モモンガ様ひとり旅《完結》   作:日々あとむ
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タイトルできっと落ちてる話。
たぶん前話と同じで後書きを読むだけで話の内容がだいたい分かる。
 


身に覚えがありません

 

 

 ――緑がほとんどなく荒涼とした、赤茶けた大地。昼夜関係なく存在し、漂う薄霧。数百年前の建築物である崩れ落ちた尖塔が墓標のように幾つも突き出しており、その何一つとて元の形を留めているものは無い。

 建物は崩壊し、周囲に瓦礫となって砕けて散らばっている。それは時間の風化によってそうなったのではなく、大抵はこの地で行われた様々なモンスター達の争いが原因である。

 ここは、アンデッド達の蠢くところ。彼らの反応を覆い隠すように存在する霧からは何故かアンデッド反応があり、奇襲を受けて命を落とした冒険者は数知れない。

 

 そう、そこは血染められた死の大地。

 カッツェ平野と呼ばれる、人間種の誰もが忌避する呪われた土地である。

 

 

 

 

 

 

「最近依頼も無いし、そろそろカッツェ平野のアンデッド退治をしようと思ってるんだが、お前らどうだ?」

 

 バハルス帝国のミスリル級冒険者に匹敵するワーカーチーム、『フォーサイト』のリーダーである軽装戦士のヘッケランは、そう言って同じチームの仲間達を見回した。

 

 カッツェ平野のアンデッド退治は帝国では国家事業であり、無限と言っていいほど湧き出るアンデッド達の数から、定期的に数を減らすために年中無休でその仕事はある。アンデッドはあまり放置していると、生と死のバランスが崩れて強力なアンデッドが誕生するようになるためだ。

 そのため、依頼が無く財布が心許無くなってきた冒険者やワーカーにとっては金の成る木のような扱いを受けている。

 ……とは言っても、極稀に骨の竜(スケリトル・ドラゴン)のような恐ろしく強力なアンデッドが出現する事もあるので、命を落とす人間も少なくないのだが。

 

「そうですね……。そろそろ新調したいアイテムもありますし、懐が寂しくなってきたところです」

 

 神官戦士のロバーデイクが顎をさすって頷く。そうは言うが、彼の懐が寂しいのは自分の報酬を孤児院に寄付したりなどして、あまり自分の手元に残らないせいだ。装備品などは当然手を抜いていないが、しかし贅沢をする姿を見た事は仲間内でも一切見た事が無い。

 

「賛成。最近、矢とかアイテム補充したから、私もちょっとヤバイ」

 

 弓兵のイミーナは苦々しい表情で頷いた。カッツェ平野のアンデッド退治は金になるが、同時に装備の消耗が激しくもある。アンデッドは貫通攻撃や斬撃に対する耐性を持っている者が多く、有効な攻撃は打撃系であるため攻撃手段が弓矢のイミーナは矢の刃先を潰さなくては有効打を与えられない。

 しかし、そうして刃先を潰した矢はアンデッド以外に対してはあまり役には立たないので、別々に用意し常備しておかなくてはならないのだ。

 

「私も問題無い」

 

 若くして第三位階まで使いこなす魔法詠唱者(マジック・キャスター)のアルシェも抑揚を感じさせない口調で頷く。彼女は魔法詠唱者(マジック・キャスター)のため、そこまで装備を摩耗させる事は無いのだが、今までほとんど装備品を新調した事が無い。だが、基本的にどんな依頼でも受けようとする気持ちがある。しかし贅沢をしているようにも見えず、『フォーサイト』としては少しばかり不思議に思っているところがあるのも事実だ。

 

 仲間達全員から了承の意を受け取ったヘッケランは、頷くとこれからの予定を説明する。

 

「じゃあ、流れはいつも通りだな。今日は消耗アイテムの補充に充てて、明日の早朝出発しよう。俺とロバーでアイテムは補充するが、何か絶対に買ってきて欲しい物とかあるか?」

 

 ヘッケランはイミーナとアルシェに訊ねる。これは別にパシリと買って出た、というわけではない。単純に、やはり女性というものは軽視されがちで、特にイミーナは半分がエルフという事もあって昔いらぬ騒ぎを起こしてしまった事があった。アルシェは若すぎて、自分達ワーカーのような職種の人間がいく市場にはあまり適さない。

 ワーカーの集まっているこの歌う林檎亭では、ミスリル級冒険者に匹敵するイミーナやアルシェを軽視する人間は間違っても存在しないが、やはり見た目で相手を判断するどうしようもない人間はいるものだ。

 そういった連中とのいらぬ騒動を起こさないために、基本的にアイテムの補充などはヘッケランやロバーデイクの仕事だった。

 

「んー……最近補充したから問題無いわ」

 

「私も大丈夫」

 

 イミーナとアルシェはそう言って、ヘッケランの質問に否定を返す。ヘッケランはそれに了解し、ロバーデイクを誘った。

 

「じゃあ、消耗品の補充だけで充分か。ロバー、行こうぜ」

 

「ええ」

 

 ヘッケランの言葉にロバーデイクは頷き、席を立つ。二人で歌う林檎亭を出たヘッケランとロバーデイクは、他愛無い世間話をしながら帝都の雑踏へ消えていった。

 

 

 

 ――そして数日後、彼らはカッツェ平野にいた。

 

「相変わらず、霧で前がよく見えないわね」

 

 イミーナが煩わしそうに呟く。野伏(レンジャー)職業(クラス)を持つイミーナだが、このカッツェ平野ではそれはあまり意味をなさない。

 カッツェ平野は常に薄い霧が周囲を覆い隠しており、この霧が晴れるのは一年に一回。それも何故か、バハルス帝国とリ・エスティーゼ王国が戦争を起こすその一回のみなのだ。何故そうなのかは今のところ謎であるが、とにかくそういう場所のため、見通しがあまり利かない。

 そしてその霧からはアンデッドの反応が常にするために、アンデッド探知も役に立ちはしない。

 信じられるのは聴覚のみ。この耳でなんとかアンデッドの物音を探り、アンデッドに奇襲を受ける事だけは避けなくてはならないのだ。――まあ、つまりは野伏(レンジャー)の技能を持たないイミーナ以外の『フォーサイト』の五感は、もっと役に立たないという事だが。

 

「油断するなよ、イミーナ。老公から聞いた話じゃ、王国の冒険者チームがあの骨の竜(スケリトル・ドラゴン)に奇襲されて仲間二人殺られたって事があったらしいし」

 

 ヘッケランの言う老公、とは同じワーカー仲間であるパルパトラという老人の事だ。今では齢八十になるが、全盛期時代はオリハルコン級冒険者と同じ強さと言われたほどである。……もっとも恐ろしいのは、もはやいつ死んでもおかしくない老人だというのに、未だ現役であるという事だが。

 そのパルパトラが率いるワーカーチームがカッツェ平野でアンデッド退治をしていた時に、王国の冒険者チームと遭遇し、そしてあの骨の竜(スケリトル・ドラゴン)に空から奇襲されたらしい。奇襲であったため運悪く王国の冒険者チームは仲間を二人殺され、パルパトラ達と拙いながらも連携して倒したという話をヘッケランは酒場で聞いた事があった。

 

「それは……恐ろしいですね」

 

