IS~自称策士は自重しない~   作:reizen

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#31 更識姉妹の心の内

 俺たち二人がアリーナ内で決めた出来事は一つ、「お互いに邪魔にならないようにする」だ。とはいえ何故専用機持ちであるはずの彼女が地面を走行しているのかは気にならなくもない。

 黒鋼の全機能を活用するための一つとして作られたエネルギーライフル《フレアマッハ》で移動する的を撃ち抜く。エネルギー兵器なので比較的に簡単に当てられるが、それでも射撃レベル(だけではないが)が低い俺には難しい問題だ。

 

「………これが、あなたの新しい剣」

 

 自分のことは終わったのか、更識がこっちを向いてそんなことを言った。本人の容姿とはギャップとは言っても過言ではないであろう大人っぽい声が意外にもあの歌姫をすぐに連想させた。

 

「思いだけでも…力だけでも…ダメなんだ! って返せばいいのか?」

「……ごちそうさま」

 

 十分だったようだ。俺はそういうキャラではないのだが、それでも形見狭く感じるこの学園で自分と同じ趣味を持ってくれる女子がいるのは素直に喜ばしいことだ。

 

「そういえば、どうして更識はそんな初歩的なことを? 専用機持ちみたいだし、普通だったら俺のことが気に食わないとか思わない?」

「………全然。むしろこうして話せて嬉しい」

 

 と真顔で平然と返してくる更識。

 

「それに、あなたの経歴を考えれば専用機を持つ資格は十分にあると思う。……あの時は、本当に…ありがと」

「あの時?」

 

 おかしいな。俺と彼女はあの背負い投げの時が初対面のはずだ。

 

「……襲撃事件の時、私もあそこにいたから」

「え? ……あ」

 

 そういえば、布仏があそこに誰かを助けに行っていたな。更識がそこにいたか。

 

「……ナイス中二病」

「止めてくれ」

 

 個人的にはあのことはかなり後悔しているんだから。

 

「仕方ないだろ、あんなものが飛んできてしまったらそっちにスイッチが入っちゃったんだから」

「……うん。あれは飛んできたから仕方ない」

 

 顔を隠しながら更識が笑う。おそらく可愛いんだろうけど、何故か今はイラついた。

 ともかく、話を戻すとしようか。

 

「で、どうして初歩的なことを?」

「……私の機体、まだ未完成だから」

「……マジで?」

 

 少なくとも、装甲だけなら完成しているように見えるが、第三世代型の新たな特徴とも言える「非固定浮遊部位(アンロック・ユニット)が浮いていないのでそこだけは納得した。もっとも、俺の黒鋼も含めて見ている限りの第三世代はアンロック・ユニットを使用しているだけで、そうじゃないのもあるかもしれないが。

 

「そ、そういうのは普通、専門家が作るものだろ」

「………そうだけど、開発計画が凍結されたの」

 

 と、凍結!?

 ちょっと話を整理してみよう。

 更識は日本の代表候補生で専用機持ち。そもそも専用機を持つことはデータ取りの意味合いもあるが、その人の操縦能力が認められたということでもある。つまり更識は日本政府から正式に専用機を持つことを許される人間だということだ。そんな奴の機体が普通、凍結されるか?

 

(……いや、普通にあるか)

 

 朱音ちゃんに聞いた話だが、専用機持ちとしての実力があると認定された奴は政府の紹介で各国にある開発企業と契約することができる。収集したデータの量と企業にもよるらしいが、渡される金額はかなりのもののようだ。

 だからその人が専用機持ちかどうかで強さを知るのではなくて、企業と契約しているかどうかで知ったほうがいいらしい。

 

「でも、何で凍結なんかしたんだ? システムの開発の困難になったとか、暴走?」

「……織斑君の機体に人員が取られて」

「また織斑か……あの野郎、どれだけ周りをかき乱せば気が済むんだ」

 

 本当に迷惑な奴だ。今度のトーナメントに再起不能にするだけでは飽き足らないかもしれない。

 

「…確かにムカつくけど…それは彼が知るところじゃないし……」

「いや、全面的に向こうが悪い」

 

