リリカルに立ったカメの話   作:朽葉周

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今回会話はかなり少ないです。



13 4YEAR’S

そうして、あれやこれやと言う間に四年の歳月が過ぎた。

地球では派手に政変が起こり、国連(UN)が変化して地球連邦(EF)になったり、地球人に魔術プログラムを伝授してみたり。

 

UNがEFに変化した切欠は、某年に起こったレギオン襲来が大きな切欠となった。

 

最初にレギオンが襲来したのは、これまた中国。本当なんであそこはあんなに狙われるんだろうか、なんていうのは世界各国共通の思いだろう。

で、最初に草体が生えた中国某所。カシュガル、という文字を聞いて、あの時程絶望的な思いに駆られたことは無い。

 

何を思ったか中国政府は、地上にハイヴを構築したレギオンを捕獲しようと行動、国連軍の介入を拒絶。その危険性を訴えるB&Tの声すら無視し、強引に捕獲作戦を強行。

 

その結果レギオンは見事に草体を爆破・射出。某都市は完全に消滅し、草体は更にユーラシア東部を侵食。ある意味でユーラシア大陸最大の問題区域はさっぱり綺麗に成ってしまった。

 

コレに対し中国軍は戦術核による焦土作戦を決行。反対する周辺各国の意見を無視し、核投入を強行した中国軍は、なんとかレギオンの侵食拡大を抑えることに成功し、レギオンの群を一点に抑えることに成功した。まさしく初期の対BETA戦略だという状況に陥ったわけだ。

 

――が、ここで問題となったのが核使用による環境汚染だ。

 

B&Tから世界に公開されたマナ・マップ。これは環境変数をシステムに入力する事で、マナと呼ばれる仮想的な地球の生命力をグラフィカルに表示すると言うソフトだ。ドリキャスは使わなかったが。

 

――で、この核使用で中国大陸が真っ赤に染まった。

 

殲滅しきれないマザー・レギオン、環境の激減によりあふれ出した大陸のギーオス。最早地球はコレまでかと、誰もが諦めかけたときに、なんとかB&Tの力で強制的にレギオン戦に介入する事に成功。

ただでさえダメージを受けている地球上で、そのマナを更に酷使するウルティメイト・プラズマの行使は不可能。レギオンに肉弾戦を挑むと言うルナティックな作業を何とかこなし、至近距離からのバニシングフィストで内部から破壊。何とかレギオンの撃退に成功する。

 

然しその時点で個人の生命力としてのマナを消費しきってしまい、即時戦線復帰は不可能と言う状況。そんな状況でギーオスの大群に挑んだのは、周辺諸国で建造されていた各国のスーパーロボット軍団だ。

 

レギオンの拡大防止の任を解かれ、いざ反抗に出た光子反応炉を主機とした多数の超大型ロボット群。更に増産されたTSFまで持ち出して、周辺諸国による同時攻撃が開始された。まさにリアル・スーパーロボット大戦という有様に、日本やドイツなんかからは野太い黄色い悲鳴が上がったとか否とか。

 

然しギーオスもカラスレベルとはいえ知恵を持つ怪物。その全体の3割が撃破された時点で、ギーオスの群は三つに分かれて世界各地へ逃走を開始。

 

一つの群れはアメリカ大陸へ。

一つの群れはヨーロッパ方面へ。

一つの群れはロシア方面へ北上した。

 

結果としてギーオスの殲滅には成功した物の、主だった発展国は総じて壊滅的打撃を受け、本格的な『人類の危機』を誰もが予感した。

 

 

 

そんな中でB&Tが行なったのは、俺――先史文明の遺産の存在を明かすこと。

各国が戦力を持っている状況では小出しにしか出来なかったオーバーテクノロジー。然し慢心の結果として滅びかけたその状況では、そんな事も言っていられる状況ではなくなっていた。

 

力を残した各国により、UN(国連)をEF(アースフェデレーション:地球連邦政府)へと再構成。EFの議会によりこの開示された技術を統制し、人類のためにのみ使うと言うその制御の為、国際連合は地球連邦政府として新生した。

