IS~自称策士は自重しない~   作:reizen

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#40 切れた自称策士は自重という言葉を知らない

 暮桜と化していたものに取り込まれた俺は、気が付けば暗い世界へと降り立っていた。

 わかりやすくまとめると、鍵のような形をした剣で世界を救う話の最初にありがちな世界に降り立ってしまったようだ。

 

(なるほど。ということは……俺がリ○だな。声的に)

 

 織斑の声は認めたくないが、あっちに似ているからな。本当に認めたくないが。

 

《オイ》

 

 目の前に暮桜が形成される。

 

《少シハ慌テタラドウダ? 貴様ハ我ニ取リ込マレタノダゾ?》

 

 どうやらそういうことらしい。ということは、俺は体から分離している状態か……。

 

「なるほど。ゲームやアニメじゃそういうことってよくあるけど、まさかそんなことが自分自身に起こるなんてな?」

《……貴様、本当ニ人間ナノカ?》

「そうじゃなかったらとっくに世界を壊してるさ。俺はこんな世界、以前から絶望しているからな」

《……ナラバ、体ヲ明ケ渡セ。我ガ世界ヲ壊シテヤル。貴様ノ望ミトシテナ》

「そいつは良い。………だが断る」

 

 そう言うと暮桜は呆然としたようだが、すぐに正気に戻った。

 

《ナルホド、貴様モオリジナルノ弟ノヨウニ「他人ヲ守ル」ナドトホザク奴ト同類カ》

「そいつは心外だな。俺があんなゴミと同類だなんて言うのは最大の侮辱なんだが」

《同類ダロウ。ダカラ貴様ハ世界ヲ壊ス事ヲ躊躇ウノダ》

 

 そう断言された俺は何かに刺された気がした。

 

《ダカラ、貴様ハ今モアノ微温湯(ぬるまゆ)ニ浸カッテイラレルノダ!》

「………ほう」

 

 まさかそんなことを言われるとは思わなかった。

 

《コノ世界ヲ生キ残ルニハ、力ガ必要ダ。ダト言ウノニ、貴様ラハ人間ハ敵ト成リ合ウ。ソンナ世界ナド……我ガ正ス!!》

「……OK、とりあえずお前が言いたいことはわかった。つまりお前はボーデヴィッヒと織斑千冬の闘争本能と馬鹿さ加減に影響された思念ってことだな」

 

 そう言うと暮桜は《雪片》を展開、俺の眉間に切っ先を向ける。

 

《ソノ体ヲ明ケ渡セ、桂木悠夜。我ガ貴様ノ代ワリニ世界ヲ滅ボス。断ルナラバ、無理矢理奪ウマデヨ》

 

 暮桜は俺にそう言ったが、俺は満面の笑みで答えてやった。

 

「断る」

《ソウカ。デハ死ネ!!》

 

 《雪片》で刺突をかまそうとする暮桜だが、俺はそれを余裕でかわした。

 

《ナニ!?》

「何を驚いている? ここは心と体が分かれている世界なんだろう?」

 

 思わず笑っていることを自分ですらもわかる。それほど今の状況は面白い。

 

《ダガ、コノ距離デ刺突ヲカワスナド―――》

「心と体が分かれているってことは、つまりなんでもできるってことだ」

《ソレハ違ウダロウ!?》

「違わないね。俺はずっとこのような世界を見るたびに思っていた。どうしてみんなは己が想像力で相手を潰さないのかと」

 

 そう言って俺は奴の四方八方から鉄の塊をぶつけてやる。

 

「そして一つの結論に達したんだ。全員アニメを見ていないことに」

《ソ、ソレダケデコンナ事、デキルワケガナイ! ソモソモ、貴様ハ異常ダ! 異常スギル!!》

「その異常者の体を狙った奴が何を言ってやがる」

 

 奴の懐に入り、俺は奴をぶん殴る。

 暮桜は速さに追いつけなかったのかダイレクトに食らい、かなりの距離を吹き飛んだ。

 

《我ハ仮初トハ言エIS、ナノニ何故人間デアル貴様ノ拳で―――》

「まだ気付かねえのかよ、ボケが。本当にゴミの思念しかねえのな―――俺の想像力がダメ女共の思念如きに負けるわけがないだろうが」

 

