“はじめましてです。私は、如月麗子と申します。
生徒会会長を務めさせていただいておりました。そんな私ですが、明後日をもって会長を辞職するのです。
任期、というのでしょうか。1年間という、長いようで短い期間でした。
生徒会の皆さんにも、たくさんのご迷惑をおかけしたことがありました。
次の会長ですが、生徒会副会長だった神童拓人君です。
神童君なら、皆が信頼できる、明るくてまじめでしっかりした、まとまった学校にできると思い、私が推薦したのです。
私が推薦したのは、もう1人います。副会長になった、山吹楓さんです。楓さんには、一度、すごくご迷惑をおかけしたことがありました。その際に、こういう人材が生徒会には必要だ、ということに気づいたのです。そして、副会長に推薦したのです。
会長は、神童君と決めていましたので。
任期は、あっという間に過ぎて行ったのです。
もう通学する際に、コートが必要な季節となりました。私が会長になったのも、これくらいの時でした。
私は“笑えません”。そのため、皆さんに不快な思いをさせてしまったこともあるでしょう。しかし、そんな私を受け入れてくださった皆さんに、私は卒業までの数カ月、恩返しがしたいと思うのです。
最初は“生徒会交代式”です。みかんさんや阿部君、三国君にも協力を依頼して、私らしくはないですが、楽しく明るい交代式にしたいのです。”―――
「・・・ということなのですが、協力していただけますか?」
麗子ちゃんは、私―――みかんたちの瞳を見て、はっきりと言い放った。確かに麗子ちゃんらしくないけど、良い考えだと思うの。
麗子ちゃんが考えた、最後の今期生徒会行事。面白くしたいもの。
「私は賛成だよ。麗子ちゃんの、最後の行事だもん。良いと思うよ」
「・・・そうだな」
「あぁ。そうだ、南沢も呼ぶか」
「それはいいですね」
相変わらず笑えないみたいだけど、最近の麗子ちゃんは、瞳だけは笑っていることがあるの。これが、麗子ちゃんの“笑う”ってこと。
「それじゃあっ!」
次期会長さんのいない生徒会室に、3年生の執行委員の声が響く。
「私たちが、伝統を作りましょう!」
『おーっ!』
こぶしを高く突き上げて、ちょっと汚い蛍光灯を見る。―――この蛍光灯を見るのも、あと少しなんだよね・・・。私まで、悲しくなってきてしまうなぁ。
―――そして、ナイスタイミングで神童君が帰ってきた。私たちは、いたって冷静に。麗子ちゃんは、神童君に仕事をたたきこんでる。
本当に、責任感が強くって、かっこいい女の子だなぁ・・・麗子ちゃんは。
交代式まで、残された猶予は今日も入れて、あと3日。
この間に、何とかして面白くって、最高の交代式を、麗子ちゃんのため―――皆のために、考えて見せないとね。
「うーん・・・サプライズって言ったら、歌うたったりかなぁ?」
「定番だな」
「じゃあ、プレゼントとか、三国どう思う?」
「生徒会費で賄えばいいが、神童に気づかれたら終わりだな」
「じゃあ、どうしろというのです、三国君」
・・・意気込んだはいいものの、そう簡単には良い意見は出るはずもなくって。
―――神童君が帰ってから、さらに残って私たちは会議中。
三国君は意見の選別、私と麗子ちゃんと阿部君は、意見の出しあいを行っているの。でも、良い意見が出ずに、かれこれ1時間。
「・・・どうしましょう、みかんさん」
「そうだねぇ・・・家に帰って、メールしようか?」
「そうだな。生徒会は、メルアド交換済みだしな」
最終下校時刻も迫っていたし、結局メールでやり取りすることになった。
メールの内容は、こんな感じ。神童君以外、生徒会メンバー一斉送信で行っていたから、会議してるのと変わらない感じ。
みかん@皆、良い意見でたー?
如月麗子@いいえ、全くです。
あべけん(阿部)@俺は、やっぱりプレゼントしか。
太一(三国)@俺は、次の生徒会メンバーがサッカー部がほとんどだと気付いたぞ。
あべけん@あ、本当だ。神童に、山吹さんもだな。
如月麗子@それだけじゃありません。一乃君や霧野君、1年生の剣城君もです。
みかん@川口君だけ、吹奏楽部だよね?後輩だもの。
太一@でも、サッカー部関連は難しいよな。サッカーさせるわけにはいかないしな。
みかん@よねぇ。だったら、歌はどう?あと、ダンスをするの。私が吹部だから、教えられるよ?
如月麗子@ダンスは、私には無理です。
みかん@えー?麗子ちゃん、美人さんだから、大丈夫だよ。
如月麗子@それは関係ありません!それに、私は美人じゃないのですが!
あべけん@あのー・・・盛り上がってるところ、申しわけないが。
みかん@あ、ごめんなさい。サプライズはどうするか、よね。
太一@でも、歌は覚えられない気がするぞ。それで、思ったんだが。
あべけん@なんだ?
みかん@気になるなー!
如月麗子@教えていただけますか?
太一@焦るな、汗。あのな、生徒会の旗を作るんだ。
如月麗子@旗・・・ですか?確かにいい考えですね。
太一@だろ?ずっと残しておけるし。3年生だけなら、3年生の多目的ルームを使えばいいだろう?
あべけん@確かに。それはいいな。
みかん@私も賛成!じゃあ、どんなのにするー?
如月麗子@私は、何かの歌の歌詞を書けばいいと思うんです。たとえば、某サッカーアニメのOP歌っている方とか」
あべけん@・・・如月、ファンなのか?
如月麗子@・・・はい。良い曲ですし。
太一@じゃあ決まりだな。次は歌だな・・・。
みかん@私は、初代の2つ目の曲がいいと思うんだけどなぁ。2番の“僕らの絆、絶対に消えない”とか好きだよ?
太一@じゃあ、2番からだな。よし、決まりだ!
如月麗子@急いで作らないとですね。
あべけん@だな。そのためにも、俺はもう寝るな。おやすみ。
太一@じゃあ俺も、おやすみ。
みかん@私も、お母さんがうるさいし。おやすみー。
如月麗子@では、私もです。おやすみなさい。
・・・と、こんな感じで、旗を作ることになったの。
翌日から、私たち3年生は、超特急で旗制作に取り掛かって、何とかいいものができたっぽい。
2年生、1年生のみんなが、喜んでくれるといいんだけど・・・。
いよいよ交代式の日がやってきた。
正直言えば、少しさみしいような気がするよ。だって、1年間やってきたんだから。少しっていうか、かなりさみしい。
でも、それ以上に楽しみの方が大きい。―――私たち生徒会は、ドン引きだけを残した劇をはじめ、いろいろやらかしたからなぁ・・・。
楽しかったんだけどね。
「これより、生徒会交代式を行います」
広報委員会の司会の生徒が、はっきりとした声で告げた。その声で、私たち旧生徒会と、神童君たち新生徒会が、一斉に立ち上がる。
そして、交代式が始まった。