 

……さすがの俺も、此処まで世界が追い詰められるとは思っても居なかったのだ。いや、ギーオスを初期段階で倒し、その本格的驚異を人類に理解させなかった俺の手落ちかもしれない。

 

そうして新生された地球連邦、及びその軍部実行機関であるEFF(アースフェデレーションフォース:地球連邦軍)。多次元世界の存在を遺産から示唆された地球連邦軍は、即座にこの対応に乗り出す。

 

案としては、多次元世界へ進出し、コレを制圧。新たな資源確保と同時に、ギーオスに対する絶対防御網を形成する、と言うものだった。

然しコレにB&Tが反発。次元世界は広い。それこそ底なしに。そんなものに『領域』を形成しようというのは無謀を通り越して愚者の所業と言うものだ。

そんな否定意見と共にB&Tが出したのは、地球上に次元世界との接続を断つ次元断層フィールドを展開する、というものだった。

 

衛星軌道上に展開された縮退炉を搭載した巨大なフィールドジェネレーターにより形成される次元断層フィールド。これにより、地球および宇宙からの侵入を防ぐ、と言うものだ。

 

即座にその計画は実行され、地球上を異世界との接続から隔離する事に成功。残すところを、環境変動により発生する内患のみとした。

まぁ、この内患に関しては適宜駆逐していくしかないので、EFとして世界各地にTSFを配備する事で対処する事に成ったらしい。

 

そうしてギーオスに対する備えが進む中で、更にマナを用いたアルハザード式魔術に関する研究というのも進む。

このマナと言うのは、要するにあらゆる生命体が持つ生命エネルギーの事で、個人が持つと同時に地球も持つモノだ。

 

ミッドやベルカの使う魔法との相違点は、『生命力であるマナ』を使うためにかなり過酷な修練を必要とする点だろう。リンカーコアの有無に左右されない代わり、対価となるのは己自身の生命力なのだから。

ミッドやベルカのリンカーコアを使ったものと比べると、リンカーコアを使ったものは『呼吸』のように魔法を使い、マナを使う術は『血液』を対価に術を使うようなもの、と言えば少しは理解できるだろうか。

幾ら激しく呼吸をしたところで、過呼吸にこそなれど死ぬ事はない。しかし血液を対価にする術は、いずれ貧血に、果てには失血死という運命が待ち受けている。

――で、流石にコレに関しては手を出す人間は居ないだろう、というのが俺の予想であった。……のだが、甘かった。公開されたこの技術、手を伸ばす人間は世界各国に存在した。

 

流石に指導者もなしに独自で手を出されるのは拙いので、俺がB&Tから「いち派遣技術者」として出向し、マナを使用したアルハザード式……マナ使用を前提として改変された『ガイア式魔術』として、召集されたEF各支部の人間にそれを教授。その中にティアナとキャロ、アギトをこっそりと混ぜて置いたのは、本人等の希望による物だ。

 

この『ガイア式』の教練により、各国のSRに魔導理論実装型が登場。中でも俺が認めた国連軍の3人には、グランヴェール、ガッデス、ザムジードの魔装機神を送っておいた。恭也のサイバスターを作った時の試験機、そのレストア機を再利用したのは内緒だ。

 

――因みにだが、この世界、バ●ダイをはじめとした各ゲーム・アニメ企業は存在した。一応パロディーな機体は権利を得ているのだが、逆に広告料を払われそうになるほどに、実在の機体の存在により株価が上昇。大手に成長していたり。

 

他にも某「名前が三年の単位にされている会社」は流石に年齢制限で引っかかるかと思ったのだが、何故か此方もこの世界に存在。やっぱりこの世界、元が元なだけにその辺りは寛容なんだろうか。

 

