モモンガ様ひとり旅《完結》   作:日々あとむ
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理不尽なマジックアイテムがイビルアイを襲う!
 


王国の闇 前編

 

 

「――で、ストロノーフ殿。一体彼に何が?」

 

「さぁ……申し訳ない、ゴウン殿。私にも何がなんだか……?」

 

 いきなり失神した男に困惑しながらも、アインズはガゼフを手伝い一緒に男を奥の、男の部屋として貸しているらしい部屋に連れて行き、寝具に寝かせてやった。そして、「申し訳ないがここで待っていて欲しい」というガゼフの言葉で客間らしき部屋でガゼフを待ち、片付け終わったガゼフが顔を出したところで、アインズは訊ねた。

 しかし、ガゼフもまた困惑気味の顔をしている。

 

「実は、私はまだ彼から何があったのか聞いていないのだ。……もしや、ハムスケ殿に何か刺激されたのかもしれん」

 

「ああ――ハムスケは魔獣ですからね。それに、トブの大森林で有名だったみたいですし、その可能性もありますか。ちょっと訊いてみましょう」

 

 ハムスケは家の中に入れないので、外で番犬のように放されて丸まっている。この異世界では恐ろしい見た目だと思われているハムスケだが、ガゼフはよほど信頼が篤いようで、近隣の家の住人は遠巻きに見るだけで、何か言ってきたりはしない。

 

 だが、さすがに〈伝言(メッセージ)〉で訊ねてハムスケに独り言を呟かせるわけにもいかない。さすがに、それは周囲の住民が驚くだろう。アインズは席を立った。

 

「ストロノーフ殿は先程の、えー……」

 

「ああ。彼はブレイン・アングラウスという」

 

「ブレイン・アングラウス……?」

 

 アインズは聞いた事のある名前に首を捻り――あのクレマンティーヌが言っていた名前の持ち主の一人だと思い出した。

 

「聞いたことがあったのですか、ゴウン殿」

 

 ガゼフはアインズの様子に瞳を丸くしている。アインズは頷いた。

 

「ええ。確かストロノーフ殿に匹敵する戦士だと耳にした事があります。彼がそうだったのですね」

 

「ああ。昔御前試合で、彼と戦ったことがあったのだ。その時は辛勝でした」

 

「なるほど……とりあえず、そのアングラウス殿にストロノーフ殿、ついていてあげてください。私はハムスケから少し話を聞いてきます」

 

 そう言って、アインズは家を出て庭で丸くなっているハムスケを見る。ハムスケはアインズが家から出てきたのを見て、円らな瞳でアインズを見上げていた。

 

「彼は大丈夫だったのでござるか? 殿」

 

「なぁ、ハムスケ。お前あの男を知っているか? ブレイン・アングラウスと言うらしいんだが――」

 

 アインズがそう言うと、ハムスケは少しジト目になったようだった。そして、アインズをじっと見つめ、溜息をつく。

 

「な、なんだ」

 

 その様子に困惑し、アインズは少し不安になってハムスケを見る。ハムスケは口を開いた。

 

「殿、やっぱり覚えておらぬのでござるな」

 

「え?」

 

 なんだか不穏な言葉に、アインズは無いはずの表情が引き攣る。ハムスケはそんなアインズに語った。

 

「あの男は確か、殿がツアーという騎士と戦っていた時にそれがしが戦っていた、傭兵団の一人でござるよ。名前まではそれがしも知らなかったでござるが、それがし……負けそうになったでござる。殿が助けてくれたのではござらんか」

 

「え?」

 

 アインズはハムスケの言葉に記憶を掘り起こす。無いはずの海馬から必死に記憶を過去へ遡らせる。そして――

 

「あ」

 

 アインズはようやく、ブレインという男の顔を思い出した。

 

「あー……」

 

「殿……どうするのでござるか?」

 

 確か、顔を見られている。あの時アインズは仮面をツアーに破壊されたので、していなかったのだ。ハムスケもそれを覚えていたらしく、アインズにどうするのか不安そうに訊ねてくる。

 

「…………」

 

 アインズは必死になって考える。さて、ブレインのあの様子から、間違いなくアインズの事を覚えているだろう。と、いうよりブレインは自分より強過ぎる相手と遭遇して挫折した、とガゼフが言っていたはずだ。そうなると、ブレインはアインズのせいで挫折した事になる。

 アインズはブレインにした仕打ちを思い出す――。

 

(そうだよ……俺、あの時他人にかまってられなくて、さっさとその場から離れるのを優先したんだよなぁ……。うわぁ……殺しておけばよかった。いや、今からでも記憶を操作してくるか?)

 

 そう考えたアインズはしかし――ガゼフの顔を思い出して、なんだかそれをするのも嫌になった。ブレインの記憶を操作すると、連鎖的にガゼフの記憶も操作しなくてはいけなくなる。まだあまり話を聞いていない、と言ってもガゼフもさすがに少しは話を聞いているだろう。モンスターに遭遇した、などの。

 その記憶も消さなくてはならなくなる。さすがに、ガゼフの記憶を消すのは少し遠慮したいとアインズは思った。

 

「……どうするかな」

 

 アインズはちょっと呆然とし――聞こえた悲鳴のような絶叫に驚いて、ガゼフの館を振り返った。すると、悲鳴を上げながらブレインがアインズがいる方とは正反対の方向に走り去っていく。アインズはぽかんと仮面の内側で口を開けて呆然とその姿を見送った。見れば、ガゼフもブレインが出てきたであろう窓から呆然と顔を出してブレインを見送っている。

 ガゼフとアインズはお互い顔を見合わせ、互いにまたブレインの去っていった方角を見つめた。

 

「その……ゴウン殿。何か分かりましたか?」

 

 館の中に戻ったアインズをガゼフは出迎え、そして困惑した表情を向けている。そんなガゼフにアインズは無い心臓がバクバクと音を鳴らしている錯覚を覚えながら、逆にガゼフに訊ねた。

 

「そうですね……ストロノーフ殿、彼からはどれだけのことをお聞きになりましたか?」

 

 とりあえず、ブレインがガゼフに何を言ったのか気になったのでそう訊ねる。ブレインがいなくなったのはある意味好都合だ。この隙にガゼフがブレインからどこまで聞いたのか知り、そこから後でブレインを捕まえて話の帳尻合わせをすればいいだろう。

 

 ガゼフはアインズの質問に、やはり困惑した表情で答えた。

 

「私が聞いているのは、恐ろしいモノに出遭った(・・・・・・・・・・・)――というそれだけですね。何に遭遇してしまったのか……その後どうしたのか、それもまだ聞けていないのです」

 

「なるほど……姿形も何も聞いていなかったのですね」

 

「ええ」

 

 アインズは内心ほっとする。つまり、ガゼフはほぼ何も聞いていないに等しいからだ。これなら、ブレインを探してちょっと細工するだけで済むだろう。それならばと思い、アインズはガゼフに脳内(実際は無いが)で考えた話を語る。

 

「実はですね……少し前のことなのですが、私とハムスケは旅の途中ある傭兵団に遭遇しまして」

 

「傭兵団、ですか……」

 

