IS~自称策士は自重しない~   作:reizen

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安定の「これはナイ」感があります。


#75 元からそのつもりはありません

 一学期もいよいよ大詰め。今日から四日間に渡る学力テストと体力テストが始まる……というのに俺はIS学園から離れ、日本政府御用達の秘密会議用の会場へと訪れていた。

 一応は日本内であることに安心したが、それでも油断ならないのは事実だ。

 

(というか、よく日本で会議する気になったな)

 

 ギルベルトさんが運転する高級車で会場となるその場所に着き、十蔵さんと俺は降りた。

 

「では、行きましょう。ギル君、後はお願いします」

「わかりました」

 

 入ることはないだろうと思っていた高級会議場に入った俺たち。エレベーターに乗って指定されている階に入ると、黒服の人間が現れた。

 

「轡木十蔵さん、そして桂木悠夜さんですね」

「はい。案内をお願いします」

 

 頷いた黒服が俺たちを案内すると休憩室のような場所で俺たちを止める。

 

「轡木さんはこの部屋にお入りください」

「………どう見ても休憩室ですね? ここでするのですか?」

「会場には桂木悠夜さんのみ通すよう言われています」

 

 それを聞いた十蔵さんが眉をひそめた。

 

「待ちなさい。それはどういうことですか?」

「私たちはそのように言われました」

「ならばチェスター・バンクスを出しなさい。あの男ならば何か知っているはずです」

「それがですね―――」

 

 静かに、それでいて鋭い殺気を飛ばしながらそう言った十蔵さんを俺が制する。

 

「桂木君」

「……では、その人に聞いてくれませんか? 「本当に行くのは「子供」の桂木悠夜でいいのか」と」

 

 その言葉に対してどう思ったのかはわからないが、「少々お待ちを」と言った黒服の一人は奥へと消えていく。

 

「桂木君。まさかと思いますが―――」

「いざとなったらというだけです。大丈夫です。この条件ならば確実に大人を納得してくれます」

 

 それに俺専用の鋼もあるし、本当にどうしようもない時は迷わず黒鋼を使うようにするさ。

 小さい声で相談していると、先程消えた黒服が現れた。

 

「確認してきました。それでは、桂木さんだけお通しします」

「では、行ってきます」

「………」

 

 心配そうに俺を見る十蔵さん。そういう心配は是非とも朱音ちゃんにしてもらいたい。

 そんなことを思いつつ、俺は黒服の後に追いて行く。

 

「こちらから入ってください」

 

 言われた俺は一応の礼儀を払うため、4回ノックする。

 

『…入りなさい』

 

 言われて俺はドアを開け、閉めてから一例して「失礼します」と言った。

 中には老若男女……いや、比較的年老いた男女に、付き添いと思われる女性が数人座っている。すると見知った顔が一人、俺を見て顔を逸らした。ナターシャ・ファイルスさんだ。

 ほかにも中国やイギリス、フランス、ドイツの重役。日本はもちろんのこと、ブラジルやオーストラリア、ギリシャなどが参加している。どうやら10年前にIS条約に参加した国家の重役が姿を現しているようだ。いくらルシフェリオンの性能が性能だからと言ってもこんなことで集まるなんて馬鹿ではないだろうか? というか、俺がこれ見よがしに暴れるとでも思ってるのか? そうするならば最初から女権団のメンバーを殺している。悪いがあんな奴らに慈悲なんて与える気はない。あんなに可愛い本音をよりにもよってあんなブサイク共に犯させようとするなど言語同断。萌えを知らない奴など死ねばいい。

 冷静になりながら俺はポツンと置かれている机の前に移動する。誰からも「座りなさい」みたいなことを言われない。というかそれ以前に椅子自体なかった。

 

「初めまして、ミスター桂木。私はチェスター・バンクスというものだ。アメリカでIS関係の公務をしていて、今回の会議の進行を務めさせていただく。もう気付いているだろうが、ここにいる人間は全員日本語が達者だ。弁明はすべて日本語で構わない」