 確かに更識の人員が織斑の機体に取られたのは織斑が知っていることはまずないだろう。それを決めたのは織斑ではなく打鉄の…倉持技研が決めたことだ。聞くだけならば更識が織斑を恨むのは筋違いに感じるが、

 

「そもそも織斑の軽率な行動がすべての始まりだ。俺は更識が織斑を殴ろうが蹴ろうが止める気はないし、俺はタイミングで見計らってハンマーで物理的に顔面を潰したい」

「……が、願望……」

「そりゃそうだろう。俺は織斑を許すつもりは毛頭ないし、何よりもあいつの神経が気に入らない」

 

 そう言いながら、更識の後ろに現れた的を破壊する。

 

「まぁいいや。ここでそんな話をしたところで何か解決するってわけでもないし。続きしようぜ」

「……わかった」

 

 今度は実弾式ライフル《アイアンマッハ》を展開し、再び現れた移動する的を打ち落とし始める。最近はこういうのばかりしているので射撃鮮度が上がってきているとありがたい。

 最後の的を撃ちぬくと、Cピットのカタパルトから打鉄が姿を現す。それに乗っていたのは織斑派の篠ノ之だった。

 

「何故貴様がここにいる!?」

 

 いちゃいけないのかよ。

 答えの代わりにジト目で返すと、負けじと向こうが睨み返してきた。

 

「こっちも練習だ」

「それはともかく、一夏を見なかったか? さっきから探してもいないのだが」

 

 そんなこと、俺に言われても困る。というか向こうは俺が織斑を嫌っていることを知っているはずなのだがな。

 

「……デュノアに付いているんじゃね? 俺が構わないから余計に向こうに懐いているんだろ」

 

 すると篠ノ之の動きは止まった。どうやらそれは盲点だったようだ。

 

「何故貴様は一夏と一緒にいないのだ!」

「俺が誰といようが俺の勝手だろうが」

 

 本当にこいつ、頭大丈夫か?

 篠ノ之の将来が不安になっていると、今度は別の機体が二機も現れた。言わずもがな、甲龍とブルー・ティアーズである。

 

「奇遇ですわね。まさかあなたがこんなところにいるとは思いませんでしたわ」

「いや、かなりの割合でいるけどね。悠夜ってアンタが思っていないだけでかなり真面目だから」

 

 俺をフォローするように凰は言ったのを、オルコットはあまり良く思わなかったみたいだった。

 

「まぁ、ちょうどいい具合に数が揃っているので模擬戦をしませんこと? ねぇ、日本の代表候補生さん?」

「何?」

「へぇ、あの子なんだ」

 

 オルコットの言葉に篠ノ之も凰も更識に注目しはじめた。

 

「それは是非手合わせを願いたいものだ」

「へぇ、おもしろそ―――」

 

 すると凰は俺を見て言葉を止める。どうやら俺のサインに気が付いたみたいだな。

 

「ゆ、悠夜? もしかしてこの子、事情があって戦えない、とか?」

「そうだな。もし危害を加えるって言うんだったら、その時はそのISをお前らごと再起不能にする」

 

 その言葉を挑発と受け取ったのか、篠ノ之もオルコットもそれぞれ武器を展開する。

 

(やれやれ。こっちはマイペースで練習したいって言ってるのにな)

 

 素直に織斑を追いかければいいものを。ま、それなりの知識を持っているはずの凰はともかく、篠ノ之とオルコットが織斑を落とすのは正直困難を極めるだろう。胸の大きさを含めれば凰も危ういが。

 

「って言ってもお前らがおとなしく練習するならこっちも大人しくするから。流れ弾をこっちに飛ばすなよ」

「あら? 逃げるんですの?」

「トーナメントまで待てって言ってんだろ。大体、こっちがやる気がないって言ってんだから人の話ぐらい聞けや」

 

 そう言って俺は《アイアンマッハ》の弾倉を入れ替えて再びトレーニングを開始した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ■■■

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 時間が来たため俺たちは先に上がる。なんとか無事に終わったが、こっちはいつ仕掛けられるかと内心ヒヤヒヤしていた。まぁ、仕掛けてきたところで黒鋼を使用している以上、負けることも負けるつもりもないが。

