IS~自称策士は自重しない~   作:reizen

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メリークリスマス!

ということでほのぼの回です。ほのぼの……してますよね?


#58 気付かぬうちに退散する二人

 買い物を終えた俺たちの手には、水着以外にも様々な荷物があった。………まぁ、ほとんどがライトノベルだったりロボットアニメの設定資料集だったり、あらゆる種類のプラモだったり。

 おかげで荷物はほとんど持てない状態だ。

 

「お母さんに聞いたら、まだ近くにいるから迎えに来てくれるって」

「あ、やっぱり帰ってなかったのか」

 

 今頃俺たちの温度差に対して微笑ましく見ているのだろう。というのも調子に乗って買ったのは俺と朱音ちゃん、そして簪であり、本音とラウラはそこまで何か増やしたわけでもない。そう、彼女ら(特にラウラ)はこれからなのである。

 しばらく歩いて、俺たちは立体駐車場に入る。その3階には晴美さんが待機していた。

 

「お待たせ、お母さん」

「ああ。みんな、そんなにたくさんの荷物は邪魔だろう。後部座席やトランクに入れたまえ。ただし朱音はもう時間だから連れて帰るがな」

「え~!?」

 

 あらかじめ聞いていなかったのか、朱音ちゃんはそんな反応を見せる。ちなみに俺も初耳だ。

 

「流石に護衛にも休暇を与えなければならないだろう? 何せあの二人はせっかく二人でいるというのにずっと張り込んでいてラブホにも行っていないんだ。それくらいのサービスくらいは良いだろう」

 

 すると後ろ辺りが騒がしくなるが、気のせいということで忘れよう。

 とか思っている、朱音ちゃんが俺の服の袖を引っ張ってくる。

 

「……お兄ちゃんがキスしてくれるなら、そうする」

「ほう」

 

 止めて、晴美さん。そこでニヤニヤしないで。というか周りも見て見ぬふりを一斉にするとか、裏切りなんて言えるレベルじゃないよこれ!

 いや、落ち着け。落ち着くんだ。前もしたんだから大丈夫。

 目をつむり、顔を近づけてくる朱音ちゃん。俺はあえて頬にキスをしようとしたが、朱音ちゃんが角度を調節してマウス to マウスになってしまった。

 

「………」

 

 思わず周りを見回すが、全員が後ろを向いてくれたのが幸いしてばれていない。

 俺は抗議の目を朱音ちゃんに向けるが、朱音ちゃんはウインクで返す。

 

「じゃあ、また後でね」

 

 そう言って朱音ちゃんは車に乗り込んでからシートベルトを着け、窓を開けて俺に手を振ってくる。

 

「やれやれ。一応忠告しておくが、高校は通わせたいと思う。するなとは言わないがちゃんと避妊はしてくれ」

「いや、しませんよ。だって俺の立場が―――」

「大丈夫だ。いざとなれば格の違いを見せつけてやればいい。もっとも、朱音を殺そうとする者が現れるのならば、その時はあの祖父馬鹿が暴れるだろうがね」

 

 そう言って晴美さんは車に乗り、俺たちがそれを見て離れたことを確認してから車を発進させた。

 俺たちはその車がいなくなるのを確認してから立体駐車場から出て行く。

 

「これからどうする? 俺はもうすぐ周りを見ていくつもりだけど」

「ありがとう。でも、今日は本来なら別行動だから大丈夫」

「……うん」

 

 ? 気のせいか、本音が暗い気がする。もしかして何か悪いことでもあったのだろうか?

