IS~自称策士は自重しない~   作:reizen

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文章力が低下していることに関してはご容赦を
本当の大人はここまでバカではありません。


#76 ISでしか戦いなんて誰が決めた?

「つ、捕まったってどういうことですか!?」

 

 学園内で学力テストが行われている中、呼び出された楯無は学園長室でそう叫んだ。本来ならテストを心配するべき生徒の一人だが、彼女と虚の場合は既に筆記テストを終わらせている。もっとも虚は2年生から始まる分野特化カリキュラムの「整備科」を選んでいるため、そのテストの一つとして作るオリジナルの武装を作っている。その出来が良ければ各国企業にスカウトされるようになる。もっとも虚が第一志望としているのは「轡木ラボ」だが。

 

 ———閑話休題

 

 楯無が思わず叫んだことで学園長である菊代は耳を塞いだが、口を閉じたのを確認すると両手を開ける。

 

「ええ。先程、理事長から連絡がありました」

「そんな……あの人がいながら……どうして……」

「隔離されたようです。まぁ、だとしてもそんな理由で納得はできませんが」

 

 菊代の言葉に楯無は頷く。

 

「———まぁまぁ、とりあえず落ち着いたらどうだ?」

 

 そう言いながら、来客用に準備されている椅子に座りながら、晴美がコーヒーを口に運ぶ。

 

「そんな悠長なことを言ってる場合ですか!? すぐにでも助けに行かないと―――」

「………いや、要らないだろう」

 

 晴美がそう言うと楯無は「どうして!?」と尋ねる。

 あまりの剣幕に常人なら驚くところだが、晴美は平然と答えた。

 

「普通の人間―――織斑一夏君の方なら流石に助けた方がいいかもしれないが、捕まったのは悠夜君の方だろう? あの子は強いから必ず帰ってくる」

「でも―――」

「そんなに心配なら、帰って来た時のことを考えてお風呂に入ったらいい。以前使ったおもちゃがあるが、使うかい?」

「………いえ」

 

 楯無はそう答えると、菊代は楯無の行動に水を差すように言った。

 

「ともかく、くれぐれも勝手な行動は慎んでください。あなたに伝えたのは、その必要があると思っただけです」

「………わかりました」

 

 そう答えた楯無は「失礼します」と言って部屋を出る。

 しばらくして晴美が言った。

 

「だが、それは本当なのかい? 悠夜君を捕まえるなんて」

「ええ。ですが、よりにもよってあの人を隔離するなんて……」

 

 菊代がそう言うと、晴美が「確かに」と相槌を打って言葉を続けた。

 

「これまで大人しくしていたのは、お父さんという学園唯一の化け物がいたからだろう。後は、今まで培ってきた「兄」としての癖だろうな」

 

 晴美が推測したことは正解だった。

 悠夜は今まで大人しくしていたのは、「轡木十蔵」という、これまでに感じたことがないプレッシャーを放ち、尚且つ高い技量を持った男がいたことも大きい。朱音を復活させようとした時に感じさせた十蔵の行動は悠夜にとって歯止めとなっていた。

 そして悠夜にとって意外にも彼の周りにいる女たちの存在は大きい。

 というのも悠夜は「女尊男卑の総帥」という大きな立場にいる女性の息子として養われていたが、その代わりに悠夜は義妹であり、郁江の大切な存在である幸那を可愛がっていた。今の世の中が「女尊男卑」でなければ、「兄に恋愛感情に近いであろう愛情を持っている」という点を除けば、幸那は普通の少女として育っていただろう。頭が良い悠夜は、今の世界情勢で血の繋がりがない者を養育するなど苦しかったに違いないということは容易に理解できた。それ故に家事と幸那の教育に関しては手を抜いたことがないし、愚痴をこぼすことはあれど絶対に成し遂げていた。

 そんな環境にいたからだろう。構いたくなるような状況にいた幸那から次第に「「兄」として必要な行動」が稼働し始め、実際に姉を持っていて、自分と同じ趣味を持つ簪、さらに今まで罵倒を浴びせるどころか自分を助けてくれた本音、そして心を入れ替え、過去のことが今になって甘えたい盛りを迎えたラウラ、彼女たちの相手をするたびに「まるでそれを基準にしているのではないか」と思うくらいの美ともう一つに癒されていた。もしそれが大変な目に逢った場合、どうなるかというのは臨海学校で起こったIS暴走事件で既に証明されていた。いや、下手すればそれ以上のことが起こるかもしれないのである。