 さらに距離を縮めていつでも奴の懐に入れるように距離を詰める。

 

《黙レ! 貴様ハ殺ス!!》

「そいつは結構。じゃあ、八つ当たりしたって文句ないよなあ?」

《八ツ当タリダト?》

「ああ。お前みたいなのがいるおかげで、美少女との約束を反故する結果になった」

《ソレガドウシタ! 貴様ガシタ約束ナド、ゴミソノモノダ!》

 

 瞬間、奴の後ろで爆発が起こったが、その原因である俺は気にも留めなかった。

 

「おい、テメェ……」

 

 ただ俺は、力を見せつけてこの空間から元に戻ることだけしか考えていなかったが、

 

「今、なんつった?」

 

 今、別の目的が見つかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ■■■

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 悠夜が暮桜に取り込まれてすぐ、楯無は蛇腹剣《ラスティー・ネイル》を装備し、なんとかして黒い卵を破ろうとしていた。もう一つの《蒼流旋》という槍の方がミステリアス・レイディの第三世代兵器「アクア・クリスタル」から放出される水とは相性がいいが、そちらの場合は下手をすれば悠夜を刺し殺してしまう可能性が否めなかったのである。

 

(まったく攻撃を受け付けないなんて―――)

 

 ———ピシッ

 

 そんな音が鳴ったかと思うと、黒い卵にヒビが入る。

 

「やった! これなら、どうにかしてこじ開ければ―――」

 

 すると今度は別の音が聞こえ始めた。楯無はその音源に目を向けると、悠夜が取り込まれた際に離した近接ブレード《蒼竜》が動き始めていたのだ。暮桜はあくまで悠夜と黒鋼のみを取り込み、近接ブレードの《蒼竜》は捨ておいたのである。《蒼竜》は浮かび上がり、切っ先からひび割れた部分から中に入ってしまった。

 

(あそこから、入ることができるの?)

 

 楯無はそう思い、そのヒビに触れる。だが電流が走り、楯無を拒むかのように弾き飛ばす。

 

「……どうなっているの?」

 

 思わず楯無がそんな声を漏らしている時、悠夜は完全に切れていた。

 

 

 

 切れた悠夜の前にいた暮桜は、彼から出る殺気に怯えを見せている。

 

(何故、何故我ガ震エテイル……)

 

 暮桜は自分が震えていることに疑問を持っていた。

 彼女は織斑千冬という実力者であり、またラウラ・ボーデヴィッヒの戦闘経験も持っている。崇拝されるほどの人間の実力を持つそれが、震えているなどまずありえないことだろう。

 その実力者に対して徒歩で近づく悠夜の前に、一振りの刀が飛んでくる。

 

「……これは、《蒼竜》? 何でこんなところに―――」

 

 その隙を狙って暮桜は悠夜を殺そうとする。精神を乗っ取り、自分の体とせんが為だった。

 だが悠夜は振り下ろされる《雪片》をかわし、距離を取った。

 

「まさかと思うが、お前に俺の気持ちが………わかっても不思議ではないか」

 

 そう結論付けた悠夜は両手で《蒼竜》の握りを掴む。

 

「行くぞ《蒼竜》。あのゴミを消す」

 

 悠夜はその場を飛び出し、先程以上の速さで暮桜に接近する。その暮桜は逃げず防御するが、《蒼竜》を振り抜いた悠夜によって吹き飛ばされた。

 

《何故ダ! 何故貴様ハソコマデ強クナッテイル!?》

「うるせえんだよ、ゴミが」

 

 ———死

 

 暮桜は危険を察知し、この空間から離脱する。すると楯無の前にあった卵に次々とヒビが入り、崩壊を始めた。

 すぐに黒いナニカがそこから離脱しかけたが、楯無の姿を視認すると取り込もうと近づいた―――が、突風が吹き荒れ、電気を纏った風が暮桜を吹き飛ばした。

 

「か、桂木君……」

《貴様ァアアア》

「蹴りを付けてやる―――《雷旋斬(らいせんざん)》!!」

 

 黒鋼を纏っている悠夜が《蒼竜》を右腕で振り抜く。電撃を纏った風の刃が飛ぶ出すと回転し、暮桜を刻み始めた。

 

《ギャァアアアアアアッッ!! 止メロ! 止メロッ!!》

「喚くな。すぐ終わらせてやる」

 

