IS~自称策士は自重しない~   作:reizen

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メリークリスマス・イブ
ブラックサンタことブラックreizenが胸糞悪い話をお届けします。

時間? 間違えてませんよ?


ちなみにこの話はフィクションです。実際のものとは何の関係もありゃしません。


#57 にじみ出る影

 その頃、珍しく悠夜と別行動をしていた簪と本音は一足先に水着店に来ていた。

 

「……かんちゃん」

「…何?」

「この水着と狐の水着、どっちがいいと思う?」

 

 簪が選んでいるとき、本音は気にせず簪に尋ねる。一つは白いビキニタイプの水着で、もう一つは狐の着ぐるみ型の水着である。この場合は本音の感性を疑うよりも先にどうして着ぐるみタイプの水着があるのかということから調べる必要があるだろう。

 だが簪はそんなことを考えるよりもほとんど即決で答えていた。

 

「狐………でも、それって水着として役に立つの?」

「うーん。中には何もないね~」

「……その白い水着は悠夜さんと二人きりになった時に見せればいいと思う。悠夜さん、自分の立場を知っているからあえてお姉ちゃんとしてないけど、たぶんそろそろ理性は崩壊すると思うから」

「……………」

 

 簪の分析に本音は思わず黙ってしまった。

 

「で、でも、ゆうやんって意外に頑固だし~」

「悠夜さんは織斑とは違って我慢しているだけ。シミュレーション通りならもう限界のはず。それよりも聞きたいことがある」

「? 何~?」

 

 唐突に話を変えられたことで本音の頭上に「?」が現れたが、簪は構わず続けた。

 

「………あなたは、悠夜さんの本気を知ってるの?」

「ふぇ?」

 

 本音はふと、クラス対抗戦の裏でのことや学年別トーナメントのことを思い出した。

 

「……一応言っておくけど、今までの悠夜さんは序の口だから」

「……嘘、だよね…?」

 

 本音の言葉に簪は首を横に振り、真剣な目で答える。

 

「あれは本当に序の口。そうじゃなければ私はもうここにいないもの」

「……えっと、それって………三年前の……」

 

 簪は頷き、水着を選ぶふりをしてさらに言葉を続ける。

 

「そう。あのレポートでは三年前のことは師匠が助けたことになっているけど、あれは嘘。本当は悠夜さんが助けたの」

「待って。そんなことあり得ないよ。だってゆうやんはISを動かすまで武術なんてしていないんでしょ?」

 

 流石の本音も焦り始める。

 三年前のことは当時中学生の本音も知っている。何故ならあの事件には更識に対して不満持つ者たちの犯行であり、自分たちの家の者とフランスのマフィアが共同で行ったことなのだ。

 そう、少なくとも悠夜がいくら銃を持ってたとしてもよほどの訓練を積んでいないのであれば簪ともう一人を救出するのは不可能なのである。

 ちなみに反乱を行った者たちは処分されたが、何人かは無事で本気の命乞いをしたため今でも何人かは生き残っている。

 

「うん。あの時は私も諦めていた―――けどあの人は、その場にいる全員を肉体一つで倒したの。狙撃手なんて関係ないってくらいに」

「………」

「でも彼の本質は変わらない。どれだけ怖かろうと、あの人は信じている人に対して優しいのは変わらないから」

 

 そう言って簪は決めていたのか、少し面が小さいビキニタイプとパーカーを持ってレジに向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ■■■

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 朱音ちゃんのお父さんがいなくなったので探したが、時は既に遅しなのか姿を見つけることはできなかった。

 仕方なく戻ると、中で合流したのか晴美さんと朱音ちゃん、そしてラウラが俺を待っていた。

 

「では私は帰らせてもらおう。引き続きデートを楽しみたまえ」

 

 そう言って朱音ちゃんどころかラウラの分まで持って帰ってくれた晴美さんは煙のように消えた。

 

(……実は近くに潜んでいる、なんてことはないよな?)

 

 念のため周りを確認するが、意外なことにそれはなかった。

 俺たちは再び水着売り場を目指しながら、所々の店を回る。

 

「お兄ちゃん、どうしたの?」

「ん? 何が?」

「……何か、難しい顔をしている」

 

 どうやら顔に出ていたらしい。

 

(……俺が父親に会っていたことを言うべきか?)

