リリカルに立ったカメの話   作:朽葉周

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37 まだ続くそうです。

 

Side ???

 

「そうですか、地上のほうは決着がつきましたか」

「うん、今現在月基地のヴェーダに情報が入ったんだよ」

 

母艦・アイゼンメテオールの艦橋にて、私はソルティーの言葉に頷きます。

しかし、メラ様も無茶をされます。サイコフレームを利用した光の顕現。あれは下手をすれば命を燃やし尽くす自滅技であると、それを記述として残したのはメラ様本人でしょうに。

 

「というか、其処まで原作に忠実に再現する辺り、マイスターはかなりの酔狂者であります」

「アイギス、それは主を馬鹿にしているのですか?」

「まさかそんなコレは一種の親愛表現でありますのでどうかその携行重力波砲を仕舞ってほしいのであります」

 

手を振り否定するアイギスを確認して、重力操作を使用。そのままマイクログラビティカノンを分解・スカートの中へと仕舞いこみます。

 

『SfさんSfさん』

「どうしましたかタチコマ」

『あのね、マイスターの言うイリスは倒したんだよね?』

「Tes.光学、サーマル、ソナー、バイオ、ケミカル、マナ、他様々な装置において、観測できるすべての装置がイリスの消滅を確認していると判断します」

 

私はそうタチコマに返します。タチコマは一応戦車に分類される存在の筈ではありますが、言動が妙に幼かったり、かと思えば妙に鋭いところのある子です。

と言うのもタチコマは複数存在し、その全体が独自の量子通信ネットワークにより意思疎通を行い、一つの記憶を共有することが出来るのだとか。メラ様曰く『ミサカネットワーク』とのこと。シンクライアント型ではないので、すべての筐体を破壊しなければ完全に殲滅されることは無い、とのことです。

 

『それじゃ、管理局はどうなったのかな?』

「と、いいますと?」

『えっとね、火星降下作戦の概要を見てたんだけど、艦艇部隊には後続の待機部隊がいるでしょ?』

 

火星降下作戦、といえばアレですか。月裏面、現在アイゼンメテオールが調査を行なっているこの空域で行なわれた、レギオン迎撃作戦の続き。レギオンの拠点である火星を制圧してしまおう、と言う作戦。

 

レギオンの行動パターンは、

 

1.子レギオンの増産

2.草体の生産

3.草体爆破による種子打ち上げ

 

の三つの段階で行なわれます。要するに、草体とはレギオンの燃料式打ち上げロケットなのです。

 

故に、火星を制圧する為にEFFが行なう役割は三つ。

 

1.高高度に待機部隊による迎撃網を形成し、それによる種子逃亡の阻止。

2.SR部隊によるマザーレギオンの迎撃

3.電磁爆弾による子レギオンの誘引・殲滅及び地上の制圧

 

の三つです。

 

マザーレギオンの迎撃と言うのは、羽で飛ぶ子レギオンと違い、マザーに関してはその特異な能力により宇宙での航行が可能である、というデータが観測されている為です。

 

宇宙での行動が可能であるのならば、当然あのマザーレギオンは、種子を撃墜されれば、その撃墜した相手に対し攻撃を仕掛けようとするのは必定。故にSR部隊による迎撃体制を整える必要があります。

 

そして三つ目。子レギオンをとり逃してしまえば、いずれ時間を掛けて草体を再生されてしまう可能性があります。また、草体の脅威は人間に対しては十分以上の脅威。火星移植計画を行なううえでは、殲滅は必須でしょう。

 

『で、思ったんだ。地球に来たのって、これで例えるなら地上制圧部隊だけだよね?』

「つまりあなたは、まだ敵の本隊が待機しているのではないか、と言いたいのですね?」

 

なるほどと私は小さく頷きます。確かにその可能性は否定できません。

仮に地球を訪れたのが制圧部隊ではなく後詰め部隊含むものであったとしても、警戒しておくに越した事はないでしょう。

 

「アイギス、現在ノノは何処に居ますか」

「ノノでありますか? あの子は確か艦内のブラシ磨きの罰当番の最中であったと思いますが?」

「即座に呼び出し「お呼びでしょうかSfおねえさま!!」……ノノ、貴女の『軍団』のネットワークは正常に稼動していますか?」

「はい、問題なくかどうしているでありますっ!!」

 

にゅっと何処からともなく現れた、橙色の夕日のような髪をした少女。7号、もしくはノノと呼ばれるその少女は、私達の中でも特に戦闘に特化した能力を持つ個体です。

 