 俺は簪に近づいて本音のことを尋ねると、「大丈夫」と答える。放っておくつもりはないが、あまり踏み込むのも悪いと思った俺は我慢する。

 

「ラウラはどうする?」

「私は少々買いたいものがあります。兄様の意見もお聞きしたいのですが……」

「じゃあ、先にそうするか。また後でな、二人とも」

「うん」

 

 簪と本音の二人と別れた俺とラウラは一階の方にあるアクセサリショップに向かう。

 すると目の前では人の渋滞が起こっている。また誰かがまた男を扱き使っているのだろうか。

 

(……本当に面倒な世の中になったものだ)

 

 金などの対価を得るために働くならばまだしも、そうじゃないのに扱き使う奴は正直好きではない。どこぞの主人公みたいに「話せばわかり合える」なんてものは既に終わっているだろう。

 せっかちというわけではないがだからと言って大人しくこの波の中を移動する気はない。ラウラの手を握って人と人の隙間を縫うように移動していくと、最前列に出た。

 

「おっとと」

 

 するとそいつが持っていると思われる荷物がバランスを崩して落下するのでそれを受け止める。

 

「悪い。助かった」

「———ちょっと、お兄! 何とろとろ歩いてるのよ!」

 

 どうやら今回の依頼者が近くにいたらしい。

 

「ってあー!? せっかくの勝負水着たちが……」

 

 しょ、勝負水着……「たち」!?

 ちょっと待て。何故「勝負水着」に複数形が付く?

 

「ちょっとお兄!? なんてことしてくれたのよ!! もしこれで一夏さんに嫌われでもしたらどうしてくれんのよ!!」

「……いや、あのな」

「……一夏?」

 

 聞き覚えがある単語だなと思っていると、ラウラが俺に耳打ちした。

 

「もしや、この者らは織斑一夏の関係者なのでは?」

「………マジで? って、ナイフを抜くな」

「しかし―――」

「いいから、納めとけ」

 

 そう言うとラウラは渋々とナイフをしまう。

 

「あー、えっと」

「言っておきますけど、一夏さんはあなたと違って物凄くカッコよくて強いですからね! しかも今はなんとISを動かした超大物なんです。まぁ、もう一人いた気がしますけど正直小物だった気が―――」

「落ち着けラウラ。雑魚の戯言だと思っとけ」

 

 ああ、もう。まさか自分自身が罵倒されてやるべきことが口で潰すよりも先に味方の歯止めだとは思わなかった!! というかそのスカートの中にどうやってナイフをしまっているんだよ、こいつは!

 

「ラウラ? 確かIS学園に転校したっていうドイツの代表候補生がそんな名前だった気が………。しかも妙に似ていないか?」

「気のせいだろ」

 

 男の方に対してそう言っておく。これがもしそういうのだということがこんな街中でばれたら物凄い騒ぎになるからだ。

 

「———って、悠夜とボーデヴィッヒ、それに弾に蘭も何をやってんのよ」

 

 突然の第三者の声に俺たちはそっちを向く。そこには久々に見た気がする凰鈴音が、水着が入っているであろう袋を片手に立っていた。

 

「凰?」

「買い物だ。見てわからぬか」

「鈴!?」

「鈴さん!?」

 

 ところでずっと気になっていたんだが、何で凰も織斑も制服で歩いているんだ?

 とか思っていると周りが騒がしくなった。どうしよう。俺がいるってばれたらさっきみたいに絡んでくる女がいるかもしれない。

 

「とりあえず、後は頼んだ」

 

 俺はラウラを抱きかかえて人ごみの中へと入りこむ。下でラウラが顔を赤くしているが気にしない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ■■■

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 悠夜がラウラと共にいなくなった後、弾も蘭も帰る予定だったのか、その家が近いこともあって鈴音も同行することにした。

 

「悪いな、鈴」

「いいわよ。ちょうどアンタんところで昼飯を食べようと思っていたし」

 

 ちなみに今の弾は鈴音に持ってもらっているのもそうだが、蘭にも荷物を配分していることもあってさっきよりも軽くなっている。

 

「でも、さっきの二人組は何だったんだ? 偉く慌てていたみたいだが」

「あれが二人目の男性IS操縦者だけど?」

「え―――?」

 

 内心「まずい」と思う蘭。まさか当人の前で言っているとは思っていなかったらしい。

 

「で、でも、一夏さんの方が強いんですよね?」

「まぁ、クラス対抗戦まではそうだったかもしれないと思う」

「あの、何でそんな曖昧な返事なんですか……?」

「機密事項よ。ちょっとそれ以上は言えないわ」

 