 ロバーデイクがごくりと喉を鳴らして、呟いた。骨の竜(スケリトル・ドラゴン)は難度四八のアンデッドであり、あらゆる魔法を弾く骨の体を持ち、そしてスケルトン系アンデッドとしての耐久力や持久力を、更にドラゴンの飛行能力を持つ恐るべきモンスターである。はっきり言って、ミスリル級冒険者でも苦戦する相手だ。

 そんなものにこの霧の中で空から奇襲されれば、それは生きた心地がしなかった事だろう。むしろ、死者二人で止めたというのを褒められるべきだ。

 

魔法詠唱者(マジック・キャスター)の私では、骨の竜(スケリトル・ドラゴン)の相手は出来ない」

 

 アルシェが悔しそうに呟く。魔法に対する絶対防御を持っているため、アルシェの魔力系魔法やロバーデイクの信仰系魔法が通用しないのだ。完全な物理攻撃で戦う事になるので、前衛型神官戦士のロバーデイクはともかく完全な後衛型魔法詠唱者(マジック・キャスター)のアルシェでは本来の実力を発揮出来ない。

 そして、イミーナも弓兵なのであまり骨の竜(スケリトル・ドラゴン)との戦闘で役には立てない。盗賊としての(クラス)も持ってはいるが、盗賊は戦士ほど前衛が出来る(クラス)ではないのだ。

 ――つまり、骨の竜(スケリトル・ドラゴン)に襲われた場合、『フォーサイト』は実質前衛のヘッケランとロバーデイクの二人で戦う事になる。

 仮にパルパトラに聞いた話のように骨の竜(スケリトル・ドラゴン)からの奇襲を許してしまえば、高確率で『フォーサイト』は瓦解するだろう。

 

骨の竜(スケリトル・ドラゴン)はカッツェ平野でも極稀にしか出現しないらしいから、そう心配しなくてもいい気はするけど……」

 

「ああ。だが、万が一を考えると恐ろしすぎる。イミーナ、気を抜くなよ」

 

「ええ」

 

 ヘッケランの言葉にイミーナは頷き、再び全身全霊で警戒しながら前を進む。

 

 ――霧の中は、アンデッドの気配に満ちている。腐敗臭こそしないが、アンデッド特有の臭いが周囲に充満している。いつ来ても、鼻が曲がりそうな所だった。

 

 四人は周囲に気を配りながら進んでいく。そうしてしばらく歩いていると、イミーナが物音を聞きつけ、ヘッケラン達に合図した。ヘッケラン達は勝手知ったるといった具合で、少しだけ互いに距離を取ってイミーナの警戒する方向を注視する。

 

 少しすると、カシャン、カシャン……といった骨の鳴る音が聞こえ始めた。そして、霧の中から浮き出るように歩くスケルトンを見つける。その数は四体。

 スケルトン系のアンデッドは外見に大きな差異が無いため、ぱっと見では種類が分からない事があるが、気配からヘッケラン達はこれが単なるスケルトンである事を判別した。

 そしてすぐさまヘッケランが前に出て、持っていた双剣で斬りかかる。最弱系アンデッドモンスターであるスケルトンはヘッケランの攻撃に反応する事も出来ず、容易く粉砕された。ヘッケランは一息つく。

 

「とりあえず、四体か。ちゃんと証拠はとっておかないとな」

 

「分かってる。骨の一部を回収する」

 

 アルシェがそう言い、スケルトンの骨の一部、それも証拠能力が高く出来るだけ小さい部位を回収し、持っている皮袋に入れる。一番証拠能力が高いのは頭蓋骨だが、頭蓋骨は流石に重すぎる。しかし腕や指などの一部は証拠としての力が無いため、必然的に首や背、腰の骨の辺りになる。

 ちなみに、スケルトン系は種類によって回収する部位が決まっている。報酬の二重取りなどの防止のためだ。

 

「そんじゃ、この調子で狩ってくか」

 

 ヘッケランは首と肩をコキリと鳴らして、仲間達を見回すと再び歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 唐突な話になるが、アンデッドの発生原因に関しては多くの不明な点があり、あまりはっきりとした原因は分かっていない。基本的には生者が死を迎えたその場所に、不浄なる生を持って生まれてくる事が多い。更にその中でも無惨な死に方をした死者や、満足に弔われない死者がいた場合アンデッドが発生する可能性は非常に高くなるという。

 そして、アンデッドには一つの問題があった。それは放置しておくとより強いアンデッドが発生し、それを放置すると更に強いアンデッドが発生するという現象。

 この現象を利用してかつて都市を一つ死都に変えた“死の螺旋”と呼ばれる暗黒の大儀式が存在するが……今は置いておこう。

 

 言いたい事は一つ。例えスケルトンのような弱いアンデッドであろうと、数が増えればそこからそれらより強いアンデッドが発生するようになる。そのため、墓地や戦場跡で発生したアンデッドは、どれほど弱いアンデッドだろうと決して見逃してはならない、という事。

 

 そういう意味で言えば、このカッツェ平野は地獄のような場所である。誰もが死の大地と呼んでも異を唱えないほどに、この土地は色々な意味で“終わっている”。

 

 だからこそ、この地は王国の依頼を受けた冒険者や帝国の騎士達、そして帝国の冒険者が自発的に共同で掃討を行っているのである。帝国と王国が共同で物資を運び、アンデッドを討伐する者達へ支援するための小さな街さえ維持していた。それほどまでに、カッツェ平野とは危険な場所なのである。

 

 年に一度は戦争を行い、いがみ合う王国と帝国が協力するほどに。

 このカッツェ平野の任務中に互いに殺し合いになるまで争った者達がその後罰則染みたものを受けるほどに。

 

 重ねて言おう。墓地や戦場跡で発生したアンデッドは、例えスケルトンであろうとも見逃す事は出来ない。

 見逃せばどうなるか――それは骨の竜(スケリトル・ドラゴン)と遭遇した冒険者達や、かつて一度だけ発生した伝説のアンデッド(・・・・・・・・)と遭遇した帝国の騎士達が恐怖に身体を震わせながら、口から泡と唾を飛ばして叫び教えてくれるだろう。あるいは、自ら体験する事になるかもしれない。

 

 しかし、見逃す事は出来ないと言われてもこのカッツェ平野には既に多くのアンデッドが生息している。

 例えば、霧の中を走る幽霊船の船長である死者の大魔法使い(エルダーリッチ)の噂があるし、他にもアンデッドの兵団を見た、という噂もある。

 不思議な事と言えば、彼らは王国と帝国の戦争の日だけは、どこにもおらず姿を隠している事か。一年に一度の霧が晴れる日だけは、彼らの姿を見る事は無い。

 

 しつこいようだが、もう一度言っておこう。墓地や戦場跡で発生したアンデッドは、例えスケルトンでも見逃せない。

 アンデッドはより強力なアンデッドを呼び寄せる。だからこそ、弱い内から始末して決して強過ぎるアンデッドを発生させないようにするのだ。

 

 ――――ならば、もし仮に。

 そんな死の大地に。これ以上は無いというほど強力なアンデッドが紛れ込んでいた場合、どうなってしまうのだろう――――?

