魔法使いの弟子 ~並行世界を巡る旅~   作:文房具

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第4話 強襲

1週間ほど何もない日が続いた。

 

その間翔は、桜子の研究の手伝いをして過ごしていた。具体的には、ご飯をコンビニから買ってきたり、印刷されたプリントをまとめたりするだけだったが。

 

それ以外では、自身のアーマーの調整をしていた。翔のカレイドアーマーはカレイドステッキをベースに作っているが、明確な武装を作ることでアーマー形成後の攻撃や飛行を容易にしている。逆に言えば、その時に適した武装がない場合は対応できない場合があるのだ。

 

アーマーは一か月前に製作したばかりであり、アーマーを使った実戦経験は少ないのが現状なので、翔は足りないものがあればどんどん追加していくつもりでいる。材料はあらかじめアーマーの格納領域に収納されている。

 

さらに言えば、このアーマーに搭載された目玉ともいえる機能はまだ一度も使ったことがない。正確に言えば現在進行形で使用しているのだが、ある一定の段階まではダイヤの仕事だ。

 

この作業はダイヤに一番の負荷を強いる作業であるため、翔としては、戦闘がないのはとてもありがたかったりする。

 

翔がパソコンに向かう桜子とソファーに座っているダイヤを眺めていると、コンロにかけているやかんから甲高い音が聞こえ、沸騰したことが分かる。

 

翔は素早くカップ麺にお湯を入れて時計を見る。

 

「5分か」

 

翔は時計を見ながらダイヤの隣の椅子に腰かける。ダイヤは特に反応することはない。翔も、机に置いてある前腕部分のアーマーの調整を再開する。

 

カップ麺があと2分で出来上がるというときに、ダイヤが翔の袖を引っ張った。

 

「マスター、一条刑事から電話です」

「ん? ああ。どれどれ」

 

ダイヤはそう言うとデバイス状態に変化し、そこから半透明の板が出てくる。そこには『CALL』と表記されている。カレイドアーマーにはどんな情報端末とも通信できる機能が備わっている。前に会った時に連絡先を交換しておいたのだ。

 

「はい、翔です。何かありましたか?」

《翔君か。今、未確認生命体第46号が出現したという情報が入った。もう五代も向っている。君も行ってくれるか?》

「もちろんです。どこですか?」

《場所は○○○の○○○だ。分かるか?》

「大丈夫です。すぐに向います!」

 

翔は立ち上がる。

 

「行くぞ、ダイヤ」

「イエス、マスター」

 

翔は装甲を装着する。

 

「じゃあ、行ってきます」

「気を付けてね」

 

桜子に挨拶をした翔は窓から飛び出した。一条刑事が言った場所まで3分もかからない。

 

 

 

 

 

 

 

 

数分間飛行すると、目的地に着いた。前回の様に人多い場所ではなく、さびれた廃工場だ。

 

翔は、地上に降り立ってあたりを見回していると、すでにクウガに変身した五代がバイクに乗ってやってくる。

 

「五代さん!」

「翔君、敵は?」

「空からは見えなかったんで、多分あの中に」

 

翔はそう言ってぼろぼろの工場を指さした。

 

「じゃあ、早くいこう!」

「待ってください。もう一つあるんです」

「もう一つ?」

「はい。あそこには多分、ぼくの敵もいます」

 

翔は飛行しながら、一条刑事から追加の情報を2つ受け取っていた。一つは、未確認生命体第46号は、男性警官しか殺害していないという事。もう一つは、未確認生命体第46号とは別に無差別に人を襲っている黒い塊がいたという事。

 

翔はそのことをクウガに告げる。

 

「俺も一条さんから聞いたよ」

「僕も自分の敵と戦うのはなじめてなので、どんな攻撃をしているのか全く分からないんです。気をつけましょう」

「分かった。じゃあ、早く行こう!」

「はい!」

 

