~flower~   作:御沢

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久々のイナゴ。
最終回、よかったですー(>_<)

白竜side


love×jealousy

俺は楓が好きだ。

それを理解したのは、彼女がゴットエデンに入ってすぐのころだった気がする。楓が笑うたび、胸が高鳴った。

幼馴染で仲よくすることも多かった。そしていつしか、恋に落ちていた。

 

 

俺は楓の笑う顔が好きだ。

面白かったり楽しかったりして、笑っている顔が好きだ。

後ろから急に抱きついたり、いたずらをしたときのニヤリとしたいたずらっ子のような笑みが好きだ。

泣きたいのに無理をして笑う、切ない笑顔が好きだ。

―――そして何より、もう1人の幼馴染の奴―――剣城を見るときに見せる、花がほころんだような幸せそうな笑顔が好きだ。

それらの笑顔の対象に俺はなった事はある。

だが、最後のもっとも輝いた笑顔の対象になったことはない。

それが悔しくて、もどかしくて、うらやましかった。―――なぜいつも、剣城ばかりなのだろう。

その答えを探し求めて、自暴自棄になりかけたことすらあった。

 

 

「白竜、お疲れ様」

そんなことを考えていると、頬に冷たい感触。そして、鈴のなるような声が聞こえた。

「楓…あぁ、お疲れ」

「…どうしたの?何か考え事?」

お前のことだ、とは口が裂けても言えない。なぜなら楓は、中2の冬から、剣城と付き合っているからだ。

 

 

現在、高校2年生。

俺も楓も、剣城も、稲妻高校へと進学した。松風天馬やらあそこら辺は雷門高校に進学したため、かかわることは少なくなっていた。

楓はサッカーをやめ、今はマネージャーとしてサッカー部に貢献している。

俺はサッカーを続けている。プロを目指しているつもりだ。そして、もちろん剣城も…。

「楓、白竜、何をしているんだ?」

「あっ、京介、お疲れ様」

タイミングが悪い。剣城は肩で息をしながら、楓の肩をつかんだ。楓もごく自然な流れでボトルとタオルを渡す。その姿は、どこからどう見ても学校一のハイスペックカップルだった。

俺だって、ちゃんと自覚はあるんだ。―――2人と一緒にいる俺は邪魔なんだって。

でも、俺たちはずっと一緒にいて、離れるなんて考えられなかった。

 

 

ある日の放課後。用事がある、と呼び出されたのは、雷門高校の正門。

雷門高校は学ランとセーラー服なのに対し、稲妻高校はブレザーのため、学校帰りの俺は相当目立っていた。

しばらく待っていると、俺の名前を呼ぶ声が聞こえた。

「白竜くーん、待ったー?」

「いや、大丈夫だ。それで、用事とは何なんだ、空野」

「あーうん、ちょっとねー」

俺を呼び出したのは、雷門中学校時代、サッカー部マネージャーをしていた空野葵だった。

藍色のスカートに白いセーラー服、赤いリボンといったいたって普通のいでたち。

それでも、スカートは若干短めだったり、紺色の靴下はふくらはぎ位で止められていて、若干クシュっとなった感じだったり、胸くらいまである髪や目にかかるくらいの長さの前髪は、ストパーをかけたと思われるくらいまっすぐだったりと、若干“今どきの女子”の要素がはいっている。

そして彼女も、幼馴染の松風と付き合っていたはずだ。

空野は客観的に見て、とてもかわいらしいと思う。松風はおそらく、ほとんどの男子の嫉妬の的になっているのではないだろうか。…それは剣城も同じだろうか。

いや、剣城は男子からの人気がある。一方の楓も女子からの人気もある。同性からも好かれる2人なのだから、誰も嫉妬はしていないだろう。―――みっともなく嫉妬しているのは、俺だけだろう。

だったら、松風や空野も一緒だろう。中学が雷門だった奴に聞くと、剣城、楓も含めたこの4人は、学校のカリスマだったと聞く。ならば、嫉妬の対象になることは松風も、ここにいる空野もないのだろう。

 

 