 

 そう思ったが、朱音ちゃんのことだからすぐに追おうとするだろう。なんとか思い止まり黙って置く。

 

「いや、朱音ちゃんの水着がどんなのか楽しみだなぁって思って」

「……」

 

 どうやら言葉を間違えたのか、彼女は自分の胸を気にし始めた。

 

「……やっぱり、ビキニの方が良い?」

「物によってはワンピースもアリだと思う」

 

 するとちょっと引かれた気がしたが、気にしないでおく。というかこんなことで気にしていたら、俺の心が持たないだろう。

 

「じゃあ、私の水着はお兄ちゃんが選んでくれる?」

「いや、流石にそれは―――」

「大丈夫。どんなにエロい水着を選んでも着るから」

 

 そんなことをしたら俺が十蔵さんにkillされるわ!

 

「………まぁ、俺のセンスでいいならな」

「大丈夫。お兄ちゃん、センスいいから」

 

 お世辞のつもりなのか、朱音ちゃんがそう言ってくれた。するとラウラは俺の服を引っ張り、

 

「兄様、私の水着も選んでください。どんなにエロくても着ますから」

「………いや、似合うものを選ぶからな」

 

 ………とはいえ、ラウラにはひも―――いや、なんでもない。

 そんなことを思っていると、とうとう水着売り場へとやってきた。

 

「じゃあ、お兄ちゃん―――」

「すまん。ちょっとタンマ」

 

 ……ヤバい。女尊男卑を舐めてたわ。

 所せましと並ぶ女用水着のオンパレード。対照的に男用の水着なんて需要がないからか、置いている量が少ない。それでも普通の店よりかはあるがな。

 

「悪いけど、やっぱりある程度の候補は自分で選んで来てくれないか。流石にこんなところに堂々と入る勇気はない」

「でも、私はお兄ちゃんに選んでもらいたい」

「私もです、兄様」

「で、でも、ある程度の感性は必要だろ。それを鍛えるって意味でとりあえずは、な。それに、いざほかの男と付き合う時に恥をかく前にさ―――」

 

 我ながら最悪だがナイスな言い訳だと思っていると、二人に「ピシャリッ」という擬音が聞こえる程にハッキリと言われた。

 

「お兄ちゃん以外に付き合う予定はありません」

「私のすべては兄様のものです。ほかの輩になんて渡しません」

 

 ………どうしてこうなった。

 いやいや、将来は他に付き合うかもしれない奴がいるかもしれないじゃん? もしかして二人はそんなことを考えてはいないのだろうか……いや、考えていないな。

 個人的には嬉しいが、現実的ではないのは確かだろう。だが救いの手を差し伸べるように朱音ちゃんは言った。

 

「でもラウラ。一応自分たちがどんなセンスがあるか気になるから見に行こう?」

「………わかった」

 

 ありがとう二人とも。本当にありがとう。

 中に入っていく二人を見ながら心の中で涙を流していると、

 

「そこのあなた」

 

 どこかからそんな声が聞こえた。少なくとも二人ではないことは確かだ。それに楯無や虚さんではないな。あの二人ならばいきなり抱き着くか後ろから肩を叩いて振り向いたら人差し指を指すかだ。一度楯無の指を口に入れたら妙なことに誘われたことがあるが、丁重にお断りをしました。………ある部分は反応したけどさ。

 なんてことを考えていると、いきなり頭に布が被せられる。それを取ると、どうやら女性用水着だった。

 

(………地味にトラウマを抉られるよな)

 

 昔のことだが男に襲われそうになった俺は、あれ以来まともに女装をした覚えはない。今度は水着でしろとか何の罰ゲームだろうか。

 

「それを片付けておきなさい」

 

 どうやら俺に言っているらしい。「は?」と思ったが、考えてみればISが世界に普及して「女性優遇制度」が設けられて以降、いつものこととなっているし、何よりも―――

 

(これを作った人が可哀想だな)

 

 そいつの方を向いて改めて観察する。萌える要素もないただのゴミババアだった。たぶん20代後半だろうが、あんなゴミにこれ以上扱われる水着が可哀想にもなってくる。

 増長させるのはアレだが、ここは引き受けておくか。

 

「へいへい、わかり―――」

「———そんなこと自分でやれよ。人にあれこれやらせるクセがつくと人間バカになるぞ」

 

 ……………はい?