翔とクウガは同時に走り出す。途中、既に息絶えている警官が何人も転がっていた。クウガはその中の一人が持っていた拳銃を拾う。

 

翔は、その行動に疑問を持った。なんでわざわざ拳銃を拾うのか。そもそも拳銃で倒せるなら警官達は倒されていないのではないか、と。

 

しかし、その疑問はすぐに解決することになる。

 

「超変身!!」

 

クウガは乗り捨てされたパトカーの上にジャンプする。その姿は緑色に変わっていた。

 

この姿はクウガの派生形態の一つで『ペガサスフォーム』という。この状態では、人間の数千倍の五感を持ち、紫外線・赤外線を見ることや超音波を聞くことが可能になる。その代わり接近戦は極端に不得手なのが弱点だ。ほかにも、数千倍の五感は五代の体に大きな負担になるため、変身は、50秒しか形態を維持できないうえに、制限時間を超過した場合、2時間は変身不能に陥る。

 

「今度は緑か。ん?」

 

前に青から赤に変化したのを見ていた翔は、色の変化にはさほど驚かなかったが、そのあとになって起こったことに目を見開いた。

 

なんと、クウガが手にしていた拳銃が、緑と金で装飾されたボウガンのようなものに変化したのだ。

 

これもクウガの能力の一つ、『モーフィングパワー』である。これは原子・分子レベルで分解・再構成する力で、クウガはこれを利用してその形態に合わせた武器を作り出し戦うのだ。

 

ペガサスフォームでは接近戦での弱さを補うために、拳銃を専用武器である『ペガサスボウガン』に変換したのだ。

 

翔は少し浮かび、クウガの視線を追う。するとその先には未確認生命体だと思われる怪物と2人ほどの警官がいた。翔は、クウガがその位置からの遠距離攻撃で、まだクウガ達に気付いていない未確認生命体を仕留めようとしているという事を理解する。

 

クウガはペガサスボウガンから、封印エネルギーが込められた空気弾を放つ。それは正確に、無防備に背中をさらしていた未確認生命体に命中する。

 

しかし。

 

「……」

「……」

「当たりましたよね?」

「当たったはずだけど……」

 

未確認生命体は微動だにしない。動きは止まったので警官たちはなんとな立ち上がり逃げていく。

 

すると突然、未確認生命体が振り返った。まっすぐ翔たちを見る視線に翔は自分が射ぬかれているような感覚に陥った。そして、それは決して感覚だけで終わることはなかった。

 

未確認生命体は右手に黒いものを持っていた。翔がそれに意識を向けると、自動で視界のディスプレイがズームモードになり、その黒いものが大きくなる。その正体を知ったのと黒いもの―――ボウガン型の銃―――から空気の弾丸が発射されるのはほとんど同時だった。

 

「超変身!!」

「物理保護!!」

 

クウガはドラゴンフォームになり回避、翔は物理保護で防御した。2発放たれたそれは、翔の物理保護にかなりの衝撃を与えたが、突破されることはなかった。クウガの方に放たれたものは、標的を失ったことで、後ろの建物に大穴を開けるだけにとどまった。

 

翔は物理保護を保持したまま空を飛び、攻撃を開始する。放たれる空気弾をローリングで避けながら、リパルサーレイで応戦する。クウガも棒状のドラゴンフォーム専用武器『ドラゴンロット』を打ちつける。

 

しかし、未確認生命体はそれらを巧みに躱す。そしてとうとう、クウガが空気弾にとらえられた。

 

クウガは生体装甲に穴をあけられ、吹き飛ばされる。

 

「五代さん!!」

「マスター、待って!」

 

翔は慌てて助けに入ろうとするが、ダイヤの声が頭に響いた。同時に足を引っ張られる。

 

「うわ!!」

 

翔が足を見ると、黒いものが巻き付いている。翔はブースターのパワーを上げて抵抗しようとするが、それよりも早く体制を崩され、地面に墜落する。

 