 ガゼフは犯罪者に対するに相応しい、嫌そうな表情を浮かべる。しかし、すぐにそんな表情を打ち消すと、アインズに話の続きを促した。

 

「詳しくは私も知らないのですが、その傭兵団が私と別れて散歩していたハムスケに色々とちょっかいをかけたそうで……その際に、あのアングラウス殿とハムスケは戦ったそうです」

 

 ガゼフはアインズの話を聞いて察した表情をした。そして頭を抱え始める。アインズはつい視線を逸らした。なんというか、今の自分達の状況は結託してブレインにとどめを刺しにきたに等しい。

 

「それで、ですね――えぇ、まあ……私はハムスケの危機に魔法を使用して追い払ったのですが――えぇっと……その、ですね。私はちょっと相手の顔を覚えていなかったのですが――」

 

「――――」

 

「その……ストロノーフ殿の御友人に、大変申し訳ない」

 

「いや、ゴウン殿。こちらもアングラウスが大変申し訳ないことを……」

 

 互いに、深々と頭を下げる。お互い、相手に申し訳ない気持ちになってしまった。

 そして顔を上げると、アインズは仮面の額を手で押さえながら、ガゼフに向かって語る。

 

「とりあえず、彼は私が魔法で探しておきましょう。その後、ストロノーフ殿のもとへ帰るように伝えておきますよ。私は街で宿を取りましょう。彼もあまり、私と顔を合わせるのは嫌でしょうから」

 

「しかしゴウン殿……アングラウスが先に迷惑をかけたのは事実ですし、命の恩人である貴殿にそのような……」

 

 ガゼフからすれば、犯罪者として活動していたブレインの方が悪いという思いがあるのだろう。実際、アインズはハムスケを助け、そして犯罪者を過剰ではあるが驚かしただけなのだ。これでアインズが人間ならば、ブレインの方が悪いと言えるだろう。

 しかし、これが実際ブレインから話を聞けば、アンデッドのアインズに遭遇したという時点で命の危機を感じたと言えば当然である。人間ならば誰が聞いても、アンデッドに遭遇したという時点でブレインを擁護するだろう。アインズだってそうする。

 だからこそ、アインズはガゼフに首を横に振って、自分の思いを口にした。

 

「ストロノーフ殿、経験者の言葉として聞いて欲しい。“友人”は大切にするべきだ」

 

「しかし――」

 

 しかしガゼフは口篭もる。その人の良さにアインズは苦笑し、ガゼフに告げた。

 

「でしたら、ハムスケを預かっておいてください。私は街で宿をとりますが、ハムスケを歩かせるのは厳しいでしょう」

 

「そんな……いえ、分かりました。ハムスケ殿は私が責任を持ってお預かりします」

 

 ガゼフはアインズを見つめ、しかし少し考えてアインズに深く頭を下げた。それにアインズは気にするなと手を振り、ガゼフに別れを告げて館を出て行く。

 ……どの道、アインズの姿はアンデッドであり、骸骨なのだ。実はガゼフの館には一泊程度しかする予定は無かった。食事も出来ない、トイレにも行かない。そんな生活臭皆無の男を見れば、ガゼフとて不審に思うだろう。

 それなのにガゼフのもとで一泊でも世話になろうと思ったのは、ガゼフの厚意を無下にする事に罪悪感を覚えたからだ。ガゼフがアインズに敬意を持ってくれているように、アインズだってガゼフに敬意を持っている。アインズが持たない輝きを持つあの勇者がアインズには眩しくて、尊くて、つい目を細めて見てしまうほどに。

 

 アインズは街に出ると、物陰に隠れてアイテムボックスから遠隔視の鏡(ミラー・オブ・リモート・ビューイング)を取り出し、ブレインの姿を探す。

 ……魔法で探そうと思ったのだが、ブレインが持っている特殊なアイテムとなるとアインズにはさっぱりだったので、このような地道な探し方になった。

 

「…………む」

 

 くるくると視界を移動させ探していると、早速特徴的な青頭を発見した。ブレインの髪色は青色であったので、おそらく彼がそうだろう。ちょうどいい事に、ブレインも路地裏を歩いている。アインズは転移魔法を使用してブレインのもとに向かった。

 

「…………」

 

 ふらふらと覚束ない足取りで歩くブレインの背後に出る。ブレインは魔法で音も無く忍び寄ったせいか、あるいはもうそこまで注意を向けられないほど精神が衰弱しているのかアインズに気づいた様子は無い。アインズはスタスタと歩いて近寄り、足音で振り返ろうとしたブレインの肩を掴んだ。

 

「おい」

 

「あ――」

 

 間違いなく、ブレインである。ブレインはアインズを呆けた顔で見て――その顔を恐怖で歪め叫び声を上げようと口を開き――それより早く、アインズの魔法が指先からブレインの頭へ撃ち込まれた。

 

 アインズの使用した魔法は第十位階魔法の一つで、〈記憶操作(コントロール・アムネジア)〉と呼ばれている精神系魔法だ。一部の記憶を書き換える事が出来るのだが、陽光聖典での実験から判明した事実によって、アインズはあまり使用したいとは思わない。

 

(燃費最悪なんだよなぁ、これ……。たかが数秒の記憶を書き換えるだけでも、とんでもない魔力を消費するし)

 

 この異世界に来て効果が少し変更され、そして魔力消費量が変わった魔法の一つである。記憶を文字通り操作する事によってどのような弊害が出るのか、まだ実は未知数のためいざという時にしか使用出来ない。

 

 アインズはブレインの記憶の中にある、骸骨のモンスターという事実をアインズは最初から仮面を被っていたという捏造で歪める。アインズの体からごっそりと魔力が抜け落ちていく感覚がした。記憶を書き換えた後、ブレインは頭を抱えて膝を地面につき、靄を振るように頭を振ってからアインズを見る。アインズは魔力が抜けて少し気だるげにブレインに話しかけた。

 

「やあ、ブレイン・アングラウス――だったか? ストロノーフ殿の友人だろう?」

 

「お前は……」

 

 書き換えられた記憶によって、多少は恐怖が和らいだらしい。ブレインは先程までのように逃げ出そうとはしなかった。……あるいは、ガゼフの名前を出したからなのかもしれないが。

 

「…………」

 

 しかし、身に沁みついた恐怖はどうしようもないのか、ブレインはアインズをかなり警戒している。それにアインズは溜息をついて、柔らかく声をかけた。

 

「私を警戒するのは勝手ですが、ストロノーフ殿が心配していますよ。帰った方がよろしいのでは?」

 

 人間に対する丁寧な言葉遣いに変えて話す。そんな柔らかな対応にブレインは毒気を抜かれたような顔をして――やがて、納得したように呟いた。

 

「そうだな……アンタにとっては、俺はその程度か」

 

「…………?」

 

 ぽつりと呟かれた言葉にアインズは首を傾げる。そんなアインズにブレインは諦めたような顔をして、アインズに告げた。

 

「いや、分からないならそれでいいさ。むしろ、その方がいい……気を使われると、余計惨めになるからな」

 

「そうですか。なら、何も言わないでおきましょう」

 

 というか、アインズには本気でブレインの言っている意味が分からないが。

 

「……で、ストロノーフが心配しているって?」

 

