Side Teana
本気で管理局から逃げよう。そう思ったのは、メラさんがあの怪物、イリスを撃退した後、段々と周囲がきな臭くなってくるのを感じてからだ。
――「ギーオス変異体事件」。
JS事件とは別口として扱われる事になったその事件。ギーオスという魔導師の天敵である存在、その亜種とされる存在。
それまでの魔導師至上主義を守るため、あえてギーオスという存在に対する対処を行なった結果、そうしたとんでもない存在が出てきて、結果として何の手を討つ事もできないという情け無い有様にあるのが、今の管理局と言う組織だ。
一応今回のJS事件において、裏から管理局を操っていたとされる最高評議会は、ジェイル・スカリエッティの手によって(実際は別人らしい)始末されたそうで、管理局は此処から更正の道を歩む、筈だったらしい。
現在の管理局を一言で表すのであれば、凄まじく追い詰められている、というのがピッタリと当てはまるだろうか。
魔法至上主義、それを裏づけする魔法による世界の管理。ところがその絶対の理を簡単に覆す存在――ギーオス。そしてそのギーオスの延長線上の存在であると思われるイリス。
ただでさえ魔法の通用しない怪物の出現に焦る管理局に対し、更に現れたのがそんな怪物を正面から“撃退”して見せた鋼の巨人の存在だ。
「……またやられたか……」
帰宅し、すっかり荒らされ廃墟の如く様変わりした自室を見て、思わず小さく嘆息する。
あの日、メラさんがイリスを撃退した後、管理局は大いに荒れた。自らの文明を滅ぼしかねない怪物の存在と、ソレを撃退しうる質量兵器文明の存在。それは管理局の存在を揺るがしかねない物として、その上位陣営に恐怖を感じさせたらしい。
そして何処から洩れたのか、私がその鋼の巨人に関して何等かのかかわりを持っている、と言う情報まで洩れてしまっているらしい。その後ちょくちょくこうして自室をあらされることがあるのだ。
しかも常に2~3組の監視が付いているし。さすがにトイレの中では控えてくれるのだが、これではまるで重要指名手配中のテロリストだ。
――まぁ、撒いて遊んでいるのだが。
「……さて、如何した物かしら」
現在の私は機動六課隊舎に個室を貰い、その中で生活している。一応スバルとの共有部屋が本来の割り当てなのだが、ちょっと小細工をしてみたところ割り当ててもらえたのだが。
おかげでスバルに迷惑をかけることは無いが、その分好き勝手にあらされているような気がしないでもない。
幸い私の最重要物資はこのファントムクロスで、重要な情報は全てその中。その他の私物で見られて恥ずかしい物なんかは左腕のストレージに全て納めている。この部屋に有るのは、全て店売りで揃えられる物ばかりだ。
そういうわけで、正直これ以上管理局に残ると言うのは身の危険を感じる。正直、最高評議会が潰れたからと言って、組織の体質がそう簡単に変わるものではない。このまま此処に残っていれば、いずれ私は『ワープロ製の書き置き』一つ残してどこかへと消えてしまうだろう。
私も生存能力は高いほうだが、さすがにプロの暗殺者の一撃目を凌げるかは、自信を持って「出来る」とは言い切れないし。
――とりあえず、設置しておいた盗撮カメラとマイクは機能してたみたいだし、報復はするとして。
と、そんな事を考えて唸っていると、不意にファントムが通信をキャッチした。どうやらブリーフィングルームへの呼び出しが全体通信でかけられているらしい。
荒らされた部屋をそのままに、呼び出しのあったブリーフィングルームへと駆け足で移動した。
「お、ティアも来た見たいやな」
「すいません、遅れました」
「ええよ、私らは元々食堂にそろてただけやし」
ブリーフィングルームに入って一番。既に私以外のほぼすべての前線メンバーが揃っている事を確認し、一番に部隊長である八神隊長に頭を下げる。