話を戻す。ガイア式魔術を教えた結果、ティアナはサイレントキリングを得意とする魔術暗殺者っぽい存在に。まぁ、普通に兵士としても優秀なのだが、どちらかと言うと特殊部隊員だろうか。キャロは自己ブーストによる、支援も出来る万能型グラップラーに。アギトはワイルドキャラから騎士キャラへと成長してしまった。

 

で、その後ティアナは管理世界へ戻り、ティーダの汚名返上の為に管理局の陸士訓練学校にて活動を開始。キャロは俺の教導中に目を付けられ、国連でガイア式魔術師の教導官の任を与えられてしまった。本人はチョット恥ずかしそうにしてたが、あれは多分他人に認められたことを喜んでいたのだろう。

 

アギトはというと、ガイア式のフォーマットをし、実際にその運用を肌で確かめた事で、より固体として強力なユニゾンデバイスへと成長していた。生命力を操るガイア式を、ユニゾンデバイスであるアギトが扱えるのか、という問題点はあったのだが、どうやらガイア式における生命の定義とはかなり広いものらしい。

 

因みに俺が関わった事で、最もその原作キャラを崩壊させたのは、間違いなくこのアギトだろう。何せもう姿からして違う。

原作ではフェイトより際どいワイルドなビキニの、ショートツインテールだったが、現在は何処か俺のに似た身軽そうな軽鎧に身を包み、その髪も真直ぐ背中に下ろしている。アギトと俺とのユニゾン適合率は高めで、ユニゾン時は赤い外炎に白い内炎が立ち上るような姿となる。

さらにマナ、オカルトエネルギーの塊のような俺とユニゾンした事で、純粋なデバイスから九十九神っぽい何かに変質してきているらしい。神咲一灯流の人に聞いたのだ。間違いない。

 

 

 

 

 

 

そうしてとりあえず地上を安定させ、ガイア式魔術を国連内に浸透させている最中。不意に地上へと飛来したのは、再びのレギオンの草体だった。

コレに今度こそ世界はEFを中心として集まり、即座に草体を駆除。マザー・レギオンは一緒ではなかったらしく、TSFと現地のSRの活躍により、草体は早期に駆逐された。

 

然し問題となったのは、何処からこの草体が飛来したか、と言う点。レギオンとギーオスの再来から急遽仮設した次元断層フィールド生成衛星、それと並び設置された外宇宙監視衛星。然しこの外宇宙監視衛星にはソレらしき飛行物体の姿は観測されず、NASAや世界各国の天文台も言葉を同じにした。

 

そうして更なる調査が進められる中、不意に一つの答えが得られた。それが、レギオンが月に拠点を作っているのではないか、と言う仮説だ。

 

地上からの観測ではレギオンの存在は確認できなかった物の、急遽地球防衛網に敷設された人口衛星の一つを月の裏側へと飛ばした。その結果、月の裏側のクレーターの中に、レギオンの草体が育っている事が確認された。

 

このまま放置していては、地球は常にレギオンの驚異に晒され続けることに成る。ましてレギオンは草体を使い増殖するのだ。月で増殖したレギオンが、一気に地上を襲わないとも限らない。

 

コレに人類は急遽国連のSR軍団を月へ派兵。月の表側に拠点を建設しつつ、月レギオンの勢力を削いで逝き、ついに現在それらをコロリョフクレーターの中へと追い詰める事に成功したのだ。

 

 

 

 

 

 

 

「で、そんな激戦の真っ最中に居る筈のメラさんが、なんでこのミッドチルダにいるんですか?」

 

そういって胡乱気な表情で此方を見るオレンジ髪のツインテール少女。名前をティアナ・ランスター。ミッド擬装ガイア式魔術を扱う俺の二番弟子の魔導師だ。

 

「陸戦B、合格したんだろう?」

「なっ、何で知ってるのよ!?」

 

チラリと視線をティアナの腰、ベルトに装着されたカード型のデバイスに目線をやる。

 

「……お前か、ファントムクロス!!」

『ハッハッハ、いえ、マイスターから頼まれていたことですから。あぁ、ダメですってマスター、フレームが歪む、ゆが、アーッ!!』

 