 

 

 

 

 

 

「ぐ、おおあああああぁぁぁああッ!!」

 

 霧が周囲に充満し、満足に視界を確保出来ない中でヘッケランの雄叫びが木霊する。両手に持つ双剣が空を奔り、目前の敵に斬りかかる。

 

 ――オオオォォォオ

 

 だが、目前の敵は持っていた円形の盾が防いだ。そのままヘッケランに斬りかかろうとする。

 

「させません!」

 

 ロバーデイクがそう叫び、割って入る。手に持つメイスを渾身の力で敵のアンデッド――骸骨戦士(スケルトン・ウォリアー)の頭に叩きつける。骸骨戦士(スケルトン・ウォリアー)は大きくバランスを崩してその場でたたらを踏む。

 その隙にヘッケランが体勢を整え、骸骨戦士(スケルトン・ウォリアー)に追撃を与え骸骨戦士(スケルトン・ウォリアー)は崩れ去った。

 だが、そこで戦闘は終わらない。

 

「〈雷撃(ライトニング)〉」

 

「〈電気属性防御(プロテクションエナジー・エレクトリシティ)〉」

 

 一直線に進む白色の雷撃がロバーデイクへと迫る。それにアルシェが魔法で電気系魔法をある程度防ぐ〈電気属性防御(プロテクションエナジー・エレクトリシティ)〉でロバーデイクのダメージを減らす。

 

「この……!」

 

 イミーナが先程〈雷撃(ライトニング)〉を放った敵――死者の大魔法使い(エルダーリッチ)に鏃の先を潰した矢を放つ。だが、他の骸骨戦士(スケルトン・ウォリアー)死者の大魔法使い(エルダーリッチ)の前に割って入り、盾でその矢を防ぐ。イミーナは舌打ちした。

 

「〈双剣斬撃〉!」

 

 その隙に距離を詰めたヘッケランの双剣が光を走らせ、骸骨戦士(スケルトン・ウォリアー)の頭部に迫る。骸骨戦士(スケルトン・ウォリアー)は頭部にもろにその一撃を食らい、バランスを崩す。そこにアルシェの〈魔法の矢(マジック・アロー)〉が追撃し、骸骨戦士(スケルトン・ウォリアー)は更にバランスを崩した。ヘッケランは骸骨戦士(スケルトン・ウォリアー)にとどめを刺そうとし――

 

「〈恐怖(スケアー)〉」

 

「――ぁ」

 

 死者の大魔法使い(エルダーリッチ)が放った魔法により心を恐怖で塗り潰され、体の動きが止まる。

 

「ヘッケラン! 〈獅子のごとき心(ライオンズ・ハート)〉」

 

 体に軽い火傷を負ったロバーデイクがヘッケランに掛けられた魔法を打ち消す。ヘッケランは体の自由を取り戻した。イミーナは死者の大魔法使い(エルダーリッチ)が追撃してこないように再び矢を放つが、バランスを取り戻した骸骨戦士(スケルトン・ウォリアー)の盾によって再び防がれる。

 そして――――

 

「まずい――皆、散開!」

 

 アルシェの警告が全員に飛ぶ。死者の大魔法使い(エルダーリッチ)が捻じくれた杖を掲げ、魔法を唱えていたところだった。

 

「〈火球(ファイヤーボール)〉」

 

 その言葉が放たれる前に、全員が散開してお互いとの距離を離す。直後に業炎が噴き上がり、熱波が周囲を叩きつける。狙われたのは神官のロバーデイクだ。ロバーデイクの体を炎が包み込むが、しかしミスリル級冒険者と同等の強さのロバーデイクは一撃では死にはしない。そして距離を離していたために、範囲攻撃魔法である〈火球(ファイヤーボール)〉はなんとかロバーデイクだけにダメージを与えるに収まった。

 

「く……!」

 

 ロバーデイクは苦痛に顔を歪める。死者の大魔法使い(エルダーリッチ)は先程から執拗にロバーデイクを狙っている。おそらく、ロバーデイクが自分にとって天敵である神官だと理解しているのだろう。そして次に警戒しているのが前衛のヘッケランだ。どちらかと言うと後衛のイミーナや、人間であるが故に自分より格下の魔法詠唱者(マジック・キャスター)であるアルシェはそれほど狙ってこない。さすがに通常のアンデッドとは違い、知性の高さが段違いである。

 

 ――気づけば、ヘッケラン達は死者の大魔法使い(エルダーリッチ)と遭遇していた。この霧のせいだろう。互いにそれほど距離を離さない場所で発見し、戦闘になった。

 

 死者の大魔法使い(エルダーリッチ)は強力な魔法詠唱者(マジック・キャスター)のアンデッドである。特に範囲魔法である〈火球(ファイヤーボール)〉を連発出来るというのだから恐ろしい。更に、アンデッドのため疲労とは無縁であり、疲れ知らずだ。

 冒険者ならばミスリル級で勝算は十分あるが、それ以下となると少々厳しくなる。遠くから発見されず、ある程度近い距離で発見出来たのはむしろ幸運だろう。距離が離されていればいるほど、勝利する事が絶望的になっていただろうから。

 

「まったく……まさか、死者の大魔法使い(エルダーリッチ)と遭遇する羽目になるとは。運が無いぜ」

 

 ヘッケランは悪態をつく。何せかなりの強敵だ。出来れば一生遭遇したくないくらいの。『フォーサイト』は一度死者の大魔法使い(エルダーリッチ)が率いるアンデッド兵団と戦った事があるが、その時も死者が出る可能性があるほどに苦戦を強いられた。

 死者の大魔法使い(エルダーリッチ)は難度六〇を超える。はっきり言って、骨の竜(スケリトル・ドラゴン)の方がマシなくらいだ。

 

「本当ですね……。これは、帰ったらクジでも引いてみますか? 大当たりが出るかもしれませんよ」

 

 回復魔法を使い体力を回復したロバーデイクもヘッケランの言葉に頷く。その言葉にイミーナが刺々しい声で言葉を返した。

 

「そんなのよりコイツを討伐した報酬の方が堅実よ。男って奴はこれだから……」

 

「一攫千金なんて夢。お金は堅実に集めるべき」

 

 イミーナの言葉に妙に実感が籠もった言葉で返したのはアルシェだ。何故か鬼気迫る迫力が籠もっているのは、もしや一度試してみた事があるのか――。

 

 ヘッケラン達は強敵を前に軽口をたたく。これは余裕の表れなのではない。強敵を前に、そうやって軽口をたたく事で心を落ち着かせているに過ぎない。

 

 何故なら、このカッツェ平野で死者の大魔法使い(エルダーリッチ)に遭遇するのは恐ろしい事だから。

 どこかの廃墟か墓場で遭遇したのだとしよう。それならばまだ、彼らは余裕をもって戦える。例え死者の大魔法使い(エルダーリッチ)ほどの強敵を前にしても、決して不覚を取る事は無い、といつもの調子で言い切るだろう。実際はどうであれ。

 しかしここはカッツェ平野。周囲を霧が包み、どこからアンデッドが飛び出してくるか分からない危険な死地である。そこで強力なアンデッドと遭遇し、戦闘になる事がどれほど恐ろしい事なのか――想像に難くない。

