モモンガ様ひとり旅《完結》   作:日々あとむ
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モモンガ様の壮大な挑戦が今始まる……!
 


ファーマー1lv

 

 

「さて、次はどこに行くか……」

 

 ハムスケの上で地図を広げ、アインズは熱心に地図を見つめる。

 アインズはトブの大森林に帰っていた。<転移門(ゲート)>で帝国から逃げ帰った時、慌てていたのでマーカーをつけたままにしていたトブの大森林に出たのである。

 

「殿、どうでござるか?」

 

 ハムスケが自分の上で悩むアインズに訊ねる。ハムスケとしても、主人のアインズが行き先を告げないと進む方角に悩むのだろう。アインズは地図をじっと見つめる。

 

「そうだな……そういえば、地図を見るかぎりこの森には何も無いが、川があるということは湖か何かあるだろう。知っているかハムスケ?」

 

「それがしは縄張りから出たことがないので、あまり知らないでござるな」

 

「む、そうか」

 

 少しばかり残念になる。そして再び地図をじっと見つめる。

 

「…………」

 

 穴だらけの地図だ。それがアインズがこの地図に抱いた感想である。

 まず、人間以外が住む亜人種達の国が載っていない。そして、国境線も曖昧であり、人間の国でさえ都市が何も書いていなかったりするほど酷い地図だ。鈴木悟という人間の生きていた現実の世界の地図と同じくらい精密にしろ、とは言わないが未知を楽しむための『ユグドラシル』の地図よりある意味酷かった。

 ただ、これには理由がある。アインズは市場にあった一般向けの地図を買ったために、それほど精密では無いのだ。アインズが聞いた店主の話では、これより精密な地図は冒険者組合長や貴族など、一部の特権階級の者しか手に入れられないらしい。

 

「とりあえず、今までの調べた事を書き込んでおくか」

 

 アインズはペンを取り出し、日本語で地図に文字を書き込んでいく。エ・ランテルの事、トブの大森林、カルネ村、カッツェ平野など――遭遇したモンスター達や、地図とは違った実際の地形……。

 そうして幾つか書き込み、満足する。

 

「こんなものか」

 

 少しばかり詳しい内容になった。昔、真っ白な地図を片手にユグドラシルの世界を巡った事を思い出す。

 一生懸命、その地図にこうやって調べた事、体験した事を書き込んでいた。そうして埋まっていく地図に胸が高鳴っていたものだ。どちらの地図がより詳しいか、という事でギルメンが喧嘩した事もある。

 ……少しばかり感傷的になった。アインズはかつての記憶を隅に追いやり、目的地を決める。

 

「とりあえず、せっかくだから川でも辿って湖か何か探してみるか。水の傍なら何かモンスターが棲んでいるだろうし、亜人種が集落を形成している可能性もある」

 

「分かったでござるよ殿!」

 

 アインズの指示にハムスケは頷き、再び歩を進めて森の奥深くへと入り込んでいった。

 

 ――そうして数日ほど彷徨ったアインズは、小さな川を発見し、その小川の水流を確認して、上流と思われる方角へ進んでいった。そこから更に数日ほど経ち、アインズとハムスケは湖畔を発見した。少しばかり飛び出るような地形になってしまっているようで、大元の湖の姿は森の木々に覆い隠されてあまり見えない。

 

「やれやれ。ようやく着いたか」

 

 アインズはハムスケの背中から降りて湖畔に近寄る。そしてふと気づいた。

 

「ここは湿地と湖が重なるようになっているのか」

 

 アインズの体重に耐えかねて、少しだけ地面が沈む。ハムスケもアインズと同じように近づくと、ずぶりと身が沈んで慌てていた。だが、その感触が新鮮で楽しいようで、ハムスケは野生動物らしく楽しそうにずぶずぶと進み沈んでいく。

 その様子に呆れながら、アインズは<飛行(フライ)>を使って服が汚れないように宙に浮かぶ。

 

 そして再び水面に近づき、じっと水の中を見つめた。

 水の中は少し見通し辛いが、それほど汚れてはいないようで幾匹もの水棲生物がいた。確かブラックバスと呼ばれるような魚に似た魚や、ブルー・プラネットがよく言っていたゲンゴロウだったか、そういうもはやかつての世界には絶滅したはずの虫に似た生き物もいる。

 

「…………」

 

 そんなもはやいないはずの生き物の、絶対に見る事が出来ないはずの生態を目にして。アインズはついついじっと見つめ続けてしまった。群れを作りながら泳ぐ小さな魚達。水草の影に隠れるエビと、土の中に潜っていく虫。そんな彼らをじっと見つめる。

 

「…………」

 

 じぃっと。じぃっと。

 

「…………」

 

 ――――。

 

「…………はっ!?」

 

 熱心に見つめ過ぎて<飛行(フライ)>の制限時間がきている事に気づかず、がくっと一瞬高度が落ちたのに合わせて意識を取り戻す。慌てて再び<飛行(フライ)>を唱え、水の中に墜落するのを防いだ。

 

「つい見つめすぎちゃったな……」

 

 アインズの声に驚いた水の中の生き物達は蜘蛛の子を散らすように慌てて姿を消している。

 

「うーん。それにしても、まさか水の中の生き物を見つめるのがこんなに時間を忘れるなんて思わなかったな」

 

 魔法を使って浮いていなければ、今でも時間を忘れてじっと見つめ続けていたかもしれない。

 

「おっと、そうだハムスケ……」

 

 つい時間を忘れて見ていたせいで、ハムスケの存在も忘れていた。アインズは周囲を見回す。

 

「…………うん?」

 

 ハムスケの姿が、どこにも無かった。

 

 

 

 

 

 

 トブの大森林には二〇キロ四方の、ひっくり返した瓢箪のような形をした巨大な湖がある。上の大きい方が水深があり、そちらには大型の生物が。下の小さい方は浅いため小型の生物が生活の場所としている。

 そして、小さな湖の方には亜人種族の蜥蜴人(リザードマン)達が五つの部族に別れて集落を作り生活していた。

 その内の一つ――“緑爪(グリーン・クロー)”族の旅人、ザリュース・シャシャはペットのロロロにいつもの餌の魚を四匹与えた後、森の中を通りながら彼が旅に出ていた間教わり、帰ってきて作った生け簀の様子を見るために、陸地に異変が無いか調べながら歩いていた時の事だった。

 

「…………兄者?」

 

 目的地の近くに、兄であり部族長であるシャースーリューが隠れるように潜んで、じっとザリュースの目的地を見つめていた。

 

「…………」

 

 一体何をしているのだろうか。ザリュースはシャースーリューに声をかけようと口を開いたが、シャースーリューがこちらを見つめ、焦ったようにザリュースに黙るように仕草だけで合図をしたため黙る。

 そして……ザリュースにも聞こえた。バシャバシャという水飛沫の音を。

 

「…………!」

 

 その音に驚愕し、ゆっくりと慎重にシャースーリューに近づき、その横に並ぶ。シャースーリューは音を立てずに、静かにザリュースを招き、繁みから音源の方を指差した。

 ザリュースはそちらを見つめる。

 

 そこに、それはいた。

 

「…………ッ!!」

 