「(………弁明?)わかりました。既にご存知と思いますが、私の名前は桂木悠夜。あの事件のことはここにいる方々は既に知っていると思っても?」

「ああ。予め説明を済ませている。すべて話してもらっても構わない」

「では遠慮なく。IS学園に所属する第一学年で今年度に入ってからの表沙汰となった事件に関わり、解決している中心人物の一人です」

 

 それを聞いたおそらく全員が動揺しているだろう。でも実際、クラス対抗戦では援助アリだが単独で、暴走したVTシステムはほぼ単独で、襲撃してきた仏独コンビを抑えた一人だし、福音暴走事件は止めた張本人だ。

 

「あなたのことは聞いています。何でも、どこからか入手したBTシステムを我が国の代表候補生以上に扱えるとか」

「やり方がゲームと似ていますからね。悔しければ「高がゲーム」と思わずしてみればいいでしょう? まぁ、そう簡単に負ける気はありませんが」

「………」

 

 するとイギリスとわかる小さい国旗が置かれている席に座っている女性が俺を睨んでくる。こっちにだってプライドはあるんだもん。確かにスペックが高いってのもあるけどさ、流石に年季も生じてくるだろうよ。ちなみに俺は赤や白よりも黒が好きだから、クシャト○ヤを黒に塗って一時期はそれで戦っていた。

 

「さて、前置きはこれくらいにして、本題に入らせてもらおう。桂木悠夜、我々IS委員会にルシフェリオンという機体を譲渡してもらおう」

「……お断りします」

 

 もう少しで「ノゥ!!」とどこぞのロリコンインナーのように力強く否定しそうになったのを、なんとか堪える。

 

「ルシフェリオンは私にとって特別な機体です。そして何より、危険な機体でもある」

「そんなものを一学生である君の手に委ねろとでも?」

「ええ。日本では「触らぬ神に祟りなし」とも言いますし、何よりルシフェリオンは元々操縦者の体調を無視したシステムが搭載されています」

「……ほう。それは何だと言うのかね?」

 

 まさかその返しが来るとは思っていなかった。

 でもまぁ、よもや同じシステムがルシフェリオンに搭載されているなんて思いもしないだろう。

 

「サードアイ・システムです」

「何?」

 

 チェスター・バンクスの言葉をきっかけに各国の重役たちがひそひそと会話を始める。

 

「待て。それは確か君の機体に搭載されている第三世代兵器ではなかったのか?」

「ルシフェリオンは元々、SRsというゲームの大会用に作った機体。黒鋼に搭載されているのは言ってはなんですが劣化コピーです」

 

 それでもほとんど差異はなかったりする。黒鋼は情報収集をしていたらそのデータを反映させて未来予測するが、ルシフェリオンは最初から相手の心意を読んで未来予測するのだ。そして―――

 

「何より元々サードアイは膨大な量の情報を操縦者のキャパシティを無視して制限なく叩き込むシステムです。場合によっては発狂し、そのまま暴走してしまう恐れがある。米国とイスラエルが条約を無視して開発した軍用機体を倒せるほどのものを装着したままで、誰が倒せるというのですか? それにあなたたちのことは全く信じていません」

 

 そう言うと全員が黙りこんでしまった。そりゃあ、第三形態の軍用ISですら容易に仕留める機体を誰が止められるというのだろうか。

 

「以上の理由を持って、あなた方にルシフェリオンを譲渡することをお断りさせていただきます。今後、条件付きですがルシフェリオンのデータを提示するのは一か所のみです」

「………轡木ラボか」

「ええ」

 

 さも当然とばかりに答えると、全員が俺を睨む。

 

「……だが、あそこも情報開示義務はある。我々にいずれ情報が行くのは同じだ」

 

 だからこそ提示しろということだろう。

 

(………やはり切るべきだろうか?)