その中でも『軍団』と呼ばれる彼女の端末。奇妙な怪獣のような姿をした彼女の部下達は、この広い太陽系全域に展開し、高精度の監視防衛網を形成する事に大きく活躍しています。

 

そして何よりも恐ろしいのが、その監視防衛網は、なんと『次元の海』にすら目を向けているという事です。

現在の地球、EFFの扱う転移技術は次元転移ではなく虚数転移。つまり、次元空間を扱う技術は大きくは取り扱っておりません。

 

然し彼女の防衛網は、そんなどうしても監視の目の届きにくい次元の海にまでおよんでいるのです。

 

……とはいえ、流石に次元の海との通信は不安定な物であり、今回のように管理局の船の進入を許したりと穴も存在している上に、我々の存在が秘匿部隊であるという事も有り、中々情報の伝達がスムーズに行かないという問題も有るのですが。

 

「名誉挽回のチャンスをあげましょう。現在地球圏周辺の『次元の海』において、地球に向かっている次元世界の船舶・転移を行なおうとしている人間など、何か小さなものでも無いか探索をさせなさい」

「りょーかいです! んー、びびびびび!」

 

そういうと、ノノはアホ毛……失礼、触覚をゆんゆんと揺らし、どこかに向けて何かを念じるように唸りだしました。

 

「Sf.お姉様!」

「如何しました」

「『海』で全領域に向かって演説してる管理局の船を発見しました」

「やはり居ましたか。然し、演説? ……モニターに出せますか?」

「勿論! ……はむっ」

 

言うと、ノノはコンソールからケーブルを延ばし、その先端をパクリと加えて見せた。マイスター曰く、口から端子はロマンだそうです。

 

「へっほ、ほれれふへ」

『……繰り返し、97管理外世界を制圧するテロリストに対して告げる。

我々時空管理局は、一つの世界を制圧し、尚且つ質量兵器により武装した貴様等を見過ごす事は無い。また同時に、我等の同胞を撃墜したその罪は真に重い。

然し、我々管理局は、貴様等に対しもう一度だけ投降の機会を与えようと考えている。

今から12時間後、ソレまでにすべての武装を解除し、我々に投降せよ。さもなくば我々の12機のXV級に搭載されたアルカンシェルが、星に向かって制裁の光を降らせることになるだろう!!』

 

……これは、また。私がもし人間であれば、頭痛と言うものを感じていたのかもしれません。

 

「ソルティ、至急KOS-MOS、ADA、バチスカーフを呼び戻しなさい。アイギス、貴女はこのことを至急地球へ――いえ、メラ様へ通達しなさい。ノノ、貴女は即座に『軍団』から可能な限りの戦力を集めなさい」

『上層部の皆さんにはボクから伝えたほうが早いかも?』

「ならタチコマにも任せましょう。正式なものではなくとも、予め知っておく事はいいことです」

「えっと、軍団の集結ポイントは何処にしたらいいのでしょうか?」

「ソルティー、管理局の侵入ルートは」

「えっと、多分だけど、機動六課の使った月裏面ルートじゃないかな?」

 

機動六課が使用した時点で、あそこが通行可能であるという事は管理局側にも知られてしまったと考えるべきだったのでしょう。矢張り次元断層フィールド発生装置の設置を上奏しておくべきでした。

 

「ならば月基地……いえ、L2の採掘基地跡を使いましょう」

 

L2に幾つか存在している採掘基地。それは、言ってしまえば私達を建造する為、宇宙資源として採掘されたデブリの残骸、それを用いて建設された宇宙港です。

港とはいえ、あそこはレギオン掃討前の環境では何時襲撃されるかも不明であった為、何時でも廃棄出来るよう簡単なつくりになっています。

 

太陽光による最低限の基地施設維持以外は、格納された艦からエネルギーを賄うと言う低コスト使用。現在では酸素があるかも不明と言う有様です。

まぁ、そもそも私達に酸素は必要ありませんし、姿さえ隠せれば問題は無いのですが。

 

「それじゃ、皆にはL2に向かうように通達するよ」

「ええ、では、アイゼンメテオールもL2に向けて発進しましょうか」

「「「『了解!」」」』

 

そう言って、皆の声を確認し、静かに艦長席の傍へと戻るのでした。

 

 

 

Side end

 

 

 

 

Side Mera

 

と言う通信が、アイギスから報告されました。

 

『我々はこれからL2に伏兵として潜伏するであります。いざという時は我々をつかえば宜しいかと』

「使えるか。いや、使うにしても場所を選ぶわ」

 