 死者の大魔法使い(エルダーリッチ)骨の竜(スケリトル・ドラゴン)より強敵である。ならば――もしや、骨の竜(スケリトル・ドラゴン)もいるのでは。そんな恐ろしい妄想が脳裏から離れないのだ。

 

 だから、彼らはいつも通りの軽口を言い合う。その恐ろしい妄想を取り払うように。

 

「いくぞ――!」

 

「神の加護を見せて差し上げましょう!」

 

 ヘッケランが叫び、死者の大魔法使い(エルダーリッチ)に向かって突進する。そこに骸骨戦士(スケルトン・ウォリアー)が盾となるべく割って入るが、ロバーデイクがアンデッド退散を使う。その途端、骸骨戦士(スケルトン・ウォリアー)は塵となって破壊された。

 このアンデッド退散はある程度のレベルの神官ならば使えるもので、レベル差が離れていればアンデッドを消滅させる事が出来る。今までこれを使わなかったのは温存もあったが、何より一度使ってしまえば死者の大魔法使い(エルダーリッチ)は警戒する。死者の大魔法使い(エルダーリッチ)ほどの強敵ならば、アンデッド退散は通じない。下手に手の内を見せたくなかった。

 骸骨戦士(スケルトン・ウォリアー)という前衛が一瞬で蒸発したため、死者の大魔法使い(エルダーリッチ)は驚き一瞬動きを止める。

 

「くらいな!」

 

 そしてその隙を縫うように、イミーナが鏃の先を潰した矢を放つ。その数三本。前衛がいないため、今度こそ矢は死者の大魔法使い(エルダーリッチ)の胸を叩いた。

 

『グオォ……』

 

「〈魔法の矢(マジック・アロー)〉」

 

 アルシェの魔法の光球が死者の大魔法使い(エルダーリッチ)に突き刺さる。だが、死者の大魔法使い(エルダーリッチ)はそこでそのままバランスを崩し無防備を晒す、などと無様な姿は見せなかった。死者の大魔法使い(エルダーリッチ)が近づいて来ていたヘッケランに指を差し、その指に白い雷が宿る。おそらく一瞬の後、その白い雷はヘッケランに向かって宙を奔り彼を殺すだろう。

 

(〈雷撃(ライトニング)〉か! だが!)

 

 ヘッケランは武技を発動させる。〈限界突破〉、〈痛覚鈍化〉、〈肉体向上〉、〈剛腕剛撃〉――そして。

 

「〈双剣斬撃〉!」

 

 ヘッケランの肉体を損傷させながら放たれる、一撃必殺の最高の一撃。双剣が弧を描いて死者の大魔法使い(エルダーリッチ)へと迫る。死者の大魔法使い(エルダーリッチ)は反応出来ない。頭がいいからこそ、死者の大魔法使い(エルダーリッチ)は先程までのヘッケランの速度を念頭に魔法を放ったはずだ。まだ間に合う、殺せる、と。

 だが、ヘッケランが武技を幾つも同時に発動したせいでそれが狂う。戦士職でもない死者の大魔法使い(エルダーリッチ)にはもはや何もする事が出来ず――

 

「死にやがれ! この糞アンデッド!!」

 

『グ、ガァッ! オ、オノレ……』

 

 無防備な胴体を双剣が切り裂く。刃物が骨をゴキゴキと鈍い音を立てて切断する感触がヘッケランの両手に伝わる。そんなヘッケランに向かって死者の大魔法使い(エルダーリッチ)は、最後の抵抗とばかりに先程まで灯っていた魔力の消えた手を伸ばす。アンデッドには負のオーラが纏わりついている。そんなものに触れられればどうなるか――。

 

『カッ……』

 

 だが、そのおぞましい手はヘッケランに触れる事は無かった。イミーナの放った鏃の潰れた三本の矢が死者の大魔法使い(エルダーリッチ)の頭部に撃ち込まれ、限界までダメージを負った体が崩れ落ちた。

 そして、周囲を再び静寂が包み込む。

 

「ッ、はぁー……」

 

「大丈夫ですか、ヘッケラン」

 

 ヘッケランはその場にへたり込み、近寄ったロバーデイクが〈中傷治癒(ミドル・キュアウーンズ)〉を唱え、ヘッケランの傷を癒す。ロバーデイク自身の傷も、既に治癒魔法で癒していた。イミーナとアルシェは既に周囲の警戒に入っている。ヘッケランとロバーデイクを信頼しているからだ。自分達のリーダーが死ぬはずはなく、ロバーデイクはヘッケランの傷をきちんと癒すだろう、と。

 

「しっかし疲れたぜ。いや、マジで」

 

「確かに。さすがに死者の大魔法使い(エルダーリッチ)は予想外に過ぎましたよ」

 

「自分じゃ運のいい方だと思ってたんだけどな……」

 

「いいんじゃないですか? 当たりを引きましたし」

 

「こんな当たりはいらねぇ……」

 

 ヘッケランの愚痴にロバーデイクが苦笑しながら返す。少し愚痴を吐いて落ち着いたのか、ヘッケランは立ち上がり、しゃがんでいたロバーデイクも身を起こした。

 

「さて、んじゃま、この糞野郎の遺品、遺品でいいのか? まあいいや……遺品を貰って今日はもう帰りますかね」

 

「賛成。さすがに死者の大魔法使い(エルダーリッチ)はきつい」

 

「帰ってゆっくり休みましょうか」

 

「ちょっと待って」

 

 イミーナの緊張を含んだ言葉に、全員が動きを止めて警戒態勢を取る。

 

「どうした?」

 

「こっちに近づいてくる気配がある。複数」

 

「…………」

 

 全員がイミーナが警戒した方向をじっと見据える。少しして霧から徐々に影が見え始める。それは人型でありまたアンデッドかと思ったが――違う。アンデッドにしては気配に生命力が溢れ過ぎている。徐々に見え始める人影達に目を凝らし……そして、気づいた。

 

「グリンガム!」

 

「ヘッケランか!」

 

 向こうも警戒していたのだろう。グリンガムと彼が連れた仲間達はヘッケラン達の姿を見ると安心したように構えをといた。ヘッケラン達も武器を降ろす。

 

「お前らもカッツェ平野のアンデッド退治か?」

 

「汝らもそのようだな」

 

 グリンガムはヘッケランと同じレベルのワーカーであり、『ヘビーマッシャー』という大所帯ワーカーチームを率いるリーダーだ。

 ヘッケランはいつもの気安さが無いグリンガムの変な口調を疑問に思い、ふと背後を見ると帝国の騎士達が一緒にいるのに気づいた。グリンガムの仲間自体はいつもの十四人というチームではない。

 

「あん? 帝国の騎士さん達までどうした?」

 

「いや、それがな……先程まで骨の竜(スケリトル・ドラゴン)と戦っていたのだ」

 

「はあ? マジかよ?」

 

「ああ。珍しく今回は運が無かった。だが、帝国の騎士達も近くにいたので楽に勝てたぞ」

 

 このカッツェ平野で他者との諍いは厳禁である。帝国の騎士達も、普段は犯罪者手前の扱いであるワーカーに対して寛容だった。もっと正確に言えば、骨の竜(スケリトル・ドラゴン)という強敵を前にそのような暇は無かった、とも言える。お互いで即席だが協力して戦ったらしい。

 