 

「なんか、ごめんな。あの馬鹿どもが来たせいでやる気がなくなっただろ」

「……全然。こっちこそ、さっきは庇ってくれてありがとう」

「いや、あれくらいは当たり前だ。その機体も自分で作ってるのに、あんなつまらないことで壊れても嫌だろ」

 

 そう言うと更識は顔を少し下げる。

 

「……それも、お姉ちゃんに対しての点数稼ぎ?」

 

 そんなことを聞いてくるので、俺はため息を吐いて彼女の頭に軽くチョップした。

 

「…痛い」

「つまらないことを言うからだ。大体、アレに対する点数稼ぎなんて時間の無駄だ。どうせだったら別のことに意識を向ける」

 

 女としては確かに魅力的だが、女に対して点数稼ぎなんてたぶんしない。ISを動かしてしまってから特にそんなことをする気になれなかった。もし仮に深い関係になったところで、国に所属するしないに関わらず相手に人質に取るにしろ、受精してしまった卵子を取った後、そのまま相手が無事に解放されるわけはないのだから。

 

「……じゃあ、私が「青い暴風」って呼ばれているって言ったら、どうする?」

 

 言われて俺は足を止めてしまう。「青い暴風」ってのは俺の「黒い凶星」と同じ通り名だから。

 

「ちょっと待て。それって、つまり―――」

「……久しぶり」

 

 青い暴風というのは、俺が世界大会の決勝戦で倒した相手の通り名であり、「嵐波(らんぱ)」という名前通りの荒々しい砲撃を遠慮なくしてくることからつけられた名だ。ぶっちゃけ、あれは洒落にならない。

 

「えっと、つまりは俺たちは三年前に既に知り合っていた間柄ってわけですか?」

「……うん。……ついでに言えば 6年前に発売された時に後ろに並んでいた」

 

 マジか。そんなの知らねえよ。

 でもそうか。こんな近いところに、しかも女で同類がいるとは思わなかった。

 

「―――見つけた!!」

 

 喜びを噛みしめていると、聞き覚えがある声が聞こえたのでそっちを見る。中には珍しくジャージを着てその上に白衣姿の朱音ちゃんだった。

 すると更識は俺の後ろに隠れるという、ある種のご褒美をくれた。

 

「ようやく見つけたわよ、かんちゃん」

「……私は、一人で作りたい」

「そんなことで、一体いつ完成するって言うの。今度のトーナメントに間に合う?」

「………」

 

 深い話は見えないが、どうやら更識の機体の話をしているようだ。

 

「だったらこの私に任せるべきよ。今度の試合に慣らし運転も終わらせるようにすぐに取り掛かるわ」

「……で、でも……」

 

 ……すべてのシステムを試したわけではないが、黒鋼の完成度は高いと思う。以前の機体もそうだが、黒鋼の性能はISの性能ではすべてを作るのは無理だからな。

 

(結局、まだ本格的には動かしていないからな)

 

 正直言うと、一度本気で動かしてみたいがアリーナでやった場合は対策を練られるのでそれを回避するためにあまり本気で動かしていないのだ。《フレアマッハ》も出力をだいぶ落としているしな。

 

「そもそも、どうして更識はそんなに一人でISを完成させたいんだ?」

 

 俺が知る限り、ISはそこまで大きさはないがシステムとか回路とかが複雑なので困難を極めるはずだ。更識は代表候補生だからそれなりの知識に精通しているはずとはいえ、すぐに完成させるなんて難しいだろうに。

 

「………お姉ちゃんが、一人で完成させたから……」

 

 言われて俺はどこか納得してしまう。だが、同時にその努力が無駄になることも予想できる。

 彼女がどんな環境で育ってきたのか、なんとなく予想できる。だからこそ、俺はこれ以上歓迎されないレールを進んでほしくない。

 

「…それが理由なら、今すぐ止めた方がいい」

 

 そう言うと、簪は俺を睨む。

 確かにこの言葉は今まで努力した奴に言うことではない。でも、これ以上続けたって彼女に称賛が浴びせられるとは限らない…いや、浴びせられることはないだろう。

 