思わずアイギスにそう答える。何せあの無人スーパーロボット軍団、通称スーパーロボっ娘軍団と呼ばれている軍団、『俺よりも戦闘能力が高い』のだ。

 

流石にアイギスやソルティーには十分勝てるが、一撃で星を真っ二つにする奴とか、単騎で新星爆発押さえ込む奴とか、むしろ銀河を消し飛ばせる奴を相手にするのは俺にだって無理――とは言わないが、絶対に勝つことは出来ない。

 

元々俺にすら対応できない敵、もしくは俺が異常を来たした場合のセーフティーとして建造したあいつ等は、本当の意味での人類最後の砦なのだ。

 

「というか、お前達が必要になると判断するほどの戦力なのか?」

『確認しただけで、XV級12隻に加え、XL級32隻、L級11隻、CL級64隻が存在しました』

「戦争しかける気か管理局は!?」

 

確かに時空管理局は多次元世界の管理者を自称する巨大組織だが、魔法原理主義を唱える彼らは魔法と言う枷に縛られた存在でもある。然し魔導師の出生率は常に不安定。魔導師同士の婚姻を持ってすらも、親の才能を引き継ぐ魔導師が生まれるとは限らないのだ。

故に彼らは常に「人材不足」という制限を受けており、一度に動かせる戦力など高が知れているはずなのだが。

 

「……ティアナ、如何いうことだと思う?」

「……もしかして、オム大将かもしれません」

「オム大将って、如何いう人?」

「一言で言えば差別主義者です。思想家であったハイマン提督配下で、彼の引退後に一気にハイマン提督の権力を掌握した、ミッド、いえ管理局至上主義者です」

 

それはまた。いかにもバスk……ゲフンっ、最高評議会の駒っぽいお人じゃないか。

 

「ええ、確実に繋がってると思いますよ。あの人の思想は、『ミッド、管理局の秩序の為ならば多少の犠牲は已む無し』って感じでしたから」

「そんな人間なら、地球にアルカンシェルを打ち込むのに躊躇いはしないか」

「また面倒な……本隊は動かせないの?」

 

アリサの言葉に首を振る。何しろ現在の地球連邦軍は、その大半の戦力を火星に向けて進軍させている最中。余裕があるのは俺達のような特務部隊か秘匿部隊、あるいは私有部隊ぐらいだろう。本当なら多少余裕のあるはずだった地上部隊は、イリスの攻撃で壊滅したし。

 

「出来ればあいつ等は参戦させたくないんだが……」

「人間同士の戦いに巻き込む心算はない、ってメラ君言ってたもんね」

 

そう、あのロボっ娘軍団は、あくまで人類防衛の剣として生み出したのだ。異世界人とはいえ、人間同士のいざこざに巻き込むのは不本意だ。

本当なら、俺も人間同士のイザコザには関わりたくないのだが、一度関わった責任は最後まで取らねば成らないだろう。

 

「此処からジャブロー……へ行くくらいなら月のドッグのがいいか。キャロ」

「はい、月基地に入港要請を出しておきます」

「アリサ、すずか、ティアナ、悪いが一度自分の機体のチェックだけしておいてくれ」

「ま、仕方ないわよね」

「りょーかいだよ」

「自分の機体くらいは、ですね」

「アギト、ウルの調子は?」

「絶好調」

 

よし、と頷いて、ふと何かの気配に気付く。見れば其処には、ワクワクとした表情で此方を見るイクスの姿があって。

チラリ、とすずかに視線を向ければ、苦笑するような気配を感じて。

 

「イクスは、時間の余裕の間、俺がガイア式を教える。逃げられるくらいにはガイア式を習得してもらうぞ!」

「は、はい、わか、了解しましたっっ!!」

 

びしっと返事をきめるイクスに、ちょっとだけ周囲の空気がほんわりしたのだった。

 

「それじゃ、これより我等ホロウは月基地へ戻る。エンジン全開、座標確認。虚数展開カタパルト作動!!」

「エンジン全開オッケーだぜ!」

「座標入力完了。虚数展開カタパルト、正常稼動を確認しました」

 

アギト、キャロの声に頷いて。

 

「ジャンプ!」

 

その言葉と共に、ウルC4の巨体は、光となって地上から姿を消したのだった。

 