 スラスターが吹き、そこから上昇した悠夜は暮桜に向かって一直線に進む。

 

「奴を消せ《雷流斬(らいりゅうざん)》!!」

 

 その言葉と共に悠夜は《蒼竜》を振り抜き、暮桜を真っ二つにした。

 

《我ハ……タダ……生キテ……世界ニ……》

「それは無理な相談だな」

 

 悠夜の前に黒い鞘が現れ、掴んだ悠夜はそれに《蒼竜》を納刀する。

 

「何故ならテメェは、俺を孤独から救ってくれた奴との約束を反故にした挙句、ゴミとほざいたのだから」

 

 ———チンッ

 

 《蒼竜》を完全に納刀した悠夜は楯無に近づき、手を差し伸べた。

 

「もうすべて終わった。帰ろう、更識」

「……うん」

 

 まるで囚われたお姫様を救いだいたかのような雰囲気を出す二人。もしこの二人のほかに誰かがいたのならば、感動のあまり拍手をしていたのだろう。……悠夜は相変わらず眼鏡をかけているが。

 二人はカタパルト射出口に降り立ち、どちらもISを解除する。すると―――

 

 ———ドサッ

 

 悠夜はそのまま倒れ、その音を聞きつけて楯無は振り向いた。

 

「……すぐに連れて行かないと」

 

 今この場には自分しかいない。おそらく今頃事情聴取や状況説明をしているからであり、決してサボっているわけではない。

 楯無は再びミステリアス・レイディを展開し、医務室へと向かう。

 その時、彼女は気付かなかった。悠夜へと飛び込む一筋の影を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ■■■

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 まるでそれは物語のようだった。

 鋼鉄の子宮というか、巨大フラスコというか、ともかくそれから生まれた女の子は数年(たぶん)軍事訓練に励んでいるのだと思う。

 少女は常に上位であり、最高位に立ってからしばらくしてその基地にもISが支給されたようで、彼女もそれを動かすことになる。初めてのIS操縦でかなりの成績を残した。そして少女は手術を受けたが、適応に失敗したのか成績は悪くなる一方だった。そんな少女を救ったのは、一人の女性だった。

 その女性のおかげか少女は徐々に強くなり、崇拝するようになった。

 そんなある日、少女は女性に尋ねる。「どうしてそんなに強いのか」と。

 

 ———私には弟がいる

 

 そんな言葉が、そして女性の微笑みが少女の思いと相反し、憎しみに変えた。

 

 

 

 

 つまりそれって、その女性のブラコン疑惑が浮上して、挙句に単なる逆恨みだった。

 

 そんなことを思っていると、俺の目に光が差す。

 

「………またここか」

 

 これで一体何度目だろうか。あ、3回目か。

 内心最近俺が倒れすぎていることを気にしていると、カーテンが開く。

 

「おはよう。今度もよく寝れたかい?」

「……最悪な気分です」

「では今度は朱音を抱いて寝ればいい」

 

 と言われて俺は下を見ると、平然と俺の隣に寝ている朱音ちゃんを見つけてしまった。

 

「あの、親としてこれを許すのはいかがなものかと……」

「発情したのか? 君はロリコンだったのか? 15歳の裸を見ても一切興奮しないし、ひたすら髪を梳くと聞いていたから楯無か虚辺りを狙っていると思っていたのだがな」

「あれはどうしても綺麗にしたいって思いが強かったので」

「ならばたまには訪問してくれ。油断すると数日は風呂に入らないということをするからな、これは」

 

 と笑いながら言う晴美さん。

 

「さて、いくつか質問がある」

「何ですか?」

「君は本当に二人目の男性IS操縦者、桂木悠夜か?」

 

 ……えーと。

 これにはどう答えればいいのか、俺にはわからなかったので頷いておく。

 

「ええ。そうですけど……」

「さっき君の体を検査させてもらったが、確かにどこも異常はなかった。だが楯無が先程奇妙なことを言っていたのでな。剣先から電気を出し、物体となっていた暮桜を斬った、と」

 

 ………それについては少しばかり心当たりがある。

 さっき俺は暮桜に取り込まれそうになった時、簪との約束とのことを馬鹿にされて切れた。その時に精神世界から脱出できたみたいだが、その後のことは覚えていないが、リアルでもできたということだろうか?