「いやいやグリンガム。お前らはまだ運がいいって。俺らなんて死者の大魔法使い(エルダーリッチ)に遭遇したんだぞ?」

 

「はあ!? マジか!? あ、いや、本当か!?」

 

 一瞬素が出て口調が元に戻るが、すぐに思い出したようにグリンガムは直した。素が出た気持ちは分かる。ヘッケランは苦笑いして答える。

 

「おう。さっきまで激戦で、もう帰ろうかと思ってたところなんだよ。そこ、転がってるだろ?」

 

「おぉ……」

 

 死者の大魔法使い(エルダーリッチ)の残骸を見つけたグリンガムは呻く。その会話を聞いていたのだろう帝国の騎士達の隊長格の騎士が、二人に近寄り、声をかけた。

 

死者の大魔法使い(エルダーリッチ)骨の竜(スケリトル・ドラゴン)とは……今回は随分と大盤振る舞いでしたな。しかし、これでしばらくは強力なアンデッドは出現しないでしょう」

 

 帝国の騎士隊長の言葉にヘッケラン達も頷く。

 

「確かにな。どっちも稀にしか出ないし、今回出たならしばらくはこのクラスは出ないだろ」

 

「本来ならばあの幽霊船の船長も退治するべきなのだろうがな」

 

 このカッツェ平野で有名なアンデッドを思い出し呟くグリンガムに、ヘッケランは苦笑した。

 

「無理だろ。そもそもなんだよ幽霊船って。平野滑ってんじゃねぇよ船が」

 

「まったくです」

 

 船なんだから陸地ではなく水面を滑れ、という切実な願いである。平野を滑るからこその幽霊船なのかもしれないが。

 

「さて、俺らは帰るけどお前らどうすんだ?」

 

「我らもそろそろ帰還する。アイテムが心許無くなってきたところなのだ」

 

「私どももそろそろ交代の時間なので、別の隊が来る頃でしょう」

 

 そう言って、お互い別れようとする。そこに待ったをかけられた。

 

「待ってくれ」

 

「ヘッケラン、何か近づいてくるわ」

 

 グリンガムのチームの盗賊と、イミーナだ。三人はその言葉ですぐさま警戒し、騎士隊長は騎士達に警戒態勢を取らせ、並ばせる。ワーカー達も同様だ。

 

 そして少しして霧をかき分け、黒い騎士甲冑を着込んだアンデッドの騎士が現れる。眼光は赤く輝き、生命に対しての深い憎しみを感じさせた。黒い全身鎧(フルプレートメイル)には化粧のように所々赤いものが付着している。その姿を見せた二メートルを超える巨躯のアンデッドの姿に、全員がいい知れぬ不安を抱えて凍りつく。冷や汗が全員の背中を、頬を伝う。

 

 逃走不可能の絶望が、姿を現した。

 

 彼らに出来る事は二つだけ。このまま死を受け入れ無力に死すか――あるいは、少しでも抵抗して微力に死すか。

 それだけである。

 

 

 

 

 

 

 かつて帝国は一度、カッツェ平野であるアンデッドと遭遇した。

 

 その時の帝国騎士達の戦力は一個中隊。戦力としては十分である。

 彼らはいつも通り任務だからと討伐を開始した。そして、当たり前のように一方的に殺された。

 

 相手は強過ぎた。骨の竜(スケリトル・ドラゴン)死者の大魔法使い(エルダーリッチ)も、このアンデッドの前ではゴミのように感じるほどに。

 その化け物はおぞまし過ぎた。殺された者はゾンビになり、そのゾンビに殺されればまた新たなゾンビが誕生するから。

 

 自分達の前に絶望がいると知ったのは、接触からわずか数十秒の後。たったそれだけの時間で、帝国の騎士達は撤退を、いや逃亡を余儀なくされた。

 

 強力なアンデッドは強力なアンデッドを呼び寄せる。

 

 かつて帝国が遭遇し、そして二度と出遭いたくないと願った恐ろしい死の騎士が、再び彼らの前に姿を現していた。

 

 

 

 ――まず最初に、帝国に仕える魔法詠唱者(マジック・キャスター)が全力で逃げ出した。

 彼は知っているのだ。このアンデッドを。姿そのものは見た事がなくとも、自分達のいる帝国魔法省にこれと同じアンデッドがいたのを。知識として。

 だから彼は逃げた。その結論は間違っていない。誰が見ても正しいと言える。彼が無事に逃げ出せれば、すぐさまこの事は帝国に伝わり、最短で帝国最強の魔法詠唱者(マジック・キャスター)、フールーダとその弟子達をこのカッツェ平野に呼び寄せる事が出来ただろう。

 そう、無事に逃げ出せたのなら問題は無かった。彼に間違いがあったとすれば一つだけ。

 

 それは、あまりにも慌て過ぎた事。〈飛行(フライ)〉を使って逃げれば、もしかしたらこのカッツェ平野から生きて帰れたかもしれないのに。

 道中には危険が山のようにあるだろう。もしかしたら他のアンデッドに弓で狙われるかもしれない。

 いや、そもそも踵を返す前に仲間達に事情を説明し、撤退を進言すれば少なくとも彼は家に帰れたかもしれないのに。

 

 踵を返し走った魔法詠唱者(マジック・キャスター)。それを見逃すほどその死の騎士は甘くなく――――

 

「ぁ」

 

 気づけば、彼の前には恐ろしい死の騎士がいた。黒い疾風がワーカー達と帝国の騎士達の間をすり抜け、彼の目の前に出現する。

 彼が許された距離は、たったの五歩だった。

 

「――――」

 

 白銀の輝きがきらめいた後、首が一つ宙を舞う。刹那の後に切断面が噴水のように血を噴いた。どさりと頭を失った体が地面に倒れ、切り離された首はボールのように転がる。

 

『フシュウウゥゥ――』

 

 喜悦の声が、周囲に響いた。黒い全身鎧(フルプレートメイル)にびしゃびしゃと血が付着し、化粧を作る。まるで祝福の喝采を浴びたかのように、それは歓喜の声を上げたのだ。

 逃れようもない死を纏った騎士――伝説のアンデッド、死の騎士(デス・ナイト)が残った人間達を見つめる。今まで呆然としていた者達が弾かれたように体を動かす。彼らは気づいているのだ。これから行われるのが戦闘ではなく、おそらく虐殺となるだろう事を。

 

 そしてその成就して欲しくない予感を肯定するように、死の騎士(デス・ナイト)は歩き出す。

 彼らを、皆殺しにするために。

 

 

 

「押さえろ! 押さえろぉッ!!」

 

「駄目だ!! 逃げろ! 逃げろ!!」

 

 今、本物の地獄がカッツェ平野に広がった。帝国の騎士達がゴミのように宙を舞い、死んでいく。

 

『クカカカカカカ……ッ』

 

 臓腑を転がすような嗤い声のような呻き声が周囲に響く。それにゾッとしながらも、ヘッケランはすぐさま指揮を飛ばす。

 

「アルシェ、逃げろ!」

 

「そんなの出来ない!!」

 

 ヘッケランの言葉にアルシェは泣き叫ぶような声を出した。普段のアルシェなら絶対に出さない、金切声のような叫び声。分かっているのだ、アルシェは。いや、騎士達の攻撃を受けてなお無傷な死の騎士(デス・ナイト)の姿に、分かってしまった。

