熾凍龍のオーバーロード【更新凍結】   作:冬月雪乃

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クズの楽園

第六階層『ロストワールド』

此処にはディースの手掛けたモンスターNPCが全て揃っている。

かなり広大なフィールドで、ここだけナザリックじゃないと言われても全く違和感がなかった。

尚、広さに見合っただけのリアルマネーが掛かっているのは内緒だ。具体的には八桁かそこらあった貯金全てかけてNPCとロストワールドを作り上げた。

老後なんかしらねぇ! と思い切ったのは今にしてみれば正解だった。

まぁ、半分は親の遺産とかなのでクズ具合はかなり高いが。

 

「——帰ったぞ」

 

ロストワールドの入り口の一つ、塔に降り立ったディースはゆっくりと言の葉を紡いだ。

それに反応したかのように天空から水銀が降り立つ。

 

「……主。帰還。歓喜」

 

それはドラゴンとしては異形だ。

なんせ、翼は骨格だけで、翼膜が水銀のような液体金属からなっているのだから。

結果として多数の翼を持っているように見える。

色彩はいぶし銀を基調とし、尾の先端、胸部、頭部茜色を帯びて一際輝いている。

骨格としてはディースと同じく四つ脚にプラス翼。

液体金属を自在に操り、身にまとう姿は全体として刃物を思わせる。

彼は司銀龍ハルドメルグ。液体金属を司る古龍である。個体名はメルクリア。

最も若い、ディースがナザリックに拠点を移してからの子となる。

メルクリアは全身から液体金属で巨大な腕を作ると、躊躇いなく抱きついてきた。

 

「主、不在。悲哀」

「あーっ! メルクリアずっるーい!」

 

バカァンとメルクリアを弾き飛ばしたのは金色のゴリラ。

金獅子ラージャンのカナリアである。

明るい、可愛らしい女の子の声が厳ついゴリラから当然のように奏でられる姿は中々に衝撃だ。

 

「メルも、カナも落ち着いて。シャンとガルバはいるかな?」

「もちろんです! 呼びますか?」

「頼む」

 

すぅ、とカナリアは息を大きく吸った。

そして目をカッと見開くと、口を大きく開けて叫ぶ。

 

「シャン様! ガルバ様! マスターがお帰りです!」

 

鼓膜が張り裂けそうな程の大声(ドラミング付き)に、思わずディースは身をすくませる。

普通にメッセージ使えば良いんじゃないかと思う。

 

「おそらく、すぐ来ると思われます」

「あ、うん、ありがとう」

 

少しすると、天空から天馬のような黄金の龍と、うねる様に空を泳ぐ龍の姿が現れた。

黄金の龍は金塵龍ガルバダオラのガルバ、空を泳ぐ龍は天翔龍シャンティエンのシャン。

どちらも『最果ての島』時代からの付き合いで、ガルバに至っては一番最初に作った龍である。

 

「ご帰還の事、お喜び申し上げ、同時にお祝い申し上げます」

 

地に足を着き、ところどころ水晶が飛び出す身をうまく屈ませてガルバが口を開いた。

付き従うかの様にシャンも平伏する。

 

「ありがとう。それとご苦労様、ガルバ。シャン。ナザリックの異変は感知しているかね?」

「ルーシェが感知しておりました」

「ふむ。さすがはボレアス種。ならば、話は早い。君たちの航空能力を見込んで頼みがある」

「はっ」

「超高度より、ナザリック周辺の警戒網を張ってほしい」

「敵性と見られる存在の処遇はいかがなさいましょう」

 

ふむ、とディースは考える。

なにも考えずにガルバに光ってもらう——烈光という二十秒程度の超高速スリップダメージの嵐——のもいいが、一番良いのはそれよりも生け捕りにして貰うこと……。

しかしそれによって自分の子供とも言える龍達が傷付くのは見たくない——。

 

「今回の警戒網に関しては非常に高度な柔軟性を必要とする案件だ。敵性と思われる存在を感知した際には、接敵より前に私に連絡してもらいたい」

「は。かしこまりました」

 

ここでディースは気付いた。

まだ一度もシャンが口を開いていない。

 

「どうした、シャン」

「——ッ、ディース様! お許し下さいませ!」

 

ガルバがシャンをかばう様に前に出た。

その目には恐怖の色合いが浮かんでいる。

 

「んぅ? どうした?」

「その……シャンは……人語を解する事は出来ても話す事はできないのです……」

 

なるほど。とディースは納得した。

しかし、まだ納得出来ないことがある。

それはガルバの恐怖だ。

 

