どうしてこうなった日記~ぐだぐだ人生録~   作:花極四季

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明けましておめでとうだオラァ!今年もよろしくなシャバ僧共!!
こっちは腰が痛くて投稿ギリギリになったんだよオラァン!本当は別の停止してた作品もお年玉感覚(価値は百円あるかないか)も投稿しようと思ってたのにこのザマだよ!

……いや、マジで辛いです。ヘルニア再発とかやめてくれよ……(絶望)

あ、あと作者は現時点でまだ四章終わってないからネタバレするなよ!フリじゃないからな!やったら十連ガチャの確定☆4を目覚めた意思にする呪いを掛けるぞ!!



04

×月☆日

 

マリー・アントワネットとヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトを仲間に加え、着々と前へ進んでいく。

その過程で二人の人となりを理解する機会があった訳だが……マリーは何というか、天真爛漫と言う表現が良く似合う人だった。

見る物聞く物すべてに対して、身体全部を使って明るく答えていく姿は、まるで子供だ。

それだけだと頭の足りていない子と判断する人もいそうだが、そうではない。

全てを肯定している、と言うべきか。条理を、正統性を、誠実さを、向上を、善行を、羨望を、平等を、慈愛を、共生を。その裏にある悪意さえをも呑みこんで、我が子のように受け止めている。そんな気がしてならない。

……そうでなければ、愛していた民草によって命を散らした彼女が、あんな見惚れるような笑顔を振りまける訳がない。

本来何の力も持たない筈の彼女が、英霊と召喚されたのも納得できる程の心の強さ。

彼女は間違いなく、魂の在り方ひとつで英霊と評価されたのだ。それがどれだけ凄いことなのか、自分には想像もできない。

アマデウスは、良くも悪くも物凄い自由な人間だ。

自分の発言に対して、何を憚ることもなく口に出来る。それが相手の悪意を誘うことでも、下ネタだろうと、耳が痛くなるほどの正論でも。

マリーにさえも毒舌を吐かれる辺り、人として捻子曲がっているのは確かなようだが、それは自分への絶対的な自信の表れでもある。

万人受けする性格ではないのは確かだが、それでも彼のような人は必要だ。こういう人間が、時として歴史を揺るがす存在となる。実際そうだしね。

 

マリーは憧れだったジャンヌとお友達になれたことが嬉しいのか、所謂女の子なトークで場を盛り上げている。

ジャンヌもまた、拙くはあるがそんな彼女に合わせようと会話に花を咲かせている。

王妃として生きた少女と、聖女と崇められた少女。そのどちらにも不足していたのが、ただの女の子としての生き方。

高潔であれと言う見えない圧力が、生まれながらの運命が、彼女達を普遍的普通から遠ざけた。

それを最終的に決断したのが自分の意思だとしても、憧れることを止めるなんて出来はしない。

だからこそ。サーヴァントとして召喚され、ただの『マリー・アントワネット』になれた彼女は、これでもかと言うほどに今世を謳歌している。

それが命を懸けた闘争の波の中へ向かう結果になろうとも、それさえも善き事として優雅に進んでいくんだろう。

 

因みに、その女の子トークにはリリィ達も巻き込まれていました。

アマデウスがモードレッドを女性扱いしたことでキレたり、リリィが今度料理を覚えたいことを話して盛り上がったり、マシュが周囲のボケにツッコミかましていたりと、本当にただの女の子していた。

……せめて今だけでも、彼女達には女の子らしく在って欲しい。そんな手前勝手な思いを胸に、ただ遠巻きにその光景を眺め続けた。

 

追記;マリーにセクハラしそうな駄目な青タイツには眠っていただきました(物理)。英雄がネックハンキングで墜ちるなよ……。

 

 

 

 

 

一夜明け、オルレアンへと進み始める一行。

好調だった旅路に、大きな変化が訪れようとしていた。

 

「――――ッ、サーヴァント反応感知!数は……6!!」

 

マシュの焦燥を孕んだ言葉に、一斉に警戒態勢に入る。

そして、遥か彼方から軍勢と呼ぶに相応しいワイバーンの群れが飛来してくる。

 

「奴さん、どうやら本気で仕留めに掛かってきやがったようだぜ」

 

ランサーはどこか楽し気に呟く。

 

