『勝てるわけ無いだろう』
『コレよりひどい設備なんてあり得ない』
『姫路さんかいれば何もいらない』
『雨宮さんと結婚したい』
『吉原さんとハスハスしたい』
Aクラスへの宣戦布告などという、現実味の乏しい提案に、クラス中から悲鳴が上がる。
一部、オカシいのが混ざってはいるが。
バカ代表クラスのFクラスとはいえ、
Aクラスとの戦力差が絶望的だということに気づかない者はいなかった。
文月学園では、点数の上限がないテストが採用されている。
一時間の制限時間内に、無制限にテスト問題を解いていくことが出来るのだ。
そして、科学とオカルトと偶然から生まれた、『試験召喚システム』。
教師立ち会いの下、テストの点数に応じた強さの『召喚獣』を呼び出し、
戦わせることが可能となる。
『試験召喚戦争』はコレを利用したクラス単位の戦争となる。
ゆえに、クラスごとの生徒数は一定である以上、個々のテストの結果の合計が、
そのままクラスの総戦力となる。
AクラスとFクラスでは、生徒一人一人ですら、その差は三倍以上もあり、
文字通り“桁が違う”のだ。
どうあがいても勝つことなど不可能としか思えない。
だが、雄二はそれを否定してみせる。
「そんなことはない。必ず勝てる。いや……」
言葉を切った雄二は不適に笑っていうと、
「俺が勝たせてみせる」
そう言って、右親指で、自らを指差す。
そこには、絶対の自信と、迫力があった。
『しかし、どうやって……』
それでも不安の拭えないクラスメイトの言葉を、雄二は右手を挙げて押さえる。
「お前たちの言いたいことはわかる。俺の言葉だけでは、にわかには信用しづらいだろう」
『……』
クラスメイトたちは黙って聞き入る。
「だから、俺たちがAクラスに勝てるという根拠となる要素を示そうと思う」
雄二の言葉を聞いて息を飲む生徒多数。
「まずは……おい康太。畳に顔つけて姫路と雨宮と吉原のスカートを覗いていないで、前に出てこい」
「…………!! (ブンブン)」
「「ひゃわっ!?」」
「見タいデすカ?」
雄二に呼ばれた少年、土屋康太は必死に顔と手を横に振って否定する。
覗かれたつぐみと瑞希もさすがにスカートを押さえながら遠ざかる。
明香はスカートをめくろうとするが瑞希とつぐみに抑えられる。
康太は顔についた畳の跡をさするように隠しながら壇上に向かおうとすると。
「康太、ちっといいか?」
「大丈夫、大事な話があるだけだから」
兼人と明久は笑顔で康太の肩を掴んでいた。
メリメリという音が聞こえそうなほどであるが、大丈夫だろうか。
「兼人、なにしてるの!?」
「アキヒサ、どウしタんデすカ?」
慌てて止めにはいるつぐみと不思議そうに明久の手を掴む明香。
「話があるだけだよ、なあ明久」
「そうだよ、普通に話があるだけだから」
とにこにこ笑顔で答える兼人と明久。
怒り心頭なのかもしれないこの二人に声がかかる。
「待て、お前ら。 ここは今するべきじゃない」
『というと?』
止めに入ったのは洸也だ。
そんな彼がそう言うと聞き返す二人。
「終わったあとに存分にすればいい」
『『それがあったか!』』
ニヤリと笑う洸也に兼人と明久は目を輝かせて言う。
「駄目だからね!?」
慌てて止めにはいるつぐみ。
その間に康太は雄二の元へと向かった。
「あ~……ちとハプニングが起きたが、紹介しよう。
土屋康太。こいつがかの有名な、寡黙なる性識者(ムッツリーニ)だ」
「…………!!(ブンブン)」
雄二の紹介に、教室中が騒然となる。
『ムッツリーニ……だ……と?』
