どうしてこうなった日記~ぐだぐだ人生録~   作:花極四季

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FGOの大規模なバージョンアップ記念に、急いで投稿しました。
なので細かいところがおかしいかもしれません(いつも通り)
論外な間違いがあったとしても、許してくださいなんでもしまどりる!


01~ぐだ子の不安~

 

初めまして、菅野理子と言います。

この度、人理継続保障機関――通称カルデアから、マスター候補として選ばれました。

いきなり専門用語ばかりですが、私は十分の一も分かってません。

どうやら私は、カルデアで行われるとある実験で求められる基準――適性があるらしい。

専門用語ばかりで混乱しっぱなしだったけど、それでも私は二つ返事でオーケーした。

最重要項目の才能はあるけど、それ以外の基本的な素養――魔術だっけ?の才能はからっきしらしく、あくまで補欠という形での参加であるということも相まって、気楽に同意した。

私みたいなドジで要領も悪くぐだぐだになってばかりのせいで、仇名が『ぐだ子』となっているような奴が、ただちょっぴり才能があるってだけで抜擢されるぐらいだから、よっぽどその適性が重要なんだろう。

 

それはともかく、私はそんな理由でこんな見渡す限りが雪ばかりの山道を歩いている。

途中までは乗り物で快適に移動できたけど、この時の自分は徒歩でひいひい言って歩いてた。

何でも、神秘の秘匿とかがどうたらで、目立った行動は取れないらしく、ある程度の距離まで登ってからは歩きだという。それならせめて事前に教えて……。

疲れて何度も倒れそうになった。でも、『人類の救済』の為という言葉を信じて、歩みを進めるのだけは止めなかった。。

 

でも、私なんかに何が出来るんだろう。

人の役に立てるのは良いことだとは思う。だけど、出来もしないことに対して、気持ちだけでどうにか出来るなんて甘い考えが通るのなら、そもそも私が出る幕なんてない。

失敗して本当に怖いのは、誰かを希望から絶望に落とすこと。

自分自身の失敗は自業自得でも、失敗の皺寄せが誰かに来るのであれば、それはただの嫌がらせだ。やらない方が万倍もマシだ。

とは言え、補欠である時点でそんな考えは杞憂みたいなものなんだけど。

 

だけど、そんな滑り止め以下の価値しか求められていない私でも、何か出来ることがある。

毎日が平凡で、普遍で、平坦で、躍動のない人生。それが嫌だった訳ではない。

友達だってそれなりに居るし、恋人なんて出来たこともなければそもそも恋を経験したことさえないけれど、毎日はそれなりに充実していた。

にも関わらず、私hは非日常を選択した。

何もかもが未知数で、初めて未来へのヴィジョンが見えなくなるような暗闇の荒野を進む選択を。

その決断の原動力となったが何なのか。実のところ自分自身把握出来ていない。

分からないけど、足を止めたいとは思わなかった。

何か出来るならば、何かしたい。抽象的で言葉で表現出来ていないけれど、この気持ちに偽りはない。

 

自問自答を繰り返しながらひいこら歩いていると、背後から視線を感じたので振り返ると、不思議な格好の男性が居た。

凡人の自分でも理解できる。ああいう人が、世界を救う逸材なんだって。

距離にして100メートルは離れているのに、まるで隣にいるかのように感じられる存在感。

いや、そんな言葉は生温い。存在が圧力となって、私を圧殺しようとさえしている。

一瞬、呼吸を忘れた。いや、喉を絞められた。ただの存在感に、だ。

違う。私とは、何もかも。語るまでもない。

だからこそ、とても分かりやすい。

あれぐらい出来なければ務まらないんだと、とても分かりやすく教えられた。

自分は、蟻んこ以下の矮小な存在に過ぎない。

知ってしまえば、そこに油断も慢心もなくなる。妥協なんて以ての外。

今の自分なら、ほんの少しだけなら前を向いて歩ける気がする。

 

勇気を出して、男性に話しかけると、意外と丁寧に挨拶を返してくれた。

男性の名前は暮宮那岐(くれみや なぎ)。何だか雅な感じな名前の男の人。

防寒具らしきものはマフラーだけで、後は見慣れない造型のコートやらを羽織るように着込んでいるだけにも関わらず、寒そうにしている気配はない。

まるで漫画のキャラみたいだと、第一印象はそんな感じだった。

 

暮宮さんは、何というか、物静かな方です。

殆ど喋らないんですけど、決して寡黙という訳でもなければ無視されている訳でもなく、要所要所できちんと相槌を打ってくれる。

あの圧倒的な存在感も、私を認識した途端に収まりましたし、やっぱりあれは意図的なものだったんだと感心しました。

 