 あの恐ろしいアンデッドに満足にダメージを与えられるのは、アルシェのような魔法詠唱者(マジック・キャスター)だけ。前衛の物理攻撃では盾と鎧の前に弾かれ、かと言って信仰系の魔法詠唱者(マジック・キャスター)ではレベル差があり過ぎて通用しない。

 つまり、帝国の魔法詠唱者(マジック・キャスター)が死亡した時点で、満足にダメージを与えられるのは『ヘビーマッシャー』の魔法詠唱者(マジック・キャスター)とアルシェの二人だけだ。その内の一人でもいなくなれば、戦線は容易く崩壊し、きっと全員殺される。

 

 だが、だからこそヘッケランは言わなくてはならなかった。

 

「いいから行け! お前じゃなけりゃ駄目だ!! アルシェ! お前なら帝国の魔法省にコネがあるだろ! そこからお上にこのアンデッドの事を伝えろ! 帝国の魔法詠唱者(マジック・キャスター)が一番に逃げ出そうとしたのは、たぶんこのアンデッドの事を知ってるんだ!」

 

 それは頭の悪いヘッケランが考えた、正解に近い答えだった。少なくとも他の人間達がぐうの音も出ないほどの正論で、この場で唯一活路を見出せそうな答えでもあった。

 

「第三位階を使えるお前なら、一人でもカッツェ平野を出られる! だから、お前じゃないと駄目なんだアルシェ! 逃げろ!!」

 

「あ、あう、あ…………」

 

 その正論の前にアルシェは反論する術を持たない。置いていきたくなど無いのに、しかしそれが正解だと分かってしまう。

 

 だがきっと、そうすればこの場の全員死ぬ。

 

 ここに残れば、もしかしたら勝てるかもしれないのに。そんな淡い夢が抱けるのに。

 

『オォォオオォオ――』

 

 死の騎士(デス・ナイト)が逃げる者の気配を察したのか。アルシェに目を向ける。睨まれたアルシェは蛇に睨まれた蛙のように恐ろしさで身動きが止まる。

 

「こっちを見ろクソッたれぇぇええッ!!」

 

 それを、イミーナが矢を射る事で注意をこちらに向けた。正確に鎧の隙間の顔面を狙われた死の騎士(デス・ナイト)は、盾で防ぐとイミーナを見る。そして、そちらに一歩近づいた。

 

「グリンガム! やるぞ!」

 

「仕方ないな! それしか生き残る道は無さそうだ!」

 

 馬という足があれば逃げられたかもしれない。〈飛行(フライ)〉が使えれば、絶対に逃げられただろう。

 だが、馬も無ければ〈飛行(フライ)〉も使えない、そんな『フォーサイト』と『ヘビーマッシャー』にはこれ以外の道は取れない。

 

 それは、耐え忍ぶ事。ひたすら全員で纏まって追われながら後退を続けて、アルシェの呼ぶ援軍を待つしかない。

 

「おいおい……」

 

「冗談じゃありませんよ、本当……」

 

 ロバーデイクや盗賊が絶望的な声を上げた。死の騎士(デス・ナイト)に殺された者達が動き出している。首を断たれた者は動かないが、それ以外の帝国の騎士達がゆっくりと起き上がり、ゾンビとなってこちらを見ている。

 その瞳に宿るのは敵意と嫉妬だ。お前達もこちらに来い、と。

 

 全員がアルシェを見ている。それは生存を強く信じる目だ。それ以外に生き残る道が見出せない者達が見せる、覚悟の瞳。生か死かを選ばされる冒険者やワーカーが見せる、覚悟の瞳である。

 その瞳を前にして。アルシェは涙で顔をくしゃくしゃにしながら、頷いた。

 

「わ、わがっだ……」

 

 無論、お互いこれが今生の別れになるかもしれない事は理解している。しかしこれが一番生存確率が高いのも事実だった。このカッツェ平野でバラバラに逃げても、おそらくきっと誰も生き残れない。かと言って纏まって逃げても、あの死の騎士(デス・ナイト)が追いかけてくる。

 

 だから、絶対に生存出来る人物が逃げ出し、救援を呼ぶ。そしてその間亀のように縮こまって耐え忍ぶしか、もう彼らに出来る事は無い。

 

「〈飛行(フライ)〉――」

 

 アルシェは魔法を発動させると、無言で霧の中に消えていった。それを追おうとする死の騎士(デス・ナイト)であるが、そんな事は当然ヘッケラン達がさせない。

 

「おぉぁぁああああああッ!!」

 

 アルシェの背後で、魂を振り絞るような叫び声が聞こえた――。

 

 

 

「はあッ、はあッ!」

 

 そして、アルシェは緊張で呼吸を乱しながらも、〈飛行(フライ)〉で霧の中を突き進んでいく。しばらくすると、制限時間により体を包む魔法の力が弱まってきた事に気づいた。

 

「う、うぅ……」

 

 アルシェは再び魔法を唱えようとする。ここはまだ、それほど進んではいない。全力で飛行するといざモンスターに気づいた時に止まれず、モンスターの群れの中に突撃する羽目になるかもしれないからだ。

 だが、ゆっくりするわけにはいかない。早く援軍を連れて来なければ、全員死んでしまう。

 確か、帝国の騎士達がそろそろ交代の時間だと言っていたはずだ。だとすれば、援軍はすぐに連れて来れる。その時に帝国の魔法詠唱者(マジック・キャスター)に顛末を伝え、自分よりも高位の魔法詠唱者(マジック・キャスター)を連れてきてもらうしかないのだ。

 放置するのは、論外なのだから。

 

 さくり。アルシェはその時耳に地面を踏む音を聞いた。

 

「――――!」

 

 呼吸が荒くなり、冷や汗が出る。体温は一気に下がった。何か、近くにいる。

 

 さくり。さくり。誰かが歩いてきているようだ。アルシェは震えながら杖を握り、霧の中から浮かび上がる黒い人影に怯える。それと同時に、絶対に生き残ると覚悟を決めた。

 

 さくり。さくり。近づいてくる足音と影。きっと向こうも、こちらに気づいている。アルシェは杖を突きつけ、そして現れる人影と巨大な影に驚愕した。

 

「――――」

 

 現れたのは、豪奢な黒いローブとマントを羽織った、仮面をつけた魔法詠唱者(マジック・キャスター)らしき者だった。その隣には、先程の死の騎士(デス・ナイト)に匹敵するほどの精強な魔獣がいる。

 何故か魔法詠唱者(マジック・キャスター)らしき者からはアルシェの生まれながらの異能(タレント)で魔力が見えなかったが、隣の魔獣の強さはその見た目だけで一目瞭然である。一目で、アルシェは自分に勝ち目が無い事を悟ってしまった。絶望がアルシェを襲う。

 

 現れた魔法詠唱者(マジック・キャスター)らしき者はアルシェを見つめ――呟いた。

 

「どうかしましたか? お嬢さん」

 

 深い知性を感じさせる、落ち着いた声だった。アンデッドのような恐ろしさなど欠片も無く、ただひたすらに、この場でアルシェのような少女が一人でいる理由が分からない、と告げる穏やかな気配だった。

 

「――――あ」

 