 

「たぶんそれは朱音ちゃんが作った武器によるところが大きいと思います」

「……なるほどな。それならば少しは納得がいく」

 

 晴美さんは朱音ちゃんを愛おしそうに撫でている。

 

「正直な話、私は朱音が君にそこまでの物を作るとは思わなかった。裸を見たという前例もあるし、いくらあの時助けてくれたと言ってもね。だが、実際朱音は君の助けとなる近接ブレードを開発してしまっている」

「……そこまでのことを、した覚えがないんですけど……」

「だけど君は所属不明機との一戦で躊躇いもなく彼女が飛ばしたパッケージを受け入れてくれただろう? 朱音が何度か開発して学園の武器庫に入れていたみたいだが、誰一人として使う生徒はいなかった。時代の流れなのか、子供すらも「戦闘時の換装」というコンセプトに目もくれてくれない。それなのに、修吾君の息子である君は何の疑問を持たず装着し、朱音と協力して所属不明機を壊しただろう? それが何よりも朱音にとって嬉しかったんだろうよ」

 

 そう言われれば改めて照れてしまう。俺、そこまで嬉しく思うほどのことをした覚えはないんだけどな。

 

「だから、これまで通り今後も朱音と仲良くやってほしい」

「それはもちろんですよ」

「次第によっては孫馬鹿の父親を説得することにしよう」

「……それって、もしかして……」

「婚儀の話だが?」

 

 一瞬、俺がタキシード姿で、そして朱音ちゃんがウエディングドレスを着ている風景を考えてしまう。けど現実的に考えてそれは無理な話だ。

 

「すみません。それはちょっと……」

「? 私の娘はその対象にはなりえないか?」

 

 癖なのか、ブリッコみたいに首を傾げる晴美さん。

 

「いえ。十分可愛いと思います。思いますけど、だからこそ、俺なんかをそういう対象として見てはいけないと思うんです。だって俺、数少ない男性操縦者で、織斑と違って強力な後ろ盾なんてないんですよ? いずれ早死にする奴と結婚なんて、そんなの……」

「だったら、モンド・グロッソに出ればいい」

「……はい?」

 

 予想斜め上のことを言われた俺は思わずそう返してしまった。

 

「簡単なことさ。君があのシステムを倒したということは、最低でも数ある代表候補生の中でも世界で上位に食い込むことができる。少なくとも、第一学年では現時点では最強と言っていい。まぁ、君にとっては不満かもしれないが、轡木製のISを持っているのは君だけではないからね」

「更識簪、ですか」

「そしてSRsの世界2位」

「……驚きました。そこまで知っているとは」

 

 女でそこまで知っているなんてことは、相当のプレイヤーだろう。

 

「私も朱音も地区大会で簪と当たって負けた口だからね」

「あ、そうですか」

「……容赦なかったよ、彼女」

 

 遠いどこかを見る晴美さん。トラウマでも植え付けられたのだろうか?

 

「だからこそ、黒い凶星と呼ばれていた君には興味を持っていた。まさかISを動かすとは思わなかったが」

「俺だって驚きましたよ。あんな出来損ないって言っても過言じゃないものを動かすことになるなんて」

 

 そのおかげで黒鋼に出会えたから、それはそれで嬉しい事だが。

 

「出来損ない、か。確かに出来損ないだな。量産するにも限界がある量産型なんて、我々プレイヤーからしてみればただの笑い話程度の存在価値しかないだろう」

「確かに、最初に「量産型IS」という言葉を聞いた時は本当に笑えましたから」

 

 二人で笑っていると、ドアがノックされる。

 

「…………どうぞ」

 

 心底嫌そうな顔をしてそう言った晴美さん。ドアが開かれると、そこには織斑千冬が立っていた。念のために朱音ちゃんを隠しておいて良かった。

 

「失礼する。桂木は……起きているようだな。早速だが事情聴取に入らせてもらいたいが……」

「聴取も何も、アンタらだって経緯ぐらいは知っているだろう。そのままだっての」

「更識からあの後取り込まれかけたと聞いたが?」

「………あのバカ」

 

 最近、更識の奴が冷たくないか? 結局あの後は何事もなく終わったってのに。

 

「別にどうもしませんよ。あの意味不明な奴が俺の体を使って世界を破壊したいとほざくので断って、実力行使された時にウザい事言われたんで、遠慮なく狩ってやっただけです」

「……そうか。それと注意だ。お前は最近危険な相手に単独を取りすぎる。それと試合の時の爆破だ。織斑からは何もなかったが、他の生徒や来賓の方々から苦情があったぞ。あのような行為は禁止してほしいとな」

 

 ………はい?