彼はどうやら、同じくカルデアに向かっているようでしたが、予想外だったのが彼はカルデアのことも一切知らない部外者だったということ。

そもそも、彼は自分が何故ここにいるのかを分かっていないようでした。

私にはよく分かりませんが、ここは秘匿されている土地だと聞いています。なのに、そんな当たり前のように部外者が入れるものなのかな。

嘘をついているようには見えないけれど、こんな雪山の中で迷子なんて、それこそ信じられない。

何となく、彼ならこっそり入れそうな気もするけど、ならあんなに存在感をアピールしていた理由が分からない。

考えるだけ無駄だと判断した私は、取り敢えずカルデアへ向かうことを提案して、そのまま目的地まで頑張って歩くことにしました。

 

追記:一人より二人の方が、気持ち楽に登ることが出来た気がする。退屈しのぎの会話に付き合ってくれてありがとう暮宮さん。

 

 

○月◇日

 

カルデアに到着!疲れたー!眠いー!

と言うか、その睡魔のせいで後々怒られちゃうんだけどね。

それはそれとして、シミュレータ?みたいなので、英霊による模擬戦を体験してみたけど、凄いとしか言いようがない。

神話や歴史で出てくる英雄を使い魔として顕現させた存在――サーヴァント。

使い魔、と聞けば可愛く思えるけど、こんな人の及ばぬ領域の戦いを見てしまえばそんな考えは一瞬で吹き飛んでしまう。

昔の人は、こんな凄いことを当たり前にやっていたんだ。

同じ戦争でも、今と昔ではまるで違う。シミュレータなのに、肌にリアルに纏わりつく圧倒的なパワーが、未だに尾を引いて私の身体を震わせる。

でも、この感覚には覚えがある。

そうだ、暮宮さんから発せられていた存在感と全く同じだったんだ。

もしかして、暮宮さんが現代に名を馳せる英雄だったり?まっさかねー。

 

それはともかく、今日だけで色んな人と知り合いました。

マシュちゃん、フォウ、レフ教授、Dr.ロマン。教授って言われてた人は……ちょっと違うかな。

マシュちゃんは何故か私を先輩と呼び、フォウには妙に懐かれるし、レフ教授にはちょっぴり心に来る言葉を戴いた。

分かっていたとはいえ、今の自分が所詮数合わせだと改めて突きつけられるのは、少し辛い。

だけど、暮宮さんがそんな私にこう言ってくれた。

 

「胸を張れ。君がここにいるのは、紛れもなく運命だ。それに、正規だろうが候補だろうが、やるべきことが同じならばその立場に優劣はない。決して卑屈にならず、これから高めていけばいい」

 

よくある慰めの言葉だったけど、あの英霊と同じ雰囲気を持つ彼の言葉だったからだろうか。それはとても身に染みた。

飾った言葉ではなくて、彼もまた同じ気持ちを味わったことがあるかのような、重みのある言葉だった。

 

そんなこんなで、疲れが出ていたのか所長の説明を聞いている内に、意識がブラックアウト。そのまま二軍落ち宣告を受けてしまった。いや、三軍かな。

折角暮宮さんがフォローしてくれたのに、なんて無様。

申し訳なさ過ぎて、顔も上げられないよ……。

 

 

 

 

 

 

――深層に落ちた意識が、波紋のように広がっていく。

井戸の底から世界を見渡す蛙が、外を繋ぐ一本の糸に縋りつくが如く、現実という光に向けて意識を向ける。

光は徐々に明度を落とし、現実に浸食されていく。

微かに聞こえる澄んだ音。それは、どこか聞き覚えのある、ような――

 

「――起きてください、先輩!!」

 

澄んだ音は焦燥を乗せて、私の意識を揺さぶった。

五感が少しずつ覚醒していくのが分かる。同時に、自らの置かれた状況も、嫌という程理解することになってしまう。

 

――それは、まさに"死"そのものだった。

 

見渡す限りの瓦礫の山と、夥しいまでの炎の牢獄。

命の営みも、平穏な日常も、ここには存在しない。

ここは、地獄だ。生者を否定し、悪辣に呑み込んでいく。

まるで、悪魔の胎の中。絶望を糧に稼働し、余分な(もの)を原型なく破壊して打ち捨てるだけの箱庭。

 

「ここ、は――」

 