 驚愕し、思わず悲鳴を漏らしそうになって慌てて口を閉じる。声を上げそうになったザリュースを見て、シャースーリューが目を見開き咎めるような表情を作った。それに軽く頭を下げ、ザリュースは再び音源を見つめる。

 

 ザリュースが作った生け簀の囲いの一部を破壊し、水の中に顔を突っ込んで生け簀の中の魚を熱心に食べている巨大な魔獣がそこにいた。

 無理だ。ザリュースが最初に心の中で思った言葉がそれだった。

 あれには勝てない。勝敗を競うのさえ愚かしい。それほどまでに巨大で、立派で、圧倒的な強者のオーラを放つ魔獣だったのだ。

 

 かつてザリュースはこの生け簀を作るのに何度も試行錯誤した。まず囲いを作るのに四苦八苦し、魚を育てる餌は何がいいのか悩み繰り返した。モンスターに囲いを破られ全て無に帰した事もある。

 よってザリュースは生け簀については諦めた。これは数ある失敗の一つに過ぎない。確かに成功間近だった。努力を無にされたのは悔しい。

 しかし、それも命あってのものだ。今この場であの魔獣に挑み、何になるだろうか。無駄に命を散らすだけである。

 シャースーリューも同意見なのだろう。二匹はお互い頷いて、示し合わせたようにその場をゆっくりと離れた。

 

「…………」

 

 しばらくお互い無言で森を歩き、そして充分離れたと思われた場所でようやく立ち止まり、互いの顔を見る。

 

「……兄者」

 

「ああ、分かっている弟よ。生け簀のことは残念だったな……」

 

 アレは諦める他ない、という事がシャースーリューにも分かっているのだろう。ザリュースは気にするな、とばかりに首を横に振った。

 そう、問題はそれではないのだ。失敗したというならば、成功するまでまた始めればいい。コツは掴んできているのだ。前よりもっと上手く、短期間で以前と同じような状態まで持っていけるだろう。

 問題は、そこでは無かった。

 

「兄者、どうする」

 

「……ああ、分かっている。あの魔獣だな?」

 

 こくりとザリュースは頷いた。問題は、生け簀の魚を食べていたあの強大な魔獣の存在だった。

 あの魔獣は強い。旅人として蜥蜴人(リザードマン)の村を出て見て回ったザリュースから見ても、あれほど強大な魔獣には遭遇した事も無い。唯一、かつて遭遇しながらも逃げ出したアンデッドがいるが、それでもあれほどの強さは持たないだろう。アンデッドの方はそもそも、魔法攻撃以外通用しないという特殊な肉体を持っていたせいもある。

 だが、あの魔獣はおそらく単純に強い。発せられる気配は王者の気配であり、輝く白銀の体毛はどんな武器も通すまい。とてもではないがザリュースは一対一であの魔獣に勝てるとは思えなかった。

 いや……例えシャースーリューと協力しても、刺し違える事さえ万が一の確率だろう。

 

「出来れば生け簀の魚で満足して欲しいが……」

 

 苦々しい口調で呟く。ザリュースの言葉にシャースーリューも頷いた。

 

「まずいのは、この辺りを縄張りにしようとした場合だな」

 

「ああ……」

 

 ただの通りすがりで、単純に腹が空いたから休憩がてらに生け簀の魚を摘んだ、というのならばいい。だがそうではなく、この辺りを気に入って自らの縄張りにしようとした場合が厄介だった。その場合、“緑爪(グリーン・クロー)”族は自分達の村を捨て、別の場所に避難する必要があるだろう。

 

 ……あの魔獣は強い。戦うのは愚かの極みである。勝てるかも分からない相手と戦うくらいならば、蜥蜴人(リザードマン)達は自分の縄張りを諦めて去るだろう。それがもっとも賢い選択だからだ。

 だが、あの魔獣が“緑爪(グリーン・クロー)”族のいた縄張りだけで満足しなかった場合はどうなるだろうか。もし、更に勢力を拡大していき他の部族の者達も追い出していったら――。

 

 答えは簡単だ。蜥蜴人(リザードマン)達は殺し合いに発展する。

 

 同じ種族の者達が避難しようとすれば、当然避難しようとする立地条件は被るだろう。未知の土地を縄張りにしようとする生存競争に加え、食料を巡っての縄張り争い。四年前の戦争を彷彿とさせる出来事が起こるかも知れない。

 当然、回避する簡単な方法がある。あの魔獣を倒す事だ。

 だが、それには多くの問題がある。まず、誰があの魔獣を倒すのだ、という事。

 あの魔獣を退治しようと思うと、間違いなく死傷者が出るだろう。何せ、ザリュースやシャースーリューでさえ勝てないだろう魔獣なのだ。一部族の戦士達が協力した程度で倒せるとは思えない。倒せたとしても死傷者の数は計り知れない。一部族が犠牲になる覚悟がいる。

 だがその場合、誰が生贄になると言うのだ。自分の部族だけが戦力を落とすような結果を認める部族はいない。そうなれば、他の部族の精鋭達とも協力するのが無難な解答だろう。

 そこまでしなければならない道に苦悩する。そこまでしても勝てない可能性がある恐るべき魔獣に理不尽な怒りを抱く。

 

「……しばらくは、様子見か」

 

「そうなるだろうな」

 

 お互い溜息をつく。ザリュースがそう考えたように、シャースーリューもその後の問題に気づいているのだろう。

 

「とりあえず、村に帰り様子見のための野伏(レンジャー)を集めよう。狩猟頭と相談しなければ」

 

「ああ――」

 

 頷き、再び足を動かし村へ帰ろうとしたところ――

 

「この、馬鹿がぁあああッ!!」

 

「!?」

 

 聞こえてきた怒声に、思わずザリュースとシャースーリューは尻尾が飛び上る。お互い顔を見合わせ……その声が聞こえた方角が先程魔獣のいた生け簀の方である事に気づき、頷くと急いで踵を返して生け簀の方へ戻っていった。

 ある程度近づくと、再びこっそりと更に距離を詰める。最初に見ていた繁みに隠れるようにして身を乗り出すと、あの恐ろしい魔獣がしょんぼりとした様子でおり、その目の前には闇色のローブを着た仮面の魔法詠唱者(マジック・キャスター)が立っていた。

 仮面の魔法詠唱者(マジック・キャスター)は呆れた様子で目の前の魔獣を叱っている。

 

「ハムスケ……これはどう見ても生け簀だろう……、勝手に生け簀の中の魚を食ったあげく、囲いまで一部破壊するとは……」

 

「す、すまないでござるよ殿……美味しそうな魚がたくさんいたから、つい食べてしまったでござる……」

 

 何者かの手が入っている、という事を考慮したらしい思慮深そうな仮面の魔法詠唱者(マジック・キャスター)は、そんな魔獣の返答に頭を抱えていた。

 

「ああ、いや……これはペットから目を離した飼い主の俺の責任か……。とりあえず、囲いは<修復(リペア)>で……いや、待てよ……? <修復(リペア)>では失われた耐久値は元には戻らない。……となれば、わざわざ作り直す必要が……食べた魚の補充もいるだろうし……」

 

 ぶつぶつと呟いて考え始めた仮面の魔法詠唱者(マジック・キャスター)に、魔獣は申し訳そうな顔で訊ねた。

 

「ところで殿、生け簀とは何でござるか?」

 

