「馬鹿にしないでっ!」
「勝手にしなさい!」
高級マンションの一室に、姉妹のケンカする声が響く。
「お姉ちゃんの馬鹿!私の気持ち、わかるはずないよ!」
そういうと、妹―――愛深は、姉―――夕香の目の前から消えた。
夕香は、愛深が消えてから、ずっと考えた。
「愛深の気持ち、ねぇ・・・」
夕香には、思い当たる節があった。
―――私、夕香は10年ほど前、意識不明で1年ほど眠っていたことがあった。
まぁ、頭はよかったし、まだ幼かったから、勉強は困らなかったし、兄―――修也譲りの運動神経もあり、困ったことはなかった。
その当時、妹の愛深は、まだ4歳だった。
しかし、私が入院していたせいで、兄は妹の面倒なんか見れなかった。退院してからも、私優先だった。
―――父は医者だ。私が入院していなくても忙しかったのに、さらに忙しかった。母親も、愛深を生んですぐに亡くなった。
家政婦のフクさんにも、家庭があるもので、愛深は幼いころから、基本1人だった。
そんな愛深だから、私のことをうらやましい、と思っても仕方がない。
愛深は、とても頭がいい。運動は微妙だが、バドミントンが出来る。FFIがあり、兄も家にいないことが多かったため、愛深は私と兄と違い、自然とサッカーから離れた。
今は愛深優先も多いが、そのことを愛深自身がどう思っているのか、誰にもわからない。
愛深は、もう遅い、と思っているような節もある。
「愛深・・・」
夕香は、愛深のこもった部屋のドアを見つめ、妹の名前をつぶやいた。
その時、玄関が開いて、聞き慣れた声が2つ聞こえた。
「ただいま」
「ただいま」
玄関に走っていくと、似た顔があった。
「おかえり、お兄ちゃん、お父さん」
そこにやってきたのは、医者の父と同じく医者の兄だった。父は個人クリニックを開き、兄は総合病院に勤めている。
「・・・愛深は?」
修也が怪訝な顔で、夕香に尋ねた。夕香は、苦笑する。
「久々にケンカしちゃって。私、愛深のこと、何も考えてなかった」
「・・・どうした?」
勝也が、今度は尋ねる。夕香は、考えたことをすべて告げた。
話し終わると、2人も神妙な顔つきになった。
「確かにな・・・」
「俺も悪かったな・・・幼いころ、1人にすることが多かったからな」
依然として、愛深の部屋のドアは開かなかった。
夜ごはん―――愛深は黙りこくったまま、出てこなかった。
お風呂―――愛深は、サッカー部のシャワーを使ってきた、と言っていた。
寝る前―――お休みも言わず、気づけは12時をまわっていた。
やっぱりいけない・・・。
夕香はそう思って、自分が寝る前に、愛深の部屋に入った。
「愛深」
「・・・なに、姉さん」
愛深は温厚な子だが、本当に機嫌が悪いと、とことん怖い。頑固なところ―――になくてもいいところが、勝也と似たのだった。
「入るわよ」
「ご勝手に」
冷たく言い放つ妹を、夕香はなるべく意識せず、いつもどおりに接することにした。
「宿題、してるの?」
「・・・簡単だけどね。宿題じゃ足りない」
厭味ったらしく言いながら、愛深がといているのは大学入試の問題。
彼女の頭脳は、IQが驚異的だとか。姉の面目など、勉強じゃ到底無理だ。
「厭味?」
「だとしたら?」
夕香は、本気で怒っていることに気づいている。それでも、至って冷静に・・・。
「姉さん、知らないふりはやめたほうがいいと思うよ」
夕香のほうを見ないで、愛深は唐突に告げる。夕香は、動揺を隠せなかった。
「何言って・・・」
「嘘ついても、すぐわかっちゃうから。私、お姉ちゃんとは違う人だからね・・・お姉ちゃんが、理解できないのは当たり前だと思って」
「そうじゃなくて!」
夕香は思わず、叫んでいた。
「そうじゃないって・・・」
「私は、愛深のこと、理解してないけど・・・でも、大切な妹だから!大切だよ・・・一緒にいてやれないこともあるけど・・・お父さんも、お兄ちゃんも、私も、愛深が好きだよ」
すると愛深は、目を潤ませる。
「ありがと・・・お姉ちゃん―――」
翌日―――
「蓮ちゃん、蒼ちゃん、早く遊ぼう~」
「ちょい待って、愛深」
「興奮しすぎですよ・・・京介、ほかの人も・・・」
私―――愛深たちは、只今遊園地に来ています。
いろいろな子が来てて、楽しいなぁ・・・。
―――さて、今日は楽しい1日になればいいなっ♪
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