未だ鮮明とは程遠い思考をどうにか揺り動かす。

そうだ。私は確か、管制室で爆発が起こったって聞いて、居ても立っても居られなくなって、それで閉じ込められた後に爆発に巻き込まれた筈。

 

「起きましたか、先輩」

 

声の聞こえる方へと振り向くと、そこには見慣れない見慣れた姿があった。

目の前にいる彼女は、間違いなくマシュ・キリエライトだ。

しかし、自分の知っている彼女は、眼鏡を掛け、白衣を着ていた。それに、瓦礫に埋まって……。

では、今の彼女はと言うと、眼鏡もなければ白衣もない。負傷した様子も一切見られない。

あるのは、十字架を模した盾のようなものと、身体のラインが出る程にきっちりとした鎧と、まるで正反対の姿へと変身していた。

 

「マシュ……?」

 

「はい、マシュ・キリエライトです」

 

「いや、うん。それは分かってるんだけど……」

 

あまりの状況の変化に、思考が追い付かない。

マシュの傷もそうだが、そういえば自分も無傷だ。怪我どころか、服装にさえ一切の乱れはない。

一連の記憶は夢だったのかと思いきや、周囲は倒壊した建物だらけで、雪山の中に放り出されたなんてこともない。

 

「先輩の言いたいことは何となく分かります。ですが――その問いに答えられる余裕はありません」

 

マシュからピリピリとした空気が滲み出る。

そして、私を庇うようにマシュが盾を構え、鋭い気を炎の中へと向ける。

――がしゃ、がしゃ、と。不気味な音が炎の中に影を落としながら、徐々に音を大きくして近づいてくる。

 

「何、アレ――」

 

炎を乗り越え現れたのは、人間の骨。それが、マリオネットのように不器用に歩を進める姿が、そこにはあった。

それも一体や二体ではない。見える範囲だけでも、十はあるだろう。

そのどれもが、剣や槍といった原始的な武器を手に持ち、私達を蹂躙せんと着実に歩みを進めている。

 

「敵性反応です、先輩。大人しくしていてください。私がどうにかします」

 

「どうにかって、え、え?」

 

マシュの言葉で混乱している内に、マシュは骸骨の群れに突っ込んでいく。

静止の言葉が漏れるよりも早く、目の前の光景に息を呑んだ。

マシュはその身体全体を覆う程巨大な盾を目の前に突き出し、タックルをする。

たったそれだけで、直接触れていない骸骨の群れも余波で吹き飛んでいく。

しかし、マシュは止まらない。

盾の十字架に位置する部分を、剣のように振るい両断していく。

たった一人の存在――しかも少女が、十はいるであろう敵を相手に怯むどころか、大立ち回りを演じているその姿を見て、こう思った。

まるで、本の中に出てくる英雄だと。

 

「敵性反応、消失。先輩、もう大丈夫ですよ」

 

「う、うん……」

 

マシュの手を借りて立ち上がる。

未だに状況が呑み込めないながらも、取り敢えず冷静になろうと頭を振る。

 

「それで、どういうことなの?私、何が何やらさっぱりで……」

 

「そうですね、では――」

 

『――二人とも、無事かい!?こちらカルデア管制室!』

 

突如、空間にノイズが走ったかと思うと、ロマンの姿が空間に貼りつけられる。

どうやら、通信映像のようだ。

 

「ドクター、そちらもご無事のようで」

 

『うん。僕はあの場にいなかったからね。それよりも、マシュも理子ちゃんもレイシフトに巻き込まれる形になってしまったか……』

 

「レイシフトって……?」

 

「そういえば、先輩はこちらの用語に疎いんでしたね。では、ドクター。説明してください」

 

『僕がかい!?まぁ、いいけど。現状の確認にも丁度良さそうだし』

 

そうしてロマンから語られた内容は、私の混乱を更に加速させるものだった。

レイシフト、特異点F、そして……マシュがデミ・サーヴァントと化した事実。

これは一番ロマンが驚いていた。私の方は、現状の理解で手一杯で、驚く余裕なんてなかった。

デミ・サーヴァント――つまり、人間とサーヴァントの融合体。

そもそもサーヴァントとは、簡潔に言えば過去の英霊を使い魔という形で召喚した存在で、マシュは"シールダー"というクラスのサーヴァントと契約して、あの姿へと変身したとのこと。

どうやら、シールダーは今起こっている異変――特異点の異変を解決して欲しいと願い、その代償として自らの力を譲渡して、消えてしまったらしい。

 

「――って、そうだ!暮宮さん、暮宮さんは!?」

 

一連の会話が纏まった所で、重大なことを思い出す。

あの場には、私達以外にも彼が居た。

私の我儘に黙ってついてきてくれた彼は、今どこに?