 

 ルシフェリオンはISではない。IGPS(イグプス)という別種のものだ。だからIS条約には抵触することはない。

 もしこれがISじゃないとわかれば、是が非でも奪われる危険性はあるし……何よりもISを超えるほどのパワードスーツを開発できる人間がいるというわけだ。篠ノ之束が新たに開発したパワードスーツということは俺たちの関係性からしてまずないし、開発しそうな人物は朱音ちゃんを除くとなると俺の親父なので既に他界している。

 

(結局取られるのは一緒なんだろうな)

 

 そんなことを考えて、敢えてこう言った。

 

「いくら轡木十蔵が強かろうと、所詮ルシフェリオンには適いませんよ。なら、やりようはいくらでもある」

「……ほう」

 

 まぁ、脅したりとか? 流石にそれをする気はないし、朱音ちゃんに日頃の感謝と称してデータを提供するだけだ。十蔵さんに関してのお礼は、朱音ちゃんにしてあげた方が喜ぶと以前菊代さんが言っていた。

 

「ならば、仕方がないな」

 

 ———パチンッ

 

 チェスター・バンクスが指を鳴らす。すると俺に何かが襲った。

 

「君が悪いのだよ、桂木悠夜。もう少し物分かりが良ければ長生きでき―――」

 

 そんなことが耳に届いたが、俺はそこで意識を途切れさせてしまうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ■■■

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やれやれ、手こずらせてくれる」

 

 そう言ったチェスターは黒服に指示すると、黒服たちは倒れた悠夜を二人がかりで持ち上げる。

 

「上手く行ったようですわね」

 

 イギリスの国旗が置かれている席に座っている女性がそう言うと、チェスターは「ああ」と頷いた。

 

「全く。何を言い出すかと思えば。よりにもよって轡木十蔵の所のみ情報を提供しようなどと」

「これはよく言い聞かせねばなりませんな。もっとも、次起きた時に正気を保ってられたなら、の話でしょうが」

 

 周りがケタケタと笑い始めるのを止めたのは意外にもチェスターである。

 彼はすぐに手を挙げると、小声で周りの人間に言った。

 

「あまり大きな声を出さないように。近くにいるであろう轡木十蔵に聞かれる恐れがあります」

「そうですな。あの男に聞かれるのはまずい」

 

 一人がそう言った時、黒服の一人が「見つけました」と彼らに言った。

 その男の手には十字架に黒い鎌のような羽が纏わりついたネックレスがあり、チェスターは近くにいた女性―――ナターシャ・ファイルスに尋ねる。

 

「どうだ?」

「………それだと思うわ」

 

 苦々しい顔をしながらナターシャはそう答えると、チェスターはご苦労と言った。

 

「……これで家族とあの子を開放してくれるのよね?」

「ああ。約束は守ろう。ただし君には我々に協力してもらうことになるがね」

 

 その言葉にナターシャは奥歯を噛みしめる。だがそれも数秒だけで、しばらくすると元に戻したが。

 

「まぁそう悪いことではないだろう。ダサい身なりとは言え、君を助けた王子の世話をすることができるのだからな」

「…………そういうんじゃないわ」

 

 だがナターシャの言葉を無視したチェスターはすぐに全員に撤退を指示する。

 

 

 

 

 

 

「……流石に遅いですね」

 

 一人残されている十蔵がポツリと呟く。

 十蔵が案内された部屋にはテレビがあったので見ていたが、しばらくするとそれにも飽きが来たため今はただダラッとしている。

 すると彼の携帯電話に着信音として設定しているメロディが鳴り響く。

 

「もしもし」

『ギルベルトです。会議はもう終わられたのですか? 先程から何台か車が出て行っているのですが―――』

「……何?」

 

 そんなことは一度も聞いていない。

 十蔵はすぐに立ち上がるとドアの方に向かい、開け放った。

 

「そこまでだ、轡木十蔵。大人しくしてもらおう」

 

 外にはM16A2を構えた黒服たちがおり、それらが全員十蔵に標準を向けている。

 

「………これは一体どういうことでしょうか?」

「あなたをその部屋から出すなと言われている」

 

 ———ガンッ!!