 そんな落ち着いた魔法詠唱者(マジック・キャスター)らしき者の気配に、アルシェは一気に気が緩み、へたり込む。そして、必死になって訴えた。

 

「た、助けて……」

 

 

 

 

 

 

 アインズはカッツェ平野に到着した時、さすがに絶句した。

 

「えぇー……マジか」

 

 そう、さすがのアインズも絶句するしかない。アンデッドの反応がずっと大規模にするため、まさかと思ったがそのまさかだったと気づいたからだ。

 

 霧そのものから、アンデッドの反応がするのである。

 

 これではアインズが思っていた魔法で霧を晴らそう、という行為は無為に等しい。そんなもので晴れるとは思えなかった。おそらく、この霧は天気だとかそんなものではなく、もっと別の理論によって漂っているものだ。

 

「どうかしたでござるか、殿?」

 

「いや、なんでもない……」

 

 アインズは溜息をついて、魔法を唱える。

 

「〈不死者忌避(アンデス・アヴォイダンス)〉」

 

 低位のアンデッドを近寄らせない魔法を使い、自分とハムスケを覆う。元からアンデッドの自分にはあまり必要の無い魔法なのだが、ついでとばかりにかけておく。

 そしてアインズはハムスケの背中から降り、ドキドキワクワクと胸を高鳴らせながらカッツェ平野を彷徨ったのだが――――

 

「誰も出ないではないか」

 

「殿。それがしにそう言われても困るでござる」

 

 アインズ達の前には、さっぱりアンデッドは出なかった。影も形も見えなかった。

 わざわざ低位のアンデッド避けを張ったのは、有象無象のような連中には興味が無かったためだ。しかしせいぜい効果があるのは低位なので、死の騎士(デス・ナイト)魂喰い(ソウルイーター)などの中位アンデッドは避けられない。アインズの興味があるのは最低限それからで――つまりあのナザリック地下大墳墓でも自動湧き(POP)しないアンデッド達が自然発生するか興味があったからなのだ。

 だと言うのに、アインズの周囲には全く現れない。幾ら歩いても、幾ら待ってもアインズはアンデッドの一体にも遭遇しなかった。

 

「つ、つまらん……」

 

 ぽつりと呟く。こんなにも虚しい観光があっただろうか。いや、無い。

 

「何も見えないし、何もいないでござるからなぁ……殿、どうするでござるか?」

 

「どうするかな……もうかなりの時間歩いているし、それこそ夜になるまで待ってみるか?」

 

 今は一応日中である。モンスターの出現率とは太陽が出ている時と夜とでは全く異なる事が多い。この異世界でもそうだとは限らないが、待ってみる価値はあるだろう。

 

「仕方ない。魔法の効果もそろそろ切れるが、夜までもう少し歩いて――」

 

「殿。何か聞こえるでござるよ」

 

「なに?」

 

 ハムスケがパタリと耳を揺らしている。ハムスケの聴覚は、何らかの音を捉えたようだ。

 

「何の音だ?」

 

「むむむ……殿、これはたぶん戦闘でござるな。何者達かが戦っているでござる」

 

「ふむ……」

 

 可能性としては、アンデッドと戦っている冒険者、といったところだろう。このカッツェ平野はアンデッドの多発出現地帯なので、王国では冒険者を何度も派遣して、アンデッドの発生を少しでも抑制していると『漆黒の剣』から聞いていた。

 

「何のアンデッドと戦っているか、気になるな。少し近づいてみるか」

 

「了解したでござる」

 

 アインズの言葉にハムスケは頷き、歩き出したアインズの一歩後ろをハムスケも歩く。そのままゆっくりと歩き続けて――

 

「殿、今度は誰か近づいてきているでござる」

 

「うん?」

 

 困惑気味のハムスケの言葉にアインズは疑問に思い、少し立ち止まる。少し考え――ハムスケが何も言わないので、あのツアーのような危険な匂いは感じないのだろうと判断して再び歩を進めた。

 

「確かめてくるか」

 

 そう言ってハムスケの言う方角へ歩いていく。ハムスケもそれに当然追従する。そして、顔を涙でぐしゃぐしゃにした少女が姿を現した。

 少女は手にしっかりと杖を持っており、おそらく見た目から魔法詠唱者(マジック・キャスター)だと判断する。

 自分達を見ても何の反応も示さない少女に首を傾げ、アインズは訊ねた。

 

「どうかしましたか、お嬢さん」

 

 なるべく落ち着かせるように、穏やかに話しかける。もしかしたらハムスケを見て襲いかかるんじゃないだろうかと思い、少し警戒した。しかし少女はアインズの言葉を聞くとその場にへたり込み、震える声でアインズに囁いた。

 

「た、助けて……」

 

 そんな少女の懇願に、アインズとハムスケは顔を見合わせたのだった。

 

 

 

 

 

 

「帝国の騎士! 首を斬れ! 早くしろ! 蘇ってくるぞ!!」

 

「急げ! 急げ!」

 

「ロバー! アンデッド退散を――」

 

「無理です! もう使用回数が……!」

 

「畜生! 連中また集まって来やがった!!」

 

 戦場を、絶望的な叫び声が木霊する。その中で、ただ死の騎士(デス・ナイト)だけが哄笑のような呻き声を上げていた。

 

 最初はまだよかった。おそらく死の騎士(デス・ナイト)は遊んでいたのだろう。何人か殺したが、その後は自分達を盾で強打するという腹立たしい遊びを開始したからだ。その場合はダメージは負っても死にはしない。死の騎士(デス・ナイト)を常に視界に入れながらも、人数差でゾンビを狩っていけばよかった。

 だが、次第にヘッケラン達は気づいた。スケルトン達が周囲に集まり始めている。おそらく、血の臭いか生命の匂いに誘われたのだろう。アンデッド達はヘッケラン達の奮闘に誘われるように、この地獄を更に地獄に塗り替えるために集まりつつあったのだ。

 

 これが、地上で戦うワーカーや帝国の騎士達でなく、魔法詠唱者(マジック・キャスター)達の部隊ならばよかった。彼らは空を飛び、その上から範囲攻撃の魔法を降らす事が出来るために、どんなに頭の悪いアンデッドでもおいそれとは近づいて来なかっただろう。

 だが、今ここで戦う者達はいずれも空を飛べない者達だ。一人二人程度が飛べたとしても、弓を持ったスケルトンに落とされる。この数では対抗出来ない。

 

 ヘッケラン達の奮闘を嘲笑うために集まった低位のアンデッド達。それは際限が無く……『ヘビーマッシャー』の神官も、ロバーデイクも既にアンデッド退散の使用限界回数に到達してしまった。

 終わりの見えない状況に絶望が脳裏を過ぎる。アルシェはいつ帰ってくるのだろうか。交代で来るはずだった帝国の騎士達はどうなったのだろうか。彼らはいつ来るのだ。もう来ていいはずだろう。

 

「――――」

 

 途端、ヘッケランの脳裏にある光景が思い浮かぶ。この黒い騎士のアンデッドが現れた時に既に鎧に付着していた赤い液体。

 あれは一体――どこで付着したものだったのだろうか。

 

「駄目だグリンガム! もう無理だ!」

 

「諦めるな!! 生きて帰るんだ! 戦線を維持しろ!!」

 

