IS~自称策士は自重しない~   作:reizen

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#27 ぶつかる美少女とキレる美女×2

 俺に用意された新たなる機体―――黒鋼は、スーパーロボッツ・バーサス―――略してSRsVSもしくはSRsというアーケードゲームの世界大会用に俺が製作していたものそのままだった。どうやら四月の爆発事故に巻き込まれた際に十蔵さんがあらかじめ回収し、設定資料集と共に朱音ちゃんに菊代さん経由で渡していたようだ。その時のと俺の親父が朱音ちゃんの師匠ということもあって俺を試したそうだ。

 

(ともあれ、まさか自分が考えた機体がISで再現されるなんて思いもしなかったが)

 

 そんなことを考えていると廊下は突き当りに出たので、更識との格闘訓練のために俺は右に曲がろうとした。

 

 ———タタタタ

 

 するとどっちかはわからないが足音が聞こえたので止まると、右から出てきた影がいきなり俺にぶつかった。右側を歩いていた俺も悪いが、廊下に道路のような進路指定場所なんてないしなぁ。

 倒れそうになっている女の子の腰を目安にして受け止める。さっきぶつかった女の子は倒れると思ったのだろう。ゆっくりと目を開けている間に俺は彼女の体勢を正していると、その女の子———って、

 

「更し―――」

 

 ———き?

 

 と続けようとしたが、俺の舌がそれを止めた。いや、正直なところ予想外というか、驚きを隠せない。

 

 ———更識って、こんなに「可愛い」かったっけ?

 

 そんなことを考えていると、顔を赤らめた更識(?)が俺の襟をつかんでそのまま投げた。たぶん綺麗な背負い投げである。

 なんて思っていると、背中に走った衝撃が一瞬息ができなくなった。

 

(………あっれぇ?)

 

 わけがわからず、そのまま床の上に転がっていると、足音が遠ざかっていった。

 

(……一体、何だったんだ?)

 

 正直背中が痛いのだが、そんなことよりもさっき受け止めたのが問題だったのかとか疑問に支配されてしまう。

 

(もしかして、腰にふれたのが悪かったのか?)

 

 いや、悪いんだが、本当は背中でキャッチしたかったなぁとか心の中で言い訳していると、急に声をかけられた。

 

「ゆうやん、大丈夫?」

 

 布仏が近くにいたらしく、俺の方に駆け寄ってくる。

 俺は立ち上がり、軽く服をはたいていると、何があったのか聞いてきた。

 

「どうして倒れていたの?」

「…ぶつかりそうになった女の子を受け止めたら、投げられた」

「……女の子?」

 

 どうやら俺が投げれたことより、投げた方が気になるらしい布仏。まぁ、確かにあの子はIS学園内ではずば抜けて可愛かったし、例え布仏がレズとして目覚めたとしても無理はないだろう。

 

「……ねぇゆうやん、何か変なことを考えてない?」

(……どうして気づいた)

 

 自分でいうのもなんだが、俺はポーカーフェイスはそれなりにできる。だから俺の考えなんて読めるわけがないんだが、

 

「まぁ、それはそれ、これはこれ、なんだよ~」

 

 もしかしたら俺が表情を出していたかもしれないので、この際無視で。

 

「そういえば、布仏はどうしてこんなところに?」

 

 俺たちがいるのは別館といわれる場所であり、音楽室や図書館を除けばあまり人が来ない。ここに来るなんてむしろ稀だ。

 

「実はね、幼馴染を追ってここに来たの」

「幼馴染?」

 

 まさかの男?! と思ったが、俺と織斑以外いるわけがないので女と判断する。

 

(そういえば、布仏姉妹は更識と幼馴染なんだよな?)

 

 だとしても、普通は「幼馴染」と呼称するか? いや待て。ということは、

 

「何かあった時の替え玉か?」

「どうしてそうなったの!?」

 

 布仏の反応を見る限り、どうやら違うようだ。だったらいったいなんだろうか?

