ソードアートオンライン―アリシゼーション・フェイクソウル― 作:榛野 春音
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「――おぬし、今なんと!?」
巨大な隔離図書館の中央にて、アンダーワールドの旧支配者の一人《カーディナル》は、驚愕の表情になる。
すると、カーディナルの正面に立つ青年は、不敵な笑みを漏らしつつもう一度言った。
「現支配者を抹殺する為の騎士団を作る――と、言ったのだよ」
そして、その口元をニンマリと吊り上げる男、名をユリエノス・アーケネスと言い、アンダーワールドにて[神聖術語学者]の天職を受ける者であった。
細身で長身に灰色の短髪鋭い目つきを持ち、体には研究衣を身に付け、その上に羽織りのようなものを羽織っている。
ユリエノスは、続ける。
「私はね。現実世界と呼ばれる世界を見て来たんだよ。そして、ストレートに感じたのさ。この世界は間違っているとね。別に現実世界が正しいとは思ってないが、少なくともあんなクズババァの独裁に浸かる世界が間違っていることくらいはハッキリと断言出来るよ」
そこまで言って口を閉ざしたユリエノスに、カーディナルは問う。
「でも、どうやって倒すつもりじゃ?奴も奴の騎士団も消して簡単に倒せたものではないぞ?」
すると、その一言クックッとユリエノスが笑う。
「もちろん。なんの下準備も勝算も無しに賭け金をレイズするほど、私はバカではなくてね。――既に整っているよ。整合騎士の武装完全支配術を凌駕する力の開発はね」
ユリエノスの得意気な言葉にカーディナルは言葉を失う。
武装完全支配術を凌駕する力……じゃと!?
ユリエノスは続けた。
「もう、実用可能段階だ。既に稼働チェックと適合者の判明している力は、十三。あと一つだよ。あと一つで私の《鍵憶十四騎士》は完成する…………見ていたまえカーディナル。私があのクズを神の座から引きずり下ろしてやるさ」
そんな狂気に満ちたユリエノスの言葉にカーディナルは、脅えを感じつつもその考えを否定することはなかった。
×××
カーディナルと会話を終えたユリエノスは、自らの研究施設に戻ると地下へと向かった。
暗い部屋の中、無数に伸びる配線の先には円筒形に伸びる一つの水槽があった。
その中には、一人の少女が眠っている。年は16才くらいだろうか。水色のロングヘアーが美しい。
全体的美しい容姿のこの少女だが、彼女はユリエノスの神聖術によって人工的に生み出された生命。
今は、アンダーワールドでの生命活動における最終調整を行っているのだ。
水槽に触れたユリエノスは少女を見つめると、そっと呟いた。
「君が……十四番目だ」
その言葉は、先程とはまるで違い、どこか優しさと悲しみの込められたものだった。
ユリエノスは、水槽に背を向けると地下室を後にする。
一階に登る階段の途中でユリエノスは、ふと足を止めた。
目の前には、紫色の騎士服に身を包んだ一人の少女。
「ユウキ。……どうした?」
ユリエノスの言葉に《絶剣》ユウキはこたえる。
「えへへ。ちょっと気になっちゃってさ新人の子。生まれたら僕が世話する予定でしょ?なんか楽しみなんだっ!」
その言葉にユリエノスはフッと笑みを零す。
「そうか。まぁ彼女が生まれたら、よろしく頼む。まぁ、あちらの世界で生きていた頃は《絶剣》と呼ばれていた君だ。きっと彼女を立派な人間、立派な騎士にできるだろうな」
「ふふんっ!オッケー!このユウキにお任せくださいっ!」
そう言って、ユウキは胸を張り敬礼すると足早に地下室へと降りて行った。
あのユウキと言う少女、生前現実世界に直結するとある仮想世界で《絶剣》と呼ばれた最強クラスの妖精剣士であった。ある理由がキッカケで死亡した彼女だが、ユリエノスが直前にその全てをバーチャル側からトレースした為、今彼女はこの世界の住人として新しい生活を送っている。
これまでの記憶や知識、剣士としての実力はもちろん健在でユリエノスの組織には欠かすことの出来ない人物である。
ユウキは、《演習教官騎士団》と呼ばれるユリエノスの《鍵憶十四騎士》を育成する為に作られた騎士団に所属し、次に生まれて来る十四番目の騎士の教育担当者となっているのだ。
