その頃、俺の部屋にはゴミという名の不必要なものの処理を出していた。過去を清算するかのように溜めていた小説のネタとかも処分している。今となっては問題ないだろうが、なんだかんだでそう言った趣味はできそうにないからだ。
(にしてもすごい量だな……)
ベランダを先に掃除して、布団を干しているから午後には間に合うだろう。洗濯機も今は洗浄しているから、明日からは使えるはずだ。
「兄さん」
明日来るであろう可燃ごみ回収に向けてその準備をしていると、リビングを掃除していた幸那が俺を呼ぶ。
「何だ?」
「……ちょっと、いい?」
「別にいいけど……あ、悪い、ちょっと待って」
一通り掃除は終わったし、今は扇風機に空気の入れ替えを頼んでいるところだ。
マスクを外して軽く顔を洗ってから水分を拭き取ると、リビングに入る。
「———ごめんなさい」
「…………えっと、何が?」
何のことだかわからなかったので尋ねると、幸那はボソボソと何かを言い始める。
「たくさん奢らせたこと……それに、あの時殺そうとしたこと……」
「…ああ、あれか!」
言われて思い出した。俺としてはほとんど意識が簪を捕えたおっさんらに制裁と言う名の一方的な暴力を行ったことでそっちを思い出していた。
「…………私、操られていたの。だからって私の罪がなくなるわけじゃないってわかってる。でも、本当は……」
「………いや、どっちかと言えばそっちの方が注目するな。実際にあった精神調教とか、その辺りの話を是非……って冗談だ。流石にそんな気分じゃないし。まぁ、結果的に女権団はほとんど壊滅したしさ」
恐らくあの組織が崩壊するのは時間の問題だろう。悪いが俺としてはそこまで興味を持つ気はない。
「………私、今まで兄さんに酷いことを言い続けてた。昔から兄さんは私のために行動してくれたし、私のために犠牲になってくれたのに……それなのに……」
「………………」
言えない。あの時はちょっと女装に興味があったとか言えない。いや、女の子は大好きだよ? 純粋にエロとかそういうのにはきっちり興味はあるさ。でも、流石にIS操縦者になってからはご法度だと思ってる。
「ま、まぁ、間違いぐらい誰にだってあるさ。俺なんて力を持ってそれを振りかざしているから未だに学校どころかクラスにすら馴染めないし、それでも何故か周りに女子は集まるし、妹は増えるし、つい最近も
「……でも……」
まだ何か言いたそうにする幸那を、俺は抱き寄せて頭を撫でる。
「言っただろ? 気にするなって。俺にはISもあるし、もう一つ俺を強くしてくれるものもある。だから何度でも暴走しても、俺が絶対止めてやる」
何度も……何度も俺は撫でてやると幸那は俺に引っ付いてきた。ああ、そういえば昔はこんな感じだったなぁって思いながら、俺は軽く背中をたたいてやった。
この時、俺はまだわかっていなかったのである。幸那が本当に思っていたのはこういうことではなかったんだということを。
一通り掃除を終えた俺たちは出前を取る。どうやらラウラは今日は帰らないらしいが、いざという時にあのベルがあるので安心している。それにいざとなればギルベルトさんがいるから、ババアが発狂してラウラを襲っても大丈夫だろう。
妙な安心をしながら俺たちはコンビニで買ってきたものを食べ、腹ごしらえをしてからわいた風呂に入った。当然風呂はレディーファースト。それを言った時に楯無が「まさか私が入ったお湯を飲むなんてことは―――」などと破廉恥な発言をした時に即座に警察に連絡しそうになったことを思い出した。
(でもホントおっぱいは大きいよな)
———って、何を考えているんだ、俺は。
自分が考えていることに驚きつつも、パジャマに着替えて自分の部屋に戻る。そしてすっかり復活したベッドに入る。
(少し早いけどもう寝ようかなぁ……)
そう思った俺は少し早いけど布団をかぶる。どうせ夏だから布団は必要ないかもしれないから、気が付けば布団が落ちているってことになっているかもしれないが。
そんなことを考えながら体をベッドに預け、寝ようとしたところでドアがノックされた。ベッドから降りた俺は
鍵を開ける。本来なら部屋に鍵はいらないはずなのだが、「思春期男子には絶対必要」と何故か親父の意向で付けられた。まぁ、利用しているんだが。
鍵を開けたのがわかったのか、幸那はドアを開ける。
「……兄さん」
俺は思わず顔を逸らした。
というのも幸那の様子が……姿がおかしかった。何で? 何でこいつは未だにバスタオル一枚?