「心配もするでしょう。友人が私の顔を見て絶叫を上げて逃げでもすれば」

 

「はは……友人か」

 

 “友人”という言葉の何がツボに入ったのか、ブレインは軽く笑う。ブレインの言葉はアインズにはさっぱりだ。

 

「それで……アンタはストロノーフの何なんだ? 単なる顔見知りって感じじゃないな。その様子だと」

 

「そうですね……ちょっとした命の恩人、ということになります。詳しくは、本人から聞いた方がいいでしょう。私が言うと、単なる自慢話にしかなりませんし」

 

「確かにな。命の恩人なら、自分で言やぁそりゃ単なる自慢話だ!」

 

 ケラケラと笑うブレイン。何だかあまりにも先程とは違う様子に、アインズはちょっと引く。

 ブレインはひとしきり笑うと、引いているアインズに気づいていないのか、打って変わって真面目な顔でアインズを見た。

 

「で、アンタにとってストロノーフは何なんだ?」

 

 そのブレインの問いに、アインズはきっぱりと告げた。迷いなく、それ以外の言葉が見つからなかったからだ。

 

「“勇者”。英雄でもかまいませんがね」

 

 アインズの答えに、ブレインは呆然とし――そして、アインズの告げた単語が、あまりにもガゼフに対してぴったりだったのか、また再び笑い出した。

 

「ああ、そうだな! 確かに、アイツは“勇者”って言葉が相応しいかもな! ――でも、アンタにとっちゃそれに意味があるのか? だって、アンタの方が何倍も強いだろ? それとも、ガゼフは俺より圧倒的に強かったのか?」

 

「まさか。貴方は知っているので正直に言いますが、ハムスケ――貴方が戦った私の連れの魔獣ですが、それと同程度なら私には単なる団栗の背比べです。一〇〇回戦っても、全て私の完勝で終わるでしょう」

 

 アインズの言葉にブレインも同意見だったのか、それならば何故――という顔をした。

 

 ――どうして、ガゼフに対してはそこまで敬意を払うのか。

 ――ブレインとガゼフ。一体、何がそこまで違うのか。

 ――二人の強さは、所詮団栗の背比べ。なら、この扱いの差は何なのか。

 

 ブレインの声なき声が聞こえたわけではない。だからこそ、アインズはきっぱりと告げるのだ。

 

「別に、敬意を払う相手が強く無ければいけない道理は無いでしょう?」

 

「――は?」

 

「ですから、誰かに敬意を感じるのも、憧れを感じるのも別にその対象が自分より強くなければならない道理は無いでしょう? たとえ自分より弱くても、吹けば飛ぶような軽さでも、それでもそこに自分では出来ない何かがあったなら、それは敬意をもって接するべきです」

 

 アインズがガゼフを尊重するのは、それが理由だ。アインズには絶対出来ない事が出来るガゼフだから、アインズは彼を尊敬する。

 

「分からないな……強くなければ、結局無意味じゃないか。こんな弱肉強食の世界じゃ、強くなければ生きていけないだろ。そこに何の意味があるっていうんだ」

 

「知りませんよ、そんなもの。――先程、私は自分が彼の命の恩人だと言いましたが、それは単純に彼と敵対していた相手が私より弱かったからです。別に命の危険なんて全く無いから、私は彼の命の恩人足り得ている。仮に、彼が戦っていた者が私より強いのなら、私は彼を見捨てていたでしょう。――ええ、私は貴方に共感する」

 

 だからこそ――――

 

「だからこそ、私は彼を尊敬します。自分が死ぬと分かっているのに、他人のために命を捨てられる人間はそうはいない」

 

 それが出来る時点で、ヒトというものの強さとしては、確実にガゼフの方がアインズより――鈴木悟より上だろう。

 

 

 

 ――困っている人がいたら、助けるのが当たり前。

 

 

 

 ……かつての仲間が言っていた言葉が思い起こされる。鈴木悟の英雄。虚像で出来た仮想(ネット)の世界で、確かに輝いていたもの。

 現実(リアル)での彼がどんなものだったのかは、自分は知らない。あの廃れた世界では出来もしない事をやって心の慰めにしていただけかもしれないし、本当にそういう生き方を体現しようと頑張っていたのかも知れない。

 ただ、輝いていたのだ。それが嘘でも。確かに救われたのだ。そしてそれだけは嘘じゃないから。

 

 だからアインズは、ガゼフを尊敬し続ける。

 

「私には出来ない事だから、私は彼を尊敬する。理由は、ただそれだけです」

 

 ――その言葉に、ブレインは何を見たのか。ブレインはそっと目を細めると、思い出すように呟いた。

 

「そうだな――確かにその通りだ。俺も、アンタに共感する」

 

 アインズはブレインをじっと見つめた。ブレインもアインズを見る。互いに、眩しいものに対する憧れを感じたからだ。ある意味でアインズとブレインは同類だと、そういう共感を覚えた。

 

 がむしゃらに立ち上がって必死になった過去か。あるいは誰かのために戦える自分では持ち得ない心の強さへの憧れにか。

 お互いに、お互いの事なんて知らないはずなのに……確かに、今、アインズとブレインは互いが歪んだ鏡に映った鏡像だと錯覚した。

 

「――ごほん。まあ、ストロノーフ殿が心配しているので、さっさと帰った方がよろしい」

 

 そう言って、アインズはブレインの記憶の書き換えも済んだので適当な宿に泊まろうと踵を返す。もはや日は暮れて、周囲は夜の闇に包まれ始めていた。

 大通りに消えようとするアインズに、ブレインは声をかける。

 

「お、おい! ストロノーフのところに行かないのか?」

 

「私がいたら、貴方が心休まらないでしょう? 適当な宿に泊まりますよ」

 

 そう言って、ひらひらと手を振ってアインズは今度こそ、ブレインに別れを告げてまだある人波に消えていった。

 

 

 

 ――――大通りに出たブレインは、仮面の魔法詠唱者(マジック・キャスター)が消えた人波を見つめる。あれだけ目立つのに、何故か人ごみに紛れると途端に気配が薄れて分からなくなった。もしかしたら、何らかの魔法かも知れない。

 

「魔法っていうのは、何でもアリだな」

 

 そう呟いて、ブレインも歩き出す。思い出すのは、あの魔法詠唱者(マジック・キャスター)の言葉だ。

 

 ガゼフに負けて、強さだけをがむしゃらに追い求めた。そのためには何でもした。

 そう、何でもしたのだ。人を斬る感覚を忘れないために、傭兵団にも所属した。そこで斬り殺した人間の数など、覚えていない。

 何もかもを捨てて、ひたすら強さだけを追求した。かつて敗北したガゼフに勝つために。

 

 だが、それは何の意味も無かった。ブレインの強さは、魔法詠唱者(マジック・キャスター)程度にさえ平然と押し負ける。

 

「……ん?」

 

 何だかそこに何か違和感を覚えたが、分からない。ただ、ブレインは考えるのだ。

 

 どれだけやっても勝てない。あの森の賢王だって、ブレインが負ける確率の方が高かった。その魔獣に勝っても、平然とその魔獣を騎獣にしてしまうような化け物染みた強さの者もいる。