故に先程のように張り切っているのである。
一階に戻ったユリエノスは、研究所内ロビーにあるソファーに腰かける。
この研究所内にあるものは、全て現実世界およびその世界に直結した仮想世界からトレースしたものだ。もちろん。中にはアンダーワールドに存在しないものもある。
ソファーに腰を落ち着けたユリエノスは息を吐く。
そして、窓の外、遥かに見えるセントラル・カセドラルを睨み、こう呟いた。
「貴様だけが、世界を知った気になるなよ。――アドミニストレータ」
その声は誰に届くことも無く、虚ろな世界に消える。
暫しの間、無言でセントラル・カセドラルを睨んでいたユリエノスだが、不意に立ち上がると自らの研究へと足早に入室し、その扉を乱暴に閉めたのだった。
1、
目を開けた時から、私には生における全てが理解出来た。
これは、私の生みの親であるユリエノス氏によって脳内に組み込まれたものだそうだ。
だから、生まれた瞬間から私には個性が有り、自我が有り、そして何よりも人間としての心があった。
言葉も知識も一般以上のものがあり、この世界における常識、そして世界の真実も知っていた。
しかし、それだけに全てを得ていながらも、まだ私はゼロに過ぎないであった。
×××
「おっはよー!フィルフィア!」
ユウキの声にフィルフィアは、その水色の髪を揺らし振り返った。
その可憐な姿にしばし見とれていたユウキがすぐさまその胸元に飛び込みヒシッと抱き締めた。
そんなユウキにフィルフィアは、苦笑いする。
「おはようございます。ユウキ先輩」
すると、ニコーッと笑みを浮かべたユウキは、パッとフィルフィアから離れると言った。
「遂に今日だね」
「はい」
「頑張ってね?フィルフィア。僕はお留守番だけど、ここから応援してるよ」
そう言ってユウキは、フィルフィアにブイサインをする。
そんなユウキにフィルフィアは、そっと笑みを浮かべ頷いた。
ユウキが去った後、フィルフィアはユリエノスの研究室に行った。
そこには、数人の騎士が並びユリエノスの向かい合っていた。
「遅れてすみません」
予定時間よりも二十分早く来たのだが、それよりも早い先輩騎士達にフィルフィアは頭を垂れる。
しかし、騎士達は別に気にする様子は無く、むしろ中にはニヤニヤと笑っている者もいる。
ユリエノスは、フンッと鼻で笑う。
そして言った。
「さて……と、今日の任務は言うまでもなく――」
そこで言葉を切ったユリエノスは、フィルフィアを見た。
すると、それまでユリエノスを見ていた先輩騎士達も一斉ににフィルフィアを見る。
その全ての視線が、今回の任務をお前の口から告げろと言っている。
暫しの間。
何故皆がそのように言うのか。
簡単である。
それだけ今回の任務がフィルフィアに関係したものであるからだ。
そして、それだけ関係があるからこそ、敢えて意識させ自覚させる為に口にさせるのだ。
全く――皆して言わずとも、私はそれなりの覚悟を持ってここに来ている。いや、むしろそれ以上の覚悟を持ってここに来て、皆の期待する覚悟など生まれた時から既にこの身に宿されている。
微笑を浮かべたフィルフィアは、真っ直ぐ前を向き凜とした声で言った。
「今回の任務は――私の剣となる母材を手に入れることです」
私の名は、フィルフィア・アーケネス。
《鍵憶十四騎士》十四番目の騎士となる者。
目標は、強く有り、誰に屈すること無き最高の騎士になる。
そして、この世界の[偽りの神]に裁きの刃を振り下ろす。
任務を言い終えたフィルフィアは、ユリエノスの背後の窓から見えるセントラル・カセドラルを見た。
今ここに、私の始まりを告げる――
どうも新作ですw
先に注意ですが、
※私が執筆中の「ソードアートオンライン~デッド・オブ・グレートセイバー~」の内容とは、別ものです。話的な繋がりはありません。
そして「ソードアートオンライン~デッド・オブ・グレートセイバー~」もよろしくお願いしますw
結構今作は、壮大な話になります。ww
頑張っていきますので、よろしくお願いします!
感想待ってますので、よろしくお願いします!
※あんまりツッコミは避けて欲しいですw