IS~自称策士は自重しない~   作:reizen

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#46 吐き出される思い

「見つけたわよ、泥棒猫」

「………お義母さん」

「あなたがそう呼ばないで。虫唾が走るわ」

 

 アネットの言葉にシャルロットが傷つくが、楯無は構わず話す。

 

「ISで来るなんて、侵入者として捕まっても文句は言えないわよ」

「あら、この私に勝つ気でいるのかしら? 国を裏切っただけでなく、あんなゴミ男に股を開くあばずれさん?」

「子供を一人生んでいる人がよくもそんなことを言えたわね。それとも、歳を取りすぎて誰にも相手をされないことが悲しいのかしら?」

 

 挑発を挑発で返す楯無に、効いたのかアネットは楯無を睨む。

 

「良い度胸ね。今すぐ殺してあげるわ」

 

 アネットは重機関銃《デザート・フォックス》を展開し、楯無を撃つがアクア・クリスタルから供給されるナノマシンで構成された水でそれらを防ぐ。

 それを下で見ていた二人の前に、虚が現れた。

 

「お二人とも、ここは危険ですので避難します。付いてきてください」

「わかった。行くぞ、シャルロット」

「……うん」

 

 だがその会話を聞いていたアネットがそれを阻止しようとしたが、その阻止を楯無がさらに阻止する。

 

「虚ちゃん。急いでここから離れて」

「わかりました」

 

 虚が先導して三人はそこから離れる。

 

「逃がすか」

「行かせないわよ」

 

 《ブラッド・スレイサー》を展開したアネットに《蒼流旋》で動きを止めた。

 

「しつこいのよ、このあばずれ!」

「そうじゃなかったら、たった数年で他国の国家代表に昇り詰めていないわよ」

 

 ———ドンッ!!

 

 急な爆発が起こり、二人は思わずその場所を見た。

 すると音源と思われる場所には二機の黒いISがおり、

 

(…悠夜君が押されてる……?)

 

 回避が精いっぱいなのか、敵ISに押されている悠夜。得意であるはずのビットも出していない。

 

「よそ見をしてんじゃないわよ!」

 

 アサルトカノン《ガルム》に切り替えたアネットは楯無に発砲するが、一瞥するだけの水のベールを展開し、防いだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その頃、悠夜と敵ISは―――

 

「ほらぁ! 逃げろ、逃げろ!」

 

 完全に敵IS「ザーヴェラー・レーゲン」の操縦者に遊ばれており、あの戦いが始まってからまともな攻撃もできていない。

 だが逃げに専念しているからか、まともなダメージを負っていないので未だに勝負が続いていた。

 

(相手はおそらくボーデヴィッヒが持っていたレーゲン型と同等の機体だろうな)

 

 そう推測していた悠夜は一定の距離を保ち、AICの範囲には入らないようにしていた。もっとも、AICならば彼には防ぐ方法があるが、今の悠夜ではビットを動かすことができない。そのことを腹立たしく思うが、原因がわからない以上、無理に使わないことに決めた。

 

「………ねぇ、一方的な展開ってつまらなくない? どうして攻撃してこないの?」

(理由がわからないんだよ、理由が!)

 

 悠夜だって、本当は攻撃をしたい。今すぐにでもこの状況を打開したいが、

 

(………わかっているのは、自分の体が攻撃になると動かなくなることだけだ)

 

 故にずっと回避行動をとり続け、機会をうかがっている状況である。

 悠夜は一度ならず、打鉄を装備していた時は何度も攻撃を躊躇っていたことがある。それはクラス対抗戦の時に起こった襲撃事件もそうであり、同時にあの時から自分がずっと憧れていた状況になってから躊躇わず攻撃することができた。黒鋼に乗ってからはずっとそうであり、故に学年別トーナメントであれほどの爆弾を躊躇うことなく仕掛けることができた。それはおそらく―――黒鋼という自分が想像し、創造していた機体が自分の専用機だからだろう。VTシステムが現した暮桜に勝てたのは、同じ世界覇者であるが故の対抗心だ。