案の定軽く流してくれる八神部隊長に内心で「チョロイ」なんて思いつつ、然しその顔色が若干青褪めていることに気付く。
「八神部隊長、若干顔が悪いみたいですが」
「そか? ちゃんと毎晩レモンでパックしとるんやけど……って違うッ!! それを言うんやったら『顔色』やろがッ!!」
「失礼、かみました」
「ホンマか!?」
「カンマみた」
「全角で句点に直しとき!」
「神まみえた」
「神秘的ッ!!」
流石カンサイ人。ボケとツッコミだけは一流と言うのは嘘じゃないらしい。
「ティア……ウチとコンビ組まへん?」
「少し考えさせてくださいお断りします」
「早ッ!? 考えて断るまで早ッ!?」
と、散々騒いだところで周囲が呆然としている事に気づく。部隊長の身内であるヴォルケンリッターは若干口元を引き攣らせていたが。
チョンチョンと部隊長の肩を突っついて注意を促すと、八神部隊長も周囲の空気に気付いたらしく、わざとらしく「ゴホン」と咳を一つ。
「さて、これで全員集まったわな。――皆、JS事件が終わったばっかりで悪いんやけど、次の任務が入ってしもた」
「次って……まだ皆全快したってワケじゃないのに、早すぎるよ!?」
と、そんな八神部隊長の言葉に最初に反論したのはハラオウン執務官。
何せJS事件、いや、イリスがこのミッドチルダで大暴れしてからまだ三日しか経っていない。
なのはさんは未だに魔力負荷の影響で全力には程遠いし、ハラオウン執務官も高濃度AMF下での負荷で万全ではない。ヴィータ副隊長、ザフィーラ、シャマル先生なんかのヴォルケンリッターの半数は重症。
エリオは軽傷でまだ動けるが、スカリエッティに洗脳されていたらしい鳳凰院さんと、鳳凰院さんと相対していた御剣二等陸士はボロボロ。
機動六課はJS事件で名こそを上げたが、その実現状では全体的にボロボロ。とてもではないが、任務など不可能な状態だろう。
因みに現状でも戦力として数えられるのはシグナム副隊長と、ティアナ・ランスターにより何処からか連れ帰られ生還したギンガ・ナカジマ陸士だけなのだが、ギンガさんの方は何か魔改造を受けたとかで、現在本局での精密検査の真っ最中なのだとか。
……メラさん、魔改造とか大好きだしなぁ。悪影響は無いと思うんだけど、自重はしてるのかどうか。技術は渡さないんじゃなかったのか。解析されて情報を抜かれても知らないわよ?
※とんだ冤罪である。
「それはわかっとる。でも、此処に来て機動六課の古代遺物管理部っていう名目が引っかかってもーたねん」
そう言う八神部隊長。合図と共に室内の照明が暗くなり、投影ディスプレイに一つの画像データが表示される。
「これは、あの時のロボットですか?」
エリオの声。其処に映し出されているのは、メラさんのデモンベイン・ストレイドの姿。
「せや。この機体――うちらが会った自称『地球連邦軍』の人間から渡されたデータから言うと、『デモンベイン・ストレイド』っていう名前らしいんやけど、コレに上がめっちゃビビッとる」
管理世界外からの未知のテクノロジーの兵器襲来。自分達が察知できず、対処も出来なかったイリスを見事に打ち返して見せたその力。
「表向きの任務は第97管理外世界から感知されたロストロギア反応の調査。その実は、地球の実情調査ってところやろうか」
実際のところ如何なのかは知らないが、隊長たちの知り合いにはすずかさんやアリサさんが居る。両者共に97番では名の知れた資産家の家であり企業の家である。彼女等にコンタクトを取る事ができれば、調査は不可能ではないかもしれない。
「で、そんな上層部の思惑は別として、ウチとしてはあのギーオス変異体、データからはイリスっちゅう名前が出て来たんやけど、これの追跡調査もやっときたいと思もとる」