(……おかしい。確か俺が後に入ったよな?)
それでバスタオル一枚っておかしくないか? 確かテレビで完全に水気がなくなるまではバスタオル姿の方がいいと聞いたことがあるが、それにしたってもう服を着たって良いだろ。
理由を考えていると、幸那が遠慮なく部屋に入ってきたので思わず言ってしまった。
「ちょっ、部屋に入る前に服に着替えてこい」
「……イヤ」
「いや、嫌とかじゃないから。そうしないと色々ヤバいから!」
「………別にいい」
そう言って幸那は俺の首に腕を回してきた。
(さ、流石にまずい! 解かないと―――)
そう思って首をしゃがませようとした瞬間、幸那が俺とキスをした。
(…………いや、何で?)
幸那は妹だ。義理とはいえ妹なのは間違いない。いや、血は繋がっていないから結婚はできるけど、今はそんなことを考えている場合じゃない!
「……抱いて」
「いや、待て! それは問題があるから!」
「……大丈夫」
そう言って再びキスをしてくる。俺も強引に解けばいいんだが、そんなことをしたら幸那が怪我をするかもしれない。
俺は幸那を引き寄せてから、お姫様抱っこをした。
「………とりあえず服を着ようか」
「……………」
不安そうにする幸那を無視しながら、俺は部屋に幸那を置いて自分の部屋に入る。
するとドアがまたノックされ、俺はまたドアを開けた。……よし、今度はちゃんと服を着ているな。
(これが普通なんだよ、これが)
たぶんさっきのはアレだ。幸那だって寂しかったり俺に怒られるという恐怖にかられていたから、その反動でこうなったんだ。
「……一緒に寝たい」
「わかった。それくらいなら別に―――ってダメだから! 少し話をするくらいなら大丈夫だけど、それは色々と問題だから―――」
って言っているのに、この妹は話を聞いていないのか、それともわざと聞いていないのか俺のベッドの中に入って来るように要求してきた。
(………覚悟を決めるか)
一緒に寝るだけだ、と自分に言い聞かせてベッドに入ると、何故か幸那は俺を抱き寄せてキスしてくる。
(………ヤバい、覚悟が崩壊しそう……)
なんとか理性を保たせつつ、俺が寝るまで幸那の度が過ぎる甘えが続いた。
高校生になっても他の男にこういうことは絶対にさせたくないというのは、俺がシスコンに目覚めつつあるからかもしれない。
■■■
(………寝ちゃった)
抱き着いた状態でしばらくすると、悠夜は静かな寝息を立てていた。
(………あの女の子とも、いつもこんなことをしているのかな?)
洗脳が解かれ、すべてを思い出した幸那は自分の兄がどれだけ魅力的なのかを思い出した。初めて女装を見た時も一瞬「お姉ちゃん」と言いそうになったことを思い出して顔を赤くする。
今では髪を伸ばして外から見たらダサい格好となっているが、そもそもそれを頼んだのは幸那だ。
「………兄さん」
変わったようで変わらない、元の兄としていてくれている悠夜に感謝しながら皿に抱き着く幸那。
(………やっぱり、暖かい)
小さい頃から、幸那は悠夜と一緒にいることが多かった。だけど悠夜も自分に対して良くしてくれて、ずっと構ってくれた。宿題でわからないところがあれば、自分のことを中断してでも教えてくれた。それだけじゃない。自分が塾から帰ってきた時には既に夕食はできていて、12時前だというのに悠夜はずっと自分が寝るまでずっと近くにいてくれた。
(………なのに、私は………)
洗脳されたのはあくまでも言い訳だ。結局、したのは自分の意志であり、悠夜に対して酷いことをし続けたのは変わりないのだ。
本当は、幸那は悠夜にされるどんなことも受け入れるつもりだった。性的な暴行も、そしてそれによって妊娠して人生を潰されても構わないとすら思っていた。それだけのことをずっと悠夜にし続け、あまつさえ殺そうとしたのだから当たり前だ。
だが悠夜はそんなことをせず、以前と同じように接してくれた。
(………やっぱり、我慢できない)
幸那は自分のパジャマのボタンを胸が普通に触れるまで外し、悠夜のも同じようにする。そして横を向いていた悠夜の体を仰向けにし、ばれない様に、そして自分が眠たくなるまでキスし続けた。悠夜が起きて発情し、自分を襲ってくれることを期待しながら。
■■■
翌日、幸那がキッチンの掃除を買って出てくれたので俺はそれに甘えて前々からしたいと思っていたことをするために、ジャージに着替えて親父のラボっぽい所へと移動していた。
俺の家は大きい方で、普通の一軒家とは別に倉庫を置いても野球のピッチング練習ができるぐらいのスペースがある。
「ここだな」
