IS~自称策士は自重しない~   作:reizen

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#97 女性と少年の相談

「……ともかく、晴美のところにでもぶち込んでおくかの」

 

 人目がない場所でその場にとどまっていた陽子はラウラにそう言うと、ラウラは小さく頷く。するとまるでそれを狙っていたのか、唐突にクラリッサが起き上がった。

 

「うぉおおおおおお!!」

「流石にそれ以上は危険じゃと思うぞ」

 

 倒れてもおかしくはないと思いながら、陽子はクラリッサに言い聞かせる。

 

「いえ。私には桂木悠夜を倒すという使命がありますので」

「お主らにとっては化け物だとしてもか?」

「はい」

 

 自信満々にそう返事するクラリッサに対して陽子は盛大にため息を吐いた。

 

「馬鹿じゃな、お主。例えISをもってしてもあの男はそう易々と倒せる相手ではない」

「それでも行きます。では早速―――」

 

 ―――むにゅ

 

 すると陽子はクラリッサの胸を思いっきり揉んだ。

 

「ふむ。中々いい形をしているの」

「!?」

 

 クラリッサはすぐに陽子から距離を取ろうとしたが、何故かその場から離れられなかった。

 

「なに。別にお主が動けないことは偶然ではないのでの。できればこのまま大人しく話を聞いてくれると嬉しいがの」

 

 陽子の要求にクラリッサは何も答えない。ただ、小柄で可愛らしい容姿をしている陽子が先程からどういう原理で自分をその場で抑え続けているのかが気になったのだ。

 

「何者だ、お前は」

「ラウラの母親じゃ。形式的にじゃがな」

「何?」

 

 ―――ありえない

 

 そんな思考がクラリッサの中で芽生える。だが隣で二人の様子を見るラウラは何度も頷いていた。

 

「………第一、お主は何か勘違いをしていないか?」

「勘違い……?」

「そうじゃ。そもそも、あのヘタレが環境も整っていないのにお主が想像していることをするわけがない」

 

 本人が言ったら思いっきり否定しそうなことを平然と言う陽子。クラリッサは未だに陽子がどういう人間か、何故それがわかるのかがわからず、次第に恐怖を覚え始める。

 

「ああ、言ってなかったな。ワシは桂木陽子。悠夜の祖母じゃ」

「何!? こんな子供が?!」

「―――シャドウキラー」

 

 途端にクラリッサの顔色が変わり始める。そしてさっきまでクラリッサの後ろにいたはずの陽子は姿を消しており、クラリッサの首に手を添えていた。

 ラウラはその様子を見ていたが、目の前で起こっているありえないことに驚きを見せる。

 

「……浮いている…のですか?」

「どういうことだ?」

「ラウラの言う通り、ワシは浮いているのじゃよ」

 

 陽子はまるで見えない箱に乗っているかのように空中で静止している。これで驚かない者は、陽子の力を知っていて、なおかつ何をするか予測していた者ぐらいだろう。

 

「さて、話してもらうぞ。お主が何故、悠夜を付け回すかをな」

 

 にっこりと笑う陽子。その笑顔は作り笑いをする悠子に似ていると、ラウラは内心思うのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「つまりまとめると、お主はラウラが好きだったことに気付けず、副隊長として接することが幸せで満足していたらラウラが不祥事で追放されてしまった、と」

「……はい」

 

 場所を移し、飲み物を調達した三人はベンチに座る。陽子が真ん中に座り、彼女の右にクラリッサ、左にラウラが座っている。

 ラウラは今まで自分がしたことを悔いていると、クラリッサが言った。

 

「そして次第に自分が本当は四六時中ラウラと一緒にいたいことに気付き、今回の学園祭に紛れてラウラを回収。ついでに悠夜を倒そうと頑張ったけど、肝心の悠夜は見つからないから放置してラウラだけを連れて行こうとしたら、この状態になった、と」

「そういうことになります」

 

 隣ではラウラが自分がどうすればいいのかわからないのでそのことを考えていると、陽子はまるで猫を掴むかのようにラウラを掴み、クラリッサの膝の上に座らせる。

 

「し、師匠!?」

「早い話がこれではないか?」

「……良いのですか!?」

「持って帰る、なんて考えなければな」

 

 するとクラリッサはラウラを力いっぱい抱きしめる。肝心のラウラはいつもでは味わえない妙な温かさに混乱し始めていた。

 

「そういえばラウラ、お主はスマホを持っていたな? ついでに番号交換してはどうじゃ?」

「……ですが師匠、私はドイツを追放された身。そんな人間と通じていると知れればクラリッサの身は危ういのでは?」

「…………ギルベルトの嫁探しに時間はかかるなくなるのう」

 