メラさんが撃退したイリス。そう、『撃退』だ。メラさんによって大気圏再突入の地球投げを食らわされたイリス。ところがあの怪物、それでも未だ次元転移できるほどの余裕を残していたらしく、着地のために一瞬隙を見せたデモンベイン・ストレイドの隙を突いて、何処かの次元世界へと逃亡してしまったのだ。
当然のようにソレを追いかけてミッドチルダから姿を消した鋼の巨人。こうしてミッドチルダにおけるJS事件は終わりを迎え、現在ギーオス変異体事件の最中というわけなのだが。
ただ、鋼の巨人とイリスの戦闘は様々な証拠――例えば砕けたパーツだとか、千切れとんだ肉片だとか――を残してしまった為、その管理局の技術では理解しきれない謎の物質やら遺伝子やらに、管理局そのものがてんやわんやのお祭り騒ぎなのだとか。
「上の思惑は別として、私はこの機を使ってあれの追跡調査をするつもりや。あれは放置してまうと、管理世界全体の危機になる」
まぁ、出来れば、だが。そもそも追跡して追いついたとして、その後如何する心算何なんだろうか。
「ところがや。残念ながら現在、管理局の技術では最大のヒントになりそうな97番に立ち入る事は不可能になっとる」
「原因は不明だけど、地球周辺の航路が常に荒れちゃってるみたいで、如何足掻いても97番に侵入できないんだって」
アテンザ技官のその言葉に、地球出身の隊長陣プラス若干名が少し動揺したように表情を歪める。
「……で、や。ティアナ、アンタに一つ頼みがある」
「……私に繋ぎをとれ、と?」
「話がはよて助かる」
此処で私を出すのか、この人は。よりにもよって、こんな如何考えても監視されているであろうブリーフィングルームでッ!!
何たる無能ッ!! 人間性は親しみやすさのある良い人間かもしれないが、トップにするにはカリスマ不足で参謀にするには考え足らず。
今さらだけど、やっぱりこの部隊に所属したのは間違いだったか。――まぁ、潮時と思っていたところだし。
「了解しました。繋ぎは試してみますが、あまり期待しないでください」
「うん。それと、ティアの伝手と平行して、コッチは実際にその97番の実地を直接確認に行こうっちゅう話になっとってな」
「はっ?」
思わず上げた疑問の声。見れば八神部隊長は新たな映像を投影スクリーンに映し出していた。
ソレは先の戦いにおいても機動六課の前線基地としての役目を果たしてくれた、旧式の次元航行艦『アースラ』の姿。
「もう少し、アースラに頑張ってもらおうとおもてな」
「はやて!? アースラはもう本来なら解体されてるはずの船なんだよ!?」
「問題あらへん。朱雀とマリーに頑張ってもろて、もう暫くは使えるくらいに改造してもろたさかい」
……廃艦寸前の次元航行艦を、無駄に延命させた、という事? 既に規格遅れになっている艦を、態々!?
言い換えるなら、勿体無いからとビンテージ物の消防車を消防署が使っているようなものだ。しかも市民の税金で改造して。それって色々かなり無駄でしょ。普通に民間船をチャーターするなり、何処かの次元航行艦に同乗させてもらうなりしたほうが絶対に安上がりだろうに。
「因みに、アースラは俺が個人資産で買い取って改修したものを機動六課にレンタルする形になっている。管理局の共通規格からは若干外れるが、中身は大分よくなるはずだ」
と、鳳凰院さん。JS事件が終わった辺りから何か吹っ切れたような彼だが、金銭感覚も吹っ切れてしまったらしい。……と、思って見ていたら、若干苦笑気味に一枚の紙を手渡された。ナニコレ、賃貸契約書? 手書きの? アースラ改造艦の賃貸使用料が……一般企業の平社員の月給? 安っ。
契約書の名前の欄には、鳳凰院さんの名前と八神部隊長の名前。成程、八神部隊長にタカられたな?