 

『……彼の所在は、分からない。何せ、彼は今回の特異点の事故とは一切の関係を持たない部外者だ。48番目の登録をしていた理子ちゃんはともかく、そう都合よく彼もこの場所に辿り着いているとは思えない。あの中に取り残されたままか、特異点の移動に巻き込まれたとしても意味消失しているか、良くてこちらに辿り着いていても、そこの骸骨みたいなのに襲われて――』

 

ロマンの冷静な分析を、私は空虚な思考で聞き続ける。

暮宮さんが、死んだ?

死んだ、何で?

――そうだ、私のせいだ。私が身勝手な行動を取ったから、関係のない彼が巻き込まれたんだ。

私は、間違えた。その代償が、自らの命ではなく、誰かの命。

そんなの、そんなのそんなのそんなの――有り得ちゃいけない、のに。

 

「――ドクター。先輩が泣きそうになっています」

 

「そんな……そんな……」

 

後悔に後悔を重ねる私を慰めるように、ロマンが言葉を続けていく。

 

『あ、ああああ!!そんなに悲観しなくても、まだ決まった訳じゃないし。それに、何となく彼なら無事が気がするんだよ、うん!』

 

「ドクター、適当な気休めは先輩の傷を抉るだけです」

 

『いやいやいや、無根拠って訳じゃないよ?初めて彼と会った時から、こう、底知れないオーラを感じたんだ。きっと、理子ちゃんもマシュも感じた筈だよ』

 

「……はい。何と言うべきか、何者にも屈しない、まるで王者のようなイメージを彼から感じました。或いは、孤独に生きる飢狼でしょうか」

 

『うん、そんな感じ。びっくりだよ、あんなオーラ出されてちゃあ、そりゃ所長も説明に集中できない訳だ。それに、彼が装備していた物の数々だけど――実はあれ、全部が礼装だ。それも、アトラス院にさえあるかも怪しいぐらい、超一級品のね』

 

「それは、本当ですか?」

 

『具体的には分からないけど、ね。礼装が紙だとすれば、マナはまるで水のように礼装に浸透していたのが、肉眼でも分かるぐらいだったからね。微量に発光していたでしょ?あれがそう』

 

「良く分かりましたね。暗がりでもないのに、そんなの気付く訳ないじゃないですか」

 

『そこはまぁ、魔術師の医師だからね。魔力反応には聡いのさ。それはいいとして、そんなカルデアやアトラス院が涙目になるような礼装をこれでもかと装備していた彼が、果たしてこの事故でぽっくり逝くと思うかい?』

 

「……なるほど、彼ならば自力でどうにかしているかもと、そうドクターは推測している訳ですね?」

 

『うん、まぁ。と、言うことなんだけど、理子ちゃん……』

 

腫物に触れるようにおっかなびっくり私に伺いを立てるロマン。

周囲が動揺していると、冷静になれるって本当だね。

 

「大丈夫、落ち着きましたから。それと――ありがとうございます、心配してくれて」

 

「ああ、いや――」

 

「先輩、元々はドクターの失言が原因なので、感謝する必要はないかと」

 

「そ、そうかもしれないけど……さ。それでも、こんなことで動揺して、マシュ達に迷惑かけたくないから。もう、こんな無様は晒しません」

 

『……その心意気は立派だけど、君は一般人上がりの素人なんだ。純粋な魔術師のような、目的の為に手段を選ばない機械的な考えを教育された訳でもない、普通の女の子なんだ。だから、そんなに気を張らなくてもいいんだよ?僕やマシュが、君をフォローする。だから、ね?』

 

子供を諭すような優しい言葉で、ロマンが私の決意を否定する。

 

「先輩。貴方の苦しませるものは、すべて私の盾で防いで見せます。それが何であれ、例外なく。私は、その為にいるんですから。だから――そんな顔しないでください」

 

「は、はは――。敵わないな、本当に」

 

そうだ、何を舞い上がっていたんだ私は。

ここに来る前、嫌という程思い知らされた筈だ。私は底辺も底辺、底なし沼の底に触れられるぐらい低い立場にあるんだって。

その癖、上辺だけの決意表明をして、二人を心配させて――バカみたい。

 

『――あ、ヤバ。通信断絶しそう。と、取り敢えず2km先に霊脈ポイントがあるから、そこに向かって!そこなら通信も安定しそうだから、それじゃ!』

 

