血を噴いて倒れていることに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ■■■

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今日も平和だなぁ」

 

 そんなことを呟きながら、晴天の下…というか学校の屋上に設置されている喫茶店にでも置かれているような日傘付きのテーブルについてサンドイッチを食事していた。本当なら布仏が同席しているが、たまにはきちんと友人と交流するべきだと思ったのでそっちに行かせている。

 

『———本当ね。私も外に出たい』

 

 左耳に着けているインカムから通信相手の朱音ちゃんがそう答える。実は朱音ちゃんが俺の親父からプレゼントがあるということで取り入ったら、なんと通信セットだった。どうやら親父は俺が朱音ちゃんを放っておかないということを予知していたようで、あまりラボから出られない朱音ちゃんがいつでも俺と通信できるようにと準備していたらしい。相変わらず「なんちゃって予知」をしているようだ。性的興奮して強くなる某小説のキャラが好きらしく、状況的推理を楽しんでいるらしい。しかも意外なことに的中率は60%とやや高め。しかも朱音ちゃんにIT技術を教え込んだのは親父だったようで、実の息子放置して何をしているんだか。

 ちなみに朱音ちゃんは時々俺の部屋に遊びに行っては俺に抱き着くという奇行を始めているので、近々別の件も含めて対処してもらおうと思う。問題は学園長の菊代さんか理事長の十蔵さんのどっちに相談するべきかということだ。

 さらに補足だが、呼び方は以前二人がいる時に声をかけようとしたら「あれ? 轡木さんならかぶるんじゃないか?」と気付いて思わず名前呼びしたことがあったが、特に何も言われなかったことでそう呼ぶことにしている。

 

「かっつらぎー!」

 

 後ろから変なリズムで呼ばれたので振り向くと、何か柔らかい物体を押し付けられた。晴美さんもそうだが、今回もかなりのボリュームだ。今にも窒息しそうである。

 挨拶よりも前にこの悪魔を外すと、ダリル・ケイシ―先輩だった。

 

「ご無沙汰ですね、ケイシ―先輩。それで、何の用ですか?」

「あれ? オレの乳は一切無視?」

「別にコメントしてもいいのですが、中学の時にそれ関連のことで泣かせたことがありました」

「い、意外だな。まさかお前が告白されたことがあるなんて………」

 

 ………告白、か。告白というより四六時中付きまとわれたことがあるな。

 

「いえ。それとは違うんですよ。不幸なことに女子のおっぱいに顔を埋もれる機会がありまして」

「それって俗に言う「ラッキースケベ」ってやつじゃ……」

「俺にとってはアンラッキーですよ。で、その時に「この変態! 先生に言いつけてやる!」って言って女教師を呼ばれたんです」

 

 先の展開を予想できたのか、可哀想な子を見るような目で俺を見てきた。

 

「そ、それで、どうなったんだ?」

「以前脱走者などが多発したことがあって、どこに逃げたのか監視カメラがあらゆる場所に設置されていた中学だったのでたまたま詳細は監視カメラであったんですが、どうしても向こうはこっちが悪いということを言ったので、「まさかその程度の大きさ如きで変態だ何だとほざくとはな。包容力を感じるほど大きくないばかりか、萌え要素を感じるほどの可愛さもない、ゴミレベルの女が変態だと抜かすな。一般的な女を指すんだったらそんなガキっぽい柄の下着をするんじゃなくて、もう少し大人の下着を着けたらどうだ? あ、言っておくが面積少なめのものじゃなくて、キチンと大人向けのものを着るんだぞ。それじゃあただのビッチだから………まぁ、君のようなゼロ乳でも、それでビッチでも女に飢えている男たちなら高く買ってくれるだろうよ。良かったね、女尊男卑で。あ、「ゼロ乳」ってのは、君のように全く母性の象徴であるおっぱいがないことだよ?」って笑いながら答えてあげたら泣きました」

「………お前、こんな奴に喧嘩売ったのかよ?」

 

 するとケイシー先輩は後ろを向く。隠れて見えなかったがどうやら付き添いがいるらしい。いや、ケイシー先輩が付き添いなのか?

 

「だ、だって普通、あんな美人な先輩と同居していたら発情するでしょ、男なら! ましてやこの男は―――」

「ちなみに凰のことをそういう目で見ていたって言うつもりなら否定するぞ。まぁ、あれで暴力に走らず、キチンと包容力を持っていることと相手がホモじゃなければ大抵の男は惚れると思う。今の世の中、確かにデカい方が有利なことは間違いないが、それでも人の話を聞けて、その後に冷静な分析後、順序良く説明できる女の方がモテる。なのでそこに隠れてるフォルた…サファイア先輩もメモしておいてください」

「な、何でわかったんですか!?」

「殺気飛ばしておいてばれないと思う方がどうかしてますよ」

 

 ちなみにここまで殺気を感じれるようになったのは、轡木さんの殺気を受けたからだろう。

 

「で、今日は何の用ですか? そのメンツで行動するのは珍しいと思いますが」

「ああ。実はこの前の騒動を言い出したのはこいつでさ」

 

 そう言いながらケイシー先輩がハミルトンを突き出してきた。

 

「ですがそういう処分は普通学園が行うものでしょう? 俺たちが勝手にしていいものじゃないんじゃ……」

「それじゃあ、流石に不公平だと思ったからな。更識に頼んだら快く許可してくれた」

 

 ………もうそろそろ、更識も疲れているんだろうな。俺にその権限を委ねるなんて。

 まぁ、俺が入学してから色々あったからなぁ。

 

「そうか、じゃあ開放したらいいと思うが?」

「え……?」

 

 別に興味ないしな。今更どうこう足掻いても、どうせこの状況を覆すことはできない。

 

「………なんか、桂木が大人になった感じがするんだが」

「ちょっ、何を言ってるッスか、先輩!」

「だとしたら、今の俺は冴えているんでしょうね」

 

 インカムを秘匿通信機能に切り替え、俺は朱音ちゃんに頼み事をした。

 

『悪いけど、特注の高威力機雷を5つ作ってほしい』

『わかった。頑張ったらご褒美にこっちに泊まってね!』

 

 ……新たなる悩みの種ができるとするなら、しばらくは朱音ちゃんの突然変異のことかもしれないと、何故か俺は直感した。




まぁ、例によって、投稿ペースは開くかもしれないですが
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