 そう言うと蘭は膨れたが、言えるわけがないのだ。

 実は鈴音は中々目を覚まさない悠夜のことが心配で何度か千冬に聞いており、二人きりの時に当時の現状を聞いているのである。その時に「いや、まさか」と思っていたが、学年別トーナメントの時の騒動の時に避難せずに残って映像を見ていた鈴音は理解していた。

 

 ———強さが桁違い過ぎる

 

 鈴音は周りの専用機持ちとは違い、唯一IS同士で悠夜と戦ったことがある。それ故に黒鋼の装備時との違いなど容易にわかったし、その実力の差はそう簡単には埋まらないとも理解している。

 

「じゃあ、もう一人って……ドイツの代表候補生」

「……とりあえずそのことは忘れて、お付きの人間とか、従順な犬とか、そういう風に考えておいて」

「じゅ、従順な犬、だと……!?」

 

 次第に弾の脳内にピンク色の妄想が始まるが、そこから戻したのは鈴音だった。

 鈴音は容赦なく弾の尻を蹴り、冷ややかな視線を向ける。

 

「なに変なことを考えてんのよ、アンタ」

「い、いや、何も……」

 

 そして今度は鈴音をジッと見始めた弾。その視線に気付いた鈴音は照れ始めた。

 

「ちょ、ジロジロ見ないでよ。恥ずかし―――」

「いや、何でさっきの子の方がどちらかと言えば胸がないのに鈴はモテないんだろうなって」

「衝撃砲って知ってる? 別名―――」

「待て! ここで展開したら流石にまずい!!」

 

 敢えて言った弾は「精々蹴りぐらい」と思っていたのだが、まさかのISを展開しようとするのは予想外だったようだ。

 

「これに懲りたら次からは言葉に気を付けなさいよ」

「わ、わかったよ……っていうか鈴さ、さっきの奴にどうやったら小さくてもモテるか聞いたらいいんじゃね? そういうこと、色々と知ってそうだし」

「………」

 

 弾にそう言われた鈴音は罰が悪そうな顔をした。

 言われずとも相手から教えてもらったことを含め鈴音は色々と学んでいたが、一夏のやることに対してすぐに嫉妬してしまい、ほとんど実践できていないのである。

 

「私も入学したら教えてもらおうかな?」

「あー、無理なんじゃない? 悠夜って友達を選ぶとかだし、アタシとはそりゃ交友はあるけど……最近疎遠だし」

 

 実のところ、鈴音も何度か話そうとはしているが、大抵の場合、簪やラウラと一緒にいるのでどうしても臆してしまうのだ。

 

(そう言えば、三年生の一人がよく悠夜と話しているわね)

 

 学園中から敵視されている悠夜だが、他学年では三年生のダリル・ケイシーがよく過度とも取れるスキンシップをしているのを鈴音は見たことがある。その生徒の胸が大きいこともあって疑問に思っていたが、ハニー・トラップを警戒しているはずの悠夜は意外にも邪険に扱っていないのが意外だと思っていた。

 

(一体何なのかしら……あの人)

 

 そう二人が―――いや、三人が仲良く帰っている頃、悠夜とラウラは昼食を食べていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ■■■

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あの後、何とか逃げ切ったと思うが、昼時という事で俺たちは回転寿司店に入っていた。

 すべて100円で当たれば景品がもらえるというその店に入っており、お昼時というのに珍しく空いている。

 

「こ、これが……お寿司というものか」

 

 どうやらラウラは一度も寿司というものを食べたことがない様だ。あの女の下にいるならば、たまには食いたくなるから一緒に食べているものと思ったがな。弟はウザいほどの愛国主義のようだし。

 ちなみにここの店員は俺たちを見て「リア充とか死ねばいいのに」と言っていた。どうやら女尊男卑主義ではないようで幸いである。まぁ、ロリコンと思われて捕まらないだけましか。

 

「あ、エビは尻尾を取れよ」

「? そのまま食べないのか?」

「ああ。エビフライは挙げられて殺菌とかされているらしいけど、生は止めておいた方がいい」

 

 そう言うと「わかりました」と答えたラウラはエビの尻尾を取って手で食べた。すると顔が輝きだす。……100円寿司だからIS学園の料理を食べ続けていたらそこまでの反応はしないと思ったが。

 

「おいしいです。兄様」

「うん。そこまで喜んだら裏の人は泣くだろうね」

 

 厳選された素材だからそこまででもない、かな?