 思わず呆然としてしまう。というかお前いつ来たんだよ。

 

「よ、悠夜。助太刀するぜ」

 

 誰も頼んでないし名前で呼ぶな。

 いきなり出て来た織斑に対して唖然としていると、その女性は負けじと睨む。

 

「あなたには関係ないでしょ? それとも、二人とも自分の立場を理解していないのかしら?」

 

 そう言ってその女性はニヤリと笑い、近くを通っていた巡回中と思われる警察官を止める。……というかそれよりも、どうしてこのアホはすぐに俺だと気付いたんだろうか?

 いや、今はそれよりもここから逃げる方が先決だ。一度体勢を立て直すためにラウラに連絡を取ろうとするが、それよりも早く警察官が来る。

 

「どうしましたか?」

「この二人に暴力を振るわれたんです」

「何?」

 

 そう言って俺と織斑を見る警察官。

 

「待ってください! 俺たちはそんなことをしていません!」

「し、しかし―――」

「暴力云々ならば外傷を調べればわかるでしょう? 大体、俺たちが仮に暴力を振るったとして、どうして俺たちはここにいるんです?」

「そ、それは―――え?」

 

 するとその警察官は俺を見て聞いてきた。

 

「……もしかして君、桂木悠夜?」

「何ですって!?」

 

 俺が答えるよりも早く女性が反応する。織斑は頭に疑問を浮かべており、俺は展開が見えたので黒鋼に意識を集中させながら答えた。

 

「そうですけど?」

 

 女の反応を確かめ、いつでも倒せるように準備しているが―――それよりも早く警察官が態度を変えた。

 

「……君、今すぐ身分証を提示しなさい。すまなかったね、後は私が狂言として処分しておく。買い物を楽しみたまえ」

「………わかりました」

 

 

 ……思いの外、あっさりと開放された。

 

「織斑、何で俺だってわかったんだ?」

 

 とりあえず気になったので尋ねると、織斑は無自覚なのかとんでもない発言をした。

 

「いや、さっき女性用の下着売り場からラウラと一緒に出て来ていただろ? ラウラって悠夜と一緒にいるからそうだと思ってさ。それで水着売り場で絡まれているから助けようと思って―――」

「必要なかったけどな。あとお前らラウラを名前で呼ぶな。俺のこともな。虫唾が走る」

 

 そう言うと織斑はさらに言ってきた。

 

「それは結果論だろ。それに別にいいじゃん。減るもんじゃないし、友達の友達は友達って言うしな」

「言わねえし迷惑なんだよ、気持ち悪い」

 

 そう言って俺は織斑から距離を取る。織斑も付いて来る気配がしたがジアンにどこかに連れていかれた。とりあえずナイスとだけ言っておこう。

 

(………というか気持ち悪いんだが)

 

 やっぱり教師よりもあの弟の矯正をするべきだと思う。絶対におかしいよ、アレ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ■■■

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 悠夜と一夏を開放した警察官はその後、先程悠夜に絡んでいた女性に代わりに絡まれていた。

 

「今すぐそこを退きなさい! 殺すわよ!」

「それよりも身分証を出しなさい。今回は厳重注意だけで見逃してあげますが、次はいくら女性とはいえ逮捕します」

「ふざけないで! 悪いのは向こうよ!」

 

 水着はすべて店員によって回収されており、その店員は今すぐ追い出してもらいたいという雰囲気を出している。

 それほどその女性客が迷惑だと思われているが、構わず女性は言った。

 

「そもそもあなたたちがあんな害虫を野放しにしているのが悪いのよ! 責任を取ってさっさと駆除して来なさい!」

「……何を馬鹿なことを。ほら、早く身分証を出しなさい」

 

 40代前の男性警官はため息交じりにそう答えると、女性はさらに言うのだった。

 

「ふざけないで! こうなったら―――」

「大体、私はわざとあなたを助けてあげたんですよ?」

「何ですって? 私があんな害虫如きに負けると本気で思ってるの!?」

 