 だが今は以前に戻っている。その原因は悠夜自身は気付いていない。

 

「もしかして、今更になって恐怖が湧いてきたとか?」

「…………さぁな」

 

 だが、その可能性は否定できない。

 改めてそう思った悠夜は内心毒吐く。

 

(……こんなところで、親父の死が影響して来るとはな)

 

 ようやくその原因に気付いたとはいえ、それで悠夜の体の不調がなくなるわけがない。

 そこまで理解した悠夜は目の前の敵に改めて集中するが、がら空きとなった後ろから襲われた。

 

「悠夜君!?」

「………横取りって、随分なことをしてくれるわね」

「仕方ないでしょ? 標的を見失った以上、賞金首に手を出して収益を狙わないと」

 

 ザーヴェラー・レーゲンを装備した少女がアネットを睨むが、当の本人はなんでもない風に返す。

 

「これ以上、させないわよ」

「仕方ない。あの女でも研究材料になるらしいし、あっちにするか」

 

 少女が楯無に標的を移すと同時にAICを発動させる。反応が遅れた楯無はすぐに引っかかり、アネットが援護するように連装ショットガン《レイン・オブ・サタディ》を展開して、楯無を撃つが海水にアクア・クリスタルから放出されているナノマシンを入れて二人まとめて機体に水を浴びせる。だが楯無にかかっているAICが解除されることはない。

 

「ざーんねん。私の精神はあの雑魚とは違ってそう簡単に破られないのよ」

(ずいぶんと厄介ね)

 

 第三世代兵器というものは、すべて操縦者の意思、能力次第で従来の機能を超えることができる。衝撃砲はともかく、BTシステムならば悠夜や簪のように更なる高速連携攻撃で相手を惑わせ、レーザー自体を曲げることも可能だし、AICならば複数の物体を同時に停止させたり、停止させたまま自分が移動できたり、AICの拘束自体を強化できたりだ。

 

「さて、こっちはこっちでやらせてもらおうかしら」

 

 アネットは悠夜の方を向く。だが悠夜は攻撃されたまま動けないでいた。

 

「どうかしら? 拘束弾のお味は」

 

 見下すように悠夜に対してアネットは言うが、悠夜は何も言い返さない。

 

「……何か言ったらどうかしら? その弾には耳が聞こえなくなる要素はないはずだけど?」

「…………本当に面倒だなって思ってな」

 

 悠夜は立ち上がり、もう一度戦闘態勢を取る。

 

「もう解けたの? これは改良の必要がありそうね」

 

 そう口にしたアネットに対して悠夜はアネットに背を向けて後退を始める。

 

「!?」

 

 この行動にはさすがのアネットも驚きを隠せなかった。

 

(一体何を考えているの、あの男は)

 

 アネットは慌てて追いかけるが、ラファール・リヴァイヴのスペックで黒鋼に追いつこうなど無理な話だ。ましてや黒鋼は特に機動力が高く、そのスペックで追いつけるのは風鋼くらいなものである。

 自分にとっては下等だが、自分の後継者であるリゼットが気になっていた男に多少の興味を持っていたアネットだが、裏切られた気分である。

 

(あんなクズにうつつを抜かすなんて、再教育を施す必要があるわね)

 

 そう決意したアネットは炸裂式ロングライフル《エクスプロージョン》を展開し、施設の天井へと移動する。

 

 

 

(……撒いたか?)

 

 後ろをハイパーセンサーの機能を使って確認するが、そこには既にアネットの姿はない。悠夜は安堵して徐々にスピードを緩めるが、ハイパーセンサーが警告を鳴らし、咄嗟にスピードを上げる。同時にさっきまでいた場所に爆発した。

 

(一体どこから……上か!?)