 

「じゃあ、あれだけアピールされているのに、未だに誰とも寝ないのはやはり―――」

「「兄」としての行動が阻害しているんだろうな。……だから楯無―――いや、刀奈ちゃんなんだろう?」

 

 晴美の質問に菊代は躊躇わず頷いた。

 

「ええ。現状、学園内で同い年で心を開いているのは彼女か三年生の布仏虚さん……ですが、同居していた分の親しさを顧みれば彼女にした方が良い」

「三年生なら、もう一人いたな」

「………彼女は止めておいた方が良い。下手をすれば亡国機業(ファントム・タスク)が動く」

「だね」

 

 晴美は再びコーヒーを飲み、「ふぅ」と一息ついた。

 

「……だが、問題は一つある」

「そうですね。あの方たちが、彼に嘘を教えた場合でしょうか。学園にいる彼女らを権限を使って捕えている……もしくはそれ以上のことを言ったら……」

「………死人、出るな」

 

 菊代は悠夜の祖母である陽子を、晴美は父親である修吾を思い出しながらため息を吐いた。

 

「陽子様なんて、突進してくる猪にアッパーですからね。その孫である彼ならIS相手に半殺し……いや、いくらなんでも……」

「確か、警察の機動隊を相手に廃車をぶん回したとか聞いたが……」

「……出ますね。死人」

「……ああ、出るな」

 

 その時、この母娘の思いが一つになったのは言うまでもないだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 学園長室を出た楯無はそのまま部屋を出る。既に時間的には放課後であり、テストの出来が悪かったのか、何人かが今にも倒れそうだった。

 その中で一人、何故か私服に着替えてどこかに出かけようとする妹の姿を見つけた楯無は驚きながら簪に近づいて行った。

 

「ちょ、簪ちゃん!? どうしたの?!」

 

 自分の姉を見つけた簪はいることに驚いたが、それも一瞬のことで真顔に戻った。

 

「……日本政府に呼ばれた」

「え!?」

 

 更識では普通ならば、呼ばれるとしたら楯無かその父の茂樹ぐらいなものだ。だが、いくら代表候補生だとしても簪が呼ばれることはない。

 

「……心当たりはある。だから、大丈夫」

「だ、大丈夫って……」

 

 ———まさか、簪ちゃんも標的に……

 

 嫌な予感がするのか、楯無は悪い方向に考え始める。

 

「たぶん、代表候補生辞退届を提出したから」

「待って。それってどういうこと!?」

 

 楯無にとって予想外だったのか、とんでも発言をした簪に迫ってしまった。

 

「「代表候補生」という肩書はもう必要ない。……むしろ、悠夜さんと一緒にいるなら邪魔だし、今は轡木ラボのテストパイロットで十分」

「いや、でも……」

 

 ———それでも、行かせたくない

 

 そう思った楯無は無言で簪の袖を引き、誰もいないところへと移動する。そして先程の聞いた情報を簪に聞かせる。

 

「……あのね、簪ちゃん。実は悠夜君が―――」

「捕まった?」

 

 先読みしてそう言った簪。楯無が頷いたのを見て、ゆっくりと言った。

 

「……じゃあ、お姉ちゃんは部屋でゆっくりして」

「……え?」

 

 まさか妹からもそんなことを言われるとは思わなかった楯無は驚きを顕わにする。

 

「でも、助けないと―――」

「……3月の状態ならそうした方が良かったかもしれないけど、今はもういいと思う」

「……何でそう言い切れるの?」

 

 ———わからない

 

 いつの間にか楯無は汗をかき始めていたが、それでも本人は気付いていない。

 それほど彼女は思考に囚われ、同時に何もせずに達観していた簪に戦慄している。

 

「三年前。……私が反乱者に売られそうになったことを覚えてる?」

「わ、忘れるわけないじゃない!」

「……みんなが来る前にすべて終わったでしょ?」

 