 途端にクラリッサの動きは固まった。

 

「……あの、どういうことですか?」

「ふむ。ラウラと通じているのが問題ならドイツ軍を止めた後にこっちに来ればいいなと思っての。ついでに息子の嫁になってもらえればいいな、と」

「どうしてそうなるんですか!?」

「別に男が嫌いというわけではないじゃろう?」

 

 するとクラリッサは「確かにそうですけど………」と答える。

 

「だったら問題ないじゃろうて。それにワシは女もイケる口じゃぞ?」

「まさかの義母に寝取られルートですか!?」

 

 その言葉に通行人たちがクラリッサたちを見る。その中にはギルベルトと幸那もおり、二人はベンチの方へと移動する。

 

「何の話をしているのですか、あなたたちは」

 

 ギルベルトが三人に話しかける。幸那はラウラの方へと移動して頭を撫でると、クラリッサはその光景をほほえましそうな顔をして見ていた。

 

「子供好きだから虐待もなさそうじゃな。のう、ギル」

「いや、だから何の話ですか」

 

 そういうギルベルトだが、なんとなく状況は察していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ■■■

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おかえりなさいませ、ご主人様」

 

 その頃、俺は本音を通じて鷹月からの要請で接客をしていた。なんでも、そろそろ織斑の体力が限界らしい。

 なので仕方なく、俺も参戦しているわけだ。幸い、織斑先生も引っ込んだようだ伸び伸びとできる。

 

「君、可愛いね。電話番号を交換しない?」

「申し訳ございません。当店ではそのようなサービスは行っておりません」

 

 こういう手合いには当店特別メニューの一つである「ハンマーセット」をぶち込みたい気分だ。

 何故か俺が接客する男性客は揃いも揃って俺にこんなことを言ってくる。もう少しましな感性を持っている奴はいないのだろうか?

 

(というか誰か気付けよ……)

 

 いや、逆に考えてみればそれだけ俺が女っぽいということか。………あんまり嬉しくないな、俺は男なんだから。

 

「ねぇ、鷹月さん。そろそろ休憩もらえないかしら?」

「ダメ! さっき戻ってきたばかりでしょ?」

「これでも私は広報の仕事をしたり生徒会の仕事を手伝ったりしてるのよ? 織斑一夏ばかりずるいわ」

「彼はさっきまで働いていたんだけど?!」

 

 別に織斑が過労死したところで俺は痛くも痒くないんだがな。いっそのことそのまま倒れてしまってもいいか。

 

(いや、流石に今は困るか)

 

 死ぬならばこれが終わってからにしてもらいたいな。後はどうとでもなれってことでいいか。

 

「って言うか、人が多くないかしら?」

「まぁ、全員織斑君目当てだから、これでも少しはマシになったと思うけど………」

「……それは困るわね」

 

 さっき山田先生(メガ乳メイド)織斑先生(鬼ツンメイド)を放出したこともあってそれなりの収益になったようだ。だけど今はその二人はどちらも席を外しているらしい。

 さらに織斑もどこかに出かけてしまったので客足が遠退いているようなのだ。

 

「桂木君がいたら、もう少し集客できるとは思うんだけど………」

 

 隣では鷹月が鬼のようなことを言いやがった。

 そもそも、俺が女装しているのは日頃から溜まっているであろう鬱憤を晴らすために女生徒が来ることを見越してのことだ。だから最小限しか登場するつもりはないし、リゼット以外で来るとすれば朱音ちゃんぐらいだろう。まったくもって問題ないな。

 っていうか鷹月さん。俺が隣にいるんだからそろそろ気付いてもらってもいいですかね?

 

「どうしよう、静寐。織斑君がいないから騒ぎ始めてるよ」

「こうなったら少し早いけど呼ぶしかないわね。ジアンさん、今すぐ織斑君を呼んでくれない?」

「うん。いいよ」

 

 そう言ってジアンは席を外す。騒ぎはじめた奴らを静めに行くか。

 

「お客様」

「ちょっと、織斑君はまだなの!?」

 

 俺は気配を消しつつ接近して騒ぎ立てる女の口にそっと人差し指を添える。

 

「お客様。たとえ不満でもあまり騒がないように。彼に品のない姿を見られてはこれから未来を閉ざしてしまいますよ」

 

 そう言ってトドメにウインクをする。

 するとその女は黙り、少しして小さな声で「……はい」と答える。そして「では、もうしばらくお待ちください」と言って静かに去ると、メイド陣はまるで何かが化けて出たと言わんばかりの顔をした。