「…どうして」

「そんなことをしたって二番煎じだからだ。姉や兄ができるなら、その下の弟や妹ができるのは当たり前。人間特有の考え方でな、むしろそんな考えを持っていない奴の方が稀だろう」

 

 俺は中学に入る前、自分で言うのもなんだが勉強はそこそこできた。だけど妹の方がわずかながら点数が上だということもあって、いない親父はともかく義母からはよく「見習いなさい」と言われていた。だから中学では頑張って何度かトップや満点は取っていたんだが、それでも「それくらい上なんだから当たり前よ」と言われて相手にされたことはない。もっとも、これは女尊男卑思考だからそうなっているかもしれないが、中には同性の兄弟姉妹でもそういうことはあったと聞くし、100%間違いではないだろう。

 

 ———パンッ!

 

 俺の左頬から乾いた音がした。叩いた本人はいつの間にか俺の正面におり、右腕を左に振りぬいている。

 

「………最低」

 

 それだけ言うと更識は俺と朱音ちゃんを放置して走り去っていく。ここはたぶん待ちでいいかと思ったこともあるが、それよりも別に気になることがあった。

 

(……今、熱くなかったか?)

 

 いや、叩かれたところは熱いんだが、触れた時に妙に体温が高く感じたというか、ともかくそんな感じだ。

 

 ———ダンッ!!

 

 嫌な予感がした思わずその重い音がしたところを見ると、更識が倒れていた。

 

「かんちゃん!」

 

 更識に駆け寄る朱音ちゃん。だが朱音ちゃんの体格だと同じような体格をしている更識を運ぶのは荷が重いだろう。俺にはその資格はないだろうが運ぶことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ■■■

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 簪が目を覚ました場所は、保健室だった。

 点滴を打たれており、その先端が彼女の左腕に刺さっている。

 簪が状態を起こした時、上から濡れたタオルが彼女の右太ももに落ちてきた。

 

「……これは……」

「目を覚ましたわね、簪ちゃん」

 

 いつからそこにいたのか、楯無は太もものタオルを小さい棚の上にある桶に入れ、水分を含ませて十分に冷たくする。

 

「ほら、寝て」

「……でも、まだ」

「まだも何も、簪ちゃんは無理をしすぎているんだから。ちゃんと安静にしなきゃ」

 

 そう言って楯無は半ば無理やり簪を横にさせ、彼女の額にタオルを乗せた。

 

「……何をしに来たの?」

 

 棘を含ませて簪は尋ねるが、楯無は何の反応を見せずに答えた。

 

「桂木君からあなたが倒れたって聞いたから、看病しに来たの」

 

 すると簪は楯無のことを睨み始める。

 

(……本当は点数稼ぎしてきたくせに)

 

 だがそれを視線で感じ取ったのか、楯無は突然ベッドの上に乗り出して簪を抱きしめた。

 

「なにを―――」

「簪ちゃん。私も言い方が悪かったけど……あなたは勘違いをしているわ。本当は代表候補生なんて間違えば戦争の道具になる存在になってほしくなかったの。だって私はあなたが好きだもの」

 

 そう言われ慣れていない簪は唐突の告白に顔を赤くし始めるが、言った本人は構わず続けた。

 

「あの時もそう。ああ言えば私から離れて、表の世界で暮らしていけるって思った……けど」

「……あの事件が起こった」

 

 簪の言葉に楯無は頷く。

 

「それで私は、やっぱり近くにいた方がいいって思ったわ」

「………ようやく、理解した。何故あんなことを言っていたのにずっと見張られているのか、疑問だったから」

 

 そう言われて今度は楯無が顔を赤くするが、話を逸らすように別の話題を出した。

 

「それと、桂木君が言ったことなんだけど……」

「………」

 

 悠夜のことを話題に出された簪は暗い顔をしたが、すぐに思い当る節があったのか顔を上げた。

 