 

 何かがぶつかる音がした。それもそのはず、十蔵がいる部屋の窓に鉄格子が現れ、十蔵を閉じ込めたのである。

 

「……やれやれ」

 

 どこか諦めたような声を出す十蔵。それを聞いた黒服たちは安堵する。何故なら彼らは十蔵が過去に築いた功績の数々を知っているからである。その内の一つは、十蔵の殺しの依頼を受けた男が返り討ちに遭ったのだが、十蔵が発砲をせずにまるで男が自ら自分が所有していた弾で自分を撃ったような傷を作ったという。十蔵は表には出されていないが日本で数少ない帯銃などの武装許可が出ている男だ。だが十蔵が持つ弾丸とその男が所有していた弾丸が照合しなかったことから、一部では「ミラージュ・ミラー」と呼ばれているほどである。曰く「その男を攻撃すれば反射されて自らの攻撃を食らう」ということらしい。

 それほどの男に対して黒服たちは攻撃を仕掛ける気にならない―――いや、怖くて仕掛けられなかった。

 

「すまないが、あなたにはその部屋に入っていてもらぁあッ―――」

 

 リーダー格と思われる男が途中で話すのを止めさせられた。原因である十蔵の拳が正確に腹部に当たっている。

 

「………老いぼれと見ているのか、私も随分と舐められたものだ。よもや5人程度でこの私を止められると思うなど―――」

 

 一人が銃口を挙げた瞬間、リーダー格の男と同じように腹部を―――そして顎を打ち抜かれる。

 

「ま、待て! 動いたら―――」

 

 突然だった。突然、あり得ないことが起きた。

 十蔵が背を向けていた相手がいきなり壁に叩きつけられたのである。

 

「ま、まさかもう発動させたというのか?!」

「そんな!? あれは跳ね返すことしかできな―――」

「今まで敢えてそうして使っただけですよ」

 

 ———ゴンッ!!

 

 残った二人の頭部をぶつけた十蔵はそのまま捨てる。するとリーダー格の男が目を覚ましたところで、十蔵は右足で男の顔近くの壁をへこませた。

 

「ま、待て! 情報なら―――」

「ああ、そうだな。教えてくれ」

 

 十蔵がそう言うと、黒服は情報を話し出した。

 

「桂木悠夜なら、これから日本にあるIS委員会の人体実験場へと輸送される。「堕天使」は別の場所だ。あの男たちが密かにそんなことを言っているのを聞いた!」

 

 「堕天使」とはルシフェリオンのことだ。

 それを聞いた十蔵は「やれやれ」と呟き、ため息を吐く。

 

(本気で調べる気でいるようですね)

 

 黒服たちから銃器などを回収した十蔵は荷物をまとめて階下へと降りて自分が乗ってきた車を探す。それもすぐに見つかった。ギルベルトが立っていたのだ。

 

「お待たせしました。……悠夜様は?」

「残念なことになりました」

「……ほう。その割には笑みを浮かべているようですが」

 

 ギルベルトの指摘に「当たり前でしょう?」と答える十蔵。

 

「私も、そしてあなたもあの一族の強さ―――いえ、逸脱した特性を知っていますからね。それにルシフェリオンもある。あれが私が予想する人物が作成した物ならば、しばらくすると世界経済やパワーバランスはある種の終焉を迎えるでしょう」

「………まぁ、それはそうですね」

 

 二人は笑っていた。自分の主の孫が、友人の孫が捕まっていたというのに笑っていた。何故なら、彼らは信じていたからだ。

 例え彼がどうなろうと―――それこそ、現存するISに囲まれたとしても絶対に生きて帰ってくると()()しているからである。

 

(一応、アレのスタンバイはしておきますか)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……そう」

 

 IS学園にある轡木ラボの朱音の部屋で、朱音は十蔵から仔細を聞いた。

 すると彼女は稲妻が書かれた指輪を持った状態で鳥かごの中に入っている黒い鳥を外に出す。そしてその鳥に指輪を握らせた。

 

「じゃあ、お願いね」

 

 そう言うと黒い鳥は自ら飛翔し、ある目的のために飛んでいく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方、ある場所では一人の男が遭いたくない目に逢っていた。




目を覚ました悠夜の前に広がるのはベッド、そしてどこかにありそうなピンク色の空間だった。
そして悠夜は自らの思いのためにそこから抜け出す。

自称策士は自重しない 第76話

「テメェは怒らせた」



安定の次回予定です
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