 そう聞かれた楯無は頷くと、簪は一度笑ってから言った。

 

 

 

「———あれをしたの、悠夜さんだって言ったら?」

「———え? でも―――」

「事実は消されたの。更識の名誉のために。一部隊とはいえ、それがただのゲーマー如きにマフィア諸共素手で壊滅させられたなんて聞かれたら、暗部としての信用を失うから」

 

 衝撃の事実を突きつけられた楯無は言葉を失った。

 

「………ちょっと、待って……どういう……」

「私が言えるのはこれまで」

 

 すると黒服の男たちが簪を探しているのか、辺りを見回していた。

 

「……簪ちゃん」

「大丈夫。絶対に戻ってくるから」

 

 そう言って物陰から出て行く簪。すると黒服たちが簪の姿を見つけるや否や駆け寄り、連行するように連れて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ■■■

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 目が覚めたら、広がるのはピンク色の風景だった。ここでとある主人公ならば「知らない天井だ」とか言うのだろう。

 ともかく横たわっているので起き上がると、それに伴ってどこからか「ジャラジャラ」と鎖を思わせる音が聞こえて来た。

 

「起きたのね」

「……何でバスローブ?」

 

 声をかけて来た女性に俺は思わず突っ込んでしまった。

 

(いや、考えてみれば普通か)

 

 そういや前にテレビで「風呂から出てすぐに服を着ると汗をかいて余計に風邪をひきやすくなる」って言ってたな。それ対策だろう。

 

「おはよう。桂木悠夜君」

「………」

 

 嫌な予感がして時計を探すが見当たらない。

 

「あの、ここってどこ……ですか」

 

 目の前にいるナターシャ・ファイルスに尋ねる。思わず敬語を使わずに聞きそうになったけど、たぶん誤魔化せただろう。

 

「ここはIS委員会があなたの遺伝子情報を取得するために開発した部屋よ」

「……その割には随分とピンクが多いような……」

「実際のラブホテルを参照して作ったらしいわよ」

 

 なんとまぁ、無駄にこっちゃって。

 こんな無駄な部屋を作る意味が分からない俺は、今すぐ去ろうとする。

 

「無駄よ。あなたは今、鎖で繋がれているわ。私もね」

 

 そう言ってファイルスさんは自分の胸元を見せてくる。確かに彼女にも首輪をされており、それがどういうことか俺の左手首に繋がっている。

 

「………あの、どういうこと?」

「……それを女性に言わせる気かしら?」

「……………まぁ、とりあえず事情は理解した」

 

 つまりあれだ。まずはファイルスさんを使って俺から白い液体を大量に摂取させ、そこからデータを読み取ろうという算段だな。

 そこまで想像してしまった俺は、改めてファイルスさんを見る。

 

「………何かしら?」

「いや、なんでもないです」

 

 何だろう。やるにしてもイマイチその気になれない。

 ともかく別の意味の確認も終わったので、俺はベッドから出ようとすると、目の前に投影されたディスプレイが現れた。

 

『お目覚めかね、桂木君』

「ああ、あなたですか? さっきのは一体何の冗談です?」

 

 流石にルシフェリオンを展開した状態では相手に失礼だと思ってやめておいたのに、あんな仕打ちをされるとはな。…いや、流石に予想はしていたけど、電撃を浴びせられるのは予想できなかった。

 

『なに、わがままな子供にお仕置きをしたまでだよ。大人しく渡せば無事に解放してやったものを―――』

「その後に無理矢理にでも捕まえてこの状況にするつもりだっただろうが」

『目上に敬語を使えと親に習わなかったか?』

 

 穏やかだが、それでも怒気を含んで脅すように言ったおっさんに対して俺は笑って答えてやった。

 

「悪いなぁ、生憎こっちはまともな生き方をしちゃいないんでね。むしろ切れて衝動的に学園を破壊されていないだけマシだと思ってもらいたいぐらいだ」

『………これだからジャパニーズは』

「テメェらみたいな使えない大人よりかはマシだろ?」

 

 そう言って返すと、画面の向こうにいる男は歯ぎしりする。

 