親父の部屋は調べたけど、隠し扉みたいなものはなかった。となれば、ガレージのような倉庫ぐらいだろう。
(……そういえば、たまに出入りしていたな)
何をしているのかと何度もはぐらかされたのは覚えている。
俺は映像投影式の読み取りパネルに手を触れるが、【WAITING】と言う状態のまま変化がない。すると胸辺りが光り始めた。
(……ルシフェリオンの
俺は首からルシフェリオンの待機状態であるネックレスを取り、パネルに触れさせる。すると【COMPLETE】と表示され、中に入る。ドアは閉まり、エレベーターは下降を始めた。
止まると前のドアが開き、俺はそのまま進んでいくと、
(……何でこんなものが地下に?)
どうやら俺の地下には重大な秘密があるようで、IS用と思われるハンガーが設置されていた。どうやらここで何かを作っていたようだ。
(……薄々気付いていたけど、やっぱり親父が作っていたのか……?)
だがルシフェリオンを作り上げるにはかなりの技術が足らないはずだ。だからそんなことは無理なんだが……思えば昔から色々なものを作っていたから、その過程で何かを作り上げたのだろうか?
「———初めまして」
俺は思わずそこから下がってダークカリバーを展開する。いつからそこにいたのか、女性が立っていた。
「申し訳ございませんが、証となる武器を―――ってもう展開しているんですね」
「……アンタは誰だ?」
「私はここの管理人アンドロイド「HAD-03ドロシー」です」
そう言って丁寧にお辞儀をする。
「アンドロイドって言ったよな? 何でそんなものが―――」
「私を開発した修吾様はその手の開発に力を注いでいたからです。今、世間を騒がしているSRsと言うゲームも修吾様が主導で開発したものです」
「……………そうか」
たぶんそれは、俺がそう言う風になると見越してからだ。考えてみれば、親父の影響で俺はロボットアニメを見るようになったからな。最初から計算通りってことなんだろう。
「でも世間一般ではアンドロイドの開発は進んでも、完成はまだだって聞いていたが………」
「私は、あなた様が容易に私のことを公表するなどとは思っていません。メリットは情報提供を受けて感謝されるということかもしれませんが、その分家探しを、他にも尋問を受けてる可能性も出てきます。ない……とは断言できないことをあなたもご存知でしょう」
「……こっちの事情は把握している、ということか」
「はい。ルシフェリオンも、私があなたに転送しました」
なんか爆弾発言が聞こえた気がするが、それは敢えてスルーする。
(……これだけの設備があるなら、そりゃあ女尊男卑になったあの女に渡したくないよな)
そんなことを考えていると、ドロシーと名乗ったアンドロイドは俺に尋ねて来た。
「やはり気になりますか? ルシフェリオンがどのようにして作られたか」
「………ああ。そりゃあ、まぁ……」
気にならないわけがなかった。
ルシフェリオンを作り上げるには技術は足りないはず。なのにそれは存在していて、今こうして手元にあるのだから。
「そうですね。ルシフェリオンはここで秘密裏に作られていました。でも、当初はルシフェリオンを開発したわけではないのです」
「………どういうことだ?」
「こちらをご覧ください」
そう言ってドロシーは現れた画面を操作し、俺の前に別のパネルを出す。
そこには俺も見覚えがある機体が並んでいた。というかガ○ダムがほとんどなんだが―――
「これは約10年前の映像です。あなた様がまだ幼く、無邪気な頃、修吾様は私とあなた様がいざという時に必要とするパワードスーツを作っていました。来たるべき戦いのため、崩壊した世界を救うための勇者にするために―――と言う設定で」
「設定かよ!?」
「そっちの方が創作意欲が湧くらしいのですが、肝心の動力源に色々と問題がありまして。結果、ISというパワードスーツが先に出てきてしまったわけですが、「じゃあそれを参考にしたらいいじゃん」という発想から、仕事をする傍らにISのデータやコアの情報。そしてたまに販売される漫画を呼んでは時間を潰して、ようやくルシフェリオンを開発しようと心に決めたのです」
「………心に決めただけかよ」
「どうせ作るなら、最強でしょってことで」
考えてみれば、親父ってそんな奴だ。
何を考えているのかわからない、そしてわからせないのにそれでも友達ができるから不思議だなぁって思っていたが……。
「で、肝心のルシフェリオンの動力って何だよ」
「それは禁則事項です」
「……………」
じゃあ何でこいつ、ルシフェリオンを話題に出したんだ?