――やっぱりこの人達、地上に部隊を作ろうと言うくせに金銭感覚がかなりおかしい。
あーだからイヤだったのよこの部隊。素直に地上部隊に所属してれば、もう少し管理局に対して良いイメージを持っていられたかもしれないのに。せめて公私の区別くらいは確りして欲しかった。
……ダメね。部屋を荒らされていたの、思いのほかメンタルにダメージを受けてるのかも。妙に思考がネガティヴだわ。
「このアースラを使って、97番への様々なアプローチを試みる事になる」
「例えば?」
「機材を持ってって調査、その後アースラでの直接転移やら、近隣世界に一度降りて、生身で次元転移で移動、とか」
「なんとも原始的な」
「で、でも、色々な方法を試すのは悪くないかと」
ガヤガヤと賑わうブリーフィングルーム。どうやら今日のブリーフィングはコレでおしまいらしい。
「というわけで、コレより我々機動六課は、97番への出張任務となります。出向はアースラ整備の都合から、明後日のマルキューマルマルに成ります。以上のことを確認して、以後、各自自由にしてくれてかまへんよ」
八神部隊長が解散の号令をかけたのを確認し、もう少し八神部隊長に声を掛ける。
「ん、ティアナ、どうしたん?」
「八神部隊長、少し内密なお話が」
「うん? ここやとアカンの?」
「少し失礼します」
そう言って八神部隊長の腕にポンと手を置く。
「《此処は盗聴が多すぎます。コレでお話してもいいのですが、さすがに手間かと》」
ピクン、と反応する八神部隊長。この技、接触回線と呼ばれる、ガイア式の中でもかなり初歩の技で、要するに接触対象とのみ念話をするという技。但しこの接触対象とのみ、という制約により盗聴される可能性が凄まじく低いという地味な便利スキルだったりする。
コレの発展型に記憶抽出魔法“サイコメトリー”やら意志伝達魔法“達意の言”なんていのもある。
「ん、そやね。ここやとなんやし、ちょっとウチの部屋にいこか」
察しはそれほど悪くないらしく、そういって先導しつつ部隊長室へと移動を開始した部隊長の背後を追う。これで罪悪感から来る管理局神聖視が無ければ、そこそこ信用できる上司なんだろうけどね。まぁ、経験は別として。
――さて、此処からが、私の最後のお仕事なのだ。
既に管理局と言う組織に見切りをつけてしまった私の、これが最後の管理局でのお仕事。
「ほな、話をきかせてもらおか、ティアナ」
ギシリと音を立てて椅子に座る八神部隊長を正面に、私は小さく首を縦に振るのだった。
Side MERA
『それはまた、お疲れ様、でいいのかしら?』
「ああ、取り敢えずは撃退したから……とはいえ、あれの能力が分っていない以上、油断は出来ないんだけれども」
ボロボロに大破したデモンベイン・ストレイドの前。オートマトンの修復を眺めながら、通信の繋がれた地球、アリサとそんな事を話す。
本来ならレギオン襲来に備えて地球に居る筈のアリサ。現在の地球は次元断鎖フィールドの展開もあり、異世界からの通信はかなり繋がりにくい。
ところがアリサは、何故か一般人に対して退避勧告が発令されている筈の月のEFF基地にまだ残っており、それゆえに月の大型通信装置を利用し、こうして現在も通信が可能な状態にあった。
多分また前線に立つ心算なのだろう。本当、俺としては後に下がって欲しいのだが、アリサ・バニングスは俺がそう言って「はいそうですか」と引き下がるような女ではない。寧ろ巫山戯るなと叫んで前へ飛び出す。そんな格好いい女なのだ。
『イリス、だっけ? 情報は無いの?』
「無い。南明日香村から持ち出されたものであるのは間違いないだろうが、資料が少なすぎる。一応アレに手を加えたジェイル・スカリエッティのアジトの残骸を調べているが、管理局から隠れて、と成ると、正直どうなるか……」
『ふぅ……ギーオス変異体ねぇ? そんなに驚異的なの?』