矢継ぎ早にロマンが今後の目的を告げた後、すぐさま通信は途絶えた。

私達はロマンに言われた通り、指定ポイントへと向かうことにした。

断続的に現れる骸骨の徒党を、マシュが淡々と倒していく。

本当に、サーヴァントになっちゃったんだなぁ……。目の前の現実離れな光景を目にしてなお、信じられない。

 

「――先輩、先輩!」

 

「ふぇ?」

 

「敵性反応ありです。その数――100以上」

 

「……え?」

 

「言いたいことは分かります。ですが、迂回するにもかなりの回り道になりますし、結果的に霊脈と敵の位置が近いので、安全の確保を考慮に入れるなら、避けては通れぬ道かと」

 

「で、でも。大丈夫なの?」

 

「大丈夫、とは言えませんね。寧ろ、危険です。どこかの言葉で、相手が複数人であろうと一人を相手に出来るのは四人までで、その四人を瞬時にあしらう力があれば誰にも負けないとありますが、私にはその四人を瞬時に倒せる技量はありません。性能ではこちらが優るとはいえ、数で押し負ける可能性が大でしょう」

 

「困ったなぁ……」

 

逃げるなんて選択肢はあってないようなもの。

時間を置いて敵が散るのを待つと言うのもあるけど、現実的ではない。

そもそも私達には、籠城なんて選択肢はない。

備蓄も何もないこの状況、待てば待つほど消耗するのは私達だ。

というか、ここに来てまともに食事さえ摂ってない自分に、進退窮まったこの現状はまさに死活問題だった。

 

「――先輩、敵性反応とは異なる反応を観測しました。数は二。その内のひとつは――サーヴァントです」

 

「それって、つまり――」

 

「いえ。安易に仲間と判断するのは早計かと。幸い、ここから先に見渡しの利く場所がありますので、そこで様子を窺いましょう」

 

私の考えを先読みされて潰された。そんなに私、分かり易い?

マシュに言われるがままに言われた地点へと向かい、目的の場所に視線を向ける。

 

「――――、あ」

 

そこには、奇跡が存在していた。

円陣を組むように骸骨の群れが中心にいる二つの影を取り囲み、その影を押し潰さんと怒涛の勢いで迫っていく。

だが、その勢いは影が放つ二つの軌跡によって阻まれる。

首、腕、腰、足――その全てを断ち切られ、瓦解していく骸骨達。

その鋭さは、遠巻きに見てなお美しいと思わせる。

 

「嘘……敵性反応消失――十、二十、三十……なんて、速さですか」

 

マシュも目の前の光景に圧倒されている。

言い方は悪いが、マシュは確かに強いけど、素人目に見ても粗削りな感じが否めない。

力任せというか、性能頼りというか。少し前まで普通の女の子だったんだから、当たり前なんだけど。

だからこそ、自分とは圧倒的に違う強さを持つ、目の前の奇跡を体現したサーヴァントに魅入られているのだろう。

でも、サーヴァントは一体と聞いていたけど、じゃあ、もうひとつの影の正体は?

 

煤けた灰に覆われた雲が動き、月光がその姿を晒す。

まるで、あの中心にいる二人を祝福するように。

 

そうして――私は、二度目の奇跡を拝むことになる。

 

「――暮宮、さん」

 

奇跡の体現者のもう一人。

それは、購いの対象であり、憧れの人であり。私が、とても強く惹かれた存在。

彼のサーヴァントと思わしき少女。その手には黄金を携え、黄金のポニーテールを振り回しながら、優雅に敵をひとつ、ひとつと駆逐していく。

暮宮さんと黄金のサーヴァントは、互いが互いの死角を補うように背中を合わせ、目の前の敵を屠っていく。

呼吸をするように無駄のない連携を取る姿は、歴戦の友のよう。

そんな雄々しくも美しい光景を目の当たりにして――私の胸は、ちくりと痛んだ。

 

 





Q:ぐだ子ってどんな子?
A:言える範囲で書くなら、レイシフト適正100%以外はただの一般人で、正しくあれという考えを基盤に生きている少女。間違いを起こしてしまった時、普段の明るい性格が一変して卑屈になったり消極的になったりと、トラウマでもあるかのような反応を見せる。それ以外は普通の女の子です。

Q:マシュ強い……強くない?
A:ゲームのように単体で鯖を圧倒できる雑魚なんていません。その代わり、数の暴力に頼ります。

Q:主人公&リリィ無双
A:どっちも実力者ですから(ただし一方は勘違い)
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