 女性には武道の心得があるわけではない。昔何度か喧嘩をしたことがあり、今も改造されているエアガンを所持している。それで殺せるだろうと思っているが―――

 

「ええ。思っています」

 

 警察官はそう断言し、さらに身分証を提示するよう迫るが女性はさらに怒りをあらわにした。

 

「ふざけないで! あんな雑魚如き、私一人でも―――」

「素人如きが勝てるわけがないだろう? それとも、公務執行妨害で逮捕しようか?」

 

 敬語がなくなり、本気で怒りを見せる警察官に対して躊躇いを見せる女性。思わず一歩下がった。

 

「もうそんな下らない行動は起こすなよ。アレは化け物だ。高が素人装備で挑んだところで死亡がオチだからな」

 

 そう忠告して警察官はそこから立ち去り、そこには呆然とした女性が残されるだけだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ■■■■

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お兄ちゃん、大丈夫?」

 

 俺の身を案じてか、女用水着売り場に再びやってきた俺のところに朱音ちゃんがやってきた。

 

「大丈夫だって」

「すみません、兄様。もう少し早く気付いていれば、アレを消せたものを―――」

「駄目だからな」

 

 本気でやりそうなラウラが心配になってきた。だが今は水着だ。俺は既に買っているから、後は二人の分だろう。正直、俺はかなり楽しみである。

 

「えっと、それで二人はどれがいいんだ?」

「私はこの紫なんだけど、ラウラはこれ」

 

 そう言って朱音ちゃんは紫のスポーツタイプにミニのジーンズが付属しているタイプなんだが、対照的にラウラのは布が少なく、さらにはフリフリが付いた黒い水着だ。ラウラの幼い容姿に敢えて大人っぽい感じの水着とは、朱音ちゃんも中々やる。

 

「(色々と問題はあるけど)いいんじゃないかな」

「し、しかしですね、兄様、流石にこれは……」

「いや、似合うと思うよ。是非ともそれにして―――」

 

 近くの女性用パーカーを探し、灰色のそれを取る。

 ちなみに問題とは織斑をどう消すかということだが、些細なことだな。

 

「ちょっと不格好かもしれないけど、こういうものをあえて着てガードするのも一つの手法だと思う」

「いや、ラウラの水着に似合わないからあえてそれは止めるべき。ラウラ、ちょっとこっちに来て」

「ん? 何だ?」

 

 俺に聞かれないためか、ラウラと二人で少し離れる。ちょっと寂しい気がしなくもないが、こういう時は聞かない方がいいだろう。

 なんてことを考えているとラウラは顔を赤くして戻ってきた。

 

「兄様、それを買います」

「そっか。二人とも、サイズは大丈夫?」

「ええ」「大丈夫」

「じゃあ、レジに向かおうか」

 

 そう言って二人を連れて会計の方に向かうと、

 

 ———シャッ

 

 近くに更衣室があったのか、カーテンが開く音がする。

 するとそこから織斑が現れ、

 

「な、何をしているんですか、織斑君!?」

 

 近くにいたらしい山田先生がそんな声を上げた。巻き添えがごめんなので別ルートから行くことにした。

 

 

 織斑とジアンが怒られている最中に会計を済ませる。会計は俺持ちで払おうとしたら二人が駄々をこねた。しかし珍しく(本当に珍しく)担当していた女性店員が仕事をした。

 

「お嬢さん。こういうのは男が払うものよ。ねぇ?」

「まぁ、彼女にはお世話になっているし、水着の一着や二着なんて余裕だから」

 

 そう答えると二人は渋々と財布を片付ける。そのしぐさですら可愛いのだから将来は他人に貢がせないような人間になってもらいたいものだ。

 買い物が終わって外に出ると、聞き覚えのある声が聞こえた。

 

「———あれ? もしかして桂木!?」

 

 そっちの方を向くと、そこには俺の知っている奴がいた。「マシな女子」という自分の中にある女子カテゴリの中にある奴で、同じ中学に通っていた奴である。

 

「久しぶりだな、庄井(しょうい)