 

『本音ちゃん! そんなことよりも早く追って! 対象はまだそこまで距離が離れてない!』

「わ、わかった。ごめんゆうやん」

 

 そう言って布仏はどこかへと行ってしまった。どうやら朱音ちゃんが何かを知っているみたいだが、それよりもこっちにも用事があるので、そっちを優先することにする。

 

(しかしさっきの、いやに気になるな)

 

 どうせこれから更識に会うのだし、ついでに聞いておくか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ■■■

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アリーナの更衣室でジャージに着替え、更識が抑えているらしい道場に向かうと、そこには更識以外にもメガネをかけた女生徒がいた。

 

「お、初めましてだね、桂木悠夜君。私は黛薫子。たっちゃんのクラスメイトで、新聞部の副部長です!」

「……………どういうことだ?」

 

 更識に聞くと、何故か扇子を開いた更識は「密着」という字を出した。

 

「ほら、あなたが私の弱みを握って独占しているとか言われているじゃない。だからちゃんと潔白で悪いことをしていないことを、学園新聞に掲載してもらおうって計画よ」

「別にいらないと思うけど……すみませんが帰ってもらえませんか? 俺、視線とかって結構敏感な方で気になって練習が身に入らないタイプなんですよ」

「とか言って、私を追い出してたっちゃんにあんなことやこんなことを―――」

 

 顔を赤くしながら身をよじらせてそんなことを言う黛先輩。考えてみれば、同い年なんだよな。

 

「そんな馬鹿な妄想に浸っている暇があるなら、自分のことでもしていたらどうです?」

「この取材が自分のことになるわよ」

「あ、そう」

 

 仕方がない。今日のところは見逃すか。

 本当は嫌だが、これ以上相手しても時間な無駄な気がするので、この際スルーだ。

 両手に総合格闘用のオープンフィンガーグローブを装着し、ストレッチがてら更識の姿を確認した。

 

(………デカいな)

 

 そしてさっきの奴を脳内で照合しようとしていると、視線に気付いた更識がからかうように胸を隠して、

 

「視線、ばれてるわよ。桂木君のエッチ」

「私がいるのにたっちゃんを狙うなんて、大胆ね」

 

 更識と黛先輩が茶化すのを聞いたが、それを無視して俺は更識に聞きたかったことを尋ねる。

 

「ところで更識。さっきお前に似た女に投げ飛ばされたんだが」

「似た女?」

 

 眉をひそめ、何故か……本当に何故か俺を睨む更識。何だ? 俺は何か悪いことをしたか?

 

「ねぇねぇ、それってどんな感じだった?」

「どんな感じって……そうだな。胸は更識ほどなくて、眼鏡をかけていて、どこか気弱そうな―――わかりやすくいえば、数年前の更識に大人しさが付属されたって感じ……ですね」

 

 慌てて敬語を付け足すが、本人はさほど気にしていないらしい。黛先輩は続けて俺に質問してくる。

 

「もしかして、お尻でも触ったの?」

「いえ、触ったのは腰で―――」

 

 瞬間、俺の目の前に黒い何かが通過して、それが柱に刺さる。通過したそれを確認してから、更識の方を見た俺はすぐに恐怖を感じた。十蔵さんほどにないにしろ、怖い。

 

「ちょっと、詳しいことを聞かせてもらえるかしら?」

 

 正直なところ、俺は更識がここまで怒る姿を見るのは初めてだ。大体彼女が怒るというよりふざける方が多く、それがたまに度が過ぎることがあるので注意しているのだが、それでもこんな状態になった覚えがない。

 

「お、落ち着け更識。俺は何も悪いことはしていない!」

「したわよ! 簪ちゃんの腰を触ったじゃない!」

「そ、それは事故であって、決してわざと触ったというわけではない!」

 

 だが俺の言葉は更識には届かず、戦闘態勢へと移行し始める。その前に、俺は黛先輩に声をかけた。

 

「ということで今回の取材は中止。それと、今日のことは一切忘れるようお願いします。このことを記事にした場合、新聞部がどうなるかは……想像つきますよね?」

「そうね。確かにそれどころじゃないし、今日はお暇するわ」

 

 そう言って黛先輩は道場を出ていった。同時に俺は割と真面目にヤバい状態の更識に意識を向けた。

 

「さて、詳しく聞かせてもらおうかしら」

「詳しく聞かれる前に俺が死にそうな気がしてならないから断る」

 

 即座に俺は道場の中を走り、後ろから楯無に追われ始める。右に回避するとまるで読んでいたかのようにクナイが飛んできた。

 

「おま、俺を殺す気だろ」

「許さない。私の簪ちゃんを……それにお嫁に行く前の女の子の腰を触るなんて!! 私もあまり触ってないのに!!」

 

 早々に黛先輩を追い返して正解だと思った。さっきから飛んでくるクナイの量が半端じゃない。

 俺はすぐに携帯していた朱音ちゃん作の強化エアガンを出して反転してから更識を撃つ。それを慣れた手付きでクナイで防ぎ、使ったそれをすかさず投げてきた。

 

(ああ、もう! 面倒だ!)