カード型の待機状態のデバイス、ファントムクロスをへし曲げながら声を荒げるティアナ。因みにファントムクロスの声は小野Dだったりする。いや、ほら、ティアナの搭乗機体は武御雷(黄)だからだ。

 

「Bランク合格おめでとう」

「――あ、ぅ、……その、ありがとう」

『おやめずらしい。マスターがてれて……ハッハッハ、いえ、なんでもないですよ? なんでもないのでマスター、フレームを曲げるのを止めてください。ギシギシ言ってますから』

「なら黙ってなさい」

 

目の前でギャグっているティアナとファントムクロス。うん、中々いいコンビに仕上がっているようだ。ティアナには忠僕よりも箴言を述べる道化が必要、なんて考えてお惚けな人格に設定したのだが。上手く言っているようで安心した。

 

「――って、ああ違う!? そうじゃないんですよ、なんでメラさんが此処に居るんですかって話を」

「だから、祝辞。ついでに食事でも」

「すずかさんに怒られますよ? じゃなくて、どうやって次元世界に? 次元断層フィールドがあるのに」

 

言われて首を振る。というのも、ティアナを此方に送り返すとき、地球には既に次元断層フィールドを展開し始めていた。

ティアナ本人は時空管理局に就職する心算であったため、フィールドが地球上全てを覆いつくす前に此方に送り返したのだが。

 

「月基地には、フィールドは無いからな」

「……あぁ、成程」

 

レギオンの撃退において、流石に行って倒して地球へ帰る、なんてファミレス気分で月と地球を往復する事はできない。其処で月には、レギオン本拠地に攻め込む為の橋頭堡として幾つモノ基地が建設されているのだ。

 

「地球からミッドは無理でも、月を経由すれば往来可能だ」

「成程。……あの、月の座標、貰っても?」

「ああ。月のポートを使うときは連邦の登録コードを……ファントムクロスがいるか」

『そうですよマイスター。僕がいる限りは……って、話し聞いてます? ちょ、座標データの容量大き、アーッ!!』

 

ダメだコイツ、と言った表情で自分のデバイスを眺めているティアナ。まぁコイツの役割は、堅物のティアナの柔らかさを補うというモノだから、逆説的にティアナがどれだけ堅物か、と言う話しなのだが。

 

「で、ですよ」

「?」

「惚けても無駄です。態々私に会うためだけにミッドに来た、ってワケじゃないんでしょう?」

ばれたか。思わず苦笑しつつ、ティアナの頭に手を置く。

「それだけじゃないけど、ソレが主目的だ」

「ちょ、私もう16ですよ、頭を撫でられるような年齢じゃ……」

「気にするな」

「気にします! すずかさんに言いつけますよ!」

 

言われて渋々ティアナの頭から手を離す。すずかに言いつけるとか、そんな事に成ったら……うぅっ。

なにやら心無し若干もったいない事した子供のような表情をしたティアナの頭を最後にポンポンと撫でて話を変える事にする。

 

「ティアナ、機動六課に誘われたんだろう?」

「なんでその事を……ファントム、あんたそんな事まで喋ってるの?」

『いやいや、流石にそんなつい最近決まったばかりの未確定事項まで報告できてませんよ。マイスター、本気で得体が知れませんね』

「喧しい。それで、如何するんだ?」

「……受ける心算ですが」

 

少し間をおいて答えるティアナ。その表情には困惑の様が浮かんでいて。

 

「何か、問題が在るんですか、あの部隊」

「色々とな」

 

言いつつ、情報運搬用に持ち運んでいるデータストレージからファントムクロスへデータを送る。ついでにファントムクロスに命じて、ティアナの前にデータを開かせた。

 

『ですからマイスター、強制干渉は勘弁してくださいと……』

「ちょ、何よこれ!?」

 

と、ファントムの言葉を遮って声を上げるティアナ。その視線の先に在るのは、機動六課、その後援者の名前の欄だろう。

 