『まぁ、もっとも吠えられるのは今の内だがな』

「あ?」

『君は残りの人生、そこで暮らしてもらう』

 

 唐突にそんなことを言われて面食らったが、すぐにさっきの会話を思い出して言ってやった。

 

「じゃあ何か? この女と一生ヤりながら暮らして俺の遺伝子情報と言う名の精○を提供しろとでも言いたいのか?」

『察しがいいな。別に構わんだろう? 良い女を抱くだけで働く必要もないのだからな』

「確かにそうだな。だが断る」

『何!?』

 

 確かに条件だけを聞けばかなり優遇されていると考えてもいいだろうが、生憎俺はそういう暮らしには興味がない。

 

『馬鹿かお前は!? この条件を捨てると言うのか!!』

「俺は純粋な恋愛がしたいだけだ。用意されただけの女に用はない! ましてや貴様らのような屑が選んだ女など、信用できるわけがない!!」

 

 視界の端っこでorzという形でメソメソと泣くファイルスさんがいるが、今は放置する。

 

『………そうだ。いいことを教えてやろう』

「……あ?」

 

 するとディスプレイに移っていたおっさんがいなくなり、代わりに一人の少女が映し出された。

 どうやらその少女を映しているのは別のカメラの用で、少しばかり画質が悪い。

 

『君の知り合いだったな。この少女は』

「………何をするつもりだ」

『どうもするつもりはないさ。ただ君は、そこにいる女性と寝て、我々に君の生体データを提供してくれればいい』

 

 画面に映る少女は椅子に座らされているが、眠らされているのか反応がない。

 

『これで、君が何をするべきか理解できただろう? さぁ、早くやりたまえ』

 

 未だに画面に映らないが、おっさんの顔はおそらく笑っているのだろう。

 

 ———ああ、やっぱり

 

 だが、もうそういうのはどうでも良かった

 

 ———アノ時、全員潰シテオクベキダッタナ

 

 ただただ、俺の中にあるのは黒い感情だけだった。

 

 ———イヤ、今カラデモ間ニ合ウカ

 

 ———ジャア、ブッ殺ソウ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ■■■

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『何をしている。早くしろ』

 

 1分経っても何もしない悠夜を見かねたのか、画面からチェスターの声が聞こえる。

 だが悠夜は何もしないので、チェスターはナターシャに呼びかける。

 

『もういい。ファイルス、貴様からしろ!』

「待ってください! その女の子は関係ないでしょう! 今すぐ解放してください!!」

『いいや。彼女は関わる相手を間違えたのだ。だからこういう目に逢うのだよ!』

 

 どこぞの大佐のように言ったチェスター。その言葉に反応したのか、悠夜が少しだけ動いた。

 だが悠夜はベッドを降りて、ISスーツ姿から制服に着替える。

 

『何をしている。この少女がどうなってもいいのか!? ファイルス! 貴様も貴様だ! とっとと止めろ!!』

「待って、桂木君。今はこの男に従って!!」

 

 悠夜は何も答えない。どういうことか助走を付け始め、コンクリートでできた壁を殴った。

 

 

 

 この施設はとても強固にできている。材質はISのIS学園の壁に使われている対貫通性コンクリートを使用されており、ISでも中々壊せないものだ。

 それゆえにその光景を見ていた人たちは全員唖然とした。

 

「………え?」

 

 思わずナターシャはそんな声を漏らす。

 目の前で壁を殴った悠夜が後に見せる反応はあまりの痛さに悶えることだと思ったが、そんな幻想を打ち破るような光景を見せた。

 

 ———素手でISですら中々壊せない壁を破壊するという光景を

 

『お……おい……』

 

 ———ガッ!!

 

 悠夜は自分が鎖で繋がっていることを確認するとそれを破壊して先に進む。

 

「待って!!」

 

 思わず呼び止めてしまったナターシャ。悠夜はナターシャの方を向くと、軽く右腕を振った。

 すると彼女に付けられた首輪が外され、悠夜の左手首に付いていた物と同じように落ちる。

 

「これでアンタも自由だ。好きにしろ」

「ま、待って! あなたはどうするの?」

 

 ———って、何でそんなことを聞いているのよ、私は!?