「数で叩けば何とか成る。逆に数で叩かれる危険性もある」
そして何よりも、アレは俺の対極に存在しうる怪物なのだ。
俺と言う存在が、基本的に人類文明、及び惑星の守護・保全を主目的としているのに対し、アレの目的は人類を滅ぼすこと。鉄槌を下す事なのだ。
しかもアレはギーオスの王。下手をすれば、ギーオスの大群がアレに付き従うかも知れないのだ。今のEFFであれば撃退は十分可能であろうが、その他次元世界はその道すがらがごっそりと壊滅していくだろう。
実際、手合わせ程度の心算で挑んだ今回のストレイドによる戦闘。まさか背中半分が熱で炭化したような状況で、しかも大気圏突入速度を更に加速しつつある中で、次元転移で逃げるなどと言うのは、さすがに此方としても予測していなかった。
着地の為に減速した一瞬。減速せずにそのままの速度を維持したイリスはそのまま次元転移を行ない、減速した此方は相対速度により開いた距離に追いつけず、結局イリスの撤退を許す事と為ってしまったのだ。
「レギオンの大群だけでも頭が痛いのに――ッ!」
『世の中上手く行かないわね。如何する? そのイリスの襲来に備えて群を地上に廻す?』
「……いや。イリスは脅威だけれども、群としての脅威はレギオンに劣る。イリスの尖兵になりうるギーオスの方は宇宙での活動は殆ど出来ないからな」
とはいえ、成体ギーオスは成層圏上層での活動くらいなら可能になっている。その辺りも次元断層フィールドによる次元転移阻害範囲に十分入っているので、多分大丈夫だとは思うのだが。
それに比べれば、下手をすれば地球を滅ぼす覚悟でウルティメイト・プラズマを使わなければ成らないかもしれないレギオンの襲来を防ぐほうを先決させたほうがいいだろう。
一応、プラズマで穴を開けながらの地底活動も可能だが、レギオンの移動速度に比べればとてもではないが対抗できない。俺、と言うか『メラ』と言う存在は、汎用型であるが故に特化型に対しては決定打が今一つ物足りない。確かに全体的に優れているのも事実なのだが。
『それじゃ、戦略はこのまま進めるように言っておくわよ?』
「ああ、頼む。……あんまり口出ししてやるなよ?」
『あら、私は別に何にも言ってないわよ』
そういって微笑むアリサ。現在のEFF、実質の資金提供者であり、物資提供者にして兵装生産者であるB&Tには全く頭が上がらない。どれくらい頭が上がらないかと言うと、EFFの身分証よりもB&Tの身分証持ちのが軍内部で優遇されてしまうくらい。ソレくらいB&Tは軍上層部に根深く食い込んでいるのだ。
EF制御の元、ある程度の自由経済が認められている連邦法には、独占禁止法もある事はあるのだ。事実EFFにはB&T以外の軍需品なんかも納入されている。
が、事TSFやSR機に関してはB&Tが未だにトップを独走している状態なのだ。まぁ、大元の技術の殆どがB&Tで発表され、更にソレが呼び水になって凄まじい速度で技術が発展しているのだ。正直、チート脳を持つ俺でも、一週間目を放せば追いつくのは辛いレベルだ。
TSFやSRの兵装なんかは、物によっては殆ど外注だったりもするのだが、基幹技術を抑えたというのは大きかったのだろう。更に実動データの回収のために、積極的に現場に出てきたりもしていて、そんなわけでEFF内でのB&Tの立場は凄まじく強かった。
そんなところに、B&Tの重鎮であるアリサが来れば。当然周囲は気を使う。まぁ、それが重鎮に対する気遣いなのか、戦場のアイドルに対する気遣いなのかは知らないが。
「あと、デモンベインに関するデータも送っておく」
『了解。大破したって聞いたけど、修復用の資材とかは足りてるの?』
「残念ながら、全く足りない。一応すずかのGZ用のパーツで何とか成らないか試算してみたが、機械よりのGZのパーツと魔術よりのストレイドじゃ具合も悪い。下手にGZのパーツを消耗させるよりは、な」