「へっ、上等。あの時は不完全燃焼で終わったもんだから、腹の虫が収まってなかったんだよな」

 

モードレッドは愛剣である燦然と輝く王剣(クラレント)を肩に担ぎ、獰猛に笑う。

 

「初戦がクライマックスとは、ただの音楽家にとってみればただの地獄だね。しかもこの愚にもつかない雑音を前に長時間いなくちゃいけないなんて、それ以上の苦痛だよ」

 

「あら、ならサッサと始末すればいいじゃない。ほら、前に出ないと貴方の唯一の価値である音楽も耳に届かないわよ」

 

「やれやれ、それは困るな。馬鹿どもに向ける曲とは言え、耳に届かなきゃただの自己満足――いや、それ以上に虚しい独り遊びになる。そんな勿体ないこと、許せる筈もないね。そう言うマリーだって、戦いは専門外なんだから後ろに居てもいいんだよ?」

 

「あら、それは駄目よアマデウス。王とは常に民の模範となるべき立場にある者の称号。それは王妃であれど変わらない。なればこそ、少しでも私に力があるのなら矢面に立つのが、在るべき王の姿じゃないかしら?」

 

「そういう脳筋思考は、もう少しその細腕を鍛えてから言うべきだと思うけどね。――まぁ、君の人生だ。好きにやればいい」

 

マリーとアマデウスが互いに背中を押し、戦場に立つ。

掛け合う言葉こそどこか辛辣なれど、内に秘めた感情は確かに通じ合っていた。

 

「理子さん、那岐さん。私とマシュさんで貴方達を護ります。下手に打って出ては、貴方達に被害が及ぶ可能性があります」

 

「そうですね。特に先輩は、那岐さんと違って戦闘能力もありませんし」

 

「……ごめんね、二人とも」

 

理子は圧倒的な敵を前に、何もすることが出来ない己が無力を嘆く。

仕方ないことだと理解していても、それを傘に開き直れる程彼女は厚顔無恥ではない。

 

「気にすることはありません。貴方がいなければ、私もランサーさんも現界出来ない身。貴方が生きているだけで、私達は全力で敵に立ち向かうことが出来るんです。卑下することはありません」

 

「マシュさんの言う通りです。それに私はそもそも、弱体化している以上切った張ったをするには些か荷が勝ちますし、防衛に回った方がまだ役に立てるというものです」

 

マシュとジャンヌに慰められ、理子は悔しさを呑みこんで飛龍で埋め尽くされた空を見上げる。

力では逆立ちしても勝てずとも、気概では負けないと言わんばかりに睨み付ける。

その気丈さに、ランサーもまた薄く笑みを浮かべる。

 

「良い顔だ、嬢ちゃん。そうやって嬢ちゃんは、俺達の勝利を信じていてくれればいい。英雄ってのはな、護る相手がいるほど強くなれるものなんだ」

 

「――そうですね。私も騎士として、マスターを十全を以て護る誓いを立てましょう」

 

セイバーリリィが那岐に向けて、凛とした声で宣言する。

 

「俺が出る必要は本当にないのか?」

 

那岐がそう問いかけるも、リリィは首を横に振る。

 

「マスターはその銃でワイバーンの群れの対処をお願いします。前線に出れば、マスターである貴方は真っ先に狙われる。如何に貴方が私達と同等の力を持っていても、それだけは譲れません」

 

頑ななリリィの言葉に、那岐は静かに目を伏せる。

 

「分かった。こちらも出来る限りのことをしよう」

 

「感謝を」

 

そう言い残し、リリィは胸元に勝利すべき黄金の剣(カリバーン)を掲げる。

誓いを胸に刻み、無言を以て反芻する。

護られてばかりだった過去を払拭すべく、敵を迎え撃たんとした。

――しかし、悲しきかな。その思いはすぐに打ち砕かれることになる。

 

「――――皆さん、避けて下さい!!」

 

突如、リリィが叫んだ。

思考は一瞬。前線に出ていたサーヴァント五人はその場から全力で退避し、後方に居たサーヴァント二人は護りの為の宝具を展開する。

 

――そして、それ(・・)は地平を崩壊させた。

 

灼熱を纏って目に留まらぬ速度で空から飛来したそれは、真っ直ぐ那岐達後方組の方へと着弾した。

 

「――ッ、ああああああ!!」

 

