なぜ彼女―――大空ミクを好きになったか、と聞かれると、俺―――出雲ハルキは反応に困る。
彼女がそんな不思議な人間なわけではない。むしろ、誰よりも可愛く優しいと思う。
ならば、なぜ俺が困るのか。
―――理由は簡単だ。
彼女のすべてを好きになってしまったからだ。
どこかが好きなのではない。
可愛くて優しく、少し無理をするところも、もろもろすべて含め、ミクが好きだ。
世界連合軍の司令官を決めるとき。
ミクは司令官を俺に譲った。
後ろめたい気持ちがあるとか言っていたが、そんなのはミクだけだ。
ミクの事情を理解しないほど、俺たちは幼くない。
それでも、ミクが下した苦渋の決断だ。
そして、ポニーテールにした髪から、ピンク色のリボンを取った。
ウェーブのかかった蒼い髪が、サラサラ揺れる。
そのリボンをちょうちょ結びにして、ミクは自分の胸元にあるバッチをつけた。
―――それは、美都先生やジンさんも持っている、司令官の証だった。
リボンの真ん中にバッチをつけて、俺に手渡してきた。
“うけとれない”
そう否定しても、ミクは笑ってリボンを渡してきた。
―――そのリボンは、今となっては俺のお守りだ。
無理をしすぎて、オーバーロードが暴走したこともあった。
それでも、皆のために戦おうとする強い少女だった。
衰弱は激しかったが・・・。
さっきまで目の前にいた彼女は、今は海の上。
―――アラタとともに、旅に出たのだ。
我が儘を言えば、ずっといてほしかった。
それでも、彼女が選んだのはその道じゃない。
白くなってしまった髪を切り、肩上の長さになった髪がまた揺れる。
肩が少し出ている白いニットワンピに黒のニーハイ、白のハイヒールローファーを履いていた。
旅立ち間際、俺はミクに手渡した。
“これって・・・?”
“ネックレスだ。ハートの形が可愛いと言っていた”
掌で転がるネックレス。
場所がやがて、ミクの首元に移動した。
“似合う?”
クルクル回るミク。
似合わないわけがない。
“よく似合ってる”
“本当!?よかったぁ・・・!ありがとっ!”
ニコッと笑ったその笑顔。
―――俺の心を、どれだけ幸せにして、悲しませてきたか。
元気よく駆けだすミクを見て、出会ったあの日を思い出す。
―――不安にかられたその日、転校初日。
優しい口調で笑いかける彼女に、一目ぼれをしたのだった。
一目ぼれで、今の今まで伝えなかった気持ち。
それでも、今はすでに届かない思い。
でも彼女は約束した。―――絶対に帰ってくる、と。
ライバルは多い。
それでもいとしい君のため、俺はつくす。
―――これは、俺と君の恋愛アルバム。