「おひさ~。元気にしてた?」

「まぁな。ここ数か月で冗談抜きで修羅場を潜ったが」

 

 そう答えると庄井は噴いた。

 

「ま、マジで!? あ、そういえば今IS学園に通っているんでしょ? どうよ、女の園に通える感想は」

 

 ニヤニヤしながら聞いて来る庄井。こいつは俺が不得意とする俗に言う「イケイケ」な感じの女子だが、俺の少し変わった趣味ですら受け入れる心の広さを持っている。それでいてなんとか話に付いていこうと頑張る奴だから必然的に嫌うことはないのだ。

 

「………察しろ」

「まぁ、そうだよね~」

 

 思い出したのか、庄井の顔は少し曇る。

 

「にしても珍しいな。お前みたいに人望がある奴が一人で買い物って……フラれた?」

「アタシも一人で買い物する時ぐらいあるからね!?」

 

 俺すら思うほど珍しく女子と話していると、後ろで意外そうな、それでいて疑問を投げかけている視線を飛ばす二人。

 

「ってかそっちこそさりげなく女作ってんじゃん!? この魔王リア充め!」

「これはお前みたいなタイプの女子だよ。あと魔王言うな」

「誰だ貴様は」

 

 我慢できなかったのか、ナイフを抜いて応戦する構えのラウラ。俺はそれを咄嗟に止めた。

 

「待て。こいつに敵意はない……っていうかナイフを抜くな」

「もしかしてこの子、ミリオタ?」

「………まぁ、当たらずとも遠からず?」

「私は―――」

「まぁアレだよ。聞かれたくない過去を持つ仲間、みたいなものだ」

 

 ラウラの口を塞ぎながら庄井の奴も空気を読める奴なのでそこを狙って曖昧に答えると、「なるほどなるほど」と言った庄井は急用を思い出したようで、

 

「ごめん。アタシこーはいを待たせてるんだった。ということで行くね。じゃあね、魔王」

「おう……ってだから魔王って言うな!!」

 

 盛大に突っ込みを最後に入れて振り向くと、朱音ちゃんは頬を膨らませている。

 

「………誰?」

「中学の頃でよく学級委員とかやっている奴だよ。クラスのまとめ役って、真面目な奴か大抵ノリがいい奴がやるからさ。たぶんその一環として俺と会話していた変わった奴だよ」

 

 人のことを言えない癖にそんなことを言っていると、道中に簪の姿を見つけた。

 

「悠夜さん」

「ゆ、ゆうやん!?」

 

 ちなみに彼女らもさっき俺たちが買った水着店のロゴが入った袋を持っているので既に買い終わっているのだろう。では、

 

「行くか。新作のプラモを買いに」

「うん」

 

 別に示し合わせていたわけではないが、俺たちはプラモからゲームまで色々揃っている巨大なホビーショップ「オターズ」の中に入るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ■■■

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやぁ、ごめんごめん」

 

 庄井と呼ばれていた高校生は噴水がある時計台の方へと走る。今日はボーイッシュな格好なので靴がスニーカーということもあってこけずに済んだ。

 

「遅いですよ、先輩」

 

 待ち合わせの相手である鷹月静寐がそう答えると、庄井マイは手を合わせて謝る。

 

「ホントごめん、しっちゃん。実はそこで友達と会ってさ。まぁ、向こうは「良い話相手」って感じだろうけど」

「もう。久しぶりに会いますが、そういういい加減なところは相変わらずなんですね」

 

 二人は小学校の頃の部活で仲が良く、学年の垣根を超えて遊ぶ間柄だ。ただマイが小・中一貫の女子校から中学に上がる前に一般の公立中学に転校したことで会うことはなくなったがよく連絡は取っていたのである。それがたまたまレゾナンスの近くだということもあってこうして再開したのだ。

 

「でも驚いたなぁ。IS学園に行った「マオ」に会うことになるとは」

「? さっき言ってた友達ですか?」

「ん~、そんなところ」

 

 すると噴水の前にある主に広告が流れる大型ディスプレイから大音量でのCMが流れる。

 

『来たれ、プラモ愛を持つ者たちよ! 第二回スーパーロボッツ・バーサス大会、今夏開催!』

 