 だがここまで喜ぶのは予想外だった。いつもの調子で回転寿司に連れて行ったのだが、それは将来ラウラに子供ができたら高級寿司で舌を慣れさせないためだ。

 つい最近、疑問に思ってネットで調べたのだが、どうやら100円のものと高級なものとでは味に違いがあるらしいが、素人の俺にはそんなことがわかるわけがない。まぁ、恋愛的には高級寿司に連れて行った方が喜ばれるかもしれないが、そういうのは俺ではなく別の奴の仕事だ。

 

「………」

 

 しかし意外に食うな。こっちの寿司ならばいくら食べても安いし、やっぱりこっちに連れてきて正解だったかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ■■■

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その頃、同じ店に本来ならば関係ないはずの二人も食べに来ていた。ダリル・ケイシー、そしてフォルテ・サファイアの二人である。

 

「………あの、先輩」

「何だよ」

「さっきから何を睨んでいるッスか。寿司が固まってしまうッスよ」

 

 そう言い終わるとフォルテはマグロを口に入れる。常に高給料が入る彼女たちがここに来ているのはフォルテのクラスメイトに勧められて来たが、ダリルはそれどころではないらしい。

 

「クソッ、何でオレはあと2年遅く生まれて来なかったんだよ。そしたら今頃桂木と一緒に食べられたかもしれないのに………」

 

 その言葉を聞いたフォルテはダリルの前に数の子を取って甘タレをかけて口に入れる。そして今度は同じくダリルの前にあったコーンを同じく甘タレをかけて口に入れた。

 それに気づいたダリルは、

 

「ちょっ、おま、何やってんだよ!?」

「さっきから一向に食べないから代わりに食べたッス! 文句は男に現を抜かしている自分に言う事ッスね!」

 

 するとタイミング数の子とコーンが流れて来たのでダリルは手を伸ばそうとするが、それよりも早くフォルテが2皿ずつ奪った。

 

「ちょっ、テメ―――」

「いただきます!」

 

 すると一気に食べて頬袋を作るフォルテ。騒がしさに何人かが振り向き、店員が注意しようとしたが身長が低いことも相まって可愛さが表れていたため、そそくさと戻っていく。

 ちなみにダリル側の隣の席に座るのは運悪くオタク集団だったようで、ひそひそとフォルテを見ながら小さな声で口々に意見を交換していた。

 

「今の見ましたか?」

「見ました見ました。あの頬袋加減、合格ですよ」

「カメラがないのが残念で堪らない」

「目に焼き付けましょうぞ。今夜のオカズとして!」

 

 その会話が聞こえているのかは定かではないが、フォルテの背筋に悪寒が走る。

 だがダリルは未だ頬袋を作っているフォルテを見ており、その視線を感じてたフォルテは顔を赤くしていたが、ダリルの発言によって顔を青くした。

 

「もしかして、これが前に桂木が言っていた「萌え」という奴か?」

「………」

 

 嫌な予感がしたフォルテは噛む速度を早くする。

 すると店内にチャイムが鳴る。ダリルがあらかじめ場所をチェックしていたその看板を見ると彼女が持つIS「ヘル・ハウンドver2.5」のハイパーセンサーを使用して確認していた悠夜たちの席の番号が表示されている。

 

「え、ちょっ、まさか―――」

 

 ダリルの予想通り、二人は席を立ち上がって帰っていく。

 

「あ、ちょっ、もうちょっと食べて―――」

「いや、食べてますけど」

 

 と空気を読まずに敢えてそう発言するフォルテの声すら届いていないのか、ダリルはザメザメと涙を流すのだった。




ということで今回は早々出ることがないであろう五反田兄妹の登場となりました。
基本悠夜サイドが鈴音以外の一夏サイドといることは全くと言っていいほどないので出番があるかわかりませんけどね。

そして、次回からは臨海学校!
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