「なるほど——その可能性は失念していたな。別に何かしようというわけではない。ガルバ。シャンのように人語を解する、もしくは解さない仲間はどれほどいる」

「ゴア、ゴグマゴグ、エスピナ、シャン、ラオ、あとはアクラを除く甲殻種全般……でしょうか。詳しくは各種のリーダーに聞いてみなければ分かりませんが」

「なるほど。エスピナ、ラオに至っては単純に覚える気がない……といったところだろうか。アレらは自分中心だからな」

 

たしかそんな設定だった気がする。とディースは記憶を掘り起こす。

 

「……恥ずかしながら……」

「構わん。ユグドラシルでは見れなかった姿だ。とても嬉しいよ。ではメルクリア。各種のリーダーと相談し、人語を最低でも理解できるようにしてくれ」

「拝命。……自分主導?」

「そうだ。メルクリアは数値上、もっとも高い知性を持っている事になっている。頼むぞ」

「……了承。感謝。狂喜」

「メルクリアったら、あんなにはしゃいではしたないわねぇ……。あ、ちょっと! 待ちなさいよ!」

 

メルクリアが飛び降りるように塔から飛び去った。

それを追うようにジャンプで『ゔぉ"お"お"お"お"お"』と雄たけびをあげて飛び乗るカナリア。

そんな二頭の姿を見て、ガルバが怒りを露わにしていた。

 

「若いといえ……ディース様の御前で……しかも指示もないのに飛び去るとは……」

「まぁまぁ、良いよ。あれ位やる気があれば上手くいくでしょう」

「……ディース様がそうおっしゃるなら……」

 

しかしまだ納得はしていないようだ。

時折『烈光』とか『竜巻』とか聞こえるがディースは努めて聞こえないフリをした。ごめんねメルクリア。

 

「じゃあ、頼むよ。使えそうな仲間は使って良いから」

「はっ、畏まりました」

「じゃあ……いってらっしゃい」

 

二頭の古龍はゆっくりと浮遊すると、優雅に空へ消えていく。

 

《ディースさん。こっちは終わりました。NPCの忠誠心がガチ過ぎる事が判明しましたよ……》

 

姿が見えなくなる程度の頃にモモンガの声がディースの頭に響いた。

メッセージだ。

 

《マジですか……。じゃあモモンガさん支配者プレイだ》

《なんですかそのアブノーマルなプレイ。じゃなくて、ディースさんにもやってもらいますよ!》

《了解しました。暫定副ギルド長ってとこですかね》

《そうですよねぇ、ディースさんそういうの嫌そうですもんねぇ……でも………………えっ?》

《やりますよって。私も、ナザリックを守るの、混ぜてください》

 

メッセージの向こうでモモンガが息を呑んだのが聞こえた。

そんな変なことを言っただろうか、とディースはよく考えるが、言ってない。

 

《いえ、分かりました。ではとりあえず色々打ち合わせしようと思いますので、円卓の間……だと狭いか。玉座の間に集合しましょう》

《了解しました》

 

#

 

玉座の間には既にモモンガが座っていた。

 

「盟主を待たせたようで申し訳ない」

「いえ、俺——私も今来たところだ」

 

お、とディースはモモンガの変化に気づいた。

隣にアルベドがいるからかと思ったが、どうやら『そう』あろうとしてやっているようだ。 

 

「その前にご報告が。ガルバとシャンを上空へ上げました。彼らの感知能力は地表まで届きます。上空からの監視網は既に完成されたと見て良いでしょう」

「ご苦労。さて、アルベド。私はディースと調整があるから、職務に戻って良いぞ」

「はっ。かしこまりました」

 

アルベドが部屋から出て行く。

それを見送り、足音が遠くなったあたりでモモンガが急に肩の力を抜いた。

 

「ふっはぁ……。すいませんディースさん」

「謝る事はない。支配者足らんとし、部下に幻滅されぬように振舞う姿は中々見ごたえがあった」

「ディースさんもディースさんでキャラ濃いですよね……」

 

ともあれ、とモモンガは息を整えた。

駄弁るのも良いが、今は大事な時期なのだ。

 

「ディースさん。ディースさんって、人型になれましたっけ」

「人型ですかー……。なぜ?」

「外に出る際に龍だと目立ちますからね」

 

あぁ、なるほど。とディースは納得したように声を出した。

そしてどうだったかと自身のスキルを思い出すために記憶を掘り起こす。

 

「多分無いかと。純ドラゴン系の種族と職でまとめてますからね」

「ふむ……。ロストワールドには居ますか?」

 

これには即答が出来た。

何と言っても自分の子だ。

 

「えぇ。確か五頭程。ただ——どれにしろ目立ちに目立ちます」

「えぇっと、どういう風に?」

「モモンガさん的に分かりやすくするなら——パンドラズ・アクター」

「分かりました次に行きましょう」

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