『ま、ストレイドの予備パーツはコッチで用意させてるし、実戦でのデータで改良も必要みたいだからいいけど……でも、それだとレギオン会戦、如何するの?』
そう、其処だ。其処なのだ。
このデモンベイン・ストレイド、万が一に備えて送ってもらった機体では有るが、名目としては現在地球圏に向けて迫るレギオンの軍団、それに対抗するための機体完熟訓練の為になっている。
ところが、肝心の機体はレギオンとぶつかる前に、イリスと戦い大破。しかもイリスは撃破ではなく撃退という始末。正直、あそこでイリスを逃してしまったのは痛恨のミスだが、それ以上にレギオン戦を如何するべきか、という問題が残されているのだ。
「ストレイドの修復はさすがに間に合わない、か」
『だからと言って、量産機ではアンタの力には耐えられないでしょ?』
俺ことメラという存在は、人工的に生み出された半人半プログラムの生体兵器であり、現在はマナ生命体、『人と妖精に近い何か』、『メラという単一種族』だ。
一応人類との高い互換性を備えてはいるが、だからと言って人類かと聞かれれば視線を逸らさざるを得ないレベルの。
そんな俺のマナ出力。それは、例えば管理局の次元航行艦、アースラの出力くらいなら軽く上回る。寧ろ生身でアースラと戦っても絶対に負けない、と言うほどの馬鹿出力なのだ。
それほどの出力だ。ハードもそれなり以上の堅牢性が必要とされるのだ。物理的にも、魔術的にも。
例えば俺が量産型ゼオライマーに乗ったとする。量産型ゼオは魔術適性の低い人間も登場できるようにと、ガイア式は最低限しか使われていない。それは汎用性・量産性においては優れた特徴なのだが、事俺が扱うととんでもない事に成る。
まず最初に機体が俺からあふれ出す余剰マナで熱暴走を起こし融解、次いで暴走、後爆発、と言ったところか。
簡単に言えば、『レベルが上がりすぎてヒノキ棒は振っただけで爆散』、といった有様なのだ。
『いっそ生身で宇宙戦でもする?』
「……まぁ、最悪の場合それになるんだろうが……」
実際、俺は生身で宇宙に出られる。宇宙で生身であれば多少ダメージを喰らうが、その程度。普通の人間のように、水分が飛び出してパーン! なんて事には成らないのだ。
……まぁ、それを言ってしまえば現在の真祖覚醒した吸血姫すずかや、真の勇気に目覚めた勇者王アリサも宇宙で普通に生身で過ごせるのだが。
――何気に人外率が高いんだよなぁ、EFFって。宇宙と言う環境に適応した人類の新たな姿でしょうか。文字通りの意味でニュータイプか。いや、精神感応能力者も結構出始めてはいるけれども。
『パイロットスーツを着てれば最低限は何とか成るし、ホントにやる?』
「いや、その前に一つ手札を切ろうと思う」
そう言って、軽くパネルに指を走らせる。
――本当はコレ、真面目に使う気は無かったのだけれども。
『……ちょっと、何よコレ』
「……本当はさ、使う気は無かったんだよ。ネームバリューとか凄いし、さすがにコレを使うのはおふざけが過ぎるかな、と」
何せ、リアルロボ系といえば先ず最初にコレの名前が出てくる程に有名だ。
ロボット作品、敵の量産型ロボ、宇宙移民者、リアルな戦争。嘗ての業界ではそのどれもが斬新であったのだと言う。
故に、興味が無い人間でも、その姿を見れば少なくとも一言は出てくると言うほどの知名度。多分ソレは日本に限らないのではないだろうか。
「いやさ、某ネット掲示板で、『作ってくれ』っていう大量の署名が出回っててだな」
『……あー、ソレアタシも見たかも。装甲機兵だとか歌でデカルチャーな機体も集まってたんでしょ?』
そうなのだ。一応装甲機兵は造れなくも無いが、ポジショニングはTSFがあれば十分。コスト的に見送った。