「クロノ・ハラオウン提督、リンディ・ハラオウン元提督、聖王教会のカリム・グラシア、更に伝説の三提督の名前まで……」

『おやおや、これはまた、中々にビッグネームが御揃いで』

「機動六課はミッド地上部隊。でも、後見人に……」

「……!? なんで地上部隊なのに、後見人の名前に地上本部の人間の名前が無いの!?」

それは、普通で考えればありえないことだ。何せそれは、陸軍の部隊なのに責任者が海軍だというくらいにおかしな話だ。同じ軍だと言えど、海と陸では別のセクションだというのに。

 

「色々事情が在るみたいだが、少なくともまともな部隊ではない」

 

――まぁ、間違いなくいい経験とキャリアは積めるだろうが、と言葉を結んでおく。

 

「どうする?」

「…………それでも、私は、機動六課に行きます」

「いいのか?」

「ええ。確かに怪しいですけど、でも、これはチャンスでしょう。前にも言いましたけど、私は証明したいんです。兄さんの、いえ、ランスターの弾丸は砂糖菓子の弾丸なんかじゃなくて、ちゃんと実弾なんだ、って」

 

問い掛けに、静かに、けれども力強く答えるティアナ。その昔、確りと鍛えてやった影響か、昔のような怨嗟を感じさせる瞳ではない。目標に向かって、挫けても尚諦めないそれは、まるでヒーローの瞳だ。

これなら大丈夫かと首を縦に振る。それじゃ、次の質問だ。

 

「ティアナに、頼みが在る」

「頼み? メラさんが、私に?」

 

頷き、再びファントムクロスに干渉しようとして、今度は普通に声を掛ける。何か『そこは天丼でしょうに……』なんてぼやいているデバイスは知らん。

 

「これは……?」

「機動六課の名簿だ」

「『ブフゥッ!!??」』

 

あ、噴出した。

 

「ちょ、メラさんどっからこんなモノを!?」『マイスター、流石にこりゃ拙いと思いますが……』

「うむ、だから見たあとは削除を頼む」

言いつつ、ファントムクロスにアクセス権を貰い、データストレージから見せたい情報を索引する。

此方がティアナに見せたいのは、機動六課の実動戦力。

 

――本来の原作での機動六課。その戦力のうち、ティアナにはかなりの強化を。キャロに至っては管理局が引き取る前に此方で引き取ってしまった。その事に気付いたのは、実はつい最近だったりする。あまり原作組みって興味が無かったので。

で、ちょっと試しに調べてみたところ、すずかが偶に口にしていたなのはたちと共に行ったという幼馴染達。彼らの存在が浮き上がってきたのだ。

 

「見てもらいたいのはこの二人。御剣護と鳳凰院朱雀」

『マイスター、これどんな厨二病だ』

「俺に言われても知らん」

「?」

 

言い合う俺とファントムクロス。ただティアナだけはキョトンと首を傾げていた。そうか、ティアナは漢字、というか日本語が読めないからミッド語で読んでるんだよな。ミッド後はアルファベットに近いから……。

 

「えっと、それで、この二人について如何すればいいんですか?」

「ああ。この二人、機動六課に行くのであれば、顔を合わせると思う。彼らに会って、どう思うかを教えてくれ」

「? そんな事でいいんですか?」

 

怪訝な顔で此方を見てくるティアナ。まぁ、ティアナにしてみれば、管理外の97番で、それも裏でチマチマ暗躍している謎の人物が、態々管理世界に来たと思えば、ただの局員(とはいえ戦力としては上位)の感想を求めてきたのだから。

 

「ああ。対処するにしても、物によるからな」

「対処……彼ら、何か問題が?」

「いや、問題と言うほどではない。ただ、地球出身という事だからな」

「(それなら高町一等空尉だって実家は97番――というか、恭也さんの妹さんの筈……やっぱり何かあるの?)」

 