 

 後悔するナターシャだが、悠夜は気にせず答えた。

 

「気にするな。ただアメリカ出身の人間が一人以上、この世から消えるってだけだ」

 

 未だに投影されているが、それでもブレが起こっている画面に向かって悠夜は言った。

 

「おい、おっさん。今からそっちに行く。死にたくなければ簪を無傷で開放し、今後一切、俺と俺の関係者、そしてその子孫に手を出さないことを禁じるという念書でも書け。それが無理なら―――

 

 

 

 ———テメェの一族皆殺しだ

 

 

 そんな物騒な言葉を平然と吐いた悠夜は開いた穴からそのまま外に出た。

 

 

 

 

 

 

 

(………な、何なんだ…あの男は?!)

 

 チェスターは戦慄していた。

 彼はIS操縦者は所詮、権力を盾にすれば逆らわないということを知っていた。今回もちょうど問題を起こした日本の代表候補生を人質に取れば大人しく従うと思っていた。

 だがそれはすべて裏目に出て、人間では間違いなく破壊できない壁を破壊する。

 

「た、大変です! 今の攻撃で施設の30%が行動不能! イギリスの操縦者が攻撃に巻き込まれたようです!」

 

 実はチェスターは悠夜に一つ嘘を言っていた。

 本当は交わるだけでなく、戦闘データを取らせるために自分たちが用意した機体をいつでも送れるように準備しており、一見入口が見当たらないあの部屋でもその機体の待機状態を持って触れれば開けるようになっているのである。もっと言えば轡木ラボで開発された機体データを取りたかったが、悠夜は何故かISを持っていなかったのだ。委員会ではルシフェリオンを過信していたという理由で解決したが、本当は違う。今回の件で自分が何らかな目に遭うことを予想していた悠夜は敢えて轡木ラボ製のISを持つことを拒否したのだ。それで朱音がこの日のために伝書鳩を習って伝書機械鳥を開発していた。

 

「クソッ!衛生兵をそっちに回せ! 戦闘部隊は今すぐ桂木悠夜を止めろ! コーリングを出せ!」

「既に出ています! ですが―――」

「どうした!?」

「もうやられました!! ISが生身の人間にやられるなんて!!」

 

 チェスターは慌てて画面を見る。

 悠夜の手には見たことがない黒い剣が握られており、どうやらそれでイーリスはやられたようだ。

 

「ふ、ふざけるなよ!? 何故生身の人間相手にやられるんだ!?」

「そんなこと、私にはわかりませんよ!!」

 

 チェスターに対して一人の男が怒鳴り返す。

 

 

 その会話内容を、施設の遥か上で聞き耳を立てる人間がいた。

 

「サーバス様。どうやらあの方は既に脱出したようです」

「……ありがとう、リア。おそらくチェスターが更識簪を人質として見せたのだろう。馬鹿な奴だ」

 

 サーバスは笑いを漏らすと、リアと呼ばれた女性が尋ねる。

 

「しかしよろしいのでしょうか? 更識簪を助けなくても」

「構わないさ。委員会を壊滅させるには絶好の機会だ。放置しておけ。それに我々が介入したところで四神機の一つであるルシフェリオンを呼ばれては苦戦を強いられるだろうからな」

 

 そう言ってサーバスは自分の目の前にある建物を眺める。

 

(哀れだな。あそこまで桂木悠夜を軽視するとは……本当に哀れだ)

 

 心の中でそうあざ笑いながら、サーバスと呼ばれた男はただただ段々と煙が上がるその施設を観察していた。




少年には、密かに譲れないものがあった。
それは世間からすれば小さなものだが、少年にとっては大事なものであり、恋愛には必要不可欠と考えるほどである。
故に彼は織斑一夏の女たちとソリが合わない……いや、合わせる気はなかった。

自称策士は自重しない 第77話

「萌えとロマンの探究者」

悠夜「萌えを理解しようとしない奴らなど所詮はゴミ。存在する資格すらない」

薙ぎ払え! 星ごと奴らを!!








今回は結構本気でこのタイトルにしようと考えています(笑)
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