 

 するとハイパーセンサーがアネットのラファール・リヴァイヴを映し出す。既にアネットは悠夜を狙っており、二射目が飛んできたがそれを回避した。

 

「そういえばあなた、父親を殺されたんですってね? それも、護衛の職務怠慢で」

 

 唐突にそんな話題を出された悠夜は動きを止めそうになるが、すぐに移動を再開する。

 

「……だったら何だって言うんだ?」

「哀れよねぇ。あなたのせいで死んだものでしょ、実際」

 

 あざ笑うアネット。だが悠夜は眉ひとつ動かさず彼女が予想するほどの反応を示さない。

 

「まさか、自分の子供に殺されるなんて思いもよらないでしょうね」

「……俺は殺してねえよ」

「殺したじゃない。ISを動かしたことで、あなたは父親を殺した」

 

 それでようやくだろうか、悠夜はアネットを睨む。

 

「まぁでも、死んだところでって思うけどね」

「………」

「だってそうでしょ。世間では家畜が一人死んだとしか思わないだろうし」

 

 瞬間、悠夜今日初めて攻勢に出る。スラスターを稼働させ、一気に施設の上に来ると《エクスプロージョン》から炸裂弾が飛んだ。

 それをまともに食らった悠夜は無様にも落下し、2発、3発と連続で食らう。

 

(やっぱり男っていうのはその程度なのよ)

 

 アネットは以前から、自分の後継者となる娘が高が一介の―――ましてや容姿が悪い男にうつつを抜かすことがなによりも気に食わなかった。それが自分が生むための種馬としてならばともかく、それを本気で愛し、今すぐにでも人生を狂わされたいと言い始める始末。面白くないどころか、気に食わなかった。さらにその男がISを動かしたとなれば話は変わってくる。すぐに女権団全支部へと通達があったのだ。「見かけ次第、可能ならば処分しろ」と。それを見たアネットはむしろ好都合だと思った。

 

(後は殺して、首を日本本部にでも持っていけばいいわね)

 

 ついでに写真を撮って娘に自分が今までどれだけ愚かなことをしていたか証明しよう―――そこまで考えたアネットは―――そこから避ける以外の対処ができなかった。

 先程まで彼女がいた場所は吹き飛んでいて、あと少し対処が遅れたならば間違いなくシールドエネルギーは今の半分は減っていただろう。

 

「―――ありがとう。アンタのおかげで目が覚めたよ」

 

 突然の声にアネットの脳内に警報が鳴るが、それでも彼女の中に逃げるという選択肢がなかった。

 

「………ありえない。《エクスプロージョン》の威力で何度も食らっているのに、動けるわけがない」

「別に恥じることはないさ」

 

 先程の爆発でだろうか、今の悠夜にはメガネがなく、前髪の隙間から二つの瞳がアネットに語る。「ここからが本当の始まりだ」と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ■■■

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その頃、少し離れた港では楯無と少女が戦っていたが、突然少女のISに通信が入る。

 

『何をしている。今すぐあの女を殺せ』

 

 今、少女は拘束され続ける楯無が近くの水を使って抗う様を楽しんでいた。だがその通信は不本意なものであり、舌打ちをする。

 

『……わかったよ。行けばいいんでしょ、行けば』

『さっさといけ。あのようなゴミを存在させるなど恥さらしでしかない』

 

 少女は素直に頷き、踵を返すようにセンサーを稼働させて目標であるラウラ・ボーデヴィッヒに狙いをつける。

 

「待ちなさい!」

「ごめんね。こっちも本当は遊びたいけど時間がないんだ~」

 

 楯無を拘束し続けながら少女は一直線にラウラのほうへと飛ぶ。だがラウラは思いの外近くにおり、大型レール砲を起動させ、ラウラの動きを止めた。

 

「あなたに直接な恨みはないけど、死ね!」

 

 ―――ドンっ!!

 

 砲弾が発射され、一直線にラウラへと飛んでいく。

 

 

 ―――これであとは楽しめる

 

 そう思った少女は見事にその思いを裏切られた。

 突然飛んできた藍色の機体がラウラと砲弾の間に入り、その機体に砲弾が当たってラウラのすぐそばに落下した。

 予想外の出来事だったがゆえに少女はAICを解いてしまい、ラウラはそこから左に走る。

 

「逃がすか!!」

 

 少女は直接殺すために《プラズマ手刀》を両籠手に展開しラウラを始末しようとすると、その間に黒い影が入り込んだ。

 

「お、お前―――」

 

 《スタンロッド》を展開した悠夜が《プラズマ手刀》を防いでおり、もう一本展開した悠夜は逆から食い込んでくるもう一本の《プラズマ手刀》を受け止めた。

 

「いつの間に復活して―――いや、そこを―――」

 

 だが、少女は言葉を止めた。いや、悠夜から出るプレッシャーに圧されたのだ。

 

(……何? このプレッシャーは……え?)