胡乱気な表情で見つめてくるティアナだが、流石にこの先の情報を彼女に話すわけには行かない。

御剣 護、鳳凰院 朱雀。この両名が転生者であり、如何いう人物なのか、どう動く心算なのかを知りたい、だなんて。

 

「でも、凄いですねこの二人。御剣二等陸士は陸戦A、鳳凰院って人は、嘱託で……変換資質に広域殲滅の使い手!?」

「ティアナが一番苦手なタイプだな」

「……いざとなれば、魔力中和フィールドを張って逃げます」

 

苦々しげにそう言うティアナ。ティアナは兵士としては優れているが、魔導師としての力量で言えば中の上。相手を如何こうする技術には優れているが、一撃で更地を作るような力技には全く向いていない。

まぁ相対するのであれば、ティアナの言う通りガイア式のマナを使った術で魔力を中和分解してしまえばなんとでもなるのだが。

 

「でも、報告するにしてもこれ、何処に報告すればいいんですか? 私、機動六課がスタートしたら、六課の隊舎に入りますよ?」

「大丈夫。暫く此方に滞在する」

「あぁ、成程……はぁっ!?」

 

大きな声を出すティアナに、咄嗟に耳を塞ぐ。

 

『おやおやマスター。レディーならもう少しおしとやかに……』

「うっさい馬鹿ファントム! これが黙ってられる自体じゃないのはアンタも理解できるでしょう!!」

『そりゃまぁ、確かに』

「そんな、大げさな。たかが暫く地球を離れるくらい」

「その少しで地球が壊滅したら如何するんですか! 具体的には身内の手で!!」

『そうそう。マイスターが少し地球を離れただけで、経済が大混乱を起すんですよ? 具体的には身内の手で』

 

その余りにも凄い言われように、思わず額を流れる冷や汗をハンカチで拭い去る。誰とは言わないけど、其処まで言うか? 俺はアレの彼氏なんだけど。

 

「でも、メラさん反論しませんよね?」

『マイスターは理解がありますよねぇ』

「…………」

 

まぁ、否定は、なぁ。事実が事実だし。

 

「……実は、すずかも此方に来ている」

「え、ええっ!?」『ミスすずかまで?』

 

実際、俺が暫く地球を離れるといったら、すずかはえらくごねたのだ。あの黒い瘴気を撒き散らし、時には怒りの視線で、時には無表情で、時には死んだ魚の目で、最後には涙目で。

 

……其処までされてしまえば、一応彼氏をやっている俺としてはついて来る事を認めざるを得なかった。

 

「ま、まさか、ウルごとですか!?」

「……カスタム3ごとだ」

「な、何て事を……」

 

ウルと言うのは、実は艦種の商標名なのだが、既に俺の旗艦のペットネームになってしまっている。

で、そのウル・C3というのだが、要するに最低限の生活スペースしかなかった小型戦艦の如きウルに、更に格納スペースや何やらのある艦を作って繋ぎ足した物だ。

簡単に言うとキャンピングカー(SR搭載)。管理局に戦争を仕掛けられる戦力である。

 

「――いいです。わかりました。でも一つだけ約束してくださいね」

「なんだ?」

「『私/俺達がいるところに喧嘩ふっかけないでください!!」』

「……分った」

 

笑いながら頷く。確かにティアナの身分を考えると、不審な戦力を抱える俺と出会えば、先ず間違いなく職務質問を行なうのは必須。というかそれが仕事だ。だが、俺が職務質問を受ければ、間違いなく逃げるか抵抗する。であれば相手は当然捕まえようとするだろう。

 

さて、ここで俺の実力を良く知っているティアナは、本当に俺を捕まえられると思うだろうか。因みに俺は素手(バニシングフィスト)でギーオスの成体を砕ける程度には腕を上げている。

 

「じゃぁ、メシに行くか」

「――って、本当に行くんですか!?」

「偶に会った妹分に、飯をおごるくらいはさせろ」

「……それじゃ、お言葉に甘えて」

 