「うん? そうか、お前は知らないか……。まあ、俺もそこまで詳しいわけじゃないんだが……生け簀というのは、こうして囲いを作り捕まえた魚などを入れ、そこに生きたまま保存しておく場所のこと、だったか? こうすると、いつでも新鮮な魚が食べられるし、生きているため干物に加工するよりよっぽど長く保存出来る。まあ、ちゃんと飼育出来ればの話だがな」

 

「なんと! 獲物を生きたまま捕獲して飼う場所のことでござったか! ……ということは、これは何者かがわざわざ捕まえて飼っていた、ということでござるか?」

 

「おそらくな。……しかし残った魚を見るに、大きな魚だな。生き物を飼育するのは難しいと聞くが、よく育っている。ブルー・プラネットさんが言っていたが、魚の飼育は難しいそうだぞ? 水温の変化ですぐ死んでしまう魚もいるし、餌にしても何でも食べるわけでは無いらしいからな。それに、食べても他の魚に餌を取られて食べられない魚もいたりするし、稚魚が生まれても親が子を食ってしまうから分けて飼わなければいけないとも言うし……。一番きついのが一匹でも病気になると、狭い場所だから魚が全部病気になって全滅する事もあるのだとか」

 

「ブルー・プラネット殿というのは確か殿の昔の仲間でござったな! とても詳しいんでござるなぁ……」

 

「あの人はこういう生き物や自然界の事に詳しかったからなぁ……まあ、自然を語る時に熱くなり過ぎることが玉に瑕だったが」

 

「…………」

 

 仮面の魔法詠唱者(マジック・キャスター)と魔獣の会話に、ザリュースとシャースーリューは互いの顔を見合わせる。思う事は同じだ。互いに頷き合い、一人と一匹に声をかけようと口を開いた。

 

「……その、すまない」

 

「うん?」

 

 ザリュースとシャースーリューが繁みから出る。仮面の魔法詠唱者(マジック・キャスター)と魔獣は特に驚いた様子は無かった。もしかしたら、とっくに覗き見しているザリュース達に気づいていたのかもしれない。

 

「その生け簀の持ち主なのだが……」

 

「あー……」

 

 ザリュースがそう言うと、仮面の魔法詠唱者(マジック・キャスター)は少し口篭もり、頭を下げた。

 

「ペットがすまない。飼い主である俺の責任だ」

 

「申し訳ないでござる。それがしが悪かったでござるよ」

 

 魔獣もまた頭を下げる。その様子を見て、ザリュースとシャースーリューは互いに顔を見合わせ、頷いた。

 彼らは話が通じる理性的な生き物だ。魔獣はともかく、人間だろう仮面の魔法詠唱者(マジック・キャスター)蜥蜴人(リザードマン)であるザリュース達を見ても物怖じした様子もなく、嫌悪しているような気配も発していない。旅人として外の世界に出た事のあるザリュースからしてみれば、仮面の魔法詠唱者(マジック・キャスター)である男の態度は、酷く奇特な姿だと言える。人間というものは自分と同じ形をしていない生き物を酷く嫌悪する種族だと聞いた事があったからだ。

 まあ、それも当然かと納得する。様子を見るに、仮面の魔法詠唱者(マジック・キャスター)はあの強大な魔獣を支配している主人だ。魔獣を支配している時点で恐るべき魔法の使い手だと分かる。祭司頭の使える第二位階を超える魔法……第三位階の使い手か、あるいは第四位階という驚異の力の持ち主の可能性がある。そんな相手からしてみれば、ザリュースとシャースーリューだけでは警戒に値しないのかもしれなかった。

 ……強者のような気配は全くしないが、しかし魔獣を連れている時点で決して油断は出来そうにない相手だ。

 

「いや、モンスターに囲いを壊されるのはよくあることだ。謝ってくれただけでも嬉しい」

 

 当然、そんな相手を怒らせるような事は論外である。相手が理性的に話してくれているのだ。こちらも理性的に振る舞う必要がある。

 

「我等はこの湖に棲む蜥蜴人(リザードマン)の部族の一つ、“緑爪(グリーン・クロー)”族の族長シャースーリュー・シャシャという。こちらは弟のザリュースだ」

 

「俺はアインズ・ウール・ゴウンという。旅の魔法詠唱者(マジック・キャスター)だ。こちらは俺のペットでハムスケという」

 

「よろしくでござる」

 

 旅の魔法詠唱者(マジック・キャスター)という言葉に、内心で安堵する。それならば、縄張りについての心配は杞憂で終わりそうだった。

 

「しかしこの辺りは蜥蜴人(リザードマン)の集落だったか。すまないな、勝手に縄張りに入って……生け簀も壊すし」

 

 申し訳なさそうな魔法詠唱者(マジック・キャスター)――アインズに、ザリュースは首を横に振った。

 

「一部が壊されただけだ。すぐに修理出来る。それより……もしよければ知恵を貸してもらえないだろうか?」

 

「うん?」

 

 ザリュースの言葉に、アインズは不思議そうに首を傾げている。しかし、これはザリュースやシャースーリューにとっては当たり前の質問だ。

 ザリュースはかつてこの生け簀を作るのに、試行錯誤した。当然だ。何せ、旅先で話を聞いただけのイメージで作ったのである。ここまでこぎつけるのに果たしてどれだけの月日を使ったか。

 しかし、アインズの生け簀の話はかつてザリュースが話を聞いた者よりも詳しかった。特に稚魚の話などはザリュースは全く知らない。ある程度大きくなった魚を育てる事は出来るが、稚魚からとなると全く勝手が違って分からないのだ。

 

 ザリュースから詳しい話を聞いたアインズは、なるほどと頷いたようだった。

 

「ふむ……生け簀の件もある。俺でよければ知恵を貸そう。とは言っても、俺も話を聞いただけで詳しく無いんだが……」

 

「いや、少しでも貸してもらえると助かる」

 

「そうか? ……しかしこれだけ広ければ、そう易々と食料に困らんだろうに。よく生け簀を作るという発想になったな」

 

 感心したようなアインズの言葉に、しかしザリュースもシャースーリューも暗い影を落とした。ザリュースが外へと旅に出て、そして生け簀の話を聞いて帰って来るに至る理由が、そこにはあったのだ。

 

 何故なら四年前。蜥蜴人(リザードマン)達は湖の魚を巡って殺し合い、七部族の内二部族をほぼ消滅に追いやるほどの苛烈な戦争があったのだから。

 今でも思う。あの時どうして魚は不漁になってしまったのか。あの時、どうしてこの養殖という方法を知らなかったのか。

 おそらく、どの部族にとってもあの戦争は心の傷になっているだろう。

 

「いざという備えはあった方がいい。今はこの弟しか作っていないが、いつかは弟を真似て他の者もすることになるだろう」

 

 シャースーリューの言葉に、アインズは同意とばかりに頷いた。

 

「確かに。わざわざ危険を冒すこともないしな」

 

「とりあえず、まずは囲いを直そう。手伝ってもらってもいいだろうか?」

 

「無論だ」

 

 シャースーリューは族長という立場もあるので申し訳なさそうに帰ったが、残ったザリュース達は協力し合って囲いの修復に取り掛かった。アインズが魔法で網を修復、召喚したアンデッドのスケルトンで木を切り倒し、ハムスケが背に乗せて水辺まで運ぶ。そしてザリュースは慣れた手つきで囲いを組み立てていく。

 彼らは互いに雑談を交えながら、雨が降ってくるまで作業に没頭したのだった。

 

 

 

 

 

 

「――と、いうわけで餌はエビやサナギを乾燥させて磨り潰し、団子にすると食いがいいらしいぞ。寄せ餌にもなるそうだ」

 

「なるほど……そうやって細かくすれば、稚魚でも餌を食べられるし、保存もきくな」

 

 アインズはザリュースへと説明する。ザリュースは感心しながらアインズの話を真剣に聞いていた。

 

 ……ハムスケが生け簀を壊した日から、既に数日が経過している。時折シャースーリューや他の蜥蜴人(リザードマン)が様子を見に来るが、何か問題が起きた事は無い。蜥蜴人(リザードマン)という種族は強者に敬意を示す、などという習性があるため、ハムスケを見てすぐに力関係を悟ったためだ。これが指輪で気配を隠しているアインズだけならそうはならず、一戦交えるくらいになったかも知れないがハムスケを従えている以上、アインズにも喧嘩を売らない方がいいと納得しているらしい。

 勿論、その納得にも裏がある。アインズは対外的には第五位階魔法まで使用出来る事にし、ザリュースやシャースーリューから村に話が伝わった際に興味を引かれた祭司頭が訪れ、実際に第五位階魔法を見せたためだ。魔法に詳しい祭司頭などがそれがどれほどの脅威なのか村で説き、村を殲滅する事が可能な魔法詠唱者(マジック・キャスター)という事で一目置かれている。アインズからしてみれば第五位階魔法なんて弱過ぎて話にならないレベルの魔法なのだが、一流の魔法詠唱者(マジック・キャスター)でも第三位階止まりなこの異世界では、アインズの認識に納得してくれる者はユグドラシルプレイヤーしかいないだろう。

 

 今、アインズとザリュースがいるのはアインズが寝泊まり用に出したマジックアイテムのコテージの中だ。これはマジックアイテムなので使用しない時は小さく、手に収まるサイズだが使用すると大きくなる。当然、マジックアイテムなので外から見た容量と中の容量は一致しない。外からではドアから入れないサイズのハムスケでさえ、それに合わせてサイズが変わるため入れるようになっている。

 蜥蜴人(リザードマン)達は閉鎖社会のため、旅人のアインズが泊まる余地は無い。そこで、この生け簀の近くにアインズがコテージを出し寝泊まりするようになったわけだ。本来はアインズはアンデッドなのでコテージなど使用しないのだが、ハムスケがいるため時折使っていた。今は人間だと思われているため怪しまれないように使用している。蜥蜴人(リザードマン)は亜人種なので、さすがに異形種であるアンデッドに対しては忌避感を持つかも知れないためだ。

 

 ザリュースはアインズの出したマジックアイテムのコテージに驚いたようだが、すぐに慣れてしまった。そして今そのコテージで談話しているのは、外は連日雨が降っているために会話に適していないためだ。ハムスケはザリュースの連れてきたペットの多頭水蛇(ヒュドラ)――本来八つあるはずの頭が四つしかない奇形であるが――ロロロと共に、外で雨が降る中を遊び回って駆けている。

 ザリュースがロロロを連れてきた理由は、ハムスケと同じように少し手伝ってもらおうという理由からだ。ロロロの頭に乗れば<飛行(フライ)>を使えないザリュースも高い所に手が届く。そしてハムスケが言っていたのだが、ロロロはとても嬉しそうなのだという。ザリュースはハムスケからそれを聞いて、ぽつりと語った。なんでも小さな頃はほぼ四六時中一緒にいたが、大きくなってからは家に一緒に入れないため別々の所で生活するようになっていたので寂しいのだろうと。ロロロもハムスケと同じくこのコテージならば一緒に室内に入れるため、ご機嫌になっているのだろうというのがザリュースの見解だった。

 

「しかし悪いな、色々と世話になって」

 

「なに、気にする必要はないぞ。いい経験になったからな」

 

 申し訳なさそうな声色のザリュースに、アインズは気軽に答えた。実際、アインズはハムスケが生け簀を壊した罪悪感とも、全くの善意とも無関係な真意でザリュースを手伝っているのだ。

 

 アインズは思う。自分はレベル一〇〇であり、これ以上強くなる事はないだろう。これが自分の成長限界だ。

 だが、そのままでいいはずがない。ゲームならともかく、現実で成長しない最強は最強などではない。

 これはちょっとした実験の一環だ。もはやレベル上限にあるはずのアインズが、新しい職業(クラス)のレベルを取得出来るかどうかの。それが出来れば、更なる強さを手に入れられる。もしくは手に入れられないとしても、職業(クラス)として修得しないと出来ない事と修得しなくても出来る範囲を調べる実験にはなるはずだ。アインズはそれを確かめたかった。

 

 今のところ、アインズはザリュースを手伝って農業系の職業(クラス)を手に入れた感触は無い。

 しかし仮に手に入れる事が出来たなら――もしかしたら、この世界特有の魔法や武技、職業(クラス)を手に入れる事が可能になるかもしれなかった。

 

 アインズは蒐集家(コレクター)である。ロールプレイ重視のビルドで組んでいるし、覚えている魔法の数は七〇〇を超えるが、役に立たない魔法だってある。アイテムボックスにも自分が使用しないポーションを入れていたりするし、たかがゴブリンを十数体召喚するだけの角笛なども入っていた。

 そんなアインズからしてみれば、『未知』というものはそれだけで興味をそそられるものなのだ。

 

「そう言ってもらえると助かる。……しかし、この雨はどうにかならないものか」

 

「確かに。最近ずっと降っているな」

 

 外の天気に不満を漏らすザリュースにアインズも同意する。体は濡れるし、土はぬかるんで歩き辛く、あらゆる作業は捗らない。雨のせいで魚が見えにくいため、狩りも困っていると狩猟頭が言っていたらしい。そういう内容をアインズもシャースーリューから聞いていた。

 アインズが試しに第四位階魔法<雲操作(コントロール・クラウド)>の込められた巻物(スクロール)をアイテムを使って(クラス)制限を騙して使用し、雲を動かしてみたが、その程度の魔法ではやはり天気までは変わらない。天候を変えようと思えば第六位階の<天候操作(コントロール・ウェザー)>がいる。〈雲操作(コントロール・クラウド)〉の巻物(スクロール)ならば誤魔化して使えるが、そちらはザリュース達を誤魔化すのは難しい。よってアインズは第六位階の巻物(スクロール)は使用しなかった。アイテムはタダではないのである。

 アインズが雨が降って特に嫌なのがハムスケの件もあった。傘をさして雨を防げるアインズや、爬虫類特有の滑らかな鱗の体を持つ蜥蜴人(リザードマン)多頭水蛇(ヒュドラ)と違って、ハムスケは『毛玉』なのだ。そのせいで、雨に濡れるとハムスケの毛づくろいが面倒なのである。泥がたくさんついて面倒だし、アインズと違い生き物であるハムスケは体調管理にも気を使わなくてはならなかった。そろそろ、余っているバッドステータスを一部消す指輪でも貸そうかとアインズは思っている。

 

「この辺りはまだ大丈夫だが、俺達のいる湿地は大分ぬかるんできたぞ。湿地が少し広がってしまった。……まあ、湿地の方が歩き易くて俺達はいいのだが」

 

「なんだと?」

 

 ザリュースの放った何気ない一言に、アインズは驚愕する。湿地地帯が増える、という事はつまり水位が上がっている、という事だからだ。

 

「どうした?」

 

 アインズが驚いた理由に思い至らないザリュースに、アインズは少し待てとばかりに手の平を突き出し、状況を整理するために思考する。

 

(湖……湖っていうと確かブルー・プラネットさんが説明してくれたはず……なんて言ってたっけ……?)

 

 川と池、沼と湖の違いを思い出し、これではないと頭を振る。必要なのはでき方だ。湖のでき方は確か……土や石などで水の流れを塞がれ、結果出来るダムのようなものだ。トブの大森林のすぐ上にはアゼルリシア山脈と呼ばれるものがあり、おそらくそこから地下水が流れ出ているのではないだろうか。あるいは、地下水が湧き出ているのかもしれない。

 

(北の大きく水深が深い方にはトードマンっていう種族が生息してるって言っていたっけ。ということは、あっちから水が流れてきているのか?)

 

 ブルー・プラネットが熱く語ってくれていた自然の事を一生懸命思い出す。ダムは雨があまりに酷いと、よく下の川へ水を放出していたらしい。そうしなければダムの壁が水の圧力で決壊し、とんでもない大災害に発展するかもしれないからだ。

 そんな事を色々と思い出しながら、アインズはふと気づいた。アゼルリシア山脈も空を見るかぎり雨が降っていそうだ。あちらはどうなっているのだろうか、と。

 

「…………」

 

「どうした?」

 

 急いでアイテムボックスから遠隔視の鏡(ミラー・オブ・リモート・ビューイング)を取り出し、湖から上流へと視点を移動させていく。この村より下流ならば問題は無い。トブの大森林は広く、木々があるためナーガのリュラリュースや森の外のカルネ村には影響が無いだろう事が分かる。

 問題は、だから上の方だった。

 見るからに川が荒れ狂っている。隣で鏡を驚きながらも覗いていたザリュースが小さく悲鳴を上げた。

 

「こ、これは……」

 

「このマジックアイテムは望む場所を見ることが出来る。魔法などで防がれていれば出来ないが、こうして水の様子を見る程度ならば問題無い。しかし――やはり、上流は荒れ狂っているな」

 

 川の様子をじっと上流に上がって見つめる。そして、やはりアインズの予想していた通りそこにそれはあった。

 

「これは……やはり、まずい……!」

 

「な……なんだこれは……!」

 

 ザリュースが横で絶句する。当たり前だ。湖に繋がる川の上流で、堰き止められていただろう岩や土塊で簡易の小さなダムのようなものが出来ていたのだ。

 それは今にも決壊しそうになっており、ミシリミシリと石壁が水の圧力で軋む音が聞こえそうなほどだった。

 

「おそらく大元のアゼルリシア山脈では大雨だぞこれは……! これが決壊すれば、下手をすればお前達の村が沈むぞ……!!」

 

「……!!」

 

 蜥蜴人(リザードマン)達はその生態から湿地帯を好み、そこに集落を形成する。それが仇になった形だ。堰き止められていた水が溢れ出せば、今まで以上に水位は上昇する。いや、それだけで済めばまだいい。水の量が圧倒的に多過ぎると、押し流された石や土、水が濁流となって下流に襲いかかる。

 どうやら地下から湧き出た水と、上流から流れた水がこの辺りで堰き止められ、後々上流からの水が更に堰き止められて地下から湧き出た水のみで形成した湖。それがこの水のたまり場の正体だったらしい。連日の大雨のせいで、上流の堰き止められていた水が今にも溢れ出しそうになっている。

 

「そんな……急いでこのことを村に……!」

 

 ザリュースがそう言って立ち上がった時、ちょうどドアをノックする音があった。外からシャースーリューの声が聞こえたため、許可を出すとシャースーリューがドアを開けて入り、驚いた様子でこちらを見る。

 

「どうした弟よ?」

 

 困惑気味のシャースーリューにザリュースが慌てた様子で、アインズが見せていた映像を指差しながら現状を説明する。

 ザリュースの言葉に次第にシャースーリューも顔色を失った。

 

「それは……まずいぞ。急いで村に知らせよう。弟よ、お前は他の村にも知らせるのだ。我等の全滅の危機だ……“竜牙(ドラゴン・タスク)”も“朱の瞳(レッド・アイ)”もフロスト・ペインを持つお前の話ならば無下にはすまい」

 

「わかった」

 

「それと申し訳ないがゴウン殿、村で分かり易く説明をして欲しい。信じぬ者もいるだろう」

 

「ああ、かまわん」

 

 さすがにアインズとて、ある程度の愛着は感じる。このまま彼らが自然災害を前に絶滅するのは見るに耐えなかった。

 

「だがこのぬかるみだ……せめて、雨だけでも止んでくれれば作業がしやすいのだが」

 

 シャースーリューは苦々しそうな顔で呟く。ザリュースも同様だ。雨が降っているため視界も悪く、家の土台を強くするのや、即席で壁を作るのに適さないのだ。

 それに対し、アインズは任せろと頷いた。

 

「安心しろ。俺がどうにかしよう――ザリュース」

 

「なんだ?」

 

「他の村までどれくらいの時間がかかる?」

 

「……? おそらく、二時間以内でどんな結果にせよ片が付くと思うが」

 

 アインズはそれを聞くと、ザリュースに考えた事を話した。

 

「なら二時間後にある魔法を使う。おそらく、話だけでは半信半疑の者もいるだろう。だから、俺が魔法で話を信じ込ませる」

 

「信じ込ませるとは……どうやって?」

 

「〈天候操作(コントロール・ウェザー)〉を使って天気を変える」

 

「は、はああああ!?」

 

 その言葉を聞いたザリュースが、顎が外れたと言わんばかりに驚いていた。

 

「第六位階魔法!? そんな馬鹿な……」

 

「実は使えたんだよ。とりあえず、それで俺がこの湖の天気を晴れに変えてやる。これなら、どんなアホでも信用するだろう」

 

 当たり前だ。第六位階魔法を使うような魔法詠唱者(マジック・キャスター)が気をつけろと忠告するのだ。例え他の者達は信じなくとも、祭司の者達は絶対に信用する。

 ……まあ、実際は巻物(スクロール)の力だが。

 

「だが、おそらく山の天気は範囲外だろう。だからこの周囲は晴れに変えた内に作業しろ。天気も、すぐに雨雲が来て雨に変わるだろうからな」

 

 近くに雨雲がある以上、晴れに変えても風が雨雲を運んでくる。そのため、これは本当に一時凌ぎにしかならないだろう。

 だが、それでも充分過ぎるほどだった。少なくとも、誰も信用せずに全滅、という事だけは避けられそうだったから。

 

「急ごう……後はもう時間との勝負だ!」

 

 

 

 

 

 

「急げ! 材木が足りないぞ!!」

 

「もっとしっかり塞げ!」

 

 結果として、シャースーリューとザリュース兄弟のカリスマ、とどめのアインズの魔法もあって蜥蜴人(リザードマン)達はその話を信用し、蜥蜴人(リザードマン)達は誰もが協力し合いながら村の補強を重ねていった。

 避難しようにも、彼らは湿地帯に棲息する者達。森の陸地は彼らにとって魔境であるため、モンスターに襲われる可能性がある。そのため誰もが村が流されないように維持する方向で動いていた。

 

 ザリュースは“緑爪(グリーン・クロー)”族の村に帰ってきてはいない。“朱の瞳(レッド・アイ)”族には戦士などの力仕事が出来る者が少ないらしく、そこを手伝っているらしい。……〈伝言(メッセージ)〉で聞くかぎりはどうも“竜牙(ドラゴン・タスク)”族でも一悶着あったらしいが。

 

「シャースーリュー殿! この材木はどこに運べばよいでござるか!?」

 

「ハムスケ殿! それはあちらの者達のもとへ……申し訳ないゴウン殿! もう一度魔法を……!」

 

「分かっている! 〈全体飛行(マス・フライ)〉」

 

 アインズは〈飛行(フライ)〉を複数人に一度にかけ、そのおかげで上部にある作業を楽にする。ハムスケは切り倒した木を背に乗せ、運んでそれぞれの作業場に配っていた。

 既に、雨雲が再びこの湖に集まり始めている。おそらく、また雨が降るのは確実だろう。山岳部の雨もあるので、急いで作業しないと本当に危ないかもしれなかった。

 

 急げ。急げ――と全員が激しく声を飛ばしながら、必死になって作業を進めている。アインズは転移魔法でそれぞれの村を行き来し、彼らに魔法をかけて作業を行いやすくしていたがやはり作業は遅々として進んでいない。蜥蜴人(リザードマン)達は人間のようにこのような作業に慣れていないのだ。

 

 だが、そこには確かな連帯感があった。それぞれの村ではあるが、彼らは大自然を前に確かに力を合わせ戦っている。

 

 かつて遥か昔――アインズの、鈴木悟のいた世界でもこうした光景が見られたのだろうか。アインズはそう感傷に浸りながらも、転移魔法で別の村へ飛んでいく。

 

「あと、少し……!」

 

 ああ、だが悲しいかな。

 

 大自然とは、そのような矮小な生き物達に攻略されるほど甘くは無い。

 何故なら核兵器さえ生まれた世界でも、確かに存在し続けた実績があるが故に。

 

 自然とは――――ありとあらゆるものを運び去り、消えない傷痕を残していくものである。

 

「――――あ」

 

 誰かの間抜けな声が、ぽつんと聞こえた。その声にそれぞれが振り返り、顔を引き攣らせる。

 

 湖の水面が、異様なほどにうねっていた。

 

「……全員! 何かに掴まれ!!」

 

 シャースーリューの怒声のような叫び声が響く。それと同時に、北の方から大きな津波のような水の濁流が押し寄せてきた。

 

「……ッ! ……ッ!」

 

 流される。流される。流されていく。蜥蜴人(リザードマン)達は必死になって木々に、家の柱に、その両腕でしがみついていた。

 濁流と共に、おそらく北にいたのであろう一部のトードマン達もまた流されてくる。だが、彼らは蜥蜴人(リザードマン)とは違う。その濁流の水の中を泳ぎ、流される折れた木や石を避け、それぞれ手身近にあった蜥蜴人(リザードマン)達の家の柱に掴まり難を逃れていた。

 

「……あぁ」

 

 その様を、呆然とアインズの魔法で空を飛んでいた者達が眺める。自分達が棲む場所の、自然というものの恐ろしさを目に焼きつける。床の高い家の中に避難させられていた子供達もまた、恐怖の目で呆然と迫る恐怖(みず)を、足下を通るそれらを見つめている。

 

「……ッ! ……ッ!」

 

 荒れ狂う水のうねりに晒され、シャースーリューは目蓋も口も開けられない状態で近くの家の柱にしがみついてこの奔流が収まるのを待っていた。

 ああ、けれど。シャースーリューには分かる。何人か若い者達が、老いた者達が身体を支えられず水に流されていくのが。優れているからこそ、その悲しい気配が目を瞑っていたとしても察知出来てしまう。

 ぬるぬると滑る手。必死に爪を立てて掴まりながら。けれど逆らえぬ水の流れに押されていく。

 

 ――嫌だ。嫌だ! 死にたくない……!

 

「……ッ! ……ッ!」

 

 心の中を占めるのはそうした、原初の強い感情だ。だが無情な自然はそうした矮小な彼らの願いも姿も、押し流そうと力強く現実を叩きつける。

 

 ――そして、シャースーリューはある気配を察した。何かが猛烈な勢いでこちらに近づいてきている。ずるずると流されている。それは……折れた大木。

 

「……!」

 

 このままではぶつかる。手を離さなくては。しかし手を離せば、シャースーリューはこの濁流に呑み込まれるだろう。濁流に呑みこまれて生きていられるのか。分からない。分からないけれど、しかしこのままではあの大木がぶつかる。いや、ぶつかって自分が大怪我を負うだけならば、そうして自分が流されて死ぬだけならまだいいだろう。

 だが、もしあの大木がこの家の柱まで折ってしまったら……家の中に避難している女子供は絶対に死ぬだろう。

 

「う、うオオォぉぉぉぉッ!!」

 

 必死になって体を前へ進ませる。大木から家の柱を守るように。そうしなければならぬと強く思ったのだ。何故ならば、彼は族長であるが故に――皆を守らなければならない。

 

 だが、心の中では――――

 

「……死にたくないッ!!」

 

 強く叫んだ。叫ばざるを得なかった。そう祈らざるを得なかった。例え、その願いが叶わなくとも……。

 

 だが、シャースーリューの願いを聞き届けた者の声が聞こえる。

 

 ――――お安い御用だ。任せろ、シャースーリュー・シャシャ。

 

「え……?」

 

 聞こえるはずのない声が聞こえて、思わず目蓋を開ける。見えるはずの水の奔流が視界に入らない。

 ただ蒼く美しい白い光の雨が、綺羅綺羅と天上を舞っていた。

 

 

 

 

 

 

「凄いなこれは……」

 

 アインズはその濁流を、〈飛行(フライ)〉によって浮かんだ空から眺めていた。

 

 濁流は湖周辺の集落を全て呑み込もうとうねり、押し流していく。全てが流されていくのも時間の問題のように見えた。

 周囲にはアインズの魔法で偶然難を逃れた蜥蜴人(リザードマン)達があまりな有様に、呆然と地上を眺めている。

 

「…………」

 

 地上は阿鼻叫喚だ。いや、絶叫さえ水に呑まれて聞こえない。蜥蜴人(リザードマン)や北の方から押し流されたトードマン……ツヴェーグ達もが必死になって家の柱や木の幹にしがみつき、この濁流に耐えていた。

 

 だが、それも長くは続かないだろう。いかに彼らが人間の脆弱な力とは違うと言っても、それでもこの自然に逆らえるほど強くない。こうして空を飛んでいる者達や家の中にいる子供達以外、全て流されていくのが容易に想像出来た。いや、もしかしたら家も崩れて攫われていってしまうかもしれない。

 

「…………」

 

 時間を停止させて、飛行魔法で全員救出するか。いや、おそらくそれでは間に合うまい。その方法では村を二つか三つ救うのが限界だろう。どう考えても、村が二つ犠牲になる。

 

「…………」

 

 そして、アインズにそれは関係の無い話だ。さっさとハムスケを回収して立ち去るべきである。それがもっとも正しい道だとアインズには分かっている。

 

「…………」

 

 アインズにとって、正しいのは正義という概念では無い。ただ、未知が楽しくて。アインズの心にあるのはそれだけで。

 誰が死のうと関係は無い。アンデッドとしての感情が、それを支持する。例えそれが倫理的に間違っていようと、今のアインズを責める相手はいない。だから、正しく旅の魔法詠唱者(マジック・キャスター)としてこの場を去るべきだ。

 そもそもアインズは、既に彼ら蜥蜴人(リザードマン)に対してかなりの肩入れをしている。これ以上の馴れ合いは必要無い。

 

「…………」

 

 そう、必要など無いはずだ。

 

「……まあ、ハムスケを助けなきゃならないし。それに一度実験してみたかったんだよな」

 

 だから、きっとこれは余分な事。それを誰かに対して言い訳がましくポツリと呟き、アインズは一つの魔法を発動させた。

 

 アインズを中心に、青白い光を放ち一〇メートルにもなろうかという巨大なドーム状の魔法陣が展開される。

 それは目まぐるしく姿を変え、一瞬たりとも同じ文字を浮かべていない。

 この曇り空の中で、その蒼く澄んだ美しい光の曲線と文字はなお輝いていた。

 

 ふと、声が聞こえた気がした。死にたくない、という仲の良い兄弟の片割れの声。

 

「ああ――――お安い御用だ。任せろ、シャースーリュー・シャシャ」

 

 超位魔法――

 

 魔法陣が弾け、無数の光の粒になって天空へと舞い上がる。そして一気に爆発するように天上で広がり――

 

 ――〈天地改変(ザ・クリエイション)

 

 そして世界が、姿を変えた。

 

「…………は?」

 

 ポカン、とアインズは仮面の奥で思わず口を開いた間抜けな表情を作る。それほどまでに、アインズは自分の魔法がもたらした効果が想像以上だった。

 

 アインズの使った超位魔法〈天地改変(ザ・クリエイション)〉はエリアフィールドを改変する魔法であり、一日に四回しか使えないのもあって強力な魔法である。『ユグドラシル』ではかなりの広範囲に渡ってフィールドの地形効果を改変し、火山地帯の熱ダメージを防いだり、氷結地帯の寒気ダメージを防いだりした。

 そして今回、アインズは湿地帯の地盤を上げて濁流から守るために発動させた。水を凍らせてもよかったのだが、その場合濁流の中にいる者達が氷の中に閉じ込められる事になる。

 そのためにただ地盤を上げて陸地を作る目的で使用したのだが……。

 

「……どういう効果範囲だ、これは」

 

 存在したはずの湿地帯がほぼ消えて、集落がある地盤が上がっている。小さいながらも、まるで彼らの村に湖と家を区別する崖が出来たような有り様だ。さすがのアインズも、これは予想外に過ぎた。

 

「いやいやいやいや……やりすぎでしょ、これは」

 

 ポツリと呟く。地上では、いきなりの天変地異に蜥蜴人(リザードマン)達が狂喜乱舞している。そんな彼らの姿を見下ろしながら……アインズは全てがどうでもよくなった。

 

「うん。効果範囲を調べる実験は終わったもんな」

 

 それで良しとしよう――と、アインズは全てを投げ出した。

 

 魔法の効果が切れて地上に降りたアインズは、同じように地上に降りた蜥蜴人(リザードマン)や助かったシャースーリュー達を初めとした蜥蜴人(リザードマン)達に平伏され、代表として一番前にいたシャースーリューが瞳を輝かせながらアインズを見つめて叫んだ。

 

「アインズ・ウール・ゴウン様……貴方様は神だったのですね!!」

 

「…………ぇ?」

 

 一番にお礼を言われると思っていたアインズは、そのシャースーリューの言葉に思わず訊き返すような言葉を返す。

 しかし彼らには聞こえなかったのか、彼らは平伏しアインズを口々に崇め始めた。

 

「ありがとうございます、神よ……おかげで、我等は助かりました!」

 

「ありがとうございます! ありがとうございます!!」

 

「おぉ……アインズ・ウール・ゴウン様の御慈悲に感謝を……」

 

「え、えぇー……」

 

 異様なほどの強い崇拝を感じさせる熱気に、アインズは内心引く。だが、彼らはひたすらに平伏し、アインズへの感謝を告げるのみだ。

 

「あ、いや……おほん! 俺への感謝はいい。それより、流された連中を探しにいった方がいいぞ」

 

「あ、そうですね! かしこまりました! 水も引いてきたようなので、すぐに捜索隊を組みます!!」

 

 シャースーリューはそう言うと、もう一度深々と頭を下げて立ち上がり、他の蜥蜴人(リザードマン)達に命令し捜索隊を作って森へと探しに行った。ちなみにツヴェーグ達は水が引いた時点で泳いで元の棲み処へと逃げるように帰っている。

 

 その後ろ姿を見ながら、アインズは仮面の頬をぽりぽりとかいた。

 

「まあ、俺もハムスケを探しに行くか……」

 

 ちなみに、ハムスケはロロロと一緒に木の幹に尻尾や頭で絡みついて、背中に何体かの蜥蜴人(リザードマン)を乗せていたところを発見された。

 

 

 

 

 

 

 ザリュースは、今水の中を揺蕩っている。

 

 ゆらゆらと揺られて、段々底へと沈んでいく。

 

 はて、と思う。どうして自分は、こんな水の中にいるのだろうか、と。

 

 少し考えて……ザリュースは思い出した。ああ、そうだ。自分は確か流された折れた大木に惚れたメスが――クルシュが打ち付けられようとしたのを見て、咄嗟に庇ったのだった。

 その衝撃でザリュースは濁流に呑み込まれ……そして今、こうして水の中を揺蕩っているのだろう。

 

 ゆらゆらと揺られながら、思い出すのはクルシュとの出逢いだ。

 一目惚れだった。美しいメスだった。彼女ほど美しい生き物は、きっとこの世に存在しないと思えるほどに。思わず出逢ってすぐ求愛の鳴き声を上げてしまうほどに。

 

 続いて思い出すのは、ゼンベルというオスの事だ。族長のくせに旅人で、そしてだからこそザリュースの言葉をすぐに信用してくれたオス。

 彼は何と言っていたか……そうだ、確か「フロスト・ペインを持つお前に勝つのが夢なのさ」などと言っていた事をザリュースは思い出した。

 

 その好戦的な言葉と表情に、けれど悪い気はしなかった。この嵐が終わったら、その勝敗を決めようと笑い合えるような清々しいオスだったと思う。

 

 けれど、それはきっと叶わないだろう。

 

 ――ああ。全身が沈んでいく。深い、深い水の底へと。ゆらゆらと揺られながら。

 

 ――――そうして久遠とも刹那ともつかぬ時間が経ってから、誰かが手を差し出してきた気がした。

 

 悪魔のような気がする。けれど、同時に天使のようにも思えた。

 

 何者なのか分からない。ただ、優しい感触がする。水面からゆっくりとザリュースを引き上げようとする誰かの手の感触がする。

 

 この手を振り払うべきか否か、ザリュースは迷う。しかしその迷いは一瞬だった。

 

 声が聞こえたのだ。愛するメスの。優しい兄の。可愛い弟の。なんだか頼もしい友のようなオスの。自分を呼び戻そうとする声が。

 

 ザリュースは掴む。その手を。一気に引き上げられる。白く染まった世界が視界に飛び込んだ。

 

 ――ああ。全身の脱力感が酷い。身体の中がドロドロになって、溶けてしまうかのようだ。

 

 そうしてゆっくりとだが目蓋を開け……

 

「ザリュース!」

 

 自分を見つめながら、涙をこぼす愛するメスの姿が目に入った。その姿に酷く驚く。

 視界に入ったのはそれだけではなかった。クルシュだけではない。シャースーリューが、ロロロが、ゼンベルが心配そうな表情でじっとザリュースを眺めている。

 

「よかった……! 本当によかった……!! 私なんか庇って!!」

 

「く、くるしゅ……?」

 

 抱き着いてくるクルシュに驚き、よたよたとしながらも周囲を見回した。

 そこには、平伏しぴくりとも動かない仲間達がいる。その様子に更に驚く。シャースーリューが誰かに向き直って、平伏している姿が視界の隅に入った。

 

「ああ……私の弟を生き返らせていただき、感謝します神よ……」

 

「……は?」

 

 その聞こえてきた言葉に驚き、ザリュースはそちらに視線を向ける。兄のシャースーリューが平伏しているその先に……闇色のローブを纏った、もう見慣れた仮面の魔法詠唱者(マジック・キャスター)が、白銀の魔獣を侍らせて立っていた。

 

「あ、あいんず……?」

 

 ぽかんとして名前を呼ぶ。すると、ゼンベルがザリュースを小突いて呟いた。

 

「お前、死んじまってたんだよ。それをあの方が、生き返らせてくれたんだ」

 

「は? ……そ、それはだいぎしきをおこなって……?」

 

「いや、一人で。ぽん、と。ちなみに俺らの村も全部水から引き揚げちまった。地形まで魔法で変えちまってよ……ありゃ、マジもんの神だ」

 

「…………!!」

 

 それでようやく、ザリュースも思考が追いついた。見ればここは村の広場だ。だが、あるはずの水草も水も存在しない。しかし見慣れた景色が、ここを自分の村だと告げているのだ。

 

 全てに理解が追いついたザリュースは体をよたよたと動かし、アインズの前に平伏する。慌ててクルシュやゼンベルも同じように平伏した。

 

「か、かみよ……すくっていただき、かんしゃします」

 

 その言葉に、アインズから困惑のようなものが発せられた気がするが、おそらく気のせいだろう。深く頭を下げて、ザリュースは崇拝を示した。

 アインズはそんな彼らの様子を仮面越しに見つめ、しかりと頷いた。

 

「この程度、些細なものだ。気にする必要は無い。これからも、生きるということに全力を尽くせ」

 

「…………!」

 

 その言葉に、全員が額が地面に擦れるのもかまわずに頭を下げる。神が蜥蜴人(リザードマン)の生を全肯定してくれた事を、深く感謝する。

 

 蜥蜴人(リザードマン)達に、新たなる宗教が誕生した瞬間だった。

 

 

 

 

 

 

「……はあー……」

 

「殿、そう何度も溜息をつかないで欲しいでござる」

 

 ハムスケの上に跨り道を進みながら、アインズは深く溜息を吐く。

 今、ハムスケの背にはアインズの他に蜥蜴人(リザードマン)達が「聖獣様にどうぞこれを」と持たせられた大きな魚が括りつけられていた。それを見て、アインズは再び溜息をつく。

 

「いや、しかしなぁ……」

 

 結局、アインズはあの後数日だけ村に残って復興作業を手伝ったが、蜥蜴人(リザードマン)達にはもはや完全に神として認識されていた。どこを歩いても敬われ、畏敬の念を送られるのだ。辟易するのも仕方ないだろう。

 ……実は、少しだけ寂しいという思いがある。今までの気安さが消えて、「神よ」と呼ぶ蜥蜴人(リザードマン)の兄弟にショックを受けたのだ。

 

 欲しかったのは、友達だったはずなのに。

 

「……はぁ」

 

 だから、溜息が止まらない。

 

「……ところで殿、それがしお腹が空いたでござるよ。魚を食べてもいいでござるか?」

 

 その空気を嫌ったのか、ハムスケが空腹を訴える。アインズはその訴えに頷いた。

 

「ああ、そろそろ昼か。……ここで休憩にしよう」

 

 ハムスケの背から降り、適当に地面に座り込む。普段なら魔法で椅子くらい出すが、そんな気さえ起きなかった。

 

「…………」

 

 魔法で、ハムスケの背から魚を取る。全部で四匹。全て、一日でハムスケの胃に収まるだろう。

 

「ん? そういえば……」

 

 確か蜥蜴人(リザードマン)と係わったのは、修得していない職業(クラス)を修得出来るかの実験だったはずだ。その事を思い出したアインズは、じっと魚を見つめる。

 

「……料理に挑戦してみるか」

 

 アインズは内臓を丁寧に取ってある魚を見つめ、呟くと魔法で次々とアイテムを作り出す。大きな網と、それを置くための上部が開いた箱だ。ハムスケに言って枯れ木を集めさせ、箱の中に入れて火をつける。その上に網を置いた。

 

「殿、何をするのでござるか?」

 

「ああ。火を通してみようと思ってな」

 

「なるほど。カルネ村で一度だけ火を通した食べ物を食べたことがあるでござるよ。あれは美味しいでござるな!」

 

 期待に満ちたハムスケの瞳に、少し頑張ってみるか、という気分になる。火が大分燃え上がってきた頃に、アインズは魚を網の上に置いた。

 

「――――」

 

「いつ焼けるのでござろうなぁ……」

 

「――――」

 

「おぉ、美味しそうな匂いがし始めたでござる!」

 

「――――」

 

「……と、殿? そろそろいいのでござらんか?」

 

「――――」

 

「殿? 殿!? 焦げ始めているのでござるが!?」

 

「――――」

 

「殿ー! 殿ー! 焦げてるでござる! 焦げてるでござるよー!!」

 

「――――は!?」

 

 アインズは気づく。見れば完全に炭化した魚らしき物体が鎮座していた。顔を上げてハムスケを見る。

 

「…………殿。殿はもう料理はしない方がいいでござる」

 

「あ、はい……」

 

 炭化した無惨な元魚を悟ったような表情で見つめて呟かれたハムスケの言葉に、アインズは素直に頷いたのだった。

 

 

 

 ――――なお、結局無駄にやる気を出したアインズが全てを消し炭にする事になったが、炭化した魚は全てハムスケ(スタッフ)が美味しく(?)食べたので、決して無駄にはしていない。

 

 

 

 

 




 
(ファーマーを獲得するのは)やっぱり駄目だったよ……。

なお、フレーバーのゴッドは既に5lv(Max)なもよう。
 





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