空野に連れて行かれたのはファミレスだった。ボックス席の1つに座ると、空野は何をするでもなく、ただスマホをいじり始めた。

しょうがないから俺もスマホをいじっていると、近づく気配がした。ゴットエデンという特殊な場所にいたせいか、人の気配を察するのは得意となっていた。

「やだなー、白竜くんってば。俺、怪しいものじゃないよ?」

そこにいたのは、雷門高校に行った狩屋マサキだった。飄々とした感じは相変わらずだと思った。

「あ、マサキ、やっと来た!」

「ごめん、葵ちゃん、先生に呼び出しくらっててさー」

「そういや、寝てたもんね、数学の山田の授業」

こんな会話を見ていると、感じるのは、流れた時間の長さだ。

空野も狩屋も、年相応のしゃべり方、服装をしている。剣城や楓があまりに変わらないまま…というか、実年齢よりも大人っぽいものだから、変わらないような感じがしていた。

「白竜くんは知らないかもだけど、私とマサキと天馬って、雷門でめっちゃ仲いいんだよねー」

「そーそー!信助くんが月山国光に行っちゃってさー」

「それ!もーめっちゃびっくりしたわー!え、信助、月山国光行っちゃうの!?みたいなね」

「それでさ、輝くんも帝国行っちゃうし、俺たちが合体したんだよね、確か」

2人は目の前で笑いながら会話をしている。俺が最後に記憶していた2人との会話は、雷門の卒業式での会話だった。それとは感じが大分変っていて、驚かないといえばウソになる。

 

 

「…でねー…あっ、白竜くんごめん!話しこんでたわー」

「あ、いや…構わない」

「本当、ごめん!それで、話があるのはマサキなんだよね、実は」

席を立ちながら笑う空野が、狩屋の方を指差す。そして狩屋は笑う。

「残念、可愛い可愛い葵ちゃんじゃありませんでしたー」

「もーマサキ、からかうのやめなって!じゃーね、白竜くん!」

そして空野は手を振りながらファミレスから出て行った。―――とたんに狩屋の表情が変わった。

「…あー、疲れた。葵ちゃんも天馬くんも変わったよなー」

「狩屋、お前…」

狩屋はクククッと笑い声を洩らした。

「演技に決まってるって。あんなに明るいキャラ、俺のキャラじゃないって、白竜くん、知ってるでしょ?」

「…そうだな。それで、本題はなんだ?」

「相変わらず固いねー…ま、いいけど。―――白竜くん、楓ちゃんのこと、好きでしょ?」

―――急に核心を突かれた。ポーカーフェイスを保とうと必死になるが、流れる汗が止まらない。それはつまり、図星ということだ。

「あー…やっぱりね。でも、相手が剣城くんだもんねー。しかも今年で3年目だっけ?葵ちゃんと天馬くんもだけどさ」

「…何が言いたい?身を引け、といいたいのか?」

「いやいや、同士として話に乗ってあげようかと思ってさ」

「…同士、だと?お前、まさか…」

狩屋はいたって普通の顔で、普通に言った。

「俺、葵ちゃんのこと、中1のころから好きなんだよね、ずっと」

 

 

あまりに普通に言うものだから、どう反応していいのかわからなかった。

「お前は…その、辛くないのか?」

「うーん…まぁ、天馬くんが葵ちゃんにべたべたしてると、爆ぜろ、とか思うけどさー…でも、一緒にいる葵ちゃんが、ものすごく可愛い笑顔なわけ。その笑顔が見れたら満足かな、って思っちゃうんだよね、俺って」

やはり普通に言う狩屋。だが、その瞳は優しいものだった。

「好きな奴の、笑顔…か…」

「そうそう、笑顔ね。楓ちゃん、剣城くんと付き合い始めてよく笑うようになったし、白竜くんもたくさん見てるんじゃない、楓ちゃんの笑顔」

―――楓の笑顔。俺が最も好きなものだ。

…狩屋は、俺の持っていないものを持っている。親友に向ける目が、嫉妬ではない。憧れだ。

俺はまず、自分を変えるべきなのだろう。

 

 

「狩屋、ありがとう」

「え…ちょっと、白竜くんだよね、君!?」

「な…!?失礼だな、お前!」

そして俺も立ち上がって、ファミレスを出る。後ろから狩屋の声が聞こえる。

「ちょ、ドリンクバー代!」

―――そんなもの知らない。今は、剣城と楓に会いたい。

 

 

2人は毎日、帰り道にあるカフェでデートをしている。そのデートに俺が加わることもある。

「楓、剣城!」

店に入って、2人の座るテーブルの前に行く。息が切れて、汗が滴り落ちる。そんな俺を見て、2人は動揺している。

「白竜、どうしたんだ!?」

「剣城…俺、これからもお前たちを見守りたい…親友でいたい…」

「白竜…当り前じゃない。どうしたの、急に」

―――あぁ、やっぱり俺にはこっちの方があっている。今どきな感じよりも、変わらない大人っぽいこっちの方が好きだ。

「いや…色々あってな。それだけ言いに来た。それじゃあ」

きょとんとする2人を置いて、俺はカフェの外に出た。そしてガラス越しに楓を見る。―――楓は、剣城に見せるあの笑顔を浮かべていた。

 

 

そして、俺はやっぱり思う。

―――俺は楓が好きだ。楓の笑顔が好きだ。

だけど、同じくらいに―――剣城も好きだ。

 

 

 

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