 そこで暗めの色だが血を連想させる色をふんだんに使った機体がバッタバッタと大鎌で敵を投げ倒していく。

 

「あれ? 確かあの機体ってマオが作ってた機体じゃん!?」

「その「マオ」って人、凄いんですね。確かああいう風に映像で使われるのって世界大会で優勝とかしないと映らないとか」

「まぁ、マオは優勝しているからね。噂ではシミュレーターの地球ごと相手の機体をぶっ壊したとか」

「何ですかそれ、チートじゃないですか」

「元々はISの登場によって腐った女共ISごと殺して制裁を下す物語の主人公の機体って聞いたことある」

 

 静寐は「どこかで聞いたことがあるような」と思い、つい最近のニュースで流れていたことを思い出す。

 

「……あの、その「マオ」って人、もしかして名前の中に「ま」も「お」も入ってませんよね?」

「うん。だって本名は「桂木悠夜」だし」

「え!? 先輩、桂木君のこと知ってるんですか!?」

「そりゃあ、なんだかんだで三年間同じクラスだったしねぇ。色々知ってるよぉ。先月のなんちゃらトーナメントの一回戦で放送事故扱いになっていたあの爆発って、マオが敢えてしたことだってぐらいは理解していまーす」

 

 平然と答えるマイに対して静寐は動揺を隠せない。

 

「それにあの機体も、たぶんマオが考えていた奴だと思うよ。なんとか2をベースにした機体だって言ってたし」

「…………え?」

「いやぁ、でも意外だったな。マオのことだからてっきり正攻法で勝っていくものだと」

「……あの、さっきから気になってたんですけど、どうして桂木君のあだ名が「マオ」なんですか?」

 

 静寐が尋ねるとケロッとした感じでマイは答えた。

 

「だって四年前の個人情報流出事件、犯人は断定されていないけどマオだもん」

 

 

 

 

 四年前、女尊男卑が完全に浸透した時代に一つの事件が起こった。

 当時中学一年生のとあるグループに所属していた全員の個人情報が一切のモザイクなしにネット上に流出し、世間を騒がしたのである。

 その犯人として矢面に立たされたのが悠夜であったが、とある動画が流れたことで逮捕されなかったのである。それは、女子トイレの便器の中で頭を突っ込まれ、背中から水をかけられるものだった。

 さらに虐められた生徒は担任だった女教師に相談し、さらには教育委員会の女の担当者にも相談したが男というう理由で突っぱねられた会話も録音されて疑われていたが、ISが登場したことでどこで録音されたかも鮮明にわかるようになったことで容疑から外れたのである。そしてグループの一人が襲われ、あわやというところで一生ものの傷を負うことになりそうになったことで担当者、教員は解雇、そのグループは転校を余儀なくされて事件は迷宮入りとなった。

 のちにその投稿者「真実魔王」という名前から「リアル魔王」と呼ばれるようになったが、それはこう残していた。

 

『次はこれだけで済ますつもりはない。気持ち悪いが一人一人誘拐し、一生ものの傷を残して無修正でネットに流すのもアリだと思っている。女尊男卑思考の女共、気を付けろ。これは魔王からの警告だ。お前たちは所詮、ISがなければただの雑魚でしかない。大半の男は群れる生き物だ。その群れがお前たちに襲い掛かるかもしれないぞ』

 

 だがリアル魔王はこれを機にアカウントを削除していて、一部の人間では「逃げた」とされているが、これを機に洒落にならないぐらいのいじめられっ子からの仕返しも増えたのは確かである。今でもたまにそのリアル魔王のことはニュースで流れるほどだ。

 そこまでの概要を思い出した静寐はこれまでのことを思い出し、していないとはいえ見て見ぬふりと同じようなことをしてきた。それはつまり―――

 

「ま、普通にしてたら大丈夫だって。案外良い奴だよ、マオは」

 

 フォローするつもりなのか、マイはそういうが静寐には届いていなかった。




という事で物凄く伏線を張ったり物凄く胸糞悪い回でした。反省はしている、しかし公開はしていない(`・ω・´)

流石にリアルの教育委員会はちゃんと仕事します。お世話になるほどの問題を起こしたことがないのでそういう事情はよくわかりませんけど。
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