なんだか少し照れたような雰囲気のティアナ。その頭を軽く撫でつつ、二人揃ってミッドの食事どころを探し、ぽかぽかした昼下りの道を歩くのだった。

 

 




■ティアナ・ランスター
本作でかなり主人公の影響を受けて魔改造された人。機動六課編のサブ視点。
ティーダを貶され、我武者羅に成っていたところをメラに拾われ、その後メラの元でガイア式の修練を行ない、更に御神の業も若干盗んでいる。
一応EFFにも籍を置いており、その中で対ギーオス戦、対レギオン戦を経験し、TSFもSRも、基本的な陸戦兵器は大抵使いこなせる前線万能型の人。地味に超人化しているため、一般的な陸戦Bの射撃魔法程度では傷も付かない。
使用デバイスはガイア式擬装ミッド・銃型の『ファントムクロス』。魔力(マナ)噴射による疑似的な空戦も可能。
■ファントムクロス
ティアナ専用の銃型デバイス。本来はガイア式を扱う為のデバイスであるが、ミッドでの活動に合わせてミッド式に擬装した術式を扱えるようにしている。
形態はガンモード(ハンドガン+サバイバルナイフ)、アサルトモード(あさるとライフル)、ショットカノン(ショットガン)、の通常三種に加え、バリアスーツごと形態変化する高燃費のイクリプスモードが存在する。
登録魔法は主にバレット系(フラッシュ・バレット、サイレント・バレット、インヴィジブル・バレットなど、弾速が早く誘導が弱い)を登録している。
■EF/アースフェデレーション/地球連邦
中華連邦国略して中国の暴挙により危機的状況に陥った世界各国とUNをドサクサに紛れて纏めて結成させた組織。一時マブラヴ世界よりもやばいんじゃないかと言うような状況に陥りかけた為、簡単に纏まった。当にドサクサ紛れの所業で結成された。
■EFF/アースフェデレーションフォース/地球連邦軍
本拠地は地上ではなく衛星軌道上に建設されたオービタルリング。これは『国家の軍ではなく地球の軍である』という証のようなもの。
膨大な数のTSFと大量のSR機、更にOE兵器や光子魚雷、更に大型宇宙航行艦などの超兵器を多数所持しているが、下手に威力が高すぎて地球を滅ぼしかねない為、主な戦力は矢張りTSFとSR機。
StS本編開始時点で月の対レギオン最終決戦の最中。
■レギオン
宇宙からやって来た憎いアンチクショウ。電波に反応する困ったさん。
能力的には原作のソレと等しいが、草体が爆発するとマザーも増える。
一応草体のサンプルが回収されており、皮肉にもコレにより焦土と化した中国大陸は急速に回復する事となった。
因みに火星は既にレギオンの勢力圏。月奪還後は火星奪取作戦が計画されている。
■ウル・カスタムⅢ
通称ウルC3。ウルの名前は既に愛称になってしまっている。
カスタムⅢの通り、大元のウルにも改造が施されている。元々のウルは組み替えることでどのような状況にでも対応させられる汎用艦であったが、その為急場の命一杯で改造を施されたような状況でもフルスペックを発揮させることが出来た。其処にウルから回収されたデータを元に開発された各種拡張パーツにより、ウルに高い居住性や格納庫などを外付けすることにより更なる汎用性を持たせた。
カスタムⅢパーツと分離することで、従来のウル単艦とC3パーツ単独の2つに分離行動することも可能。但しC3パーツの戦闘能力は低い。あくまで拡張パーツ。
因みにウル本体はメラ所有で、C3パーツは月村所有。
■光子反応炉
SR技術が世界に公開される際、オーバーテクノロジー過ぎる縮退炉や魔導炉の代替機として公開された技術。一点に固定された光に特定の指向性エネルギーを照射することで一種の核融合を発生させる、と言う装置。
整備性・安全性が高い反面、起動には莫大な電力が必要とされ、従来の発電システムに代替するものではない。
因みにデザインは某ダイナミック系に限らない。

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