 グリンガムの怒号が仲間に響く。死しているが故に疲労という概念が存在しないアンデッド達が、そんな彼らを嘲笑うかのように呑み込もうとする。

 

 まるで、水のうねりのようだ。あらゆる自然現象は、人間のようなちっぽけ存在の抵抗など、その巨大な力で全て呑みこんでいく。

 このカッツェ平野にとっては、アンデッドの大群というものはまさに大自然の現象以外の何物でもなかった。

 

「ヘッケラン!」

 

 今まさにヘッケランを襲おうとしたアンデッドがイミーナの矢に射られ、体勢を崩し、それをヘッケランが双剣でとどめを刺す。

 

「助かった、イミーナ!」

 

「いいから前見て! こっちに漏らすんじゃないわよ!!」

 

 イミーナの注意にヘッケランは心の中で頷く。前衛であるヘッケラン達が後衛のイミーナ達までアンデッドを通してしまえば、戦線は容易く崩壊するだろう。前衛が何とか留まり、後衛がその漏らしを片付ける。そういう簡単な役割分担で対応してきた。即席の合同チームではこれが精一杯なのだ。あまり複雑な動きをすると、慣れない動きで隙が大きくなりやはり戦線が崩壊する。

 

『クカカカカカカッ――』

 

 嗤い声のような呻き声を上げる死の騎士(デス・ナイト)――。それはアンデッドの群れの後方で笑いを作り、時折思い出したかのようにこちらまで突っ込んできて、盾で自分達の誰かを強打してくる。愉しんでいるのだ、あのアンデッドは。死の騎士(デス・ナイト)そのものはそのまますぐに後方に下がるが、一時的に開いた戦線の穴に他のアンデッド達が殺到する。それの対応に追われ、結果的にわずかだが徐々に戦線が崩れ始めている。

 ダメージを回復する暇は無く。かといってあの死の騎士(デス・ナイト)を倒す手段など無く。助けは来ない。

 

 死ぬのだ。ここで。ヘッケラン達は。弄ばれるように徐々にアンデッドに押し潰されて。

 

「嫌だ!」

 

 その未来を振り払うようにヘッケランは叫ぶ。そうする事でその未来を回避するように。

 

 まだだ。まだ死ねない。だって、まだ自分の人生は何も始まっていないから……。

 脳裏を過ぎるのは惚れた女の笑顔だ。これから、たぶんきっとずっと歩んでいく事になるはずの女。彼女と歩くはずの人生は、まだ始まってすらいないのだと信じている。

 

「ぐ、おおぉぉおおあああああああッ!!」

 

 だが悲しいかな。気合いでどうにかなる戦力差ではない。そこいらのアンデッド達では相手にならないヘッケラン達の強さも、あの死の騎士(デス・ナイト)には通じない。

 今はまだスケルトン系達だけだが、こうしている内に、いつかは死霊(レイス)のような強いアンデッド達も集まってくるだろう。物理攻撃が通用しにくい相手だ。そうなれば後衛が狙われ始め――戦線は崩壊する。

 

 ……いや、正直に言おう。ヘッケラン達が遭遇したアンデッドは出遭った時点でどうしようも無い相手だった。遭遇した時点で、既に彼らは詰んでいたのだ。彼らに出来る事は、後はどれだけ死を先延ばしに出来るのかという事だけ。

 

 

 

 要するに、本当に、ただ――――彼らは、運が悪かったのだ。

 

 

 

「ヘッケラン!」

 

「――――ぁ」

 

 再び、死の騎士(デス・ナイト)が突進してくる。今度の狙いはヘッケランだ。疲労もピークに達しているこの状態。双剣という武器の性質上盾も持たないヘッケランに防ぐ手は無い。彼はそのまま盾の強打をくらう。もはや後衛の魔力も尽き始めている中で、そのダメージは致命的だろう。遂に、戦線が崩壊する瞬間が来たのだ。

 

 何故か馬鹿みたいに遅く感じる世界の中。しかし体は動かない。迫り来るタワーシールド。

 

「――――」

 

 しかし、ヘッケランの視界の隅を白銀の巨体が駆け抜けた。タワーシールドはヘッケランに当たる事は無かった。

 

「な……」

 

 呆然と、目の前に現れたものにヘッケランは目を向ける。それは、巨大な魔獣だった。白銀の体毛に、蛇のようにうねる尾を持つ四足の大魔獣――。

 その英雄譚にでも出て来そうな精強な魔獣が、ヘッケランを守るように現れ、死の騎士(デス・ナイト)を体当たりで吹き飛ばしたのだ。

 

『グオオォォォォ――』

 

 怨嗟の呻き声を上げる死の騎士(デス・ナイト)。だが、しかし――

 

「〈魔法三重最強化(トリプレットマキシマイズマジック)龍雷(ドラゴン・ライトニング)〉」

 

 ヘッケラン達の間を通り抜けて、白い龍の形をした雷が三つ、死の騎士(デス・ナイト)へと殺到した。

 絶叫を上げる死の騎士(デス・ナイト)。想像を絶するほどの威力の雷を三連撃で受けた死の騎士(デス・ナイト)はボロボロと崩れ落ちていく。

 

 それは、とても呆気ない幕切れだった。あんなにも恐ろしいアンデッドが、こんなにもあっさりと消えていく。

 

「みんな!!」

 

 その声に、弾かれたように振り返った。ロバーデイクとイミーナも同様だ。少し離れた先にアルシェが立っていた。涙目で。自分達の身を案じるように。

 そしてその横に――こちらに指を突きつけていた仮面の魔法詠唱者(マジック・キャスター)が立っている。

 

「第五位階……マジかよ」

 

 イミーナの横にいた『ヘビーマッシャー』の魔法詠唱者(マジック・キャスター)が呻くように呟く声が聞こえる。第五位階、という言葉が聞こえた全員が、驚愕した。

 

 そう、第五位階とは現在確認されている中でも最高位、第六位階の手前の魔法だ。帝国の魔法省でも第五位階を使えるような魔法詠唱者(マジック・キャスター)はいるのだろうか。ヘッケランには分からないが、それが尋常ならざる力の持ち主であるという事だけは分かる。

 

「ハムスケ、雑魚を片付けろ」

 

「はいでござるよ、殿!」

 

 ハムスケ、と呼ばれた精強な魔獣が叫び、尾を使って他のアンデッド達を横薙ぎに倒していく。それを呆然とヘッケラン達は見つめる。仮面の魔法詠唱者(マジック・キャスター)は続いて魔法を解き放つ。

 

「〈火球(ファイヤーボール)〉」

 

 放たれた火球は着弾と共に火柱を上げ、溶岩のように炎が広がり周囲のアンデッド達を根こそぎ焼き尽くしていく。残されたアンデッド達は拙い頭脳ながらも恐怖を感じ取ったのか、霧の中に姿を消していった。

 そして、周囲に静寂が戻ってくる。

 

「大丈夫ですか?」

 

 仮面の魔法詠唱者(マジック・キャスター)の穏やかな声だけが、カッツェ平野に響いた。

 

 

 

 

 




 
Q.いつものマッチポンプですか?
モモンガ「いえ、ほんと身に覚えが無いんですけど……」
カッツェ平野の愉快な仲間達「よろしくニキー^^」
 







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