 そう――上なんて、どれだけ見てもキリが無いのだ。どうしたって、最後は何でも出来る奴に負けてしまう。

 

 ブレインに魔法の才能は無い。突き詰められる強さは剣士としての強さだけだ。

 だから最後には、魔法も剣も出来る人間に負けてしまう。

 

 所詮、ブレインは一番にはなれない生き物だったのだ。

 

 だが、そんな一番になれそうな生き物でも――出来ない事があった。

 

 それこそが、ガゼフ・ストロノーフだけが持つ強さで――確かにブレインも、あの魔法詠唱者(マジック・キャスター)の言い分に納得出来た。

 

 ブレインがガゼフのいるような王都まで、無意識に彷徨い歩いたのは何故なのか。

 どうしてブレインは、心をへし折られてもガゼフのもとまで歩いたのか。

 そんなガゼフの家で、ゆっくりと安穏に眠れたのは何故なのか。

 

「ああ――そうだ。俺も、アンタに共感する」

 

 魔法詠唱者(マジック・キャスター)の言葉を思い出す。憧れる。尊敬するとそう言っていた男の言葉を。

 

 ブレインも心のどこかで、ガゼフの強さに気づいていたのだ。だからこうやって、無意識にガゼフのもとまでやって来た。理由はきっと、それだけだった。

 心は依然折れたままだけど――少しだけ、あの太陽のような男が“友人(ライバル)”と呼んでくれた事に感謝して、頭を負け犬みたいに俯かせて歩くのだけは、もうやめよう。

 

 きっと、ガゼフのようになんてなれやしない。みっともなく、無様なままなんだろう。

 

 それでもブレインは、立ち止まったままでいる事だけはやめようと思った。

 

 ――――そう、彼は再び歩き出すのだ。たとえ心が折れたままでも。みっともなく、無様で、負け犬のままでも。

 美しい、手の届かない輝きを目指して。

 

 

 

 

 

 

 全員が集まった宿屋の一室で、次の任務のためにアイテムを並べていたイビルアイは、仮面の内側の眉を顰めて呟いた。

 

「――巻物(スクロール)を補充しに行きたいのだが」

 

 イビルアイの言葉に、ガガーラン、ティナとティア、ラキュースも頷く。

 

「そうね。昨日は運よく『六腕』には遭遇しないで済んだけれど、一つ潰された時点で警戒しているだろうから、補充すべきだわ」

 

 彼女達『蒼の薔薇』は現在、王国の裏社会をほぼ牛耳る組織『八本指』の拠点と思われる場所を、もぐら叩きのように潰して回っていた。これは王女ラナーの依頼であり、今の王国の現状から打てる唯一の手でもあった。

 そして今は昼。次の拠点潰しを行う前に、消費アイテムを補充すべきである。

 

「私とイビルアイで魔術師組合に行ってくるわ。三人はこのまま宿屋で待機。よろしくね」

 

 ラキュースはそう言って、イビルアイと共に宿を出る。二人はそのまま王都の魔術師組合に向かった。

 

「……しかし、今日で二つ目になるがなるべく早く証拠を押さえたいものだな」

 

「そうね。全て潰して回った場合、確実に冒険者組合の方からペナルティがあるわ。幾ら私達でも、限度があるってね。王派閥の人間が冒険者を私的利用しているなんて表沙汰になったら、貴族派閥が活気づいてしまう」

 

「それでは本末転倒だな。だが、前襲ったところでは下っ端程度だった。やはり、抜け道を使われたのだろうか」

 

「たぶんね。まったく、どれだけ改装しているんだか……」

 

 建物の構造が本来と異なっているのはよくある事である。それも含めて警戒し、襲撃を仕掛けたのだが逃げられてしまった。重要書類も隠された後である。やはりこういうのは、裏社会に生きる者達の方が上手なのだろう。ティナとティアは元暗殺者だった事もあってそういった事に詳しく、なるべく穴が無いようにしたのだがそれでも逃げられてしまった。

 

「一つ目の時点でなるべく多く情報を手に入れられるようにしたかったんだけど、これからは更に難しくなるでしょうね」

 

「だろうな。向こうも警戒心が段違いに上がるだろう。なるべく早めに決着をつけたいものだ」

 

 イビルアイはラキュースの言葉に頷いた。

 

「っと、着いたわね」

 

 ラキュースの言葉に、イビルアイも注意をそちらに向ける。長い壁に囲われた、五階建ての塔が三つと二階建ての幾つもの塔。ここが王国の魔術師組合本部である。新たな魔法の開発や魔力系の魔法詠唱者(マジック・キャスター)の育成、そしてマジックアイテムの作成を行っている。

 国家の援助はほとんど入っていないが、それでも魔法詠唱者(マジック・キャスター)達の王国の総本部とも言えるので、下手な貴族の建物よりも立派である。

 

 ラキュースとイビルアイは慣れたもので警備兵に止められる事無く門を潜った。

 

「……? なんだ?」

 

 ただ、いつもと違って少し浮足立っているようにラキュースには感じられた。イビルアイもそう思ったのだろう。首を傾げて不思議そうな様子を表している。

 

「どうしたのかしら?」

 

「さぁな。誰か大物でも来ているのかもしれんぞ」

 

 イビルアイがそう言っても、ラキュースはそんな事は信じていなかった。自分達以上の大物など、それこそ王族や六大貴族になるだろう。こういった冒険者達の色が強い組合では、ただの貴族なぞいくら大きな顔をしても涼しい顔をされる。勿論、表立ってはそのような態度は示さないが。

 しかし王族や六大貴族がわざわざこんな場所に来るはずがなく、訪れたところで意味が無い。来るならば遣いを寄越す程度だ。

 

 だからこそ、二人は違和感を覚えながらもロビーへと向かい……そこに、ラキュースはイビルアイと同じくらい怪しい人間を見つけて驚いた。

 

「――では、ゴウン様。これらをお買い上げでよろしいでしょうか?」

 

「ええ」

 

「かしこまりました。少々お待ちください」

 

「ゴウン様。昨日お売りいただいたマジックアイテムの方なのですが――大変申し訳ございません。もうしばらくお待ちいただければと……」

 

「かまいませんよ。……まあ、出来れば明日にでも査定を出していただければ幸いですが」

 

「はい! 明日には必ず!」

 

「――――え」

 

 組合の者達が、揉み手をしながら豪奢なローブを着た仮面の魔法詠唱者(マジック・キャスター)に頭を下げている。それも一人二人ではない。仮面の魔法詠唱者(マジック・キャスター)はソファに座り、机の前には飲み物が出されていていかにも上客だという事が伺えた。

 イビルアイとラキュースはそんな光景に、呆然とする。

 そして仮面の魔法詠唱者(マジック・キャスター)はふとこちらを見て――「あ」と呟いて止まった。

 

「先日の――」

 

 仮面の魔法詠唱者(マジック・キャスター)が口を開く。それより早く、イビルアイは土下座せんばかりに頭を深く下げた。

 

「先日はすまなかった――!」

 

 仮面の魔法詠唱者(マジック・キャスター)が仮面の魔法詠唱者(マジック・キャスター)に頭を下げる奇異な光景に、ラキュースを初めとしたその場の者達は呆然と二人を見つめたのだった。

 

 