 

 そこで少女は悠夜の瞳を見てしまう。そこに映るのは、完全な闇。

 

(な、何なの……こいつは、一体―――)

 

 瞬間、お互いの拘束が解かれて悠夜はお返しと言わんばかりに少女の腹部を蹴った。

 

「どうして……どうして邪魔するのよ!? あなたもこの女が邪魔なんでしょ!?」

「………否定はしないな」

「なら、邪魔するな!!」

 

 力技で悠夜を吹き飛ばし、少女はラウラを殺そうとするが二人の間にビームが飛んで阻んだ。

 

「邪魔!!」

 

 少女は瞬時加速を使い、ラウラではなく悠夜を狙う。どうやらラウラを始末する邪魔をされ続けた彼女は先に悠夜を倒すことにしたようだ。

 

「死ね!」

「その願いは聞けないな」

 

 《スタンロッド》で《プラズマ手刀》を受け―――ずにいなした悠夜は少女を蹴り飛ばす。

 

「———伊達や酔狂でこんなヘッドギアをしているわけじゃないぞ」

 

 その言葉を悠夜が言うと、黒鋼のヘッドギアが赤くなり、落下する前に踏ん張った少女にヘッドギアを叩きつけた。

 さらにゼロ距離で《デストロイ》で稼働させ、拡散モードなのかビームのあられが少女に襲う。

 少女はAICを正面に展開してそれらを防ぎ、悠夜を拘束しようとするが―――

 

「———え?」

「お前のAICは見えている。見え見えの技に捕まるほど、今の俺は甘くはないぞ」

 

 展開、展開、また展開と繰り返すが悠夜を拘束することができない。

 AICの展開方法はラウラのように手を出して止めるか、この少女のように脳内で指示を出して展開する方法の二つが確認されている。だが負担は後者の方が重く、ましてや脳内で展開するとなると指定型になってしまうことが多い。そしてこの少女も同様だった。

 

「だったら、これでどうだ!!」

 

 少女は両手を前に出すと、今度こそ悠夜は束縛された。

 

「これでお前は何もできない! 大人しくそのゴミが殺される様をそこで見学して絶望しろ!!」

「………これはありがたいな」

 

 すると、少女にとって予想外なことが起こった。

 悠夜の周りにはおそらく黒鋼に入っているであろう武装がすべて展開されているだけでなく、《サーヴァント》と《デストロイ》すらも離れていた。

 

「こちらもジョーカーを切らせてもらう」

 

 するとどうしたことか、全射撃武装が一斉に少女に向けて攻撃し、さらにその攻撃が微妙にズラされているのに早すぎるため少女には対応できなかった。

 そもそもどうして先程まで優勢だった少女がここまで押されているのか―――それは、悠夜から放たれているプレッシャーが原因であり、あまりの恐ろしさに体が言うことを聞かないのである。当然、先程から間近で浴びているラウラは腰が引けており、逃げるどころではなかった。

 そして楯無が未だに悠夜の援護に来ないのは―――

 

「やれ、楯無!」

 

 ———力を溜めていたからだ

 

 巨大な水の槍が少女を襲い、大爆発を起こした。

 悠夜は楯無と自分、そして後ろにいるラウラを守るためにビットシールドと自分が持っている盾で防御態勢を取って爆発の衝撃から身を守る。

 

「思いの外上手く行ったわね」

「弱体化していたからな。原因はわからないが………楯無、その女を取り押さえてボーデヴィッヒとここから離れろ」

 