「痛っつ、なんだよ」

 

クラクラする頭を我慢して立ち上がると、そこには『敵』がいた。

 

黒い滑らかな体を持ち、顔に当たる部分は凹凸で表されている人型の何かだ。

 

「出たな」

「はい。宝石翁からのデータと一致します」

「あっちは五代さんに任せるしなかいな。逃げても追ってくるだろうし」

 

翔は何回か軽く手を握って開く。緊張をほぐしているのだ。

 

「ちなみにダイヤ、あとどのくらいで構築できる?」

「データの整理は終わっています。あと一晩もあれば形にできるはずです」

「そっか」

 

翔は構える。先制を取るために。

 

ブースターで一息に近づき、魔力の尾を引く右手と通常の左手で打撃をくわえる。ゴ・バベル・ダに対しても有効だった拳は、確かな感触を翔に伝える。

 

(当たってる感触はする。右手も左手も。打撃は効くのか?)

 

敵はめちゃめちゃに腕を振り回してくるが、翔に当たることはない。

 

みぞおちに拳をめり込ませ数歩下がる。そこから助走をつけて敵を蹴り飛ばした。

 

落下した時に土埃が舞い、敵の様子がつかめず翔は目を細める。

 

直後、ゾワリとした嫌な感覚がした翔は、反射的に物理保護を自分の右側に張った。

 

「危ねぇ」

 

物理保護は薄く研ぎ澄まされた刃を受け止めていた。出所は土埃の中だ。敵は自分の右手を変化させて、肘から先を全て刃にした。鞭のようにしなるそれは切れ味も凄まじく、屋根を支えている鉄柱を簡単に切り裂いていく。

 

伸縮も自在らしく、距離を詰められない。かといって、反撃の暇もない。

 

仕方なく自分を囲むように物理保護を張り攻撃を凌ぐが、これでは翔も攻撃できない。

 

「さて、どうするか」

 

相手の攻撃は物理保護を破るほどの威力はないようだが、いつまでも籠城しているわけにはいかない。

 

厄介なあの鞭を止められれば、どうにかできる。

 

そこである考えが浮かぶ。やったことはないが、やってみる価値はある。

 

何度も何度も物理保護に当たる鞭。それにタイミングを合わせて。

 

「出来たッ!!!」

 

やったことは単純だ。平らな物理保護を使って、巻きずしの様に鞭に巻きつくことで動きを止めたのだ。

 

自分を覆っていた物理保護を解く。胸のリアクター、つまり魔力炉が、ひときわ大きな光を放つ。必殺の攻撃の前兆だ。

 

「ユニビーム、発射―――」

 

の直前、巻き取られて動きを止められていた鞭が、アーマーを食い破って翔の背中に突き刺さった。動きを止めることは出来ていたが、伸びることは計算に入れていなかったのだ。

 

歯を食いしばって痛みに耐える。すでに勝負は決まっている。

 

リアクターから、リパルサーレイとは比べ物にならないほど強力な魔力法が放たれる。それは敵を飲みこみ跡形もなく消滅させる。

 

リパルサーレイとユニビームの違いは、使用している魔力がある場所だ。リパルサーレイはアーマー内に貯蔵されている魔力を使うが、ユニビームは平行世界から取り入れた魔力を直接放射している。

 

つまり理論上、上限があるリパルサーレイとは違い、ユニビームは威力を無限に上昇させることが出来る。もっとも、アーマーの強度の問題がるためあくまで理論上の話だが、それでもれパルサーレイの数十倍の威力が出せる。

 

ユニビームを撃ち終わった翔はその場に倒れ込んだ。ダイヤは魔力を治癒に回し翔の傷をふさごうとする。

 

その心地よさを感じながら、翔は目を閉じた。

 




次回でクウガの世界はおしまいだと思います。

そして、やっとスーツの目玉機能が出せる……ッ

自分的にはかなりチートだと思ってます。

それでは、また来週。
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