※口調に違和感あったらごめんなさい。

■無人スーパーロボット軍団/(スーパーロボっ娘軍団)
旗艦アイゼンメテオールを中心に存在する、地球圏絶対防衛網を不定期に周回している完全無人艦隊。もしくはその中枢たる超高性能戦闘ユニット。
現代の人間には耐えられない長期の宇宙活動を行なう為、その大半を無人(ロボっ娘)化した。因みに当然デザインは日本人。
特徴として、『完全に無人である』『地上で使うにはヤバすぎる』『萌える』等が存在する。因みに本人等は自分のモデルを確認して居り、
・師団長SeimFrau(ザインフラウ)
・防衛部隊長バスターマシン7号率いるバスター軍団
・前衛部隊長ソルティー率いる情報統合制御システム
・補給部隊長タチコマの多脚戦車補給部隊。
・医療部隊長アイギス率いるメカっ娘部隊
・奇襲部隊長KOS-MOS率いる対特殊概念攻撃部隊
・戦術指揮・公安部隊長ADA率いる情報統合戦術支援システム
・汎用無人輸送空母部隊長バチスカーフ率いる人格搭載型特殊航行戦闘艦部隊(秘書麗人)
■NHS-00 旗艦・アイゼンメテオール
名前の元ネタはRAVEから。
サイズは300メートル級と小さめ。実はウルのコピー艦を艦首としてドッキングした船。
戦闘能力は最低限搭載し、メインにB&T本社に匹敵する演算装置を搭載している。
主にSf.が指揮を取る為に運用する他、将官ユニットの生活スペースとなっている。
そもそも艦隊の旗艦であるため、前面に立って戦う事はまず無い。

■Sf.
艦長席に座らず、その傍で指揮官として振舞う。艦長席に座っていいのは主だけだそうです。重力を操る瀟洒でブラックジョークなメイドさん型自動人形。
ちなみに終わクロ読破しているらしい。
■ソルティー
本来はコロニーの制御補助の為の人型アンドロイド。アイゼンメテオールのシステム・通信全般を担当。人間とのコミュニケーション担当でもある。
■アイギス
ソルティーと同じくアイゼンメテオールのシステム・通信担当。要らないボケを挟むたび縄を命綱に宇宙遊泳を愉しまさせられる。ボケてるのか天然なのかわからない子。
■ノノ
ロボっ娘軍団3位の戦闘力、1位の総合戦力を持つ子。バスター軍団と常に情報交換を行なっている為、何処に居ても同じ働きが出来る。下手をすればネオニート一直線だが、本人が好奇心旺盛なのでそれはない。バスター軍団は随時生産中。天然ボケ。トップ2を見て号泣。
■タチコマ
思考戦車。シンクライアント方式ではなく、並列ネットワーク型。タチコマを完全に滅ぼすには、そのすべての筐体を滅ぼすしかないのだっ!!
でも肝心のタチコマAI達は天然ばかり。衛星落としで号泣。
■ADA
戦闘力2位の子。光学情報が記録に残らないという筐体性能と、本人の戦闘よりな思考から単独での特殊作戦を好む。普段はメタトロン製の筐体を求めて単独行動。
無論擬人化済みである。
■COS-MOS
対異星生命体に対する切り札。単身戦闘能力は最強。ただし火力が極端すぎる為、単独での作戦行動を行なう。
■バチスカーフ
宇宙船にしてアンドロイドな子。ノノの汎用量産モデルの中で、最も古さゲフン、もとい戦略的に優れた思考を持ったため採用された。戦闘能力も人格的にも優れているため、よく単独行動ないしセメント組の補助に回る。当部隊の母親ポジ。
亜空間格納庫から召還する戦艦義体と合体する事で凄まじい機動性能・継戦能力を誇る旗艦・戦艦として活動する事も可能。


■オム大将
攻撃的な思想家であったハイマン提督の下で権力を握り、彼の引退後その権力を丸々乗っ取った主義者。
極端なミッドチルダ至上主義、管理局至上主義者であり、その他世界を発展途上の外界と卑下する。
また最高評議会に近い思想の持ち主であり、管理局安定の為には犠牲も已む無しという思想の元、様々な暗部に関与している。
JS事件、イリス事件の後、エルラン中将の連絡を受け、様々な思惑から地球侵攻を策略する。

■オム艦隊
オム大将が保有する総戦力。オムは管理局の暗部に携わっていた為、正規戦力に加え非正規戦力を大量に保持している。更にこの艦隊は現状でオムの手が届く範囲の全ての次元航行艦をかき集めた物であり、ミッド・本局の防備からごっそり艦をもってきてしまっている。
現在地球近隣の次元空間には、XV級12隻に加え、XL級32隻、L級11隻、CL級64隻の大艦隊が近付いている。

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