しかし、それに轢き殺されることなく、マシュの宝具である仮想宝具・擬似展開/人理の礎(ロード・カルデアス)による神秘の盾によって一命を取り留めていた。

だが、それも一瞬。灼熱と圧倒的質量と速度で何に阻まれることなく直線運動で発射されたそれと、リリィの掛け声と共に反射的に展開された間に合わせの盾では、あらゆる部分で後者が劣っていた。

このままでは、為すすべなく圧殺されてしまうことだろう。

 

「――我が旗よ、我が同胞を護り給え」

 

――だが、ここには彼の救国の聖女がいる。

祖国の為に立ち上がった、ただの村娘が得た身分不相応な祈りの具現。

しかし、その純粋なまでの祈りは天使の守護として味方を護る結界となり、その痛みは旗の下に集い、自らを傷つけていく。

宝具の在り方こそ、彼女の人間性そのものである。その真名は――

 

我が神はここにありて(リュミノジテ・エテルネッル)!!」

 

仮想宝具・擬似展開/人理の礎(ロード・カルデアス)が突破された瞬間、第二の結界宝具が展開される。

宝具を展開したジャンヌのステータスが低下したとはいえ、宝具そのものの質は変化していない。

媒介となる対魔力EXにも影響がない以上、この宝具は究極の護りとなる。

その堅牢さ足るや、半端な展開とは言え護りに特化したマシュの宝具で防げなかったそれを、容易く受け止めて尚余裕がある。

涼しい表情でそれを受け止めるジャンヌだが、手に持つ旗がカタカタと悲鳴を上げる。

今はまだこの程度で済んでいるが、着実に限界は訪れる

 

「これが……ジャンヌさんの宝具」

 

マシュが驚きとほんの悔しさを乗せて呟く。

実際に見るのは二度目だが、最初はワイバーンの猛攻を凌いだだけで、今回と比較してスケールが違いすぎる。

圧倒的なまでの差を見せつけられ、悔しさを覚えない訳がない。

だが、そんな感情は今は邪魔でしかない。頭を振り、思考を戦闘状態へと引き戻す。

 

時間にして十秒あるかないかの凌ぎ合いは、発射されたそれが思い切り後方に飛び跳ねることで終わりを告げた。

余波で舞った煙が晴れた先の光景は――焦土そのものだった。

美しいとさえ思わせる若草色の大地が、今では見る影もない焼野原と化していた。

それだけではない。ただの余波で直線に地面が抉れ、着弾地点は結界を除いてクレーターのように陥没さえしていた。

まるで、小規模の核攻撃だ。

後コンマ一秒でもマシュの宝具展開が遅れていたら、それだけで勝敗が決していた可能性さえある戦略兵器級の宝具が相手にはある。

それが、明確な脅威となって目の前に現れた。

 

「あれは……亀?」

 

巨大な亀、と形容するのがしっくり来る造形のそれは、静かにジャンヌ達を見据えている。

だが、それはただの亀と呼ぶにはあまりにも巨大で、そして悪魔的過ぎた。

肉食獣と呼ぶに相応しい風貌をしているそれは、存在しているだけで相手を畏怖させる。

それこそ、甲羅を背負った獅子と形容しても通用するだろう。

その獅子のような亀は、忠犬の如く静かに待機している。

その様子から、これが何者かによる意図的な差し金だと言うのが分かる。少なくとも、あの忠犬っぷりを見る限り、あれ単体で召喚されたと言うよりも、サーヴァントの宝具か何かだと判断するのが自然だ。

 

「前衛の皆さんは――?」

 

意図は不明だが、襲い掛かってこない獅子亀を警戒しながら前に出ていたサーヴァント達を探す。

どうやら、全員無事のようだ。――でも、余裕がありそうな様子はない。

加えて、距離は視認できるギリギリの範囲にまで遠ざかっており、応援に向かうにも救援を迎えるにも、敵方のサーヴァントを処理しないことには

最初の遭遇の焼き増しと言わんばかりに、各々にジャンヌ・オルタが召喚したサーヴァントが張り付いていた。

その内、マリーとアマデウスについている白髪の青年は、初めて見る手合いだ。

しかし、そのサーヴァントがメンバーに加わったとしたなら、もう一人はどこに――

 

「――――!!」

 

瞬間、何かが疾風を伴って駆け抜けた。

速い。マシュもジャンヌも、巻き起こる旋風に反応するのがやっとの速度。

ワンテンポ遅れて振り返った先には、そこにいる筈の人物がいなかった。

 

「那岐さん……!?」

 

マスターの一人である暮宮那岐が、獲物である機械剣を残してその姿を消していた。

隣に立っていた理子は怪我ひとつない様子だったが、突風に煽られたせいか尻餅をついて倒れていた。

その視線の先には、本来那岐が居て然るべきだというのに、何故か?