 悠夜はある一点だけを見てそう言うと、楯無は「わかったわ」と言って襲撃者の少女からISを回収して持ち上げ、ラウラに手を差し伸べる。だが、ラウラは楯無に「少し待ってくれ」と言い、悠夜に尋ねた。

 

「桂木、何故私を助けた。目障りならば捨て置けばよかったものを」

「……趣味だからな」

「趣味だと? 人助けがか?」

 

 ラウラの言葉に悠夜は「違うさ」と否定し、ラウラの方を向いてはっきりと言った。

 

 

 

 

 

 

 

「———俺の趣味なんだよ。未だに俺の想像にすら達していない癖に、自分が強いと勘違いした救いようのないクソメス豚ビッチ共の願望を、叶えられずに断念せざる得ない状況に叩き落すことがな」

 

 まるで今までの怨念をすべて吐き出すかのように言葉を紡いだ悠夜に、ラウラは―――恐怖を感じてしまった。

 

(何なんだ……これは……)

 

 先程の言葉と共に出された殺気がラウラを襲い、完全に動けなくなった。

 

「大丈夫?」

「……あ……う………も、もんだ……な……」

 

 楯無はラウラの様子がおかしいと思い、半ば無理やり体を抱えてそこから離脱する。

 

 

 

 

 

「………しかし、いいのか?」

 

 しばらく経ってようやく普通に話せるようになったラウラは楯無に尋ねた。

 

「何が?」

「………桂木だ。確かもう一人あの場にいたはずだろう」

 

 すると楯無はどこか遠い目をして答える。

 

「……私の機体、この子を倒すのにエネルギー使っちゃったからしばらく思う様に動けないのよ」

「ならば、救援を呼ぶべきだろう。いくら桂木が強いとはいえ、その方が効率的だ」

 

 VTシステムの事件の時、ラウラはその事件の戦闘を一切知らない。その後も戦闘を一切行っていないし、ラウラは手を抜いていたとはいえ一度は追い込んでいるのだからその発想は仕方ないだろう。

 

「むしろこの作戦は悠夜君考案なのよ。さっき言ってたでしょ? 「クソメス豚ビッチ共の願望を潰すのが趣味だ」って」

 

 そう説明するとラウラは再び震え始めた。

 

 悠夜にも謙虚と言えるであろうところが一つだけある。それは自分の生身の実力が学園内でほとんど下だと思っているところだ。故に彼は自分にはアニメのような恐ろしいほどの殺気を飛ばすことなんてできないと思っているのだ。

 だからこそ、先程ラウラにした()()()()()()()()()()()()ことなんてできるわけがないと思っている。だがラウラや襲撃者の少女はその殺気を直にぶつけられており、格の違いを見せつけられていた―――謂わば二人は「無自覚」の被害者である。

 

 

 

 

 

 

 ———ドンッ!!

 

 楯無たちが去っていった後、一発の炸裂弾が悠夜に当たるかと思われたが、寸でのところで回避した悠夜は爆発の被害など気にせず突っ走った。

 

「桂木悠夜。あなたには死んでもらうわ。あなたという馬鹿な不穏分子に惚れてしまった娘の目を覚まさせるためにね!」

「………随分な言われようだな。天才、とまでは行かなくても「馬鹿な不穏分子」という称号は俺ではなく織斑に与えてやってもらいたい」

 

 そう言いつつ悠夜は飛来する炸裂弾を何度も、何度も回避する。

 

「……何であなたはそう何度もかわせるのよ!?」

「第三の瞳を開眼させているからだ」

「………第三の瞳……サードアイシステム!?」

 

 アネットの口からそのような言葉が出て来たことに悠夜は素直に驚いた。

 

「よく知っているな。そのことを知っている奴なんて、ごく一部の奴しか知らないはずなのに」

「娘が教えてくれたのよ。あなたにはサードアイがあるって」

「………なるほど。本来ここでは変態とジジイが会合しているって話だったが、お前は変態の方を誘拐しに来たけど楯無……あの生徒会長に邪魔されたってことか。お前、リゼット・デュノアの関係者だな」

 

 一瞬でこれまでの顛末当てた悠夜にアネットは驚きながらも自分とリゼットの関係を教えた。

 