 

「何か?」

「う、ううん。凄いなって」

「あれくらいは普通よ。それに品がない女がモテるのはあくまでも二次元だけだもの。あなたたちだって「女性なんて子供を産むだけが仕事だろ」って言う男性を好きにならないでしょ?」

 

 全員が頷くのを確認すると、引っ込んでいたジアンが出てきた。

 

「一夏、今二組にいるからすぐ来るって……どうしたの?」

「なんでもないわ、ジアンさん。さて、そろそろ新しいイベントの準備をしましょうか」

「え?」

 

 俺はジアンの肩を掴むと、虚空から執事服を取り出した。しかもさっき織斑が着ていた白執事服のデザインを変えたものである。

 

「…………あの、これは?」

「あなたの執事服よ、シャルル君」

「あの、もう執事服は辞退したいなぁ……って……ダメ?」

「ダメ」

 

 白執事と黒執事のダブル接客を実現させ、さらなる収益を得るために犠牲になってもらおう。

 

「大丈夫よ。「シャルル」用の執事メニューもあるから」

「ちょっと待って!? そんなの聞いてない!!」

「もう既に変えているから大丈夫」

 

 そう言って俺は白執事服をジアンに渡した。

 

「じゃあ、頑張ってね」

 

 再びホールに戻った俺は岸原に面白いことがあると言って下がらせ、接客する。

 しばらくすると黒執事服を着た織斑と白執事服を着たジアンが現れ、歓声が上がる。その隙に俺は気配を消しつつその場から本音を経由して休憩を勝手にもらうことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(………ってことで来たんだが)

 

 隣のクラスに敵情視察をしに来た俺は、主に自分のクラスで閑古鳥を泣かせていることに妙な罪悪感を感じている。

 

(いや、これは必要な犠牲だ)

 

 なにせ今回の商品の一つに「デザート無料パス(期間;半年)」以外にもう一つ「自由使用権」がある。これはIS学園の一角に自分が欲しい何かを叶えるというもので、可能な範囲ならば何でも願いが叶えられるのだ。

 そんなものを前にして、一体何を躊躇う必要があるというのか。幸い、ドロシーという最高のメカニックアンドロイドがいるので、卒業と同時に飛空艇に変形できるように改造してもらおうと思う。

 

「あら、五反田君。随分と疲れているわね」

「あ……どうも……」

 

 軽く会釈する五反田。すると近くにいた鈴音は俺を見て顔を青くする。そしてそれは俺も同様であり、目の前にいる幼い生物がふしだら且つエロいチャイナ服を着ていた。

 一見すればそのチャイナ服は普通に見えるが、一歩間違えればハミ乳するし、何よりも尻の部分。上部が少し見えているのである。そしておそらく、あの格好では履いていない。

 俺は五反田の隣に何の躊躇もなく座ると、鈴音が俺の方を見てきた。

 

「アンタ、誰よ」

「敢えて言うなら、女の敵ってことかしら。まぁ、そんなことはどうでもいいの」

 

 あながち間違っていないことを言いつつ、俺は五反田が座るテーブルに同じように座った。

 

「で、五反田君。話って何かしら?」

 

 平静を本気で保ちつつ、俺は彼に聞いた。

 実はここに来る前、ジアンに服を渡すついでにメールを確認すると、なんと五反田から連絡が来ていたのである。俺専用のチャットを経由しての連絡だったのである。ちなみに作成者はドロシー。………そろそろ何かプレゼントしようかと考えている。

 

「実は前に妹がいるって言ってたでしょ? もう知っていると思いますけど、俺には妹がいてこのIS学園志望なんです」

「………そういえば、一夏が言ってたわね」

 

 そう言いながら何度か鈴音が俺の方を見る。あのチャイナ服でそれは反則だぞ。

 

「それで、参考までに聞きたいんです。この学園のこと、どう思ってるのか……それに本気で入学させないべきか」

「させないべきでしょ。知識だけなら目を張るものはあるけど、爆弾の解体方法とかおおよそ普通に生きていく必要があるものなんてないと思うわよ。ねぇ、鈴音」

「そうねぇ。まぁ、いざとなれば代表候補生が出張るからこそ知識は必要だけど、普通ならいらないんじゃないかしら? それにここが絶対安全ってわけじゃないし。IS操縦者に本気でなろうと思ってなければ、正直苦労するだけだと思うわよ…………」

 