しかし、その疑問を解する余地を与えないと言わんばかりに、不動を貫いていた獅子亀とワイバーンがマシュ達に襲い掛かって来た。

 

「くっ……!!まさか、最初から分断させるのが目的で――」

 

「考えるのは後です!せめて、理子さんだけは護り切らないといけません!」

 

ジャンヌの一喝でマシュは思考をリセットする。

考えたくないことだが、那岐が絶命していれば単独行動のスキルを持たないリリィ達は瞬時に座に還っている筈だ。

しかし、見ている限り変化する様子もなく、まだ那岐が存命であるという証拠だ。

那岐の超人的な肉体のお蔭で生き永らえたのか、それとも最初からその気がないのか。

何にせよ、一秒でも早くこの絶望的な状況を打開しないことには、那岐の安否さえ判断できない。

 

「ドクター!那岐さんの捜索をお願いします!私達は目の前の敵を殲滅します!」

 

『ああ、任せてくれ!!』

 

マシュはロマニにそれだけ告げると、本格的に戦闘を開始した。

 

 

 

 

 

 

――そして、同時刻。

消えた那岐がどうなったかと言うと――空を舞っていた。

等と表現してはいるが、実際に翼を得た訳でも、魔術的要素で空を飛んでいる訳でもない。

実際の所、那岐は何者かに襟首を掴まれ、その何者かは常軌を逸した速度で疾駆しているせいで、地面に引き摺られることなく横移動していたのだ。

傍から見ればそれはまさしく疑似的な空中遊泳。

惜しむらくは、乗り手に一切の配慮のない乱暴な運転であると言うことか。

流石の那岐も宙ぶらりんな状態ではまともに抵抗することも出来ず、せいぜい襟首を掴む腕を掴むぐらいが関の山だった。

 

突如として何者かが停止したかと思うと、慣性をそのままに那岐を放り投げた。

那岐は器用に空中で体勢を整え、地面を引き摺りながら綺麗に着地し、すぐさま何者かの正体を探るべく周囲を見回した。

それは、すぐに見つかった。

白地の法衣と十字の杖が特徴的なその容姿は、以前の交戦に於いてライダーと呼ばれていた女性そのものであった。

ライダーは憎悪と困惑をない交ぜにした視線を那岐に向ける。

親の仇、という表現さえ生温くなるであろうそれは、その困惑から未だ不完全であるとするならば、本気の殺気は如何ほどのものか。

しかし、それさえも涼しい顔で那岐は受け止める。

 

「……こうして言葉を交わすのは初めてですね。私はライダー……いえ、マルタ。知らぬかもしれませんが、聖女等と呼ばれたりもしている、しがないサーヴァントの一人です」

 

「――聖女と言う割には、随分と物々しいな。一介のマスターに向ける殺気ではないぞ」

 

「一介のマスター……ですか。面白いことを言いますね。まぁいいです、貴方だけを引き離したのは、聞きたいことがあったからです」

 

「聞きたいこと?」

 

「ええ。――貴方は、悪魔ですか?それとも、私と同じ聖人ですか?」

 

射抜くような視線で問いかけられる。

口調こそ穏やかだが、少し小突けば爆発しそうな危うさをマルタは放っている。

 

「知らん。そもそも俺は記憶喪失で、自分を人間だと思っている。その問いには答えられない」

 

「……嘘、を言っている訳ではないようですね。ですが――私の目は誤魔化せません。貴方自身、人間と自称しておきながら、悪魔の力も聖人としての力も理解している。違いますか」

 

「……俺自身、この力を理解したのがつい先日のこと。悪魔だの聖人だのと言われたところで困る」

 

「――なら、最後の質問です。貴方はその二つの力を使い、何を為そうと言うのですか」

 