 

「えぇっと……つまり、先日遭遇した魔法詠唱者(マジック・キャスター)がこの人なのね? イビルアイ」

 

「そ、そうだ。先日は本当に申し訳ないことを……」

 

「ゴウンさん。こちらも仲間の一人が申し訳ないことをしました」

 

「いえ、別に気にしていないので頭を上げてください」

 

 イビルアイとラキュースは魔術師組合の一室を借りて、仮面の魔法詠唱者(マジック・キャスター)……アインズとの話を聞いていた。一応、イビルアイ達から話は聞いていたが、アインズの姿を見た事はラキュースは無かったので、改めて頭を下げている。

 二人はアインズにそう言われ、頭を上げてアインズを見た。

 

「それでゴウンさん。戦士長様にお会いになられに王都までいらしたのですか?」

 

「……それ、どこまで広まってるんですか?」

 

 少し仮面の額を押さえたアインズに、ラキュースは慌てて声を上げた。

 

「あ、すみません。そんなに広まってないと思いますよ? 私は一応貴族出身なので、多少知っていただけで……」

 

「そうですか。……まあ、その通りです。王都には戦士長殿の顔を見に来ただけです。それと、巻物(スクロール)の補充ですね」

 

「なるほど」

 

 旅の魔法詠唱者(マジック・キャスター)ともなると、補充する巻物(スクロール)の量は相当だろう。ましてや、貴族や王族を間近で見る事があるラキュースやイビルアイにとっては、アインズが身に着けているローブは間近で見るとかなり細部に拘った豪奢な作りをしている。並大抵の貴族ではこのようなものは身に着けられまい。

 特に目を引くのが両腕の漆黒と純白の色のガントレットだろう。その造り込みは凄まじいの一言につき、魔力の気配は感じられないが美術的な意味合いから見ても金貨数千枚はくだらないはずだ。

 つまり、どう見ても魔術師組合からしてみれば上客である。それはあそこまで丁寧な接客をするだろう。組合の人間誰もが浮足立っていた理由が分かる。

 

「ゴウンさんはしばらく王都にいらっしゃるのですか?」

 

 ラキュースが訊ねると、アインズは頷いた。

 

「ええ。何分王都は初めてなので、ちょっとした観光も兼ねていますから。……ここは戦士長殿に案内してもらったのですがね。それと、ここでちょっとしたマジックアイテムを査定に出したので、その査定が終わるまではここにいるでしょうね」

 

 そう言えば、先程組合の人間が頭を何度も下げてアインズにそう言っていたのを思い出す。少しだけ、好奇心が湧いた。

 

「即日査定出来ないなんて……一体、どんなアイテムをお売りに?」

 

 冒険者としての好奇心が疼く。イビルアイも少し気になるのかじっと無言でラキュースとアインズの会話を聞いていた。……下手な事は言うまい、という自制心で黙っているだけかもしれないが。

 

「あー……完全なる狂騒というマジックアイテムですね。本来精神系魔法の効果が無いアンデッドにも、精神系魔法が効くようになるというアイテムなのですが……」

 

「え!?」

 

 ぎょっとして身を乗り出す。ラキュースもイビルアイもだ。何故なら、アインズの語ったマジックアイテムはとんでもない代物だからである。

 

 ……本来、アンデッドのような死者には魅了の魔法などの精神系魔法が全く通用しない。これは彼らは既に死者であるため、そういった幻惑の魔法が効かないのだ。

 だが、そのアンデッドに対して精神系魔法の完全耐性を無効化するマジックアイテムとなれば、それは魔術師組合の人間も慌てるだろう。一体金貨が何百枚いるのか想像もつかない。査定額がすぐに出せないというのも納得だ。

 二人は組合の者達が頭を下げていた理由がよく分かる。ガゼフが連れて来て、しかもこんなとんでもないマジックアイテムを査定に出せばそれは下手な事は出来ないだろう。イビルアイが叫んだ瞬間に組合の者達が慌てたのはそのせいに違いない。

 

「ど、どんな見た目のアイテムなんですか?」

 

 言ってから、ラキュースはそんな希少なアイテムが幾つもあるわけがない事に気がついた。しかし、アインズは「こういうのですよ」と懐から赤と黄色の縞模様になった円錐の形をした物を取り出す。

 そしてそんな希少アイテムをアインズは平然と渡した。手に取ったのはイビルアイで、じっとそれを見つめている。

 

「ここにある紐を引っ張れば発動しますよ」

 

「な、なるほど……」

 

 イビルアイはそう言ってアインズが指差した紐を触る。そして――

 

「あ」

 

「え?」

 

「ちょ」

 

 イビルアイは力余って、円錐の先から出ているその紐を引っ張ってしまった。

 

 パン、という軽快な音色と共に、円錐の平べったい蓋から金色の拳を突き出したような人の像と幾色ものリボンが飛び出してくる。

 そして――――

 

「あ、あわわわ……も、申し訳ない」

 

「ご、ごめんなさいゴウンさん! 勝手にアイテムを使ってしまうなんて……!」

 

 呆然とこちらを見ているアインズに、ラキュースは慌てて頭を下げる。イビルアイも慌てて頭を下げていた。

 しかしアインズはそんな二人に落ち着いた声で告げる。

 

「いえ、大丈夫ですよ。アンデッドにしか効果がありませんし。まだ幾つか持っているので、そんなに慌てなくても結構です」

 

「で、でも……」

 

 しかし、これは金貨数百枚に匹敵するだろうアイテムだ。そんなアイテムを使ってしまったのだ。慌てない理由が無い。だが、そんなラキュースにアインズは穏やかな声で語りかける。

 

「どうぞ、お気になさらず。どの道私にとってはあまり使用する予定の無い、宝の持ち腐れのようなアイテムでしたから。今回売りに出したのも、使い道の無いアイテムの整理のためのようなものですし」

 

「本当にごめんなさい……もし何かあったら、ぜひ『蒼の薔薇』をご利用ください。出来るかぎりのことはさせていただきます」

 

「そうですね……では、何かあった時は少し頼み事をさせていただく、ということで」

 

 確かに、アインズは金貨数百枚程度の価値は気にしないような風貌だ。その落ち着いた、こちらを落ち着かせようという声色から本当に気にしていない事が窺える。なのでラキュースは最後にもう一度頭を下げて、それからアインズに一度無償で依頼を受ける事を提案した。アインズもラキュースが気にしている事に気づき、その謝罪を快く受け取っている。

 

 そしてイビルアイは……未だにそわそわとしている。

 

(あら……?)