 鈴音が俺の方を見る。そしておそるおそる俺の胸の方に手を伸ばすして胸部を揉んだ。

 

「……あれ? あるの?」

 

 まぁ、彼女の困惑はわからなくもない。何せ俺の胸には筋肉以外にも膨らみがあるからな。ちなみにこれはメイド服の中にあらかじめ盛っておいただけなので、実際俺に女性のようなおっぱいがあるわけではない。

 

「正しい女の子の攻め方、教えてあげましょうか?」

「…あの……ごめんなさい」

「気にしないで。それよりも―――」

 

 俺は鈴音の後ろに立っているAV女優……もとい、ティナ・ハミルトンを見る。彼女は青いチャイナドレスを着ていて、日頃から目立つ胸部がさらに目立っていた。

 五反田はそれを見て興奮している。

 

「そろそろ接客に戻った方がいいんじゃないかしら?」

「……そうね。ということでこの子、持っていくわね」

「いいわよ」

 

 俺の許可を得たこともあって、ハミルトンは鈴音を連れていく。しかしエロいな、あのチャイナ服。もう少しまともに設計できなかっただろうか。

 

(俺に相談してくれたなら、色物アリ用とナシ用をきちんと作ってやるのに)

 

 スカートで隠しているが、鈴音のチャイナ服姿を見て俺の息子はきっちりと興奮していた。そろそろ理性が崩壊するのではないかと少し恐れている。

 

「あの、言っておかなくて良かったんですか?」

「自分が好きな人が女装しているのに誰から突っ込まれないことを愚痴ったら、間違いなく私が殺されるわよ」

「…………確かにそうですよね。鈴より悠子さんの方が素敵ですし」

「そう? お世辞でも、嬉しいわ」

 

 右手を口元に持っていって笑うと、何故か五反田は顔を青くした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ■■■

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――やべぇ。そこらの女よりも断然女らしいわ、この人

 

 それが桂木悠子という、悠夜が女装した姿を見てしばらく経った後の弾の印象だった。

 男で女に虐げられる悔しさを知っているからか、決して男を―――というよりも自分を見下すことをしないことで、妙な居心地すらも感じる。

 

「私に惚れちゃダメよ?」

「ほ、惚れませんよ」

「電話番号を聞いてきたのに?」

 

 掘られたくない過去の記憶を思い出させられた弾は思わず顔を赤くする。

 すると弾は妙な視線を感じ、周囲を見る。

 

「? どうしたの?」

「……いえ、なんでもないです」

 

 そう言って弾は視線を悠子に戻す。

 

(……あれ?)

 

 弾は自分がおかしくなったのかと思い、目をこするが特に変化は起こらなかった。

 

「話を戻すわね。正直に言うと、結局のところ彼女の決意次第だと思った方がいいわ」

「決意次第?」

「そう。あなたの妹が本気でIS操縦者になるつもりで入学するって言うなら止める気はない。普通に生きるなら不必要な知識も使い方次第では自分を盛り立てる武器にもなる。だけど断言してあげるわ。所詮ヒーローになれる存在というものはある種の異常を抱えているものなのよ。私のように特殊な存在もそれに分類されるでしょうね」

 

 そして悠子はまるで見透かしているかのように言った。

 

「もし恋愛感情に身を任せての行動なら全力で止めることをお勧めするわ。他人の進路に口出ししない方が良いに越したことないけど、IS関係の職に就くって言うのは、ある意味自分の寿命を縮めるようなものよ」

「……やっぱり、そう思いますか?」

「ええ。女は所詮、ISがなければ単純な力比べでは男に負けるもの。その意味をきっちりと考えさせた方がいいわよ」

 

 そこから悠子による簡単な説明が始まる。それを聞いた弾は、その言葉がまるで単純な計算式のように感じた。




「女は所詮、ISがなければ単純な力比べでは男に負けるもの」
=ISは所詮500にも満たない少数機械であり、女全員に行き渡るものではない。男が集団で襲えば女なんて簡単に抑えられる存在なんだぜ。

と言いたいわけです。現に悠夜は実質無料で人を使って屈折に屈折を重ねたような作戦で10人近くの女を社会的に抹殺しているわけです。

……別にreizen自身が女に対する偏見を持っているわけではなありませんからね。良い人もいれば悪い人もいるとよぉく理解していますから!←ここ、テストに出ますよ!(出ねえよ)

ということでごめんなさい。灰被り姫編まで行けませんでした。亡国も挟めてませんし。
楽しみにしていた人、本当にごめんなさい。いつになるかわかりませんが、次話まで待ってください。たぶん入れるから!
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