「母娘よ」

「……もし俺にリゼットが懐いていることに異議を唱えたいのならば、高飛車に振舞うように教育した自分の馬鹿さ加減を呪え」

 

 そうハッキリ言った悠夜はアネットに接近する。

 

「淑女たるもの、威厳を示さなくては舐められるのよ!」

「その結果がクラス内ボッチで当時国際留学交流委員に所属させられた俺が世話を焼く羽目になったんだよ!」

 

 ちなみに当時のその様子を語るクラスメイトがいれば、間違いなく「駄々をこねる妹を理路整然と説得する兄」と形容されることを悠夜は知らない。

 さらに補足すると、国際留学交流委員とはその名の通り留学生との交流に円滑に進める委員であり、基本的にこの委員会に所属する生徒は留学生がクラスに来た場合、面倒を見なければならない。従来ならば来る確率が低いその委員に人間が殺到するが、リゼットが留学してきたのは四月頭だということと、彼女が超弩級の女王発言に似たことをしたため、過去に経験したこともあって担任に押し付けられる形で悠夜が強制的にやらされた。その結果が女尊男卑思考から一転して「一生あなたに服従します」とクラスでも堂々と宣言するほどの従順な犬へと落ちて、現在フランスで発情中なのだが。

 

「私の娘の世話を焼けたことに光栄に思えなさい」

「思えるか! こっちはいい迷惑だ!」

 

 《デストロイ》を稼働させた悠夜は収束モードに切り替え、《エクスプロージョン》諸共破壊する。そして拡散モードに切り替えると同時に《アイアンマッハ》を左手に展開し、撃ちまくる。

 

「このおおおおおお」

 

 連装ショットガン《レイン・オブ・サタデイ》を二丁展開したアネットだが、それらも見事に破壊され、とうとうゼロ距離にまで迫られた。

 

「もう一度言う。伊達や酔狂でこんなヘッドギアをしているわけではないぞ!」

 

 再び黒い角型のヘッドギアが赤くなり、そのままアネットにぶつけた。

 

「ぐわぁああああああっ!! 熱い! 熱いぃいい!!」

「うわぁあああっ!? 考えてみたらこれって汚れる行為だ!!」

 

 悠夜はそう言ってアネット離れる。

 

「汚れるだと……?」

「若くてピチピチなリゼットならばいざ知らず、お前のようなアラフォー超えそうなクソババアに触れたら汚れるだろ?」

 

 女性に対する禁句を堂々と言い放った悠夜にアネットは瞬時加速を行い、パイルバンカー《灰色の鱗殻(グレー・スケール)》を展開して悠夜を倒そうとした。だが―――

 

「《リヴォルブ・ハウンド》、アクティブ。踏み込みが甘いぞ、おばさん」

 

 出された左腕を右手で捕まえて背負い投げをして浮くように叩き付け、

 

「シャトルの墜落事故で生還した男はこれで終わるがな」

 

 パイルバンカー《リヴォルブ・ハウンド》で最後の6発目に空中に飛ばす。

 

「まだよ―――まだ終わらな―――」

「―――凶星はしつこいんだ」

 

 全射撃兵装を展開した悠夜は、なおも抵抗をしようとするアネットに向けて引き金を引いた。

 

「おつりはいらん。全弾持ってけ!!」

 

 すべての攻撃がアネットに当たり、もう用はないと言わんばかりに後ろを向く。

 

「……哀れな雌豚よ。呪うならば、俺という凶星をよみがえらせた己の過ちを呪うがいい」

 

 そんな決めセリフを残して、悠夜はそこから移動した。




次回予告 (嘘)

二人の襲撃者を撃退した悠夜と楯無。
明日も授業があるため、楯無の帰りを待つことなく先に寝ようと準備していると、千冬から呼び出される。

 自称策士は自重しない 第47話

「少女の利用価値」

 こうご期待……なんて自信満々に言えたらどれだけいいだろうか。






ということで第46話も終わり。
第三章に入る前に50話行きそうな予感が……。
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