 

 ラキュースはそれに首を傾げるが、イビルアイとて高額なマジックアイテムを勝手に使用してしまったのだ。まだ落ち着かないのだろう。

 

 話が少し落ち着いたところで、ドアをノックする音が聞こえる。どうやらアインズの買った巻物(スクロール)が全て用意出来たらしい。アインズは色々と買い込んだので、全て用意するのに時間がかかったらしかった。

 

「では、話はこれで……」

 

「そうですね。時間を割いていただいてありがとうございます」

 

 ラキュース達も巻物(スクロール)の補充をしに来たのだ。『八本指』の拠点の襲撃任務もあるし、これ以上長居する事は出来ない。アインズとラキュースは立ち上がり、その後イビルアイも立ち上がった。……と、何故か慌てて立ち上がっていたイビルアイは椅子に足を引っかけたらしく、バランスを崩す。

 

「わ……」

 

「っと、危ない。大丈夫ですか?」

 

 ラキュースが掴む前に、アインズがイビルアイの体を支える。体を支えられたイビルアイは、びしりと固まった。動きの止まったイビルアイを、アインズは首を傾げて見ている。

 

「――――」

 

「あの……大丈夫ですか? もしかして、体調が悪いのですか?」

 

「は、はわわ……」

 

 固まるイビルアイにアインズは心配そうに声をかける。そのいつもと様子が全く違うイビルアイに、ラキュースはもしや、と思い当たった。そう……先程のマジックアイテム完全なる狂騒は確か、アンデッドに効果があると言っていなかったか、と。

 

 イビルアイは――吸血鬼(アンデッド)である。

 

「う、うわあああああああああ!! ご、ごめんなさいいいい!!」

 

 突如として叫び声を上げたイビルアイは、アインズから一瞬で離れると、猛スピードで走り去っていった。思い切り開け放たれたドアはギシギシと悲鳴のような音を鳴らし、そのドアの向こうで組合の者が呆然と去っていったイビルアイの背中を見つめている。

 そして当然、いきなり目の前で叫ばれたアインズとラキュースも呆然とその背中を見ていた。

 

「えー……」

 

 アインズの呆然とした声に、ラキュースは慌てて謝る。

 

「な、仲間が本当に何度もごめんなさい! ゴウンさん、とりあえずこれで失礼しますね!」

 

「は、はあ……」

 

 仲間の醜態にラキュースも恥ずかしくなり、急いでこの場を離れる。踵を返して、しかしふと気になってチラリと見たアインズの、仮面の頬をぽりぽりと掻く呆れたような仕草に、更に恥ずかしくなってついラキュースも早足になってしまった。

 

「イ、イビルアイ!」

 

 そうしてイビルアイを追いかけたラキュースは、魔術師組合の外まで駆け、街中で呆然としているイビルアイに声をかける。イビルアイはラキュースの言葉にびくりとすると、慌てたように振り返り、きょろきょろとしてラキュース以外の姿が見えない事を確認すると、途端にしおれた花のようにその場に蹲った。

 

「あ、あうー……」

 

「ね、ねぇイビルアイ……。もしかして、あのアイテム自分に使っちゃったの?」

 

 ラキュースが訊ねると、イビルアイは無言でこくこくと頷く。それにラキュースは呆れてしまった。

 

「あれからさっぱり落ち着かなくてだな……ふ、普段はこんなこと無いのだが……」

 

「そう。精神攻撃の完全耐性を無効化するって、本当なのね」

 

 イビルアイの醜態の正体は、やはりあのマジックアイテムだったのだろう。イビルアイは間違えて自分に使ってしまったのだ。これがラキュースかアインズが対象ならば、単なる無駄撃ちで終わったろうに。

 しかしアンデッドの精神攻撃耐性を無効化する、と言っていたがそれだけではなくイビルアイは随分落ち着きがなくなってしまっている。どうやら、ちょっとした事で動揺してしまう体質になってしまったらしい。

 

「あー……む、胸がドキドキするぅ……。ゴ、ゴウン様はいないよな……?」

 

「大丈夫、まだ魔術師組合よ。……さすがに私も恥ずかしいから、彼がいなくなってからもう一度魔術師組合に行きましょう」

 

「…………」

 

 こくりと頷くイビルアイ。とんだ時間の消費に、ラキュースは溜息をつく。

 

 ……ちなみに、イビルアイの狂騒効果は一時間ほどで切れたのだった。

 

 

 

 

 

 

(いったい何だったんだ……)

 

 アインズは魔術師組合の帰り道で、先程出会った二人の冒険者の事に思いを馳せていた。

 

 アダマンタイト級冒険者チーム『蒼の薔薇』の神官でありリーダーであるラキュースと、アインズと同じ魔力系魔法詠唱者(マジック・キャスター)のイビルアイ。特に思い起こされるのはイビルアイの方だ。

 

(なんであの娘あんなに落ち着きがないんだ……?)

 

 アインズからして見れば、イビルアイは出会った当初から落ち着きが無い人間、という認識なので、先程の出来事もその延長線だとばかり思っていた。まさかイビルアイが自分に自爆で完全なる狂騒を使用してしまったなど、アインズは思いついていない。むしろアインズの心にあるのは、自分を対象に使われなくてよかったという点だ。

 そのため、アインズはイビルアイが自爆したなど全く気づいていないのだった。

 

(まさかあの慌てよう……俺がアンデッドだって気づいたのか!? ……いや、探知阻害系のアイテムはちゃんと装備しているし、仮面も幻影もバッチリのはず……単にあのイビルアイという女が情緒不安定なだけだな、うん)

 

 アインズはそう結論を下す。日頃の行いとは、かくも大事なのだ。

 

 そうしてアインズが通りを歩いていると、ふと見知った顔を見つけた。この王都には、本来いないはずの人間だ。

 

「……ルクルットさん?」

 

 そう……カルネ村で出会い、エ・ランテルで別れた冒険者『漆黒の剣』。その野伏(レンジャー)であるルクルットが妙に周囲を警戒したように歩いて、そこにいた。

 ルクルットはフードを深く被っており、アインズもフードの奥が偶然見えなければ気づかなかっただろう。

 

 自分の名前を耳に拾ったのか。ルクルットは驚愕の瞳で振り返り、そこにアインズの姿を見ると強張っていた全身を解くように肩の力を抜いた。

 

「アインズさん! よ、よかった……誰かと思ったぜ、俺」

 

「お久しぶりですね。どうしたんです、いったい?」

 

 まるで正体を隠すように歩いているルクルットに、アインズは首を傾げる。エ・ランテルとは全く違う彼の様子と、声をかけた時の慌てた反応が気になった。それに、他の者達はどうしたのか。

 アインズの疑問にルクルットは悩む素振りを見せ――アインズに近寄ると、アインズにだけ聞こえるようにこっそり言った。

 

「わりぃ……ちょっと内緒話だわ。その……よかったら、協力してくれね?」

 

「ふむ?」

 

 口調は前と変わっていないが、その声のトーンと瞳の真剣さは全く違っていた。おそらく何らかの厄介事なのだろう。……それも、かつてエ・ランテルでアインズに助けてもらう事を遠慮するような人間が、アインズに協力して欲しいと頼むほどの、だ。

 知らぬ仲ではないし、アインズはルクルットの言葉に頷いた。場合によっては協力してもいいだろう。

 

「かまいませんよ。……場合によっては、という注釈はつきますが」

 

「助かる。そんじゃ、ちょいと適当な店にでも……」

 

 ルクルットに促され、アインズは近くにあった適当な店に入る。カフェのような場所で、人もそう少なくない。ルクルットとアインズは店員に案内され適当な席に着いた。

 

「――――」

 

 アインズは一応、幾つか魔法を無詠唱化させて使用しておく。周囲の喧噪がほとんど聞こえなくなった事に気づいたルクルットが、アインズを見た。

 