 

 エアガンが通じない以上、白兵戦でしか勝機がない。とはいえ俺が更識に通じるのはかなり難しいので、空想で温めていたものを、ぶっつけ本番でやるしかない。 

 俺が接近し始めると更識はクナイを止めて割と怖い殺意が籠ったまなざしを俺に向けつつ突っ込んできた。

 それを確認した俺はとび蹴りを放つ。回避する更識は正拳突きを繰り出した。

 

 ―――ゴッ

 

 出した右足ではなく、畳んだ状態の左足を殴られた。さらにそこが弁慶の泣き所だから余計だろう。だけどそれはありがたい。そのまま体重をかけて更識に乗りかかる。

 

「甘い!」

 

 だが更識は俺のジャージの襟首を掴むとすぐに背負い投げの体勢に入る。

 

「させるか!」

 

 体を畳んで全体重をかけ、そのまま更識を倒しにかかる。すぐさま更識は体を反転させ、次の攻撃をしようとしたとき、

 

 ―――ダンッ!!

 ―――ガラッ!!

 

 俺たち二人が同時に床に倒れると共に、引き戸が開かれた。

 それでも気にせず俺たちは続きをしようとした時、引き戸がある方を向いていた俺は入ってきた人物が誰かわかったので動きを止めてしまった。

 

「……なるほど」

 

 その声の主が誰かわかったらしい更識も動きを止めてしまった。

 

「先ほど、黛さんに呼ばれたので来てみれば、あれは方便で本当はそんなことをしていたのですか。今夜はみんなでお赤飯ですね」

 

 嬉しいような、そして何故か悔しいような顔をする布仏先輩。そして何故か入ってきた彼女は中の様子を見て、動きを止める。

 

「………これは一体、どういうことでしょうか?」

 

 あ、ヤバい。

 なんか今日は二回ほど命の危険が迫っている気がしなくもないが、それよりもさっきの更識以上にキレている先輩がヤバい。

 俺と更識は頷きあい、更識は俺の背中に乗ってすぐさまそこから逃げ出すが、虚さんが何かすると同時に軽くなった。

 道場の外に出てから振り向くと、虚さんの手で掴まれたと思われる更識が、俺に泣きそうな顔で見ていた。おかしいな。さっきまで俺にクナイを投げたり殺そうとしていたはずの更識が、今ではただの小動物にしか見えない。

 

「……桂木君」

 

 虚さんが俺を呼んだので戻ってみると、そこには天使の笑顔をといっても過言ではないほどの笑顔で俺を見る虚さんがいた。

 

「すみませんが、このアホ会長の撒いたクナイを回収しておいてくれませんか? それが終わったら帰ってくださいね」

「………わかりました」

 

 返事をすると絶望を顔を浮かばせた更識。ごめん、俺は無力だから、絞め技で絞られている更識を助けることはできない。

 クナイをすべて回収した俺は一足先に帰り、後からボロボロになって帰ってきた更識を介抱した。

 

 

 

「で、何であんなことをしたんだ?」

 

 食事も終わり、お互い風呂に入って明日の準備も終えて今日の反省会。更識に今回の暴走の聞くと、俺にとってはどうでもいいことを話した。

 

「私、三年前から簪ちゃんとまともに会話してないの」

「………あ、そう」

 

 特にかける言葉もなかったのでそう答えると、更識は俺のパジャマの襟首を持って突っかかる。

 

「あ、そう…って何よ! こっちは真剣に話してるのよ!!」

「OK、悪かった。というかそれくらいしか出てこねえよ!」

「普通もっとあるでしょ!? 何があったの? とか!」

「野次馬根性とかないから!」

 

 事件に関わったところで時間を無駄に浪費するだけである。

 とりあえず更識をなだめると、話は自動的に本筋に戻った。

 