 ちょっと待て。ただ俺はMAP攻撃をしただけなんだが? まぁ、敵味方関係ない奴だけどさ。

 

「それと学年別トーナメントだが、お前が単独で撃破してくれたおかげでほかの機体も損傷が少なかったため、続行することにした。もっとも、お前とボーデヴィッヒは失格だがな」

「……やっぱりか」

 

 ある程度予想はしていたこととはいえ、やはりショックだ。

 

「わかっていたのか?」

「……こっちはアンタの弟と違って頭の回転は悪くないんでな。で、何で失格になったんだ? まさかあの爆発が原因って言うならば、いくら何でも異議を唱えさせてもらうが?」

「ボーデヴィッヒが起こしたのがただの暴走ならばまだ良かったんだがな、あれには少々厄介な―――」

「———VTシステム。確か君のデータがあるんだっけね?」

「轡木さん!」

 

 晴美さんが言ったのはよほどまずい物なのか、織斑先生が制止する。

 

「別にいいでしょうが。大体、誰が君のコピーを止めた? それもたった一人で」

「……だが、あのシステムは―――」

「君の技術なんて彼に合っていないだけでなく、そもそも彼は欲しがらないぞ? 君は彼にしてみれば典型的すぎるからな」

 

 はっきりと言いきる晴美さん。これが年の差に生じる経験の差というものだろう。

 

「それに、彼には聞く権利があるはずだと思うがね」

「……良いでしょう。桂木、あのシステムはな―――」

「とりあえず、アンタのコピーは作らない方が良かったな。ウザすぎる」

「………」

 

 正直なところ、さっきの会話だけで誰のコピーかはわかったしな。驚いている様子から見て、織斑千冬は俺にはわからないと思っていたのだろうか。心外だ。

 

「……VTシステムと呼ばれる各国のどの場所でも研究・開発・使用が禁止されているものが、ボーデヴィッヒの機体に仕組まれていたようだ。どこかの馬鹿が跡形もなく吹き飛ばしてくれたおかげで残骸の一部からそういう情報を手に入れただけだがな」

「こっちとしてはボーデヴィッヒとコアを破壊しなかっただけで評価どころか謝礼を求めたいがな」

 

 まぁ、個人的にはあの技をやるなら今しかないって思いがあったが。だって回転しながら宙を進んでいるだぜ。

 

「で、そのボーデヴィッヒはどうなってんだ? サードアイで場所はわかったから避けて攻撃していたが?」

 

 ただし、パイルバンカー以外は普通に当てていたが。

 

「重傷だが、幸い痕が残るような傷はない」

「そいつは良かった。アンタみたいな手遅れな喪女と違ってアレは磨けばいい女になる」

「………桂木、最近一言多いぞ」

「そっちだって命令と暴力の負の権化じゃねえか。そんなんだから女尊男卑思考の哀れなゴミ屑が増えるんだろうが。いい加減自覚してくれ」

 

 そう返すと織斑先生はため息を吐いた。

 

「ともかく、お前たちの代わりに織斑とデュノアが二回戦に進むことになった。土曜日まではゆっくり療養してろ。ではな」

 

 そう言って織斑千冬はそそくさと部屋を出ていき、俺と晴美さんはハイタッチするのだった。




次回予告(もちろん嘘)

暴走した暮桜を止めた日から二日が経過した木曜日。学年別トーナメント一年生の部は準決勝を迎える。
Cブロックを勝ち残ったセシリアと鈴音、Dブロックを勝ち残った簪と本音の二組が激突する試合を見に来た悠夜は、ただその様子を見守るのだった。

自称策士は自重しない 第41話

「この中に、量産型がいる」

高機動ランドセルを背負い、生き残れ本音!







ということでVT戦はなんとか40話で終わらせました。だけどまだまだ続くんだなぁ、これが。
まぁ、ここまで来たら2章ももうすぐ終わりますよ………たぶん。
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