「覚えているようだから言うけどね、あれは彼自身の経験なの」

「…経験?」

「うん。彼の親はお互い子持ち同士で再婚していてね、血が繋がっていたお父さんはずっと仕事で家を離れていて、甘える相手がいなかったの。それと多分知っているはずだけど、彼女の義母は、女権団の石原(いしはら)郁江(いくえ)って言えばわかるわよね?」

「………女権団のボスで、日本のIS操縦者育成機関の一番の投資者」

 

 簪の言葉に楯無は頷き、続きを話した。

 

「そう。簪ちゃんも知っていると思うけど、石原幸那(さちな)ちゃんの母親でもある彼女は、桂木君を決して褒めなかった。何かと理由を付けて貶されたって、桂木君本人が言ってたわ。たぶん、簪ちゃんに同じ思いをしてほしくなかったから言ったの」

 

 その言葉が原因かは楯無にはわからない。だが簪の両の瞳から涙が溢れ出ていた。

 

「………そう…なんだ」

 

 自分でも気付いた簪は涙を拭い、点滴の針に手をかけようとしたので楯無に止められた。

 

「……何するつもり」

「悠夜さんのところに行きたくて」

 

 すると楯無は持っていた簪のスマホと、あらかじめ悠夜の電話番号が表示されている自分のスマホを渡す。

 

「晴美さんには許可を得てる。電話していいわよ」

「……ありがとう」

 

 そして彼女は自分のスマホに悠夜の連絡先を入力し、電話をかけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ■■■

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふ~、やっと終わった」

 

 そう言って俺は作業着の前を開け、リラックスする。

 今、俺は轡木ラボの作業室で朱音ちゃんと一緒に黒鋼の整備をしていた。

 

「お疲れ様。でもあんまり使ってないよね? スペックに納得できない?」

 

 少し泣きそうになる朱音ちゃんを見た瞬間、罪悪感と恐怖に駆られてしまった。

 

「そんなことないさ。ただ、今度のトーナメントで専用機持ち+αを倒したい俺としては、あまり周りに手の内を知られたくないだけだ」

 

 ちなみに「α」は言うまでもなく篠ノ之である。

 

「そんなに苦戦する相手かな? まぁ、かんちゃんの機体を黒鋼と同じように作れば一番の障害なるけど……」

「……打鉄の発展機はどこまで言っても発展機だもんな」

 

 正直、彼女の愛機だった嵐波を見てからのマルチロックオン・システム機はどれも見劣りするだろう。だってあれ、一度に100個のミサイル飛ばしてくるからな。結構恐怖だった。

 すると作業着の中に入れていたスマホが鳴りだしたので画面を見ると、知らない番号からだった。

 

「……もしもし」

 

 念のために出ると、向こうから聞きたくて仕方がない相手の声が聞こえてきた。

 

『……()()さん』

 

 思わず俺は思考を放棄しそうになりそうになったが、なんとか思いとどまる。

 

「え? ちょ、更識?! 一体どうした?!」

 

 まさか電話がかかってくるなんて思っていなかったので何の準備もしていない。まぁ、準備することなんてないが。

 

『……殴ったこと、謝りたくて……』

「あ、いや、あれはいいよ。俺も言い方が悪かったし」

 

 そもそも体験談を言わなかった俺が全面的に悪い。

 

『……ありがとう。…近くに、朱音、いる?』

「あ、朱音ちゃん? 待って。すぐに代わる」

 

 朱音ちゃんに渡すと朱音ちゃん自身も驚いていたようだ。代わった後に段々と朱音ちゃんの顔が笑顔に変わっていった。

 

「わかった。じゃあ、おやすみ」

 

 そう言って朱音ちゃんは電話を切り、俺にスマホを返した。

 

「……打鉄の発展機ってのは正直気に入らないけど、手伝ってほしいって言われた!」

「やったー!!」

 

 瞬間、俺たちはお互いにハイタッチする。

 この時俺を含め、まさか更識の機体に悲惨なことが起こるなんて誰も思っていなかった。




ということでこの回で更識姉妹のわだかまりは解けました。やっぱり7000字を目安にしたら展開が早いですね。
気が付けばもう30話。話数としては遅い方と思いますが、この調子でいけば35話前後には3巻に入れそうです。(フラグ)
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