「で、お前は何をやらかしたんだよ?」

「まさかのやらかした前提?!」

「……お前がやらかす以外の喧嘩の理由ってあるか?」

 

 途端に更識は顔を背ける。これは絶対に何かあったな。

 

「まだあなたには話していなかったけど、実は私の家って種類は違うけど暗部なの。たぶんあなたは漫画とかでそのあたりの知識はあると思うけど」

「まぁ、そうだな。……種類って?」

「対暗部用暗部。……まぁ、日本政府に対してのスパイ行為を行おうとする人間の排除ね」

 

 じゃあ、お前は日本政府の人間として……と聞こうとする前に、更識が先に否定した。

 

「先に言うけど、私は―――いや、更識自体は日本政府の命令で動いているわ。むしろ日本政府はあなたではなく織斑君の方を守るように言ってきた」

 

 ………また織斑か。

 一体日本政府は何を恐れて織斑を守ろうとしているのかね。あんな馬鹿、生かしておいたら俺みたいに迷惑を被るだろうに。

 そう考えると、ふとあのウザい担任が脳裏を過る。

 

「………織斑先生の影響、か」

「…そうね。でも、この際だから言うけど、本当はそれだけじゃない。篠ノ之さんのお姉さん―――篠ノ之束も関係しているの」

 

 確かそれは開発者の名前だったはず。………いや、待てよ。確か篠ノ之は織斑に対して好意を持っている。それが関係しているのか?

 

「織斑先生と篠ノ之博士はね、幼稚園の時からの幼馴染なの。そして―――」

「その家族として織斑一夏を守っている、ってところか?」

「…そうね。本当は彼女の性格自体が少し変わっていて、お気に入りである織斑君を守っているの」

 

 真剣に話し合っている最中、俺はこの話自体はそこまで関係ないことに気づき、話を戻すことにした。

 

「で、それがどうして三年間妹話さないことに繋がるわけ?」

「そ、それ自体はあまり関係ないんだけど、まぁ、私が三年前、代表候補生選抜試験を私を追うために簪ちゃんが受けるって知って釘を刺したの。「あなたは無能なままでいなさいな」って」

「……………何で言っちゃったんだ?」

 

 頭を押さえながら聞くと、更識は顔を青くしながら言った。

 

「だってIS操縦者って、一見便利そうに見えて全然そうじゃないのよ!? ましてやほかの女の子が簪ちゃんを攻撃して虐めるなんて、耐えられるわけないじゃない!」

「んなこた知るか! だったらそうならそうだと言えばいいだろ」

 

 周りはこいつのことを崇拝しているみたいだが、この女が崇拝される理由がわからなくなってきた。

 

「で、その後に私の襲名式があったんだけど。簪ちゃんがその時…何かのゲーム大会があって、それに出場した後に誘拐されたの」

「ストップ。襲名式って何だ」

「暗部の長としての儀式みたいなものね。「楯無」って名前も暗部の長としての名前なの。私はその十七代目」

 

 ………じゃあ、本当の名前があるのか。確かに人の名前に付けるようなものではないとは思っていたが。

 

「で、その日に私の親が簪ちゃんがゲームの大会に行くことを反対したんだけど、無視して行ったら私が十七代目として襲名するのが許せなかった人たちがフランスのマフィアと結託して簪ちゃんの誘拐をしたんだけど」

「……今更で悪いんだが、これって本当に俺が聞いてしまっていいのか?」

 

 何だかいろいろと怖くなってきたんだが。

 すると更識は「大丈夫」と言った。

 

「すべてを話すわけじゃないし、君が私たちにその話をしないって信じてるから」

 

 ―――ドキッ

 

 何故か心臓が震え始める。何だ? 何が起こったんだ?

 近くに何かいるわけがなく、とりあえず落ち着く。

 

「で、更識が声をかけようとしたらますます溝が深まったと」

「………」

 

 どうやらその時に何かあったみたいだな。

 

「関わらないで。って追い出された」

「……ドンマイ」

 

 妹って何故かそういうのがあるよな。俺の妹も、色々とおごらせたくせにご飯に誘ったら軽蔑の眼差しで俺をみることなんてあったからな。

 

「………ホント、年上って何かと苦労するな」

「………ま、私は自業自得なんだけどね」

 

 今日は珍しく、更識と傷を舐め合う感じとなった。

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