『ヤツがそうだというのか?バカな……』
『だが見ろ。ああまで露骨な覗きの証拠を、未だに隠そうとしているぞ……』
『ああ……まったくだ。ムッツリの名に恥じない姿だ……』
周りがすべて納得する中、本人だけが否定しつづける。
むなしくも誇り高いムッツリスケベの姿がそこにはあった。
「???」
ただひとり、瑞希だけが、訳が分からないという顔で首を傾げている。
「姫路は説明不要だろう。その実力はみんなが知っている通りだ」
「ふえっ! わ、私がですかっ?」
突然話をふられて、あわてる瑞希。しかし、雄二はそれにかまわず鷹揚にうなずく。
「ああ。うちの主戦力だ。期待している」
『ああ、そうだ。俺たちには姫路さんがいるじゃないか』
『たしかに彼女ならAクラスに引けをとらないな』
『まったくだ。彼女がいれば、ほかに何もいらないな』
「木下秀吉だっている」
「む? ワシか?」
『おお……!』
『確かアイツ、木下優子の……』
「当然、この俺も全力を尽くす」
『確かに何かやってくれそうな雰囲気があるよな』
『そういえば、坂本のヤツは、小学生の頃は神童とか言われてたらしいな』
『てことは、振り分け試験の時は体調不良かなんかだったのか』
『なんだよ、Aクラスレベルが二人もいるんじゃないか、このクラス』
徐々にクラスの士気が上がり始め、教室内に熱気があふれ始めた。
「平川兼人と吉井明久と吉田彰仁と斎藤洸也がいる! その中の洸也と明久のコンビネーションはいいぞ」
一気に冷めるまえに悲鳴があがる。
「斎藤って、あの死神で有名な!?」
「目にはいって気に入らないやつはことごとく蹂躙するって話だぞ」
「それでヤクザとかマフィアに勧誘されているとか!」
洸也のことで盛り上がるクラスメイト達。
「けどさ、平川兼人と吉井明久と吉田彰仁って誰だ?」
「さあ?」
「いや、待てよ。 平川というやつは悪鬼羅刹とドンパチやったと聞いたことがある!」
明久達の話になると途端に空気が下がる。
「ちょっと雄二! どうしてそこで全く関係ない僕の名前を呼ぶのさ!?」
「そうだぞ、全然関係ないからな!」
明久と彰仁は雄二に猛然と抗議しているようだ。
「斎藤と兼人のことは知っているようだな。 明久を知らないなら教えてやる!
こいつは観察処分者だ! んで、彰仁は特別処遇者だ!」
「…………それってバカの代名詞と問題児の代名詞じゃなかったか?」
雄二の言葉を聞いたひとりの生徒がぽつりと言う。
「ち、違うよ! ちょっとお茶目な16歳につけられるあだ名で」
「そ、そうそう! ちょっとしたお茶目なあだ名で」
「そうだバカと問題児の代名詞だ。 そして斎藤兄の腰巾着達だ」
否定する明久と明久だが、雄二は肯定する。
「みんなしてそんなこと言ったら失礼でしょ! 言っていいことと悪いことがあるんだからね! 自分の発言よく理解して言ってよね!!」
つぐみは腰に手を当てて雄二とバカ発言した男子生徒達を叱る。
明久と彰仁はつぐみを尊敬の視線を送る。
「わ、悪かった。 もう言わない」
『す、すいませんでした』
というふうに謝る雄二と男子生徒達。
「とにかくだ! 俺達の力の証明として、まずはDクラスを征服したい。皆、この境遇は大いに不満だろう!?」
『当然だ!』
「ならば全員筆を執れ! 出陣の準備だ!」
『おおーーーっ!!』
「俺たちに必要なのは、卓袱台ではない! Aクラスのシステムデスクだ!」
『うおおーーーっ!!
「お、おー……」
雰囲気に押され、瑞希も懸命さが見て取れるように小さく拳をふりあげる。