VFはその内作りたいと思っているが、可変機はコストや可変ギミックの安全性を鑑みて未だ暫くは研究期間をとるだろう。SR機にも可変機は存在しているが、魔術的な補助とか高コスト素材でごり押ししているような機体の実動データを量産機に転用なんてとてもではないが利用できない。
話が逸れた。とまぁ、そういう話があり、実際に相当数の署名が集まってしまっていたのだとか。
その現状に反応したのが、EFF極東支部。コレはモチベーション的にも作ってみるのはアリではないか、などと、極東(日本)の偉い人が乗り気になってしまったのだ。
で、更に某静岡に工場を持つ夢や楽しいときを創るきっかけを創る会社までが乗り気になってしまい、結果として開発部のほうから「ちょっとやってみない?」なんて乗り気な誘いが繰るほどまでに(一部が)加熱してしまっていたのだ。
そうした経緯から仕方なしにこれらの機体を開発する事に成ったのだ。まぁ、宇宙戦闘における量産機(TSF)の性能不足なんて問題も提起されていたので、丁度新型の開発時期に来ていた、というのもあり、渡りに船という面もあったのだが。
――で、やりすぎた。
『ねぇ、一つ聞きたいんだけど』
「なんだ」
『この機体、露出してるフレームが若干赤く光ってるのは何で?』
「それが、作った我々にもわからんのですよ」
『………』
「………」
映像データに表示されるソレ。
秘密の格納庫でこっそりと建設されたその一角獣、可能性の獣は、今も何処かで己の出番を静かに待っているのだった。
■ワープロ製の書置き。
本人確認の取れない書置き。つまり擬装も簡単。
■流石カンサイ人。
原作だと言葉遣いが似非関西弁だったけど。
因みにボケとツッコミをティアナに教えたのは、地球連邦軍ブラジル方面サバイバル・格闘技指南役、徳光 将軍曹。あだ名は『魔術師』。
……このネタ分る人居るんだろうか。
■魔改造
今回に関しては主犯はメラではなくすずか。
■アースラR2
管理局所属L級次元航行艦アースラ、急遽レストアされ前線基地として活用されたそれを、鳳凰院朱雀が個人で購入し、更にレストアした艦。
■デモンベイン・ストレイド
メラの莫大なエネルギーを受け止めうる魔術的触媒としてはかなり良質な代物ではあった。が、デモンベインは人間の為の鬼械神という、某先代死霊秘法の主の言葉もあり、人外に位置するメラとは若干ズレが存在してしまった。
また動力も普通に良い物を積んでいる為、メラでは宝の持ち腐れになるとして、メラの専用機という案からは外されることに。
■某静岡に工場を持つ夢や楽しいときを創るきっかけを創る会社
いつも夢と希望を有難う。
……でもやっぱりageは無い。
■age
sage
■MS
日本で最も有名なロボットのシリーズ。
全長は約20メートル前後と、ほぼTSFと同じ。というか、TSFの技術を流用して開発されている。
但しTSFと違い全天周囲モニターや全身のスラスター、ムバーブルフレームやサイコフレームなどと様々な実験的要素が組み込まれている。
本来は象徴機として開発されたが、作ってみたところ水中型や宇宙戦などの局地型としてはTSFを上回り、結果TSFに並ぶ戦力となる。
因みにVFを作らない理由=可変機構の研究 と言う理由で、Z系の機体は研究中。
原作と違い、宇宙活動の為の小型ディストーションフィールド発生装置を搭載している。
■一角獣/可能性の獣/ターン・ユニコーン/人の意志を無限の可能性に変える
メラが悪乗りのあおりを受けて開発した機体。ガンダムタイプに見えて実はターンタイプ。
TSFのつくりを下敷きに、ムバーブルフレームやサイコフレーム、ナノスキンなんかを試験実装して作られた気体。
気付けばかなりマジモンに近いサイコフレームが出来上がっており、TSFサイズながら出力的にも能力的にもSRに近い機体となった。