今までで一番、感情の乗った問いかけ。

これが、真に那岐に問いかけたかった言葉。

 

「――ただ、護れればいい」

 

「護る……?」

 

「未来を救う、等と大それた目的の為に行動しているが、俺自身そんな器だとは思わない。そんなものは彼ら英雄と呼ばれる者達の役目。俺はただ、そんな彼らを微力ながら支えていくことが出来ればいい」

 

マルタは初めて、微かながらも硬い表情を崩した。

清廉さを秘めた美貌が、初めて形となった。

 

「――私は、悪魔が嫌いです。今すぐに滅してやりたい程に。ですが、貴方自身の人柄はとても好ましく思えます。少なくとも、悪魔と聖人という、相反する属性を共生させて尚平然としているのは、生まれながらの特性か、それとも融和する程に長い年月を費やしてきたか。それにしても、普通ならばどちらかに呑まれてしまうでしょうに、強い方ですね。心も――肉体も」

 

「褒められるようなことではない。やれることをやっているだけだ」

 

「そんな次元の問題ではないのですが――まぁ、いいでしょう。そろそろ私も限界のようですし」

 

「限界?」

 

「ええ。今の私は、あの哀れな聖女に狂化を無理矢理付与されて、精彩を欠いている状態です。それでも、平時であれば抑え込むことは出来ましたが……悪魔を前にして、どうにも理性よりも本能が勝ってしまいそうなんですよね。聖女の名に懸けて悪魔は滅ぼせと」

 

「……それは、難儀だな」

 

「ええ、本当に。それに、理解(わか)るんですよね。幾度と悪魔と立ち会ってきたからこそ、貴方がたかがサーヴァント如きで抑えられるような存在じゃないことも」

 

「買被り過ぎだ。いや、見当違いも甚だしい」

 

「……まぁ、記憶喪失だと言うのならその評価もある意味当然なのかもしれませんが――偽りではありませんよ」

 

マルタは杖を地面に突き立てたかと思うと、法衣を脱ぎ捨てた。

女性らしい肢体の中に隠れた引き締まった筋肉が、彼女がただの聖女でないことを如実に語っている。

 

「だからせめて、貴方がその力を自覚する為の手助けをしましょう。安心してください、万が一その過程で悪魔の力に呑まれるようなことがあれば――私が責任を持って天に還しますから」

 

「キツいジョークだ」

 

「冗談でこんなこと言えませんよ。はしたないですが――今すぐにでも貴方を(かえ)したくて堪らないんです」

 

狂気とも甘美とも取れる艶のある深い溜息。

まるで、長年待ち焦がれた恋人を見るような目で那岐を捉えて離さない。

マルタは那岐を見ているようで、別の何かを見ている。少なくとも、初対面の相手に向ける感情でないことだけは確かだ。

那岐自身、それを無意識に感じ取っていたのか、この場に来て初めて構えを取る。

機械剣は手元になく、所持量の都合で斬棄刀も置いてきた。あるのは銃であるホロスコープのみ。

元よりそんなものがサーヴァント相手に届くと思っていない那岐は、自然と無手で立ち回る選択を余儀なくされた。

 

「逃がしては――くれないようだな」

 

「そも、逃げられるとでも?」

 

マルタの問いに、那岐が鼻で笑う。

自分で言って、有り得ないと結論付けた彼は、諦めたようにマルタを睨みつけた。

 

「それで良いです。さぁ、貴方があの方(・・・)と同じ聖の気質を放つと言うならば――この程度、見事捌きなさい」

 

その言葉と同時に、那岐の背後から獅子亀――否、旧約聖書に於いてマルタが鎮めたとされる悪竜タラスクが流星の如く襲い掛かった。

 

 




Q:開幕から本気出し過ぎじゃね?
A:これも全部、那岐って奴がいるせいなんだ。チートが居たら出し惜しみする訳ないやん?

Q:これからどうなるんやこの展開……
A:各メンバー(全員ではない)の視点で戦闘描写が挿入される予定。軽いネタバレだと、モーさんは間接的な因縁の相手と戦うことになります。

Q:マルタVS那岐……あっ(察し)
A:間違いなくこの章で一番の強敵になりますね。もうこれ(誰がラスボスか)分かんねぇな。

Q:刀ないのか……
A:四次元掌の使い方知らないからね、仕方ないね。

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