いや、落ち着け。ここで色々と突っ込んだら負けかもしれないんだ。冷静に対処するべきだろう。
「正確に言えば、まだ知るべき時ではないってことです。でも安全面は考慮されているのでご安心を。それに今回、ここにお連れしたのは別に理由があります」
「……何だよ」
「これです」
そう言ってドロシーは指を鳴らす。するとドアが開いて、中に入っていくので俺はそれを追った。
中には何か台のような置いてあり、ライトが点いてその中心部を照らす。
「……これは、ダークペガス」
「はい。修吾様が開発したダークペガスが再起不能になったので一度ばらして様々な改修を施させていただきました。あまりネタバレってのも味気ないのですが、敢えて言いますと新幹線を越えれます」
堂々とドヤ顔して言ったドロシー。新幹線を超えるってのは即ち―――
「バイクの域を超えてしまったな」
「はい。超えてしまいました」
堂々と宣言するドロシー。流石は親父が作ったことがあってぶっ飛んでいる。ルシフェリオンもかなりぶっ飛んでいると思ったが、このアンドロイドはそれ以上だ。
「大丈夫ですって。ちゃんとISの技術を(勝手に)応用して色々な機能を備えているので操縦者はきちんと保護されていますし、ちょっとほかに合体機能があるだけなので」
「…………」
とりあえず受け取った俺は、願わくばその合体機能とか、新幹線を超えるほどの能力は使わないことを心に誓った。ばらすとかばらさないとかの問題ではないと思ったからである。
■■■
悠夜が上へと戻っていくのを確認したドロシーは、ダークペガスを渡した場所よりもさらに奥へと移動する。
その部屋はとても広く、ISを何百機も収容できるほどである。
「いやぁ、修吾様の言う通りでしたね。本人、まったく気づかずに帰って行きましたよぉ~」
無邪気にそう言いながら、ドロシーは以前束がしたように画面を投影して、作業を始める。
目の前には大きな物があり、周りにはそれを運び出すようなものがない。
「しっかし、こんなものを作ってどうするつもりなんですかねぇ。まぁ、情報によるとこことは別の場所では既に何機も稼働しているって話ですけど。戦争でも起こす気ですかね」
ニヤニヤしながら作業を続けるドロシー。画面には潜水艦のような、そうでもないようなものが映し出されている。
「———まぁ、趣味だろうが最終手段だろうが、戦闘、お世話、作成、何でもこなす万能アンドロイドにお任せですけどね」
神社イベントもカフェイベントも、ぶっちゃけた話どっちのキャラともそこまで仲良くしていないからいるようないらないような。
それでも後1話は最低しようかなと思っています。たぶんそろそろ5巻に戻ってほしいという方が多いでしょうし。
そして今回で気付いたと思いますが、4章はぶっちゃけこういった秘密的な展開が多いです。前話のラウラの話は全く関係ないですが。
すべては5章以降の伏線ってことで。
※キャラ紹介
ドロシー
修吾の地下のラボを管理するアンドロイド。とあるアンドロイドたちが元ネタであり、それ故に戦闘とお世話機能があるが、新たに作成機能も追加されている。ぶっ飛んでいて何か企んでいるようだが……