「魔法を使いました。よほどの魔法詠唱者(マジック・キャスター)でないかぎり、私達の話に耳を傾けられることは――いえ、興味を示すことはないでしょう」

 

「……わりぃ、助かる」

 

 ルクルットは素直に頭を下げた。そして、アインズに今『漆黒の剣』が陥っている状況を語る。

 

 ルクルットの話では、『漆黒の剣』はちょっとした観光気分で王都にやって来たらしい。エ・ランテルでプレートのグレードが上がり、少しだけ羽目を外したようなものだ。そこで、ある一人の女性を拾ったのだとか。

 ……その女性は娼婦で、全身傷だらけで酷い状態だった。とても自分達では治癒出来ないほどの重傷で、神殿で治療しても治らないかもしれないほどの。

 どう考えても厄介事の塊だが、彼らにはその女性を見捨てられない理由があった。

 

「……実は、ニニャの姉貴なんだ。ニニャは昔貴族に連れて行かれた姉貴を探していて、その姉貴が――」

 

「――その女性、というわけですか。なるほど」

 

 随分と奇妙な偶然もあったものだ。偶然王都を訪れた『漆黒の剣』が、偶然仲間の一人の目的である姉を見つけるとは。

 だが、その偶然が幸運であるはずがない。事実、彼らは今窮地に陥っている。その女性を見捨てられないがために、その女性を抱える厄介事に巻き込まれているのだ。

 

「で、誰に追われてるんです?」

 

「……『八本指』。どうも、そいつらの息のかかった娼館の従業員だったみたいでよ。まあ、捨てられてたから“元”が付くだろうけど。そいつらが証拠隠滅のためにニニャの姉貴を回収しようとしてるってわけだ」

 

「ふむ」

 

 なるほど、分からん。アインズには『八本指』などさっぱり分からない。しかし、ルクルットが普通に出した言葉から、よほど有名な犯罪組織なのだろう。しかも、平然と娼婦に重傷を負わせ捨てられるほどの。

 そうなると、厄介事としては最悪の類だ。まず女性は重傷なのでそう長距離は動かせない。傷の治療が必要だ。

 しかし、神殿で治癒してもらおうとしても、十中八九その犯罪組織に知らせが届くだろう。そしておそらく、王都から出ようとしても検問所で止められるに違いない。

 つまり、彼らは八方ふさがりだった。

 

 ……それでも、彼らはその女性を見捨てられない。ニニャも捨てられない。

 

「…………」

 

 アインズの沈黙をどう取ったのか、ルクルットは軽薄な男のナリを潜め、真摯に頭を下げた。

 

「迷惑だって分かってるんだ! それに、アンタにゃエ・ランテルでも――何度も借りもある! でも……でも、頼む! 助けてくれ!」

 

 アインズとて何が出来るわけでもない。何せ単なる旅の魔法詠唱者(マジック・キャスター)だ。……それでも、アインズは何とかしてくれるという安心感があったのか、ルクルットは頼み込む。

 ルクルットのその様子に……アインズは溜息をついた。

 

(どうして俺には厄介事ばっかり寄ってくるかなぁー……)

 

 アインズは立ち上がり、ルクルットを促す。ルクルットはアインズを見上げた。

 

「とりあえず……まずは件の女性と会ってみますか」

 

 それはつまり、『漆黒の剣』が抱える厄介事に付き合ってくれるという事だ。ルクルットはアインズに深く頭を下げた。

 

「アインズさん……ありがとう!」

 

「気になさらず。……仲間は大切にすべきですからね」

 

 アインズだって、『アインズ・ウール・ゴウン』のメンバーがそうした厄介事を抱え込んだら、真摯に対応して解決しようとしただろう。仲間を見捨てない彼らに好感が持てたともいう。

 ……本当に、どうして彼らはこんなにもアインズの好みを直撃するのだろう。

 

「じゃあ、アインズさん。こっちだぜ」

 

 店を出たアインズはルクルットの案内に従って、再び王都の街中を歩き始めた。

 

 

 

 ――ルクルットは何度か尾行に気をつけながら、少し無駄に遠回りして目的の場所へと向かっているようだった。

 着いた建物は普通の宿屋の一室である。おそらく、冒険者用の宿ではその女性を匿えないと判断してだろう。冒険者の宿ではそういった厄介事の持ち込みは禁止されているだろうし、それを破れば彼らは完全に詰んでしまう。だからこっそり、普通の宿に入り込ませたのだ。冒険者だからこそ出来る芸当だが、かなり危ない橋を渡っている。

 

「おーい、帰ったぜ」

 

 ルクルットはドアを何度かノックし、少ししてドアが開いた。出て来たのはペテルだ。これも久しぶりな顔である。

 

「帰ったのかルクルット。アイテムは補充してきてくれたか?」

 

「いや悪い。ちょっとそれどころじゃなくなってよ……その代わり、すげぇの連れてきた」

 

「え?」

 

 ルクルットがドアの外を見るよう促し、視線をそちらに逸らしたペテルはようやくアインズに気づいたのか、瞳を驚愕に見開いた。

 

「ア、アイ……ッ!? と、とりあえず中に……」

 

 ペテルに促され、ルクルットとアインズは室内に入る。ペテルが鍵を閉めたのを見て、アインズは朗らかに手を上げて挨拶をした。

 

「ペテルさん、お久しぶりです」

 

「お久しぶりです、アインズさん」

 

 ペテルは頭を下げる。アインズはそれに苦笑し、頭を上げるよう促した。

 

「話はルクルットさんから伺ってますよ。とんでもない事件に首を突っ込みましたね」

 

「す、すみません……」

 

 恐縮するペテルだが、アインズを見ると再び頭を下げ、ルクルットと同じように真剣な瞳で語った。

 

「アインズさん……何度も助けていただいておきながら、虫のいい話だとは分かっています! ですが、お願いです! 少し手助けをしてもらえませんか!」

 

「いいですよ」

 

「すみません! ですがどうしても……え?」

 

「ですから、いいですよ」

 

 サラリと答えたアインズに、ペテルは呆然としている。

 

「既にルクルットさんから聞いていると言ったでしょう。とりあえず、件の女性は?」

 

「あ、こ、こっちです! ニニャも一緒にいます。ダインはちょっと買い出しに行ってるんですけど……」

 

「なるほど」

 

「あ、あのアインズさん……ありがとうございます!」

 

 指差された部屋の奥に行こうとしたアインズは、ペテルの深々とした礼にひらひらと手を振って答えた。

 

「ちょっと失礼しますよ」

 

 部屋の奥……ニニャのいる寝室に到着したアインズは、そう一言声をかける。それに弾かれたように後ろ姿を見せていたニニャは振り向き、アインズを見ると口をはくはくと呆然と動かした。

 

「お久しぶりです。ニニャさん」

 

「お、お久しぶりです……アインズさん…………」

 

 アインズはニニャから視線をずらし、ベッドで寝ている女性を見る。

 

 ……女性は静かに眠っているようだった。見た目だけならおそらくダインの治癒魔法で回復させる事が出来たのだろう。しかし、アインズの持つ様々な特殊技術(スキル)が、明確に彼女に漂うある臭いを嗅ぎ取っていた。

 ――そう、誰もが遠ざけたがるもの。“死”の臭いを。

 

 それがニニャにも分かっているのか。いや、ダインが治せなかったというのだから気づいているのだろう。ニニャの姉はもう、外傷を治す程度ではどうしようもない程に壊れていると。連日泣いていたのか、泣き腫らしたような瞳をしていた。

 

 ニニャはアインズを見つめると、今にも涙をこぼしそうな顔をして頭を下げた。ルクルットが、ペテルがそうしたように。

 

「お、おね、お願いしますアインズさん……。た、助けてください姉さんを……」

 

「…………」

 

「い、今まで何度も助けてくださったのに、またこうして頼むなんて恩知らずだということは分かっているんです。で、でも……姉さんを助けてください。お願いします……!」

 

 アインズは懐からこっそりアイテムボックスから取り出して用意していたものを取り出す。それは、一枚の羊皮紙だ。そして、それをニニャに突き出す。

 ニニャはいきなりアインズから突き出された羊皮紙に、ポカンとした顔をした。

 

「これは、巻物(スクロール)です」

 

「は、はあ……」

 

 そう、これはアインズが持っていた巻物(スクロール)だ。ただし、先程魔術師組合で買って補充したものでも、趣味で集めたものでもない。純粋に、正真正銘アインズがアイテムボックスに入れていた、初めからアインズが持っていたものだ。

 そして、おそらくこれを補充する事は二度と出来ない。だからこそ、アインズは告げる。

 

「中に、〈大治癒(ヒール)〉が込められています」

 

「〈大治癒(ヒール)〉……?」

 

「第六位階魔法。体力の回復だけでなく、病気などのバッドステータスもあらかた治癒する効果があります」

 

「…………!」

 

 ごくり、とニニャの喉が鳴った。そう、この異世界ではもはや二度と手にする事が出来ないとも言えるほどの、希少魔法の巻物(スクロール)である。

 

「はっきり言っておきますが、私は信仰系魔法を習得していないので、当然私が込めた魔法ではありません。そして、二度と手に入れる事が出来ないでしょう」

 

 この巻物(スクロール)は売れば、金貨数百枚どころか数万枚の価値が付くだろう。それほどまでに希少なマジックアイテムなのだ。しかも一度しか使えない。

 はっきり言おう。これは王族などが重傷や不治の病にかかった際に使うべきもので、当然こんな薄汚れた冒険者の身内風情に使うべきものではない。

 

 ニニャはその巻物(スクロール)をじっと凝視している。これがあれば姉が助かる。しかし――

 

「払えますか?」

 

「そ、それは――」

 

「私自身の力で解決出来るものならともかく、これは私でも二度と手に入れられないマジックアイテムです。だからこそ、無料というわけにもいきません。ニニャさん――貴方に、この巻物(スクロール)と同等の対価を支払えますか」

 

 不可能だ。ニニャの瞳がそう告げている。スレイン法国に行けば何とか手に入れられるかもしれないが、しかし当然ニニャにそんな事が出来るはずもなく、スレイン法国もニニャにそこまでするはずがないだろう。

 そう、ニニャには絶対に支払えない。それでも――――ニニャはアインズに縋りつくように頭を下げ、叫んだ。

 

「払います! いいえ、払ってみせます!! 何をしても、絶対! 私の全てを使っても! だから……だからお願いです! アインズさん……それを私にください!」

 

「当然、俺らも協力するぜ!」

 

「!?」

 

 その声に弾かれたようにニニャが貌を上げ、アインズの背後を見る。アインズも振り返った。そこには、ペテルとルクルットと、帰ってきたのであろうダインが立っている。

 

「み、みんな……」

 

「アインズさん。私達も協力してその代金を払わせてもらいます。だから……お願いです! ニニャの姉のために、それを使わせてください!」

 

「アインズ氏、お願いするのである。ニニャのために、ぜひ私にそれを使わせて欲しいのである!!」

 

 他の三人もアインズに頭を下げる。そんな三人を見て、ニニャは「みんな……」と涙をぽろぽろとこぼした。

 そんな四人に、アインズは訊ねる。

 

「払うんですね?」

 

 四人は頷いた。

 

「まだ代金が何かも言っていないですし、金貨でさえない可能性もあります。いえ、大きな犯罪に巻き込もうとしているかもしれません。それでも――払うんですね?」

 

「払います!」

 

 悪魔の言葉かもしれない。そう、これは魂を売り払う行為に等しい。それでも払うのか。アインズに魂を売るのか、とそう訊ねる。

 しかし全員は間髪入れずに頷いた。そんな『漆黒の剣』の言葉に……アインズはダインに向かって持っていた巻物(スクロール)をポンと投げた。ダインが慌てて受け取る。

 

「どうぞ」

 

「あ……」

 

「代金は、また後日何にするか決まった時にでも言いますよ。とりあえず借用書でも書いておきますか」

 

「あ、ありがとうございます……! アインズさん……!!」

 

 ニニャが泣きながら必死で頭を下げる。アインズはそれを無視して、近くの椅子に座った。ダインが慌てて巻物(スクロール)を使おうと女性に近寄る。ニニャはそんなダインの横で寝ている女性を見つめている。ペテルとルクルットはアインズと同じように近くの椅子に座り、そしてアインズに頭を下げた。

 

「ありがとうございます、アインズさん」

 

「お気になさらず。では、悪魔の契約書にサインをしてもらいましょうか」

 

「おーとも! サインしてやるぜ!」

 

 ルクルットの言葉にアインズとペテルは苦笑する。暢気なものだ。本当に、悪魔の契約書になるかも知れないのに。しかし――――

 

「姉さん!」

 

「――、――」

 

 視界の端で、ニニャが泣きながら姉に抱き着いている姿を捉える。ダインの手から、燃えて消えゆく巻物(スクロール)が落ちた。ダインは涙目だ。ペテルも、ルクルットもニニャを振り返って涙ぐんでいる。

 

 そんな彼らを見つめて――アインズは仮面の内側で眩しいものを見るように目を細めた。当然、錯覚だ。アインズの顔は骨である。そこに目蓋も、眼球も無い。けれど確かに、アインズは眩しいものを見たのだ。

 

 

 

 ――困っている人がいたら、助けるのが当たり前。

 

 

 

(そうですよね。みんな……)

 

 確かに最初は、困っている人を助けようとして生み出されたのがギルド『アインズ・ウール・ゴウン』なのだ。だからアインズは、この行為が正しい事だと信じている。ウルベルトだって、偽善だ何だと言いながら、結局最後には理不尽なPKに遭っていた異形種を助けていたではないか。

 例えそれが、仮想世界(ネット)の中でだけの偽善(ロールプレイ)なのだとしても。確かに救われたものがあって、輝いていたものがあったのだ。嘘がずっと嘘である必要は無いのだから。

 だからアインズは、彼らを助ける事が正しい事だと信じている。

 

 アインズの視線の先には、きょうだいが再会して抱擁する美しい姿があった――。

 

 

 

 

 




 
モモンガ・ブレイン「キャー! ガゼフー!!」
ガゼフ「声援が野太ぇ……」

漆黒の剣「悪魔の契約